待ちかねて 二月の桜 路地巡り

 二月は逃げ、三月は去る・・・コロナも一緒に去ってくれるといいのですが、そうもいかないようです。辛抱強く、感染の機会を減らしていきましょう。社会の動きを止めてしまわないことは感染対策上も大切です。

 感染拡大の動きをとりあえず止める措置として、緊急事態宣言は必要だったと思う。多くの(おそらくは大多数の)人が「これはまずいなあ」と感じて様々な行動を控える。その効果が大きいことは今回もまた、確認されました。

 ただし、それはあくまで緊急の対応です。長続きはできない。去年の春から指摘されている「ハンマー&ダンス」ですね。ひとまずガツンとやって動きを止める。ある程度、抑えが効いたら、あとは大きくアウトブレークしないように社会を動かしつつ必要な対策をとっていく。ハンマーはその最初の一撃ではありますが、肝心なのはその後のダンス期をうまくコントロールしていけるかどうかです。いよいよこれからですね。

 自粛、自粛といっても、ずっと我慢し続けることはできません。外にも出たくなります・・・ というわけで、長い前置きは外出の単なる言い訳でした。2月最後の日、明るい日差しに誘われて、長谷の路地裏散策に繰り出すと・・・。

 鎌倉で最も古い神社である甘縄神明宮。石段の両脇に咲くのは梅かな?もう少し近づいてみましょう。 

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 早咲きの玉縄桜でした。鎌倉市内の旧玉縄村にある県立大船フラワーセンターで品種改良の結果、生まれた鎌倉生まれの桜です。

 

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 淡いピンクの花が特徴で、もうもうほぼ満開という感じでした。

 長谷商店主有志の会のサイト「はせのわ」をみると、甘縄神明宮は《710年行基が草創し、豪族の染屋時忠が建立した、鎌倉で一番古い神社といわれており、長谷の鎮守です》と紹介されています。 http://hasenowa.com/spot/144/

 せっかくだから石段を上がって、お参りをしてきました。振り返ると・・・

 

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 由比ガ浜沖の海が見えます。今年は丑年。モ~、2カ月過ぎちゃったけど、だんだん良くなる年であってほしいなあ。それにしても、おじさんは相変わらず話が長いし、受けないダジャレも多い。反省。

 

HIVとエイズに関する国連総会ハイレベル会合 6月8~10日に開催 エイズと社会ウェブ版551

 2001年6月の国連エイズ特別総会の後、ほぼ5年に1度、開催されているHIVエイズに関する国連総会ハイレベル会合が、今年(2021年)6月8日(火)~10日(木)に開催されることが決まりました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)は開催決定の総会決議が採択された25日にさっそく歓迎のプレス声明を発表しています。www.unaids.org

 ニューヨークの国連本部に各国代表団が集まり、対面形式で開かれるのか、それともオンラインによるバーチャル会議になるのかはまだ決まっていないということです。COVID-19の流行で予測が立てにくいということでしょうね。ハイブリッドという選択肢もありそうです。

 HIV/エイズ対策の分野では、抗レトロウイルス治療の進歩を踏まえ、『2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズの流行を終わらせる』ことが国際社会の共通目標になっています。この目標は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの一部でもあるのですが、現状をみると実現は難しそうです。UNAIDSはプレス声明の中でこう指摘しています。

スティグマと差別、様々なコミュニティに対する排除と犯罪化、そして健康、教育、その他の不可欠なサービスへのアクセスの欠如といったものが、流行の拡大を促しています》

 以前からハードルの高い目標だったのに加え、昨年は新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、世界各国でHIV/エイズ対策の後退が強く懸念される事態になりました。そして、その懸念はいまなお継続しています。

 6月のハイレベル会合は、その試練の渦中で開催されることになります。

 2020年までの中間目標だったケアカスケードの90-90-90ターゲットは残念ながら達成できずに終わっています。その後継としてUNAIDSが示した2025エイズターゲットを含め、「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結」への道筋を再構築する政治宣言の採択が図られます。これから6月までの間にその準備が進められるわけですね。出発点として当方もささやかながらプレス声明の日本語仮訳を作成しました。とりあえず、ご覧ください。 

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(写真は2016年のハイレベル会合の際のパネルミーティング。日本語にすると分科会でしょうか Credit:UNAIDS)

 

2021年のHIVエイズに関する国連総会ハイレベル会合の開催決定を歓迎 

国連合同エイズ計画(UNAIDS)プレス声明

 

ジュネーブ、2021年2月25日 国連総会がHIVエイズに関するハイレベル会合を2021年6月8~10日に開催することを決定しました。UNAIDSは決定を歓迎します。この会合は、2016年の前回会合以降におけるHIV対策の成果を検証し、今後の対応の方向性を示す新たな政治宣言の採択を目指すものです。エイズの最初の公式症例が報告されてから40年、UNAIDSの創設から25年という節目の年に開催されます。

「公衆衛生上の脅威としてのエイズ終結は、持続可能な開発のための2030アジェンダにも含まれています。世界の指導者はこの約束を守るために今回のハイレベル会合を生かさなければなりません」とUNAIDSのウィニー・ビャニマ事務局長は語っています。「エイズの流行は終わっていません。若い女性や思春期の少女、極端なまでに深刻なHIVの影響を受けている他の集団の人たちを含め、すべての場所で、すべての人にとって終わりが来なければなりません。健康への権利は私たちすべてのものなのです」

 2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズの流行を終わらせることは、持続可能な開発目標の一部なのですが、進捗状況はきわめて不均一な状態です。2016年のハイレベル会合で採択されたエイズ終結に関する政治宣言で示されている2020年の世界目標は達成できませんでした。スティグマと差別、様々なコミュニティに対する排除と犯罪化、そして健康、教育、その他の不可欠なサービスへのアクセスの欠如といったものが、流行の拡大を促しています。サハラ以南のアフリカの女性と少女、およびキーポピュレーション(ゲイ男性など男性とセックスをする男性、セックスワーカートランスジェンダーの人たち、注射薬物使用者、受刑者)とそのパートナーは、世界各地で極端に深刻なHIVの流行の影響を受けています。

UNAIDSは現在、エイズ対策のすべての利害関係者を含めたプロセスにより2021年から2026年までの新たな世界エイズ戦略を策定中です。戦略の最終草案は2021年3月のUNAIDSプログラム調整委員会で採択が検討されることになります。新戦略には、どこに住んでいるか、誰であるかに関わりなく、誰も取り残さないエイズ終結に向けた新たなターゲットが含まれることになります。そのターゲットが達成できれば、2025年の新規HIV感染者数は37万人に減り、エイズ関連の病気による死者数は25万人に減少するのです。

しかし、現状はすでに達成されているHIV対策の成果でさえ、COVID-19パンデミックがもたらした混乱で脅かされています。ハイレベル会合は、世界のHIV対策の復元力を高め、COVID-19後の社会の迅速な回復を約束し、HIVとCOVID-19の2つの流行がともに進行する事態から学んだ教訓を活かして、より柔軟で復元力の高い社会と保健システムを生み出し、将来の健康課題に備えることになります。

「COVID-19のような重大な健康上の脅威に対し持続的に成果をあげるには、世界の連帯が大切です。エイズ対策の経験はこのことを私たちに教えてきました」とビヤニマ事務局長はいう。「世界中で生命と生活を危険にさらすような将来の健康問題に対応し、克服をはかるには、世界全体の能力強化をはからなければなりません。それには各国間および各国内の不平等を解消するために世界が協調して取り組む必要があります」

ハイレベル会合の共同進行役であるオーストラリアとナミビア国連大使、および決議の採択プロセスを主導してきた総会議長の努力に対し、UNAIDSは感謝の意を表します。

COVID-19対策による制約を考え、ハイレベル会合が対面で開かれるのかバーチャル会議か、あるいはそのハイブリッドとして開かれるのかは決まっていません。決議に従い、UNAIDSは国連加盟各国が最高レベルの参加を確保すること、市民社会組織およびHIV陽性者、HIVの高いリスクに曝されている人たちの代表が各国代表団に加わることを奨励します。HIV陽性者、HIVの高いリスクに曝されている人たち、キーポピュレーションを含むHIVに影響を受けている人たちの声を聞く重要な機会として、多様な利害関係者によるヒアリング会合が確保されることを期待しています。

 

 

UNAIDS welcomes the United Nations General Assembly decision to hold a high-level meeting on HIV and AIDS in 2021

GENEVA, 25 February 2021—UNAIDS welcomes the United Nations General Assembly decision for a high-level meeting on HIV and AIDS to take place between 8 and 10 June 2021. The high-level meeting will review the progress made in reducing the impact of HIV since the last United Nations General Assembly high-level meeting on HIV and AIDS in 2016 and the General Assembly expects to adopt a new political declaration to guide the future direction of the response. The high-level meeting will take place as the world marks 40 years since the first case of AIDS was reported and 25 years of UNAIDS.

“World leaders must seize the opportunity offered by this new United Nations General Assembly high-level meeting on HIV and AIDS to maintain their focus and commitment on ending AIDS as a public health threat as part of the 2030 Agenda for Sustainable Development,” said Winnie Byanyima, UNAIDS Executive Director. “The AIDS epidemic is unfinished business and must be ended for everyone everywhere, including for young women and adolescent girls and for other groups of people disproportionately affected by HIV. The right to health belongs to all of us.”

Progress towards ending the AIDS epidemic as a public health threat by 2030 as part of the Sustainable Development Goals has been highly uneven and the global goals for 2020 adopted in the 2016 United Nations Political Declaration on Ending AIDS were not met. Stigma and discrimination, the marginalization and criminalization of entire communities and a lack of access to health, education and other essential services continue to fuel the epidemic. Women and girls in sub-Saharan Africa and key populations (gay men and other men who have sex with men, sex workers, transgender people, people who inject drugs and people in prison) and their partners globally continue to be disproportionately affected by the HIV epidemic.

UNAIDS is currently developing a new global AIDS strategy for 2021–2026 through a process that is inclusive of all stakeholders in the AIDS response. The final draft strategy will be considered for adoption by the UNAIDS Programme Coordinating Board in March 2021. The new global AIDS strategy will include new targets to ensure that no one is left behind in ending AIDS, wherever they live and whoever they are. By achieving these targets, the number of people newly infected with HIV would fall to 370 000 by 2025, and the number of people dying from AIDS-related illnesses would be reduced to 250 000 in 2025.

Even the gains already made against HIV are threatened by the disruptions caused by the COVID-19 pandemic. The high-level meeting creates an opportunity to ensure that the world bolsters the resiliency of the HIV response to date, commits to rapid recovery post-COVID-19 and applies the lessons learned from the colliding epidemics of HIV and COVID-19 to create more resilient societies and health systems that are ready to meet future health challenges.

“The AIDS response has taught us that global solidarity is critical to making sustained progress against the impact of health threats like COVID-19,” said Ms Byanyima. “There must be concerted international efforts to reduce inequalities between countries and within them to strengthen the world’s capacity to absorb and defeat future global health challenges that put lives and livelihoods at risk everywhere.”

UNAIDS expresses its appreciation for the hard work of the high-level meeting co-facilitators, the permanent missions to the United Nations of Australia and Namibia, in the adoption of the resolution as well as to the President of the General Assembly for leading the process.

Given the constraints imposed by measures taken to contain the COVID-19 pandemic, it has not yet been decided if the high-level meeting will be in-person, virtual or a hybrid of the two. In line with the resolution, UNAIDS encourages the highest level of participation of United Nations Member States and the inclusion of civil society organizations and people living with or at risk of HIV in delegations to the high-level meeting. UNAIDS also looks forward to the multistakeholder hearing as a key opportunity to hear the voices of people living with, at risk of and affected by HIV, including key populations.

 

『(経済・社会の)安全な再開には、ワクチンだけでなく「検査・追跡・隔離」が必要』 エイズと社会ウェブ版550

 ワクチンの普及に対する期待が高まる中で、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンドの)のピーター・サンズ事務局長と国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁が2月11日、連名で『(経済・社会の)安全な再開には、ワクチンだけでなく「検査・追跡・隔離」が必要』という重要な見解をグローバルファンドのブログに寄稿しています。

 Safely Reopening Requires Testing, Tracing and Isolation, Not Just Vaccines

 https://www.theglobalfund.org/en/blog/2021-02-11-safely-reopening-requires-testing-tracing-and-isolation-not-just-vaccines/

 重要だけど英文で読むのはちょっときついなあと思っていたら、グローバルファンド日本委員会(FGFJ)のサイトには、電光石火の早わざで日本語仮訳が22日に掲載されました。助かります。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2021-02-11_safely-reopening

まずはその日本語仮訳ページの紹介文から。

 《ワクチンが低・中所得国で利用可能になるには、物流、資金など、様々な課題をクリアしなければならず、時間がかかります。現在直面している課題をクリアし、ワクチンや治療薬が開発され世界中で公平に供給されるようになるまで、新型コロナウイルスを抑えるためには、依然としてファンダメンタルズ(基礎的な対策)― 検査を広め、接触者を追跡し、陽性者を隔離すること ―が重要であると説いています》

 まったくもってその通りですね。寄稿文ではそのことを最初の1行で『いかに効果が高くても、ワクチンだけでは不十分』と直截に書いています。

 『必要としているすべての人にワクチン、治療、検査キットを届けるには時間と費用がかかるのが現実です。かつてHIV陽性者の治療に効果がある抗レトロウイルス薬が導入されたとき、最も貧しいコミュニティにまで薬が到達するのに7年かかりました。これは深刻に受け止めるべき教訓です。その間に、何百万人もの命が奪われ、さらに何百万人もが感染し、HIVパンデミックは拡大を続けたのです』

 その教訓を踏まえ、今回は《「Access to COVID-19 Tools Accelerator」(ACTアクセラレーター)》のような仕組みが作られているのですが、うまく仕組みが機能したとしても時間はかかります。

『こうした障害を乗り越え、ワクチンと治療薬が開発され世界中で公平に供給されるようになるまで、このウイルスを抑えるためには、依然としてファンダメンタルズ(基礎的な対策)が重要なのです』

 この点もおおむね同意。

『公式はシンプルです。検査を広め、接触者を追跡し、陽性者を隔離すること、これに尽きるのです』『検査・追跡・隔離―今後、より多くの治療法が利用できるようになれば最終的には検査・追跡・治療―がウイルスを抑制する効率的で持続可能方法です』

 ここで注目しておかなければならないのは、ロックダウンとの比較で『検査・追跡・隔離』は社会的な支持と信頼がなければ成立しないと指摘していることです。

『特筆すべきは、この手順が最終的な緊急措置としてのロックダウンとは対照的であることでしょう。ロックダウンは、一般社会の支持や信頼を損ないかねません。しかし、ワクチン接種やマスクの着用など他の有効な公衆衛生措置の実践にはこうした支持や信頼が不可欠なのです』

 ほとんど丸写しの紹介ですいません。何が言いたいのかというと、途上国の現場を知り尽くしたグローバルファンドとUNDPの見解に異論をはさむ余地はありません。ただし、日本の現状に引き移したときには、一点だけ疑問が残ります。

 漠然とした感覚なのかもしれませんが、検査や治療の機会を提供できるようにすることと、検査や治療を強制することとの微妙な境目が見えません。この境目が恐怖や不安の社会的感情が強くなると、やすやすと乗り越えられてしまうかもしれない。そのことへの一抹の危惧と言いますか・・・。

 善意でやっていると思っているうちに困惑を招くような結果を招いてしまう。そのような事例は、感染症に対する過去の社会的対応をみたときに、何度かあったのではないでしょうか。

 もちろん、ワクチンは大切です。国内における接種の普及も進めてほしい。

 ただし、『検査・追跡・隔離』を受ける人、あるいはそこに直面しそうで不安を持っている人への想像力を失わないという前提条件のもとでなら、『いかに効果が高くても、ワクチンだけでは不十分なのです』というグローバルファンドとUNDPの二人のトップの指摘は日本の現状にも当てはまるはずです。国内でもぜひ、多くの人に(日本語で)読んでほしいと思います。

 

不平等の解消を UNAIDS差別ゼロデー エイズと社会ウェブ版549

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトで新着情報をチェックしていたら、キャンペーンのページに2021年の差別ゼロデー(3月1日)について概要説明が載っていました。

 Zero Discrimination Day 2021 | UNAIDS

 『今年の差別ゼロデーに際し、不平等の解消に向けた行動がいますぐ必要なことをUNAIDSは強調しています。収入や性別、年齢、健康状態、職業、障害、性的指向、薬物使用、性自認、人種、階級、民族、宗教などを取り巻く不平等は、いまも世界中で根深く残っているのです』

ただし、《不平等と闘うことは新たな課題というわけではありません》とUNAIDS自身が概要説明の中でも指摘しています。それなのにどうして今年は緊急の課題として不平等の解消に焦点が当てられたのでしょうか。

 《そしていま、COVID-19の流行が最も脆弱な人びとに最も大きな打撃を与えています。新しいワクチンが利用可能になったとはいえ、そのアクセスには大きな不平等があるのです。多くの人がこの状態をワクチンアパルトヘイトとみなしています》

 ああ、そういうことか。COVID-19の流行は世界のHIV/エイズ対策にも大きな影響を与えています。国際社会の共通の約束である《2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行終結》という目標は、抗レトロウイルス治療の普及が大前提となっています。

 しかし、COVID-19の流行でその前提が大きく揺らいでいます。HIV/エイズ対策にとって、コロナは「あっしにゃあ、関わりのないことで」と上州の空っ風と共に去っていくことのできる課題ではありません(年齢的にたとえが古くてすいません。何言ってんだか、とお思いの方は木枯し紋次郎を参照してください)。

 加えて、HIV/エイズの経験からは、コロナ対策への貴重な教訓をたくさん引き出すことができます。その一つがサービスや治療薬の普及を阻む不平等の解消です。コロナの場合、喫緊の課題の一つがワクチンの普及です。「ワクチンアパルトヘイト」といった言葉さえあるのですね。知りませんでした。

 HIV/エイズ対策から得られた教訓をコロナ対策に生かすことは、前途がにわかに厳しくなってきたグローバルな(そして国内の)HIV/エイズ対策へのフィードバック効果にもつながってきます。禍福はあざなえる縄の如し、といいますか(ますます古いね)。

 でも、温故知新ですよ。UNAIDSの差別ゼロデー特設ページにはまだ、概要説明だけで、キャンペーン素材などはアップされていません。毎年のことですが、世界エイズデーが終わってから3カ月しかないので準備が大変なのかもしれません。キャンペーンは3月1日に向けてというよりも、3月1日を起点に展開するという感じでしょうか。

 とりあえず、概要説明の日本語仮訳で準備を整え、キャンペーン素材ができたらまた、よさそうなものを紹介していきましょう。

 

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差別ゼロデー2021

  今年の差別ゼロデーに際し、不平等の解消に向けた行動がいますぐ必要なことをUNAIDSは強調しています。収入や性別、年齢、健康状態、職業、障害、性的指向、薬物使用、性自認、人種、階級、民族、宗教などを取り巻く不平等は、いまも世界中で根深く残っているのです。

 不平等は世界人口の70%以上でいまも拡大しています。そのために分断のリスクがますます大きくなり、経済的、社会的な発展を妨げているのです。そしていま、COVID-19の流行が最も脆弱な人びとに最も大きな打撃を与えています。新しいワクチンが利用可能になったとはいえ、そのアクセスには大きな不平等があるのです。多くの人がこの状態をワクチンアパルトヘイトとみなしています。

差別と不平等は密接に絡み合っています。構造的なものであれ社会的なものであれ、個人や集団に対する横断的な差別は、収入、教育程度、健康、雇用などの様々な不平等につながる可能性があります。一方で、不平等もスティグマや差別につながるおそれがあります。差別に対処するために不平等を減らそうとするなら、この点に注意することが大切です。キーポピュレーションのメンバーは差別やスティグマの対象とされることがしばしばあり、法執行機関から犯罪者とみなされて取締りの対象になることも多いのです。研究によると、社会的、構造的な差別が司法へのアクセスと健康状態に重大な不平等をもたらすことが示されています。

エイズ終結には、不平等に立ち向かい、差別を解消することが重要になります。世界が2030年のエイズ終結という約束を果たすための軌道から大きく外れているのは、エイズ克服に必要な知識や能力や手段がないからではなく、構造的な不平等により、HIVの予防と治療に関して効果が実証されている解決策の実施が妨げられているからなのです。たとえば、最近の調査によると、性的指向に対し懲罰的な国のゲイ男性など男性とセックスをする男性は、支援的な法律がある国に住んでいる場合より2倍もHIVに感染する可能性が高くなります。あらゆるかたちのHIV関連のスティグマと差別をなくすためのグローバルパートナーシップは、スティグマと差別の発生および不平等の創出・強化につながる6つの主要な状況をあげています。医療部門、教育部門、職場、司法制度、家族と地域社会、および人道的な緊急事態です。

不平等と闘うことは新たな課題というわけではありません。2015年には、持続可能な開発目標の一環として、すべての国が国内および国際間の不平等をなくしていくことを約束しています。不平等と闘うことは、エイズ終結の核となると同時に、HIV陽性者の人権をまもり、社会がCOVID-19やその他のパンデミックに対応するための準備を整え、経済の回復と安定を支えることになります。不平等と闘うという約束を果たすことは、何百万という人の命を救い、社会全体に利益をもたらすことになります。そのためには、あらゆる形の差別に立ち向かわなければなりません。

 しかし、すべての人の尊厳をまもるには、政治、経済、社会的政策がすべての人の権利を保護しなければなりません。不利な立場に置かれ、疎外されたコミュニティのニーズに注意を払う必要があるのです。

 不平等を終わらせるには思い切った変革が必要です。極度の貧困と飢餓の根絶には一層の努力が必要であり、健康、教育、社会的保護、そしてまともな仕事を確保するための投資を増やさなければなりません。

政府は包摂的な社会・経済的成長を促進しなければなりません。機会均等を確保し、不平等を解消するために、差別的な法律や政策、慣行を排除しなければならないのです。

 政府だけでなく、私たち全員が差別を目にしたらその場で声をあげ、模範を示したり、法律の改正を提唱したりすることで、自らの役割を果たすことができます。すべての人が、差別を解消し、不平等を減らすために果たすべき役割を担っているのです。

 より良い生活を得る機会を奪われる人がいるままで持続可能な開発を達成し、すべての人にとってよりましな世界が実現することはできません。 今日の世界では、私たちはみな相互につながっています。 世界的な不平等は、私たちが誰であり、どこから来たかに関わりなく、私たち全員に影響を及ぼすのです。

 今年の差別ゼロデーを機会に、人びとが生産的で充実した生活を送ることを妨げる不平等に対する認識を深めましょう。そして、あらゆるかたちの差別を終わらせるという約束を政府がまもり、義務を果たすことを求めていきましょう。

 

 

 

Zero Discrimination Day

On Zero Discrimination Day this year, UNAIDS is highlighting the urgent need to take action to end the inequalities surrounding income, sex, age, health status, occupation, disability, sexual orientation, drug use, gender identity, race, class, ethnicity and religion that continue to persist around the world.

Inequality is growing for more than 70% of the global population, exacerbating the risk of division and hampering economic and social development. And COVID-19 is hitting the most vulnerable people the hardest—even as new vaccines against COVID-19 are becoming available, there is great inequality in accessing them. Many have equated this to vaccine apartheid.

Discrimination and inequalities are closely intertwined. Intersecting forms of discrimination, be it structural or social, against individuals and groups can lead to a wide range of inequalities—for example, in income, educational outcomes, health and employment. However, inequalities themselves can also lead to stigma and discrimination. It is critical, therefore, when looking to reduce inequalities to address discrimination. Members of key populations are often discriminated against, stigmatized and, in many cases, criminalized and targeted by law enforcement. Research has shown that this social and structural discrimination results in significant inequalities in access to justice and in health outcomes.

Confronting inequalities and ending discrimination is critical to ending AIDS. The world is off track from delivering on the shared commitment to end AIDS by 2030 not because of a lack of knowledge, capability or means to beat AIDS, but because of structural inequalities that obstruct proven solutions in HIV prevention and treatment. For example, recent research shows that gay men and other men who have sex with men are twice as likely to acquire HIV if they live in a country with punitive approaches to sexual orientation than if they live in a country with supportive legislation. The Global Partnership for Action to Eliminate all Forms of HIV-Related Stigma and Discrimination has identified six main settings where stigma and discrimination occur and create or reinforce inequality—the health sector, the education sector, the workplace, the justice system, families and communities, and emergency and humanitarian settings.

Tackling inequality is not a new commitment—in 2015, all countries pledged to reduce inequality within and between countries as part of the Sustainable Development Goals. But it is not yet one that the world has delivered on. As well as being core to ending AIDS, tackling inequality will also advance the human rights of people who are living with HIV, make societies better prepared to beat COVID-19 and other pandemics and support economic recovery and stability. Fulfilling the promise to tackle inequality will save millions of lives and benefit society as a whole. To do this, we must confront discrimination in all its forms.

But to achieve dignity for all, political, economic and social policies need to protect the rights of everyone and pay attention to the needs of disadvantaged and marginalized communities.

Ending inequality requires transformative change. Greater efforts are needed to eradicate extreme poverty and hunger and there is a need to invest more in health, education, social protection and decent jobs.

Governments must promote inclusive social and economic growth. They must eliminate discriminatory laws, policies and practices in order to ensure equal opportunity and reduce inequalities.

But we can all play our part by calling out discrimination where we see it, by setting an example or by advocating to change the law. We all have a role to play in ending discrimination and so reducing inequalities.

We cannot achieve sustainable development and make the planet better for all if people are excluded from the chance of a better life. In today’s world, we are all interconnected. Global inequality affects us all, no matter who we are or where we are from.

This Zero Discrimination Day join us in raising awareness about the inequalities that prevent people from living a full and productive life and demanding that governments fulfil their commitments and obligations to end all forms of discrimination.

 

 

今年は密集を避け 鎌倉の東日本大震災復興祈願祭

 鎌倉の東日本大震災復興祈願祭は、大震災発生から1カ月後の2011年4月11日、神道、仏教、キリスト教の三宗教合同で執り行われたのが最初でした。会場の鶴岡八幡宮舞殿の周囲をたくさんの人が囲み、追悼の思いと復興の願いを共有しました。

 翌2012年からは毎年、震災当日の3月11日に宗教宗派を超えた祈りが被災地に届けられました。会場は神社、仏教寺院、キリスト教会が順番に受け持つかたちで引き継がれてきたのも宗派を超えて「祈る」ということを大切にしたかったからでしょう。私のように、特定の宗教の信者ではない人も含め、多くの人がその年ごとに鶴岡八幡宮建長寺カトリック雪ノ下教会を訪れ、その祈りをともにしました。 
 残念ながら昨年は『新型コロナウイルスの影響で、皆様に告知をほとんどせず、神道、仏教、キリスト教の宗教者が集い祈りを捧げました』ということでした。
 そして震災から10年の節目となる今年は『新型コロナウイルス感染防止の観点から、関係者のみで、鶴岡八幡宮 舞殿で執り行います。焼香台等は設置いたしません』ということです。この時期なので致し方ないと思います。

 https://www.facebook.com/inorikamakura

 震災発生時刻の午後2時46分に黙祷。
 『皆様方におかれましては、それぞれの場所でお心をお寄せくださいますよう、お願い申し上げます』
 
 写真は2018年3月11日、鎌倉大仏殿高徳院で執り行われた東日本大震災復興祈願祭です。屋外でも密集は避けられません。今年はリモートで祈りを捧げることにしましょう

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 『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』 エイズと社会ウェブ版548

 1990年代の米国のHIV/エイズの状況を説明するのも最近はなかなか難しくなってきたようです。しかいs、新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックで大きく動揺する米国、そして日本国内でも、その経験を忘れてしまうことはできない、というか、いまは十分にできてしまっている感じもしますが、少なくとも私は忘れたくない。
 と思っていたら、よさそうな本の出版が準備中です。
 『テイキング・ターンズ HIVエイズケア371病棟の物語』
 2017年に米国で発行された《「グラフィック・メディスン」の代表作》の日本語版の刊行に向けて、2月28日までクラウドファンディング実施中ということです。
 http://thousandsofbooks.jp/project/takingturns/
 《本書は著者自身による1994年から2000年までのHIVエイズケア病棟での看護師勤務経験に基づく回想録(グラフィック・メモワール)であり、さまざまな関係者の証言を織り交ぜて製作された「グラフィック・ドキュメンタリー」としての側面も併せ持つ意欲作です。HIVエイズに特化した緩和ケア病棟として創設された371病棟では、死と隣り合わせの患者と接する日常がくりひろげられています。エイズに対する恐怖がパニックを引き起こしていた1990年代当時の貴重な証言の記録にもなっています》

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 少額のわりに長いコメントを付け、私もささやかながら支援させていただきます。以下、そのコメントです。
  ◇
 1994年当時、私はニューヨークで暮らしていました。エイズの流行でたくさんの人が亡くなっていく。生命を救う有効な治療法はまだ確立していない。どうなるんだろう。そんな不安が最も深かった時期です。10年を超える新興感染症との闘いの中で、厭戦ムードも社会の中に広がっていました。その当時の回想録ですね。  プロモーションビデオでは病棟について、次のように説明しています。

 『ここは誰しもかわりばんこ(taking turns)に病気になりうるという想像力が共有されていたのです』

 四半世紀を超える時間が経過しました。HIV/エイズとCOVID-19という二つのパンデミックが同時に進行する時代の中で、そうした「想像力」がいまなお共有されているのか。改めて立ち尽くし、考えてしまいます。
 予防は必要です。生存に重大な影響をもたらす、あるいはもたらしうる感染症には、かからないようにする。そのことの必要性は、専門の医師からも、政治の指導者からも繰り返し、指摘され続けています。あえていま、そのことを否定するつもりはもありません。

 ただし、taking turnsの想像力もまた失いたくない。大事な一冊になる予感がします。出版されたら、どっちみち購入することになるだろうから、早めに1冊予約しておくとするかというつもりで、ささやかに支援。

山中伸弥教授、ラグビーのすすめ

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行はスポーツ界にも深刻な影響を与えていますね。そんな中で、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が京大ラグビー部100周年記念サイトの特別インタビューに応え、自らのラグビー経験を語るとともに、「迷っているなら、ぜひラグビーをやってほしい」と学生諸君に呼びかけています。

 その短縮版の動画(4分)は、京大ラグビー部の新入部員勧誘のために活用するだけでなく、同じように新人勧誘に苦戦している全国のラグビースクール、中学、高校、大学のラグビー部、そしてラグビー関係者の皆さんにも共有してほしいということで、拡散の許可をいただいています。
 こちらでご覧ください。 

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 山中教授は神戸大学の医学部時代に3年間、ラグビー部に所属していました。インタビューでは「研究者として頑張れたのも、ノーベル賞をいただくことができたのも、大学でラグビーから学んだことが生かされています」「ラグビーをしたことは、一生続く財産だと思います」と熱く語っています。

 日本のラグビー界は2019年秋のW杯開催で、盛り上がりに盛り上がりましたが、昨年はCOVID-19の影響で苦難のシーズンとなりました。
 今年はいわば再出発の年です。延期を余儀なくされたトップリーグの最後のシーズンも20日に開幕します。
 オリンピックの男女7人制ラグビーパラリンピック車いすラグビーにも期待がかかります。東京オリパラ、無観客で十分です。ぜひ開催してほしい。スタンドに陣取らなくても、応援の仕方はいろいろあります。まずは、全試合中継をお願いしたい。