2023年速報値は960件 新規HIV感染者・エイズ患者報告数 エイズと社会ウェブ版681

 第162 回エイズ動向委員会が26日、開催され、昨年(2023年)の年間新規HIV感染者・エイズ患者報告の速報値がまとまりました。

 エイズ予防情報ネット(API-Net)の日本の状況:エイズ動向委員会のページで2024年四半期報告をご覧ください。委員長コメントのPDF版を開くと、第3・4四半期報告の後ろに年間速報値が出てきます。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/index.html

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【概要】

 新規HIV感染者報告数は669件(過去20年で19番目に多い報告数)

 新規エイズ患者報告数は291件過去20年で19番目に多い報告数)

 HIV感染者とエイズ患者を合わせた新規報告数は960件(過去20年間で19 番目に多い報告数)

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 速報値なので暫定的な報告数です。確定値は例年、夏の終わりに発表され、速報値よりやや多くなります。2022年はコロナ流行の影響もあって、報告数が大きく減少し、患者・感染者報告の合計が1000件の大台を割って確定値で884件(速報値ベースでは870件)でした。

 2023年速報値は前年に比べると、増加に転じましたが、それでも1000件を下回っています。あくまで報告数なので、リアルタイムの感染動向は把握できません。保健所などでの検査件数が元に戻ってきたことで、報告数が増加に転じたのか、実際の感染も少し増えているのか、即断しづらいですね。確定値を待って検討しますか。

 以下、委員長コメントの《まとめ》をそのまま紹介しておきます。

 

《まとめ》

1.令和5 年の新規HIV感染者報告数については、令和4 年より増加しており6 年連続での減少から、増加に転じた。要因としては、新型コロナウイルス感染症の流行以降減少していた保健所等での検査件数が回復したことが影響している可能性がある点に留意し、今後の状況を注視していく必要がある。

2.令和5 年の新規AIDS患者報告数の増加は、新型コロナウイルス感染症の流行以降、保健所等での検査件数が減少していたことが影響している可能性が否定できない点に留意

し、今後の状況を注視していく必要がある。

3.新規HIV感染者の感染経路は、性的接触によるものが約84%(うち約84%が同性

間)、新規AIDS患者では約69%(うち約78%が同性間)となっている。また、新規

HIV感染者・新規AIDS患者ともに、男性が全体の9 割を超えている。

4.献血時のHIV抗体・核酸増幅検査における10 万件当たりの陽性件数は令和4 年と比べて減少した。しかし、依然として陽性件数があることを踏まえると、HIV感染リスクがある方は、保健所等での無料・匿名検査や医療機関による検査を受けていただきたい。

5.新規報告数全体に占めるAIDS患者報告数の割合は、依然として約3 割のまま推移している。AIDS発症防止のためには、HIV感染後の早期発見が重要である。HIV感染リスクがある方は、早期発見のため、積極的に保健所等での無料・匿名検査や医療機関

よる検査を受けていただきたい。また、保健所及び自治体におかれては、エイズ予防指針

を踏まえ、利便性に配慮したHIV検査相談体制を推進していただきたい。

6.HIV感染症は予防可能な感染症であり、適切な予防策をとることが重要である。また、AIDS発症予防のためには、早期発見と早期治療が重要である。感染予防と早期発見は、社会における感染の拡大防止にもつながることから、首都圏を始め都市部、また都市部以外の地域においても、梅毒などの性感染症を含め、保健所等での無料・匿名の検査・相談や医療機関による検査を積極的にご利用いただきたい。