6月7日のTOKYO PRIDEパレード2026は、主催者発表によると『すべての人の平等な権利を願う15,000人が渋谷を大行進』した。その2日前の6月5日から1週間、東京・新宿のシネマート新宿では長編ドキュメンタリー映画『熱狂をこえて』が限定上映されている。映画館の公式サイトの上映作品欄には「日本のプライドパレード史はじまりのストリー」という紹介があった。
1万5000人の大行進となったTOKYO PRIDEをはじめ、日本国内では毎年、全国の40カ所以上でプライドパレードが開催されているという。
『熱狂をこえて』は、映像作家の松岡弘明監督が「1994年に日本で初めてプライドパレードを実現させたゲイの活動家・南定四郎の半生を、4年の歳月をかけて記録したドキュメンタリー」であり、松岡監督にとっては『沖縄カミングアウト物語』に次ぐ2本目の作品となる。
南さんの存在は、性的少数者のコミュニティ、およびHIVとエイズ対策に取り組んできた人たちにとっては、レジェンドと呼ぶにふさわしい重みがある。TOKYO PRIDEパレードの関係者の中にも、南さんが1994年に500人余りでスタートしたパレードを原点と位置づける人は多い。
だが、1994年のパレードがすんなりと現在の1万5000人の大パレードに結びつくわけではない。映画は南さんへのインタビューを重ね、周囲にいた人たちの証言も丹念に集めて、その紆余曲折を描き出していく。

(C)カミハグプロダクション
その中で、南さんは晩年を迎え「やり方を間違えた」と過去を振り返る。「正しいことをやっているのだからいいだろう」という思い込みがあったことを認め、「いまは反省している。そのために20年の時間がかった。自分で納得するまでに20年」と述べる。映画はそこにいたる負の出来事の数々を伝えることも忘れない。
それでも、南さんに対し独断専行との批判は必ずしもあたらないように思う。気付いた者がとにかく行動する。それが必要だった時代は確実にあったし、いまがそうではないということもできないだろう。時代と個人との関係に、一足飛びの結論は出せない。
レジェンドの神格化を一歩手前で踏みとどまり、そのことで逆に存在の価値が浮かび上がる。『熱狂をこえて』、何が残ったのか、あるいは残せたのか。タイトルの意味が映画を見た後で改めて納得できる。そんなドキュメンタリーに巡り合える経験はそうそうない。
あまり大々的にとは言えないが、映画の上映は全国で続けられている(現在は、アップリンク吉祥寺、アップリンク京都、横浜シネマ・ジャック&ベティで上映中)。