ちょっと前の話になりますが、3月25日に開かれた国連合同エイズ計画(UNAIDS)のプログラム調整理事会(PCB)で、世界エイズ戦略2021~2026『不平等に終止符を、そしてエイズ終結を』が採択されています。今後5年間の世界のHIV/エイズ対策の指針になる文書です。
100ページもあるので、とても全部は訳せませんが、せめて序文と要旨(executive summary)だけでも・・・ということで、10ページちょっとの日本語仮訳PDF版を作成しました。API-Net(エイズ予防情報ネット)でご覧ください。
《世界のエイズ対策は「公衆衛生上の脅威としてのエイズ終結」を2030年までに達成することが大目標なのですが、現状は残念ながらその達成軌道を外れています。したがって新戦略は、エイズ流行の最大の拡大要因である「不平等」の解消に焦点を当て、世界をエイズ終結の軌道に戻すことを目指しています。また、HIVとCOVID-19の2つのパンデミック対策の相乗効果を高めることの重要性も強調しています》
UNAIDSは昨年11月26日、世界エイズデーに向けて発表した報告書『人びとを中心にすえ、パンデミックに打ち勝つ(Prevailing against pandemics by putting people at the centre)』の中ですでに、2021年から2025年までの5年間の中間目標であるエイズターゲット2025を明らかにしています。
2020年を達成年としていた90-90-90ターゲットにかわる新たな目標ということですが、ここでまたさらに新しいエイズ戦略が出てくると、2025年までのターゲットがあって、1年違いの2026年までの戦略があって・・・。もう、何が何だか、おじさんは混乱して訳が分からなくなっちゃうぞ。いったい、どうなっているの? と例によって心の中で愚痴を言いながら訳していると、(注5)に次のような説明がありました(日本語版は3ページをご覧ください)。
『世界エイズ戦略は2021年から2026年までの期間をカバーしているが、2025年末までに達成すべき目標とコミットメントが中心となる。2026年にはその結果を検証し、2030年までの次期戦略の開発を行う必要がある』
早い話が、戦略の中身は基本的にエイズターゲット2025です。なんだ、訳して損したという気がしないこともありませんが、戦略を読むと、どういう考え方でターゲットがつくられるに至ったのかということが、だんだん分かってきます。それなりの役割分担はできている。無駄ではなかった。ま、そう受け止めておきましょうしょう。
ここで改めて整理しておくと、エイズターゲット2025は、2025年までに達成すべきターゲットで、6月8-10日に開催される国連総会ハイレベル会合で政治宣言が採択されれば、2030年のエイズ終結に向けて、国連全加盟国(ということはつまり国際社会が一致して)取り組むべき5年間の中間目標となります。
UNAIDSの世界エイズ戦略は、そのエイズターゲット2025の実現をはかることが目的であり、同時に2025年までの成果を検証し、次の(2030年までの)新ターゲットにつなげる役割も担っているので1年間のずれを用意しておかなければならないということのようですね。
6月に政治宣言が採択されれば、おそらく夏の間にその内容を簡潔に説明した冊子やグラフィックがUNAIDSから公表されるのではないかと思います。