『イニシャルだけのキルト』 エイズと社会ウエブ版723

 現代性教育研究ジャーナルNo186(2026年8月15日発行)のコラム『多様な性のゆくえ』第112回。13ページに掲載されています。
https://jase.faje.or.jp/jigyo/kyoiku_journal
《1991 年に作られた日本で最初のメモリアル・キルトは「ホワイトキルト」と呼ばれている。一対のキルトには、白い布にアルファベットで『K W』『K F』としか縫い込まれていない。なぜなのか》
 ホワイトキルトは6月のTOKYO PRIDEパレード2026にも参加しました。

  

 

 ぷれいす東京の公式サイトには5月29日付けで《パレードで一緒に行進する「AIDSメモリアルキルト」ご紹介》という記事が掲載されています。こちらもご覧ください。
 https://ptokyo.org/news/19036

 AIDSメモリアルキルト
HIV感染症/ AIDSで亡くなった人々を偲んで、その家族や友達たちの手によって思いを込めて作られ、その人の人生を記録した1枚の布(キルト)のことです。90cm × 180cmの布に縫い付けられている亡くなった人々の名前や衣服、生前に愛用していた小物類、周囲の人々からのメッセージは、この病気への偏見という逆境の中で、周囲に支えられれながら精一杯いきた証しを伝えています。
 メモリアル・キルト・ジャパン

 

『通史的記述を超えた魅力』エイズと社会ウェブ版 722

 現代性教育研究ジャーナルNo184(2026年7月15日発行)のコラム『多様な性のゆくえ』第111回です。12ページに掲載されています。
 https://jase.faje.or.jp/jigyo/kyoiku_journal
 《実は編著者の山縣真矢さんからは、1990年代のエイズに関する記述で問い合わせをいただき、2025年4月に何度かメールでやり取りをしたことがある。「良く調べられていて、私の知らないこともたくさんありました」とお答えし、ほとんどお役には立てなかったと思うが、事実確認の真摯な姿勢は伝わってきた》
 公開の時期が前後していたので、PRIDEパレードの歴史に関しては、取り上げる対象も視点も松岡弘明監督の映画『熱狂をこえて』と共通している面があるという印象を受けました。

 もしかして謎の仕掛け人がいて、プロジェクトを同時進行で進めていたのでは・・・などと、全く根拠のない妄想をたくましくして、念のため松岡監督に確認してみると、ヒストリーブックと制作期間が重なったのは「たまたま」だったそうです。

 ただし、「山縣さんのもとには資料や映像などが集まっていたので、たいへんお世話になりながら制作していきました」というこでした。しいて言えば、「時の流れ」という仕掛け人がいて、その結果、期せずしてメディアミックスが生まれたという感じでしょうか。時代の潮目を読むという意味では、映画を観てから本を読むか、本を読んでから映画を観るか。どちらもおすすめです。

 

  

 

映画『熱狂をこえて』 エイズと社会ウェブ版 721

 6月7日のTOKYO PRIDEパレード2026は、主催者発表によると『すべての人の平等な権利を願う15,000人が渋谷を大行進』した。その2日前の6月5日から1週間、東京・新宿のシネマート新宿では長編ドキュメンタリー映画『熱狂をこえて』が限定上映されている。映画館の公式サイトの上映作品欄には「日本のプライドパレード史はじまりのストリー」という紹介があった。

 1万5000人の大行進となったTOKYO PRIDEをはじめ、日本国内では毎年、全国の40カ所以上でプライドパレードが開催されているという。

 『熱狂をこえて』は、映像作家の松岡弘明監督が「1994年に日本で初めてプライドパレードを実現させたゲイの活動家・南定四郎の半生を、4年の歳月をかけて記録したドキュメンタリー」であり、松岡監督にとっては『沖縄カミングアウト物語』に次ぐ2本目の作品となる。

 南さんの存在は、性的少数者のコミュニティ、およびHIVとエイズ対策に取り組んできた人たちにとっては、レジェンドと呼ぶにふさわしい重みがある。TOKYO PRIDEパレードの関係者の中にも、南さんが1994年に500人余りでスタートしたパレードを原点と位置づける人は多い。

 だが、1994年のパレードがすんなりと現在の1万5000人の大パレードに結びつくわけではない。映画は南さんへのインタビューを重ね、周囲にいた人たちの証言も丹念に集めて、その紆余曲折を描き出していく。

(C)カミハグプロダクション

 その中で、南さんは晩年を迎え「やり方を間違えた」と過去を振り返る。「正しいことをやっているのだからいいだろう」という思い込みがあったことを認め、「いまは反省している。そのために20年の時間がかった。自分で納得するまでに20年」と述べる。映画はそこにいたる負の出来事の数々を伝えることも忘れない。

 それでも、南さんに対し独断専行との批判は必ずしもあたらないように思う。気付いた者がとにかく行動する。それが必要だった時代は確実にあったし、いまがそうではないということもできないだろう。時代と個人との関係に、一足飛びの結論は出せない。

 レジェンドの神格化を一歩手前で踏みとどまり、そのことで逆に存在の価値が浮かび上がる。『熱狂をこえて』、何が残ったのか、あるいは残せたのか。タイトルの意味が映画を見た後で改めて納得できる。そんなドキュメンタリーに巡り合える経験はそうそうない。

 あまり大々的にとは言えないが、映画の上映は全国で続けられている(現在は、アップリンク吉祥寺、アップリンク京都、横浜シネマ・ジャック&ベティで上映中)。

『LGBTヒストリーブック 日本編』 エイズと社会ウェブ版720

 コラム『多様な性のゆくえ』第110回です。現代性教育研究ジャーナルNo183(2026年6月15日発行)の12ページに掲載されています。昔話をひとしきりしたあとで、ヒストリーブックの紹介に入りました。
 https://jase.faje.or.jp/jigyo/kyoiku_journal
 《待ちに待った書籍なのだが、HIV とエイズに関する取材を 40 年にわたって続けてきた私のような異性愛者には、至る所に反省材料が待ち受けていた。例え
ば、国内の感染拡大に動揺が走った 1987 年当時は、個人的に(おそらく社会的にも)、同性間の性感染にはあまり関心が向かなかった記憶がある》

 奇しくもストーリーブックの発売日に掲載となりましたが、偶然です。
 続きは次号ということで。

 

    

 

HIV新規感染報告増加の兆し? メルマガ東京都エイズ通信から

 メルマガ東京都エイズ通信第223号が3月31日、発行されました。今年に入って最初の2カ月半(1月1日~3月31日)の東京都内の新規HIV感染者・エイズ患者報告数は以下の通りです。

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● 令和8年第1~11週(1月1日から3月15日まで)の感染者等報告数(東京都)
※厚生労働省 感染症サーベイランスシステムより抽出
※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者         52件    (37件)

AIDS患者          12件      (9件)

合計              64件      (46件)

現時点でAIDS患者とHIV感染者数は令和7年より多い。

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 前年同時期に比べ、新規HIV感染者の報告数は1.4倍に増えています。気がかりな数字ではありますが、前年のデータが少なかったことの反動かも知れません。年次比較はもう少し推移を見て判断する必要があります。

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2025年速報値は890件 エイズ動向委員会報告

 第166回エイズ動向委員会が26日に開かれました。昨年(2025年)1月1日から12月31日までの1年間の速報値は新規HIV感染者報告(624件)と新規エイズ患者報告(266件)を合わせて890件となっています。あくまで報告数での比較ですが、速報値段階では新規HIV感染報告は過去20年間で最も少なく、新規エイズ患者報告を合わせた合計数でも2022年の884件に次いで過去20年間で2番目に少なくなっています。

   




 速報値の合計報告数は2021年に1057件だったのが、2022年には884件と大きく減少しました。ところが翌2023年から再び増加傾向に転じ、2024年は速報値段階で1000件となっていました(ただし、9月の確定値発表では合計数は994件と速報値より減っていました)。
 コロナウイルス感染症の流行の影響がHIVの感染動向にどう出てくるのか。この点は依然、懸念されるところですが、今回の速報値では再び減少軌道に戻ったかたちになっています。
 ただし、今後も減少傾向が続くかどうかについては、夏の終わりに公表される確定値や2026年上半期の速報を注意深く見ていく必要がありそうです。
 今回の報告の概要はAPI-Netに『第166回エイズ動向委員会 委員長コメント』として紹介されています。
 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/data/2026/2603/20260326_coment.pdf
 そのうちの《まとめ》の部分を再掲しておくので、参考にしてください。

《まとめ》
1.令和7 年の新規HIV感染者報告数は、令和6 年と比べわずかに減少(-約6%)した。令和7 年の新規エイズ患者報告数は、令和6 年と比べ減少(-約20%)した。新規報告数全体に占めるエイズ患者報告数の割合は、依然として約3 割で推移している。保健所等での検査件数の伸びが鈍化していることも留意しつつ、今後の状況を注視していく必要がある。
2.新規HIV感染者の感染経路は、性的接触によるものが約79%(うち約82%が同性間)、新規エイズ患者では約72%(うち約73%が同性間)となっている。また、新規HIV感染者・新規エイズ患者ともに、男性が全体の9 割を超えている。
3.保健所等におけるHIV抗体検査及びHIV郵送検査件数は、前年に比べおおむね横ばい(-約2%)である。今回の報告からHIV 郵送検査件数を追加しており、検査件数の解釈については、今後の推移を注視しながら詳細な検討が必要である。保健所及び自治体におかれては、引き続き早期診断につながる検査機会の確保に努めていただきたい。
4.献血時のHIV抗体・核酸増幅検査における10 万件当たりの陽性件数は令和6 年と比べて減少した。しかし、依然として陽性件数があることを踏まえると、HIV感染リスクがある方は、保健所等での無料・匿名検査や医療機関による検査を受けていただきたい。
5.HIV感染症は予防可能な感染症であり、適切な予防策をとることが重要である。また、エイズ発症予防のためには、早期診断と早期治療が重要である。感染予防と早期診断は、社会における感染の拡大防止にもつながることから、首都圏を始め都市部、また都市部以外の地域においても、梅毒などの性感染症を含め、保健所等での無料・匿名の検査・相談や医療機関による検査を積極的にご利用いただきたい。
 
 

『外一名の有権者』エイズと社会ウェブ版 719

  現代性教育研究ジャーナルの連載コラム『多様な性のゆくえ』第107回です。No180(2026年3月15日発行)の12ページに掲載されています。
https://jase.faje.or.jp/jigyo/kyoiku_journal
『温故知新というか、最先端の事情に疎い年寄りは、どうしても過去を振り返り
がちだ』ということで、昭和の思い出話をひとしきりした後で、総選挙の結果に八つ当たり。
《指摘されるまで何の違和感も抱かなかった昭和のおじさんの不明を恥じつつ、私もまた「皆さんの貴重な一票」に対し「外1名」はないよなと改めて思う》
 アメリカでも日本でも「皆さんの貴重な一票」はひどい選択をしたものだと、これまた改めて思います。