『テイキング・ターンズ HIV/エイズケア371病棟の物語』 エイズと社会ウェブ版548

 1990年代の米国のHIV/エイズの状況を説明するのも最近はなかなか難しくなってきたようです。しかいs、新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックで大きく動揺する米国、そして日本国内でも、その経験を忘れてしまうことはできない、というか、いまは十分にできてしまっている感じもしますが、少なくとも私は忘れたくない。
 と思っていたら、よさそうな本の出版が準備中です。
 『テイキング・ターンズ HIVエイズケア371病棟の物語』
 2017年に米国で発行された《「グラフィック・メディスン」の代表作》の日本語版の刊行に向けて、2月28日までクラウドファンディング実施中ということです。
 http://thousandsofbooks.jp/project/takingturns/
 《本書は著者自身による1994年から2000年までのHIVエイズケア病棟での看護師勤務経験に基づく回想録(グラフィック・メモワール)であり、さまざまな関係者の証言を織り交ぜて製作された「グラフィック・ドキュメンタリー」としての側面も併せ持つ意欲作です。HIVエイズに特化した緩和ケア病棟として創設された371病棟では、死と隣り合わせの患者と接する日常がくりひろげられています。エイズに対する恐怖がパニックを引き起こしていた1990年代当時の貴重な証言の記録にもなっています》

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 少額のわりに長いコメントを付け、私もささやかながら支援させていただきます。以下、そのコメントです。
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 1994年当時、私はニューヨークで暮らしていました。エイズの流行でたくさんの人が亡くなっていく。生命を救う有効な治療法はまだ確立していない。どうなるんだろう。そんな不安が最も深かった時期です。10年を超える新興感染症との闘いの中で、厭戦ムードも社会の中に広がっていました。その当時の回想録ですね。  プロモーションビデオでは病棟について、次のように説明しています。

 『ここは誰しもかわりばんこ(taking turns)に病気になりうるという想像力が共有されていたのです』

 四半世紀を超える時間が経過しました。HIV/エイズとCOVID-19という二つのパンデミックが同時に進行する時代の中で、そうした「想像力」がいまなお共有されているのか。改めて立ち尽くし、考えてしまいます。
 予防は必要です。生存に重大な影響をもたらす、あるいはもたらしうる感染症には、かからないようにする。そのことの必要性は、専門の医師からも、政治の指導者からも繰り返し、指摘され続けています。あえていま、そのことを否定するつもりはもありません。

 ただし、taking turnsの想像力もまた失いたくない。大事な一冊になる予感がします。出版されたら、どっちみち購入することになるだろうから、早めに1冊予約しておくとするかというつもりで、ささやかに支援。