2020年は新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行が世界各地、および国内で拡大傾向を続ける中で幕を閉じようとしています・・・ということは、2021年もCOVID-19の流行継続を覚悟して迎えなければならないということですね。
TOP-HAT Newsは、その2020年の最終号(第148号)巻頭で、国立国際医療研究センター(NCGM、東京都新宿区戸山1-21-1)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)が覚書を交わしたことを取り上げました。11月26日の調印式は時節柄、オンライン開催です。
ジュネーブからはUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長のメッセージが寄せられました。
『世界が COVID-19 と闘う中で日本の強いリーダーシップとグローバルヘルスへの取り組みは高く評価されてきました。HIVとCOVID-19という2つのパンデミックに同時に対応するため、緊密に協力できることを期待しています』
個人的にも大いに期待したいし、微力ながらお役に立てることがあれば貢献したいとも思っています。ま、微力すぎて大したお役に立てそうもないことは残念ではありますが・・・。
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第148号(2020年12月)
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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 覚書がもたらすレガシーへの期待
2 「エイズの緊急事態は終わっていない」 国連事務総長がメッセージ
4 メモリアル・キルト・ジャパンが創設30周年
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1 はじめに 覚書がもたらすレガシーへの期待
わが国のHIV/エイズ診療と研究開発の拠点である国立国際医療研究センター(NCGM、東京都新宿区戸山1-21-1)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)が11月26日、SDGs(持続可能な開発目標)のターゲットの一つである2030年のエイズ終結に向けて、協力を強化する覚書に調印しました。
API-Net(エイズ予防情報ネット)には、同日付でUNAIDSが発表したプレス声明の日本語PDF版も掲載されています。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world/pdf/UNAIDS_Press_Statement.pdf
『日本国内で公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を終結に導くため、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と日本の国立国際医療研究センター(NCGM)は協力して取り組んでいます。この2つの組織が本日、東京オリンピック・パラリンピックの開催前および開催期間中のHIV および性感染症対策の強化をはかり、2030 年までにエイズを終わらせるためのファストトラック(高速対応)都市イニシアチブの促進を目指す覚書に署名しました』
UNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は声明の中で『世界が COVID-19 と闘う中で日本の強いリーダーシップとグローバルヘルスへの取り組みは高く評価されてきました。HIVとCOVID-19という2つのパンデミックに同時に対応するため、緊密に協力できることを期待しています』と述べ、新型コロナウイルス感染症COVID-19対策も含めた国際貢献に強い期待を表明しています。
また、国立国際医療研究センターは覚書の調印にあわせるかたちで、東京2020公認プログラムとして「Tokyo Sexual Health 2020」の多言語セクシャルヘルス情報発信サイトを11月26日に公開しました。
UNAIDSは2018年11月に聖路加国際大学、2019年5月にはプライドハウス東京との間で同様の覚書を交わし、連携協力の強化を図っています。
この時期には改めて指摘するまでもありませんが、感染症の流行はどこか遠い世界の出来事ではありません。COVID-19の流行で日本の社会もいやというほど、このことを経験中です。でも、HIV/エイズの流行では40年も前から伝え続けてきたことなのに、と思わないこともありません。UNAIDSと日本の様々なプレイヤーとの協力のかたちが、国際貢献の観点からはもちろん、国内の課題の解決にも大きな貢献を果たすことを期待したい。実現すればそれは、東京オリンピック・パラリンピックがもたらす大切なレガシーになるかもしれません。
2 「エイズの緊急事態は終わっていない」 国連事務総長がメッセージ
国連のアントニオ・グテーレス事務総長が12月1日、世界エイズデーに寄せるメッセージを発表しました。この中で事務総長は『エイズの緊急事態は終わっていません』と述べ、『今でも、毎年170万人がHIVに感染し、約69万人が命を失っています』と指摘しました。また、COVID-19のパンデミックにも触れ、『HIVへの対応は、COVID-19対策の大きな参考になります』と次のように語っています。
『エイズに終止符を打ち、COVID-19に打ち勝つためには、スティグマ(偏見)や差別をなくし、人々を中心に据え、私たちの対応を人権とジェンダーに配慮したアプローチに根づいたものとしなければならないことがわかっています』
グテーレス事務総長のメッセージは国連広報センターの公式サイトに日本語訳が掲載されています。
HIV/エイズ分野で世界最大の専門家組織である国際エイズ学会(IAS)の事務局長にビルギット・ポニアトフスキー氏が就任しました。IASの発表によると、11月11日に理事会でポニアトフスキー氏の任命を発表、彼女は直ちに就任したということです。
https://asajp.at.webry.info/202011/article_2.html
IASは今年7月、前任のケビン・オズボーン事務局長が私生活を優先したいとして退任を表明、事務局次長だったポニアトフスキー氏が事務局長代理を務めていました。
ポニアトフスキー事務局長はドイツのボン大学、ハイデルベルグ大学、日本の国際基督教大学(ICU)で日本研究、政治学、地理学を学び、東京の国連大学にも在籍していました。日本語も堪能で、HIV/エイズ研究者や世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の国内支援組織であるグローバルファンド日本委員会などにも数多くの知人がいます。
4 メモリアル・キルト・ジャパンが30周年
エイズで亡くなった人たちへの思いを込めたメモリアル・キルトを作成し、ディスプレイを通じてHIV/エイズ啓発活動を続けてきたメモリアル・キルト・ジャパン(MQJ)が創設30周年を迎え、12月18日(金)~20日(日)まで、京都市下京区のひとまち交流館京都で「あなたの名前を忘れない~メモリアル・キルト・ジャパン30周年記念展を開催しました。
亡くなった人たちの名前や愛用していた衣服、小物類などを1枚の布に縫い込んでいくエイズ・メモリアル・キルトの動きは1987年に米サンフランシスコのネームズ・プロジェクトで始まり、世界に広がっています。
日本では1990年11月にMQJが設立され、翌年春にネームズ・プロジェクトから招いたキルトのディスプレイを全国9カ所で開催するとともに、国内でもエイズで亡くなった人の家族や恋人、友人、そしてケアにあたった人たちの間でキルトを作る動きが広がっていき、現在も続いています。30周年記念展の案内には次のように書かれていました。
《あの時、命を賭してHIVと闘い、他界された多くの方たちのメモリアル・キルトを眼前にすると、いまの我らにじわじわと届いてくる言葉が聴こえてきます。新型コロナウイルスにすべての人たちが影響を受けている今こそこのキルトたちを見つめ耳を澄ます時だとも感じています》
MQJの活動は公式サイトでご覧ください。
Memorial Quilt Japan | HIV/AIDSをキルトと共に考えます