人間の安全保障とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の重要性を強調 岸田首相がランセット誌に寄稿

 英国の医学専門誌ランセットに1月21日(英国時間20日)、岸田首相の寄稿「人間の安全保障とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:G7広島サミットに向けた日本のビジョン」が掲載されました。
 寄稿は英文ですが、外務省の公式サイトに日本語の要旨が紹介されています。
 

www.mofa.go.jp


『今年5月のG7広島サミットやG7長崎保健大臣会合等を通して、国際保健に貢献していく決意を示したものです』と外務省は説明しています。
 寄稿の要旨の核心部分をさらに(僭越ながら私が勝手に)圧縮して紹介すると、以下のような感じでしょうか。
  ◇
 G7広島サミット及びG7長崎保健大臣会合では、これまでのG7における議論も踏まえ、人間の安全保障の重要性を強調しつつ、以下3つの分野に焦点を当てる。
 ア 公衆衛生危機のためのグローバルヘルス・アーキテクチャーの強化
 イ ポスト・コロナの新しい時代に向けたUHCの推進
 ウ デジタル領域を含むヘルス・イノベーションの促進
  ◇
 詳しくは英文の寄稿全文を・・・読むのは大変でしょうから(実は私も読んでいません)、せめて外務省サイトの要旨に目を通してください。
 和文仮訳(PDF)も用意されています。A4判で2ページ弱なので、折角ならこっちの方がいいかなあ。
 https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100448846.pdf

 最近は元気がなくなるニュースばかり続くので、埋没してあまり目立たないかもしれませんが、G7サミット議長国の首相として、この時期に保健分野のメッセージを明確に示したことは重要だと思います。

 

『感染症対策の革新と伝統』 One side/ No side(多様な性のゆくえ)第69回 エイズと社会ウェブ版637

 M痘の新たな国内症例が19日、発表されました。厚労省の報道発表資料です。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30346.html

 厚労省発表はサル痘ですが、世界保健機関(WHO)はすでにM痘(mpox)への名称変更を発表しているので、ここではM痘を使いたいと思います。1年間の移行期間が設けられているので、どちらも誤りというわけではありません。
 参考までに、コミュニティセンターaktaの公式サイトの『サル痘(mpox)のきほんの情報β ― サル痘(mpox)について知っておきたいこと』もご覧ください。『認知の状況にあわせて、段階的にmpoxへ変更していきます』ということです。さすが、大人の対応。

 あわてずに、しかし、着実に。この辺りはコミュニティレベルで感染症対策に取り組む際の基本かもしれません。勉強になります。

 現代性教育研究ジャーナルのコラム One side/ No side(多様な性のゆくえ)の第69回『感染症対策の革新と伝統』はそのM痘の話題です。
 昨年末時点の国内の症例数は8件だったのですが、本日の発表で9件となりました。
 コラムはこちらでご覧ください。9ページに載っています。
 https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202301.pdf

   

 

『サル痘からM痘に 1年かけて名称変更』 TOP-HAT News第172号

 明けましておめでとうございます。ということは、すでに去年の話になってしまい、恐縮ですが、懸案になっていたサル痘(Monkey pox)の名称が、M痘に変えられることになりました。世界保健機関(WHO)が11月28日、名称変更の推奨を発表しました。WHOのプレスリリースによると『1年間の移行期間を経て、サル痘に代わりM痘が優先用語となる』ということで・・・あれ? それなら今年の話でもあります。

『去年今年貫く棒の如きもの』(虚子)

 そうか、うまいことというね。

 サル痘の痘は2022年の「今年の漢字」にもならず、国内の流行は小規模にとどまって2023年を迎えました。初期対応による情報伝達の成果といっていいのかもしれません。

TOP-HAT News第172号(2022年12月)の巻頭で取り上げたので、詳しくはこちらをお読みください。

 

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TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第172号(2022年12月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに サル痘からM痘に 1年かけて名称変更

2 『ヤローページ』2022新宿版が登場

3 PrEP利用の手引きを発行

4 HIVプリベンション2025ロードマップ

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1 はじめに サル痘からM痘に 1年かけて名称変更

今年5月ごろから、欧米諸国を中心に世界各地で感染報告が相次いだサル痘(Monkey Pox)の名称が変わります。世界保健機関(WHO)は11月28日、M痘(m pox)への変更を推奨すると発表しました。こちらがWHOの公式サイトに掲載されたニュースリリースです。

https://www.who.int/news/item/28-11-2022-who-recommends-new-name-for-monkeypox-disease

英文なので、部分的に日本語に訳しながら紹介します。サル痘は新興感染症ではなく、かなり以前から知られている病気です。ただし、あまり知名度は高くなかったのですが、今回のアウトブレークで一気に注目されるようになりました。

ニュースリリースによると、『サル痘拡大期には人種差別的でスティグマを生み出すような発言がオンラインなどで観察され、WHOに報告がありました』ということで、8月に出された「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言と合わせ名称変更の検討が進められました。『さまざまな専門家、国、一般市民からの意見を収集する協議』を実施したということで、報道によると名称の公募も行われています。

その結果、次のような結論に達したということです。

  • 疾患の同義語として英語のmpox(M痘)を採用する。
  • 1年間の移行期間を経て、サル痘に代わりM痘が優先用語となる。この措置は世界的なアウトブレークの最中に名前が変わることで起きる混乱の軽減に役立つ。また国際疾病分類(ICD)の更新プロセスを完了し、WHOの出版物の手直しの時間も得られる。
  • 「サル痘」という用語は、過去の情報を調べられるようICDで検索可能用語として残る。

 

ニュースリリースには、背景情報が「編集者への注」として付けられています。これも公開情報なので、一部を日本語仮訳で紹介しておきましょう。

『ヒトのサル痘は1958年に飼育下のサルから病原ウイルスが発見されたことにより、1970年に名前が付けられている。WHOが2015年に病気命名におけるベストプラクティス(模範的方法)を発表する以前のことだった。そのベストプラクティスによると、新しい病名を付ける時には、貿易、旅行、観光、または動物福祉に不必要に悪影響を与えることを最小限に抑えること、文化的、社会的、国家的、地域的、専門的または民族的グループに不快感を与えないようにすることを考慮すべきである』

『サル痘』を『M痘』に変えても、「あっ、モンキーのMだね」ということで、どうしてもサルを思い浮かべてしまいそうですね。でも、そこで止まらずに、「実は名称変更の背景にはこういう理由があるようだよ」という話になれば、感染症対策の中で誤解や偏見の解消がいかに大切かという話題に発展するかもしれません。蛇足ながら付け加えれば、実は自然宿主はサルではなく、げっ歯類と考えられているそうです。

過去にさかのぼって、サル痘をM痘に変えようとすると、膨大な作業になりますが、『サル痘という用語は、過去の情報を調べられるようICDで検索可能用語として残る」ということなので、ネット情報を活用する観点からは、少しほっとします。せっかくの機会です。感染症対策への理解が進むように、一年間の移行期間をうまく利用したいですね。

 

2 『ヤローページ』2022新宿版が登場

特定非営利活動法人aktaが11月26日、冊子『ヤローページ2022新宿版』(新宿二丁目のスポットガイド、HIV検査情報&MAP)を発行しました。

『ヤローページは、ゲイのライフ(人生)には、バーやショップ、ハッテン場などで楽しむこととあわせて、HIV性感染症など性の健康についても一緒に知って欲しい!という願いを込めてつくられたパンフレット。新宿二丁目の街を「ヤローページ」が盛り上げるきっかけになって欲しい!という想いで、3年ぶりに復刊を行いました』

(akta公式サイトから)

コミュニティセンターakta(新宿区新宿2-15-13、第二中江ビル301)や新宿二丁目を中心にしたバーなどの店舗で配布しています。

 

3 PrEP利用の手引きを発行

日本エイズ学会のPrEP導入準備委員会が『日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き』【第1版】および『日本におけるHIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用者ガイド』【第1版】を発行しました。前者は医療従事者・支援者向け、後者は利用者向けの冊子です。どちらも厚労科研「HIV感染症の曝露前及び曝露後の予防投薬の提供体制の整備に資する研究」班による研究の成果に基づくもので、冊子のPDF版が日本エイズ学会の公式サイトでダウンロードできます。

https://jaids.jp/

『利用者ガイド』の「はじめに」では、PrEPについて以下のように説明しています。

   ◇

PrEPとは、曝露前予防(Pre-Exposure Prophylaxis)の略です。

PrEPは、HIV感染の可能性のあるセックスの前と後に、専用の薬を飲むことで、感染リスクを大きく減らす方法のことです。薬そのものを指してPrEPと言うこともあります(「PrEPを服用する」など)。

PrEPは、正しく利用しないとHIV感染を予防する効果が下がるだけでなく、副作用が生じたりするおそれがあります。

このガイドブックには、PrEPをおこなう上で知っておくべき情報について書いてあります。PrEPを始める前に、必ずこのガイドブックに目を通してください。

 

4 HIVプリベンション2025ロードマップ

世界HIV予防連合は2017年、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と国連人口基金UNFPA)が、エイズの流行に大きく影響を受けている国の政府やNGOに呼びかけて創設。90-90-90ターゲットを掲げ、2020年を達成年とする予防目標のロードマップを公表していました。

しかし、新規HIV感染の予防には期待通りの成果が上がらず、目標には到達せずに終わっています。

その反省の上に立って公表されたのが、2025年を目標年とする新たなロードマップで、5つの予防の柱に焦点を当て、10項目の行動計画を示しています。エイズ予防情報ネット(API-Net)にその日本語仮訳が掲載されています。

https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet063.html

 

『Dangerous Inequalities(不平等の危険)』から 冒頭部分を日本語仮訳 エイズと社会ウェブ版636

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2022年の世界エイズデー報告書『Dangerous Inequalities(不平等の危険)』を公表したのは11月29日でした。そのプレスリリースは当ブログで翌30日、日本語仮訳を紹介しました。

 さらに12月16日には、API-Net(エイズ予防情報ネット)に《冒頭のはじめにと序章部分計11ページ》だけではありますが、公益財団法人エイズ予防財団による日本語仮訳が掲載されています。
 全体で約80ページもある報告書なので、訳者の能力的限界も考えると11ページ分だけでもけっこう大変です。何とか年内に間に合ってよかった・・・というわけで、暮れも押し迫ってしまいましたが、紹介しておきましょう。こちらでご覧ください。
 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet066.html
《7月の年次報告書グローバルエイズアップデート2022『IN DANGER(危機的状況)』で強調した危機認識を踏まえ「じゃあ、その危機をもたらしているものは何か」に答える内容です。具体的には『ジェンダーの不平等』『キーポピュレーションが直面している不平等』『小児と成人の間の不平等』の3つの『危険な不平等』に焦点を当て、エイズ対策に及ぼしてきた影響を明らかにするとともに克服への道筋を示しています》

   

 

24年ぶりに300件を下回るか 東京都の新規HIV感染者・エイズ患者年間報告数

 メルマガ東京都エイズ通信の第185号が12月28日、配信されました。報告数は1月1日から12月25日までのデータです。

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令和4年1月1日から令和4年12月25日までの感染者報告数(東京都)  

  ※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者         229件    (294件)

AIDS患者          52件    ( 63件)

 合計                281件     (357件)

HIV感染者数及びAIDS患者共に令和3年よりも減少しています。

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 HIV感染者報告数とエイズ患者報告数の合計は281件ですね。1カ月平均で24件弱。26日から31日まで、6日分残っていますが、300件の大台は下回りそうです。

 年間の新規報告数が300件以下になるとすると、1998年以来です。

 この1年、同じことばかり書いてきましたが、報告の数字は現在の感染動向をそのまま反映しているとは限りません。2020年以降はコロナの流行の影響で保健所などのHIV検査の件数も大きく減っています。報告は減っても、実際の感染は実は増加に転じているといったことも考えられないわけではありません。

 ただし、コロナの流行に影響を受けてきた2020年以降の3年間でも、報告の減少傾向が続いています。推計の専門家ではないので、漠然とした感想に過ぎませんが、コロナ時代においても、実際のHIV感染は少しずつ減っているのかもしれません。そうだとすれば、この3年間の厳しい状況下においても、HIV感染の予防対策やHIV陽性者への支援を途切れることのないよう支え続けてきたNPOの関係者や行政の担当者の努力には敬意を表したいと思います。

 来年はどんな年になるのか。個人的には体力的にも急坂を駆け下りている感覚ですが、きっと悪いことばかりじゃないさ。せめてその程度の希望は失わずにやっていきましょう。

 

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『まなじりを決し、ではなく』 エイズと社会ウェブ版635

 2022年も残すところ、もう1週間ですね。清水寺森清範貫主が大書した今年の漢字は「戦」でした。ロシアのウクライナ侵攻という戦争は年を越しそうです。全国から募集した「今年の漢字」のうち、最も多かったのが、この「戦」で、2番目は「安」だったとか。

 日本にいても、戦々恐々の日々をひしひしと感じつつ、だからこそ逆に安心を求めたくなる。人ごとのようで恐縮ですが、現代性教育研究ジャーナルの連載コラム One side / No sideの第68回『まなじりを決し、ではなく』もそんな気分を反映して・・・。
 こちらでご覧ください。8ページに掲載されています。

 

 https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202212.pdf

 『コロナの流⾏は続き、おずおずと社会生活を再開する試みが続けられてきたものの、⼈と⼈との距離はなかなか元通りにはならない。重症化リスクが高いとされている高齢層としては、理髪店に通う間隔も2カ月に1回、3カ月に1回と、だんだん⻑くなっていった』
 今年は師走の寒さが一段と厳しく、各地で大雪との戦いも続いています。のんびり眉毛を揃えてもらっている場合か。そんなお叱りも受けそうですね。でも、お叱りを承知で言えば、こんな時こそ年寄りにはルーティーンが必要だとも思う。年内にもう一回、散髪に行かなくては。

 

『コミュニティ主導の対策を支援しなければ、パンデミックは克服できない』 エイズと社会ウェブ版634

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の第51回プログラム調整理事会(PCB)が12月13日から16日まで、タイのチェンマイで開かれました。その3日目にあたる15日には、UNAIDSマルチステークホルダー特別委員会が2年間の協議を経てまとめた報告書『COMMUNITY-LED AIDS RESPONSES(コミュニティ主導のエイズ対応)』が公表されています。UNAIDSの同日付プレスリリースによると、報告書では《「コミュニティ主導のパンデミック対応」について国際的な定義が初めて示された》ということです。エイズだけでなく「COVID-19、M痘、エボラの流行拡大を抑え、次のパンデミックに備えるためにも、政府とコミュニティの協力が必要です」とUNAIDSの幹部はコメントしています。

  

     

 気になりますね。報告書のPDF版を見ると、表紙の次のページに Community-led responses(コミュニティ主導の対応)の定義が次のように書かれています。

 https://www.unaids.org/en/resources/documents/2022/MTT-community-led-responses

 日本語にすると「何、言ってんだか」という感じになってしまいますが、これは訳者の力不足のせいでしょうね。一応、英文と併記しておきます。

Actions and strategies that seek to improve the health and human rights of their constituencies, that are specifically informed and implemented by and for communities themselves and the organizations, groups and networks that represent them.

(コミュニティを構成する人たちの健康と人権状況の改善に向けた行動と戦略。コミュニティ自身、およびコミュニティを代表する組織、グループ、ネットワークがコミュニティを構成する人たちのために具体的に情報を提供し、対策の実施にあたる)

 以下、プレスリリースの日本語仮訳も参考までに。

 

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コミュニティ主導の対策を支援しなければ、パンデミックは克服できない 政府・NGO・国連が指摘 UNAIDSプレスリリース

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2022/december/20221215_communities-supported-to-lead

 

タイ・チェンマイ 2022.12.15 エイズパンデミック対策にはコミュニティ主導の対応が重要であり、重点的に資金を投入しなければならない。エイズ対策の国際会合がタイ・チェンマイで開かれ、政府・市民社会組織・国連機関の代表からは、他のパンデミック対策や今後予想されるパンデミックへの準備においてもコミュニティ主導のアプローチが鍵にぎることになるとの指摘が相次いだ。また、会合では「コミュニティ主導のパンデミック対応」について国際的な定義が初めて示された。世界の各地域にまたがる11カ国政府と11の市民社会組織代表による2年間の協議を経てまとめられた定義で、世界保健機関(WHO)と国連開発計画(UNDP)が共同で招集した国連合同エイズ計画(UNAIDS)マルチステークホルダー特別委員会が報告書を作成し、UNAIDSの第51回プログラム調整委員会でその成果を報告した。

新たな定義と勧告に基づき、ドイツのカール・ラウターバッハ保健相とUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は本日、ランセット誌への投稿で、包括的な「コミュニティ・パンデミック対策基盤」の整備を呼びかけている。この対策基盤は、パンデミックの予防、および発生時の準備と対応に関する新たな計画策定や国際的な取り決め、資金調達などを含むものだ。著者らはその記事の中で、効果的なパンデミックの予防、準備、対応には、政府の動きと相乗的に機能し得る強力なコミュニティの対策基盤が必要なこと、ただし、現状ではそうした要素は無視されていることを指摘している。また、エイズ、M痘、COVID-19、およびエボラから得られたエビデンスを示しつつ、コミュニティ主導の組織がいかに対策の信頼性を高め、コミュニケーションのチャネルを確保し、社会的に疎外されがちな人たちに手を差し伸べることを通して、政府の役割を補完し、公平性を担保してきたのかを説明している。

新たな国際定義と勧告は、エイズや他のパンデミック対策の計画立案者や資金提供者にとって、コミュニティ対応の効果を高めるには何が必要なのかを確認する助けになる。コミュニティ主導の組織は基本的に「公式・非公式に関わりなく、...管理者、指導者、スタッフ、スポークスパーソン、メンバー、ボランティアの大多数の経験や視点、意見を反映し、代表し、構成員に対する説明責任の透明なメカニズムを有するグループやネットワーク」と定義されている。「すべてのコミュニティベースの組織がコミュニティ主導であるとは限らない」という点に注意しておくことも重要である。

「研究所や病院などは対策基盤として理解されやすく、重要でもありますが、パンデミックに対し効果的に対応するには同時に、コミュニティ・インフラストラクチャ―も不可欠です。そこには、アウトリーチを行う人たち、排除されたコミュニティが信頼して話をできる代弁者、独立した説明責任のメカニズム、および意思決定への参加といったものが含まれているのです」とUNAIDS政策アドボカシー・知識担当事務局次長代理、マシュー・カバナ博士は説明する。「政府、市民社会、国際機関の代表からなる特別委員会は、コミュニティ主導に向けた能力強化とモニタリングを支援する重要なツールを新たに提供しました。コミュニティがインフラストラクチャとして有効に機能するよう、能力強化とモニタリングと資金確保を行わなければ、エイズ終結も他のパンデミックを止めることもできません」

チェンマイで開かれている国連合同エイズ計画(UNAIDS)のプログラム調整理事会では、コミュニティ主導の対応を促すための法律や政策の策定に向け、加盟国および非政府の参加者による対話も行われた。マルチステークホルダー特別委員会の勧告には、コミュニティ主導の組織に対する資金提供システムの改善と開発;コミュニティ主導の能力に関するモニタリング;コミュニティグループが作成したデータの活用と対策への統合管理などが含まれている。資金の確保に関しては、国内および国際的な資金調達メカニズムにおける法的、能力的な規制、および適格性の問題に直面することがしばしばある。

エイズパンデミック終結について、理事会メンバーからは、計画、予算、実施、モニタリング、評価のすべての面でコミュニティのHIV対応を国のエイズ戦略の一環として位置づけなければならないとの指摘がなされた。

今回の原則はエイズだけに適用されるものではない。「COVID-19、M痘、エボラの流行拡大を抑え、次のパンデミックに備えるためにも、政府とコミュニティの協力が必要です。コミュニティ主導の対応を定義および評価する新たな枠組みの合意により、エイズ終結を妨げている不平等に対し、より効果的に立ち向かうことができるようになります」とカバナ博士は述べている。

タイでは、会合の参加者自身が見届けたように、キーポピュレーション主導の保健サービスがHIV感染の高いリスクに直面する人たちに届き、アジア・太平洋地域で最も公平なHIV 対策が実現している。南アフリカでは、HIV陽性者組織『Ritshidze』のメンバーとコミュニティリーダーが診療所やコミュニティを訪れ、COVID-19、HIV結核のサービスに対する評価を行うとともに、長い待ち時間や個人情報保護の不備が人びとを医療サービスから遠ざけていることに管理者が責任を持って対応するよう求めている。ウクライナHIV陽性者ネットワークである『100% Life』は、戦争状態の中でピアネットワークを活用して避難民と連絡を取り、医薬品、食料、緊急支援の提供を続けている。

「国際的なパンデミック協定や資金提供の取り決めには、コミュニティ主導の能力強化に向けた具体的な目標を含めなければなりません」とカバナ博士は言う。「パンデミック対策が効果を上げるには、一方通行のコミュニケーションを改め、コミュニティがあらゆるレベルで意思決定に参加できるようにする必要があります。コミュニティのリーダーシップは、単にあったらいいねというものではなく、パンデミック終結に不可欠なのです」

 

ドイツ保健大臣とUNAIDS事務局長によるランセットの記事はこちらから。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)02575-2/fulltext

UNAIDSプログラム調整理事会で報告されたレポートはこちらから。

https://www.unaids.org/en/resources/documents/2022/MTT-community-led-responses

コミュニティ主導のパンデミック対応に関する資料はこちらから。

https://www.unaids.org/en/topic/Community-pandemic-response

 

 

PRESS RELEASE

Pandemics can only be defeated if communities are supported to lead, say governments, NGOs and UN

CHIANG MAI, THAILAND, 15 December 2022—Community-led responses are a critical part of the AIDS pandemic response, and must be prioritised in resourcing. The approach, set out by governments, civil society organisations and United Nations agencies at an international meeting on AIDS in Chiang Mai, Thailand, will also be key for tackling other pandemics and for preparing for the pandemics to come, delegates said. The meeting saw the first international definition of a community-led response to a pandemic, published after a two-year consultative process that brought together 11 governments, representing each region of the world, and 11 civil society representatives. This UNAIDS multi-stakeholder task team on community-led responses was co-convened by the World Health Organization and United Nations Development Programme, and presented outcomes to the 51st Programme Coordinating Board meeting of the UN Joint Programme on HIV and AIDS.

Using the new definitions and recommendations, German Federal Health Minister Prof. Karl Lauterbach and the UNAIDS Executive Director Winnie Byanyima published an article in The Lancet today calling for inclusion of comprehensive “community pandemic infrastructure” in pandemic prevention, preparedness and response in new planning, international agreements, and financing. In it, the leaders show that strong community infrastructure,  working synergistically with government, is a necessary but neglected element of effective pandemic prevention, preparedness, and response. Using evidence from AIDS, mpox, COVID-19, and Ebola, the authors describe how community-led organisations bring trust, communications channels, and reach to marginalised groups that complement government roles and improve equity.

The new international definitions and recommendations can help planners and funders for AIDS and other pandemics identify the elements of an effective community response. Community-led organizations, defined as "groups and networks, whether formally or informally organized ... for which the majority of governance, leadership, staff, spokespeople, membership and volunteers, reflect and represent the experiences, perspectives, and voices of their constituencies and who have transparent mechanisms of accountability to their constituencies,” form a backbone of that response. Crucially, it is noted that "not all community-based organizations are community-led.”

"While what is most often understood as infrastructure – like labs and hospitals – are important, also essential to effective pandemic response is the community infrastructure which includes people to do outreach, trusted voices who can speak to excluded communities, independent accountability mechanisms, and participation in decision-making,” explained Dr Matthew Kavanagh, UNAIDS Deputy Executive a.i for Policy, Advocacy and Knowledge. “This task team of governments, civil society, and international organizations has given important new tools to support the building and monitoring of community-led capacity. We will only be able to end AIDS and stop other pandemics by ensuring that this community infrastructure is intentionally enabled, strengthened, monitored, and resourced.”

The United Nations Joint Programme on HIV/ AIDS (UNAIDS) Board meeting in Chiang Mai included dialogue between member states and non-state participants on how to develop laws and policies to facilitate community-led response. The recommendations of the multistakeholder task team include developing better systems for financing community-led organisations, which often face legal, capacity, and eligibility barriers to national and international financing mechanisms; monitoring community-led capacity; and integrating data generated by community groups into response management.

To end the AIDS pandemic, board members pointed out, community responses to HIV must be integrated into all levels of countries’ AIDS strategies including planning, budgeting, implementation, monitoring and evaluation.

The principles developed apply not only to AIDS. "Stopping COVID-19, mpox, and Ebola, and preparing for the next pandemic, all require that partnership of government and community together. The newly agreed framework for defining and measuring community-led responses make us better equipped to address the inequalities that are holding back progress in ending AIDS,” said Dr Kavanagh.

In Thailand, as delegates saw for themselves first hand, key-population-led health services have reached people at increased risk of HIV, achieving among the most equitable HIV responses in the region. In South Africa, community leaders with Ritshidze, which represents people living with HIV,  visit clinics and communities to assess COVID-19, HIV, and tuberculosis services and hold administrators accountable for addressing issues such as long waiting times or confidentiality gaps that keep some people away from health services. Amid war, Ukraine’s 100% Life, a network of people living with HIV, has used peer networks to communicate with displaced people, delivering medicines, food, and emergency assistance.

"International pandemic agreements and funding should include specific goals for community-led capacity," said Dr Kavanagh. "To be effective, pandemic responses need to move beyond one-way communications to bring communities into decision making at all levels. Community leadership is not mere nice-to-have. It is essential for ending pandemics."

 

The Lancet article marking the occasion by the German Health Minister and the UNAIDS Executive Director is here.

The report presented at the UNAIDS Programme Coordinating Board meeting is here.

Resources on Community Led Pandemic Response are here.