キャンペーンフィルム『エイズ終結に向けた世界の指導者へのメッセージ』 TOP-HAT News第155号(2021年7月)  エイズと社会ウェブ版578

 

 6月のエイズに関する国連総会ハイレベル会合は、2025年エイズターゲットを盛り込んだ政治宣言を採択しました。今後5年間の世界のエイズ対策の方向性を示す重要な宣言なのですが、世界はいま新型コロナウイルス感染症COVID-19パンデミックの対応に追われ、あまりHIV/エイズパンデミックには関心が集まりません。日本ももちろん(という言い方は適切ではないかもしれませんが)、ほぼ無関心です。

 これではまずい・・・ということで、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が、世界の著名人の参加を得て、キャンペーンフィルム『エイズ終結に向けた世界の指導者へのメッセージ』を作成しました。

 TOP-HAT News第155号(2021年7月)の巻頭は、ハイレベル会合の政治宣言とキャンペーンフィルムの紹介です。

 《エイズ流行終結に本気で取り組むよう世界の指導者に求めるキャンペーンで、フィルムにはロックスターのエルトン・ジョン卿や女優のシャーリーズ・セロンさん、マリのコラ奏者トゥマニ・ジャバテさん、インドネシアの女優アティカ・ハシホランさん、サッカーの元フランス代表でFIFA 財団最高経営責任者ユーリ・ジョルカエフさんら趣旨に賛同する多数の著名人が参加し、メッセージを発信しています》

 残念ながらフィルムは日本語版がないので、7月1日に発表された際のUNAIDSのプレスリリースを日本語に訳しました。API-Net(エイズ予防情報ネット)でフィルムと合わせてご覧いただけます。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet052.html

 

 

 

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        第155号(2021年7月)

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 『エイズ終結に向けた世界の指導者へのメッセージ』

 

2 『世界の対策 それぞれの活動』 お詫びと訂正

 

3  多言語で情報提供 H.POT(HIV multilingual info Japan)

 

4  研究班冊子『HIVや梅毒をはじめとする性感染症のすべてが簡単にわかる本』

 

5 COVID-19の流行による影響は? HIV予防連合が報告書

 

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1 はじめに 『エイズ終結に向けた世界の指導者へのメッセージ』

 国連総会のエイズに関するハイレベル会合が2021年6月8-10日に開かれ、初日の8日に国連加盟国の圧倒的多数による賛成で、新たな政治宣言が採択されました。

この会合は2001年6月の国連エイズ特別総会で採択されたコミットメント宣言以降の成果を検証し、同時に世界のHIV/エイズ対策の新たな方向性を打ち出すために5年に1度、開かれてきました。その4回目となった今回は、エイズ流行の40周年であると同時に、コミットメント宣言の採択からも20周年の節目であり、同時に新型コロナウイルス感染症COVID-19という新たな感染症パンデミックの真最中という時期に開催されています。

ニューヨークの国連本部では、世界中から多数の参加者が集まるのを避けるため、公式日程の全体会議、分科会とも各国代表団の出席人数を各1名に制限し、ネットによるバーチャル参加を大きく取り入れたハイブリッド開催となりました。

他の国際会議でも当分は、この方式が続くことになりそうです。

ハイレベル会合では初日(8日)の全体会議で新たな政治宣言に対する採決が行われ、加盟国の圧倒的多数の賛成で、2021年政治宣言が採択されました。

国連エイズ計画(UNAIDS)は採択当日、いち早くプレスリリースを発表し、『エイズ終結に向け、コミュニティや HIV に影響を受けている人たちが直面するすべての不平等を解消する新たな誓約を世界が採択』という見出しを付けています。エイズ予防情報ネット(API-Net)に日本語仮訳が掲載されているので、詳しくはそちらをご覧ください。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet050.html

 これまでにも何度かお伝えしてきたことですが、世界のHIV/エイズ対策の「現在」を把握するため、簡単に2021年政治宣言の採択に至る背景を説明しておきましょう。

UNAIDSは、今後5年間の新たなHIV/エイズ対策のターゲット(2025年エイズターゲット)を昨年11月に公表し、今年3月にはその実現をはかるための世界エイズ戦略2021-2026を理事会で採択しています。

6月のハイレベル会合で採択された政治宣言では、2030年に(公衆衛生上の脅威としての)エイズ終結を果たすという持続可能な開発目標(SDGs)の約束を再確認するとともに、その約束の実現に向けた中間目標として2025年ターゲットと世界エイズ戦略2021-2026が全面的に承認され、日本も含む国際社会の共通目標となりました。

 ・・・とはいえ、政治宣言やそのプレスリリースの文章は、正確を期するために表現がかえって回りくどくなり、すんなり入ってこない印象もあります。ましてやCOVID-19パンデミックの最中です。ただでさえ「エイズはもういいだろう」という気分が広がりやすい状況の中で、宣言の採択には賛成したものの後は知らん顔といった国も出てきかねません。

UNAIDSもそのあたりが気になっていたのでしょうか。7月1日には、新たなキャンペーンフィルム(動画)『エイズ終結に向けた世界の指導者へのメッセージ』を発表しています。エイズ流行終結に本気で取り組むよう世界の指導者に求めるキャンペーンで、フィルムにはロックスターのエルトン・ジョン卿や女優のシャーリーズ・セロンさん、マリのコラ奏者トゥマニ・ジャバテさん、インドネシアの女優アティカ・ハシホランさん、サッカーの元フランス代表でFIFA 財団最高経営責任者ユーリ・ジョルカエフさんら趣旨に賛同する多数の著名人が参加し、メッセージを発信しています。4分余りのフィルムはUNAIDSのキャンペーン特設サイトでご覧ください。

https://endinequalitiesendaids.unaids.org/

残念ながら英語が中心で日本語字幕などはついていません。ただし、同時に発表されたプレスリリースには、参加した著名人のうち14人のメッセ―ジが(部分的にですが)、引用集として紹介されています。

そのプレスリリースの日本語仮訳を作成しました。API-NetでPDF版をダウンロードできます。

https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet052.html

そちらも参考にしながらフィルムを観ていただくと、どんなメッセージなのか、ある程度の感じはつかめるのではないかと思います。

 

 

2  『世界の対策 それぞれの活動』 お詫びと訂正

 東京都エイズ通信第166号(6月28日発行)のTOP-HAT News《1 はじめに 『世界のコミュニティ それぞれの活動』》の記事中、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告書『GLOBAL COMMITMENTS, LOCAL ACTION(世界のコミュニティ それぞれの活動)』について、UNAIDSの2021年版年次報告書として紹介しましたが、この報告書は年次報告ではなく、国連総会ハイレベル会合に向けた報告書でした。お詫びして訂正します。

 また、この報告書については、日本語仮訳版を作成し、タイトルを「世界の対策 それぞれの活動」(2021年ハイレベル会合に向けたUNAIDS報告書)と改めてAPI-Netに掲載しました。こちらでご覧ください。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet051.html

 

 

3  H.POT(HIV multilingual info Japan)

 日本語を母語としないゲイ・バイセクシュアル男性のために、HIV/AIDSの基本情報をそれぞれの言語で分かりやすくまとめたウェブサイトです。2018年11月に開設されました。

 https://hiv-map.net/h.pot/

 中国語(簡体字繁体字)、韓国・朝鮮語タイ語、フィリピン語(タガログ語)、ベトナム語ネパール語スペイン語ポルトガル語、英語、日本語の11言語に対応しています。日本語サイトをみると、平易で分かりやすい表現が使われており、漢字にはすべてルビがついていました。

 

 

4 『HIVや梅毒をはじめとする性感染症のすべてが簡単にわかる本』

 厚労省HIV母子感染予防研究班が作成した34ページの冊子です。研究班では、若い人たち向けて、クイズ形式のリーフレット『クイズでわかる性と感染症の新ジョーシキ』も発行しています。

 どちらも、研究班の公式サイト、またはAPI-Net(エイズ予防情報ネット)のマニュアル・ガイドラインのページでPDF版をダウンロードできます。

 HIV母子感染予防研究班

  http://hivboshi.org/manual/index.html

 API-Net(エイズ予防情報ネット)

  https://api-net.jfap.or.jp/manual/index.html

 

 

5  COVID-19の流行による影響は? 世界HIV予防連合(GHPC)が報告書

 新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックによるHIV感染予防対策への影響について、世界HIV予防連合が報告書『新たなパンデミック期におけるHIV感染予防』をまとめました。

 HIV予防連合は2017年10月、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と国連人口基金UNFPA)が中心になって結成しました。HIV予防関連の市民社会組織や国際組織などが参加し、HIVの流行によって、とりわけ深刻な影響を受けている28カ国に焦点を当てて対策に取り組んでいます。

UNAIDSの公式サイトには、報告書の概要を紹介するフィーチャーストーリー(特集記事)が掲載されており、COVID-19の流行によって予防対策の現場は極めて大きな混乱を経験してきたものの、サービス提供の工夫と改革により影響は最小限に抑えることができるとしています。フィーチャーストーリーの日本語仮訳をエイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログに掲載しました。

https://asajp.at.webry.info/202107/article_1.html