昨年同時期より減少に転じました 東京都エイズ通信第143号 

 メルマガ東京都エイズ通信の第143号(2019731日)が発行されました。

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● 平成3111日から令和元年725日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

 

HIV感染者     178件  (189件)

AIDS患者        38件   (36件)

合計           216件  (225件)

 

HIV感染者数は昨年度よりも少なく、AIDS患者数は昨年度よりも多く報告されている。

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 今年に入ってからの新規HIV感染者・エイズ患者報告数の合計は5月まで昨年同時期の報告数を上回っていましたが、618日時点では同数となり、7月に入ってついに今年の方が少なくなっています。あくまで報告ベースの数字なので、実際の感染の動向とは必ずしも一致しません。

 それでも報告の傾向はある程度、実際の感染の動向を反映しているかもしれません。今回の報告については、予防対策の成果と減少傾向への移行に期待をにじませつつ、油断を戒める意味も込めて、なおHIV/エイズの流行に対する社会的関心の低下が気になる横ばい状態というべきでしょうか。

 配信登録はこちらで。

 https://www.mag2.com/m/0001002629.html

 

梅雨明けてヒグラシ ウグイス 夏木立

 関東地方もやっと梅雨が明けましたね。寒いくらいの長雨から、一変して猛暑の日々が襲ってきました。

 梅雨明け後数日間は、最も熱中症にかかりやすい時期なので、お年寄りはとくに気を付けてください(・・・おっと、自分のことか)。

 さすがに自覚のない私も炎天下の外出は避け、夕風がそよぎ出すのを待って、大船まで果物の買い出しを敢行しました。

小玉すいか1個(シャリ甘)、メロン1個(赤肉)、桃2個(白鳳)、大石プラム(7個入って100円だったけれど半分は傷んでいた)・・・リュックでもさすがにこれだけ入ると重いねと思いつつ、年寄りの考えることはどうも、自分でもよく分かりません。なぜか、今こそ足腰を鍛えておこうと思い立ち、大船から由比ガ浜まで歩いて戻りました。ま、夕暮れの風が気持ちよかったことでもあるし・・・。

 

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 その帰路最大の難所、亀ケ谷坂切通しです。路上はすでに夜の暗さでしたが、これは両サイドの樹木がうっそうと茂り、トンネル状になっているためですね。午後6時過ぎ、空はまだ夕方です。頭上では今年初めてのヒグラシにウグイスも加わって豪華大合唱。西岸良平先生の鎌倉ものがたりに出てきそうな道でしたが、幸いにも今回は妖怪にも会わず、熱中症に倒れることもなく、無事、帰還いたしました。

  

日本 34 - 21 フィジー ラグビーW杯へ、ジャパン始動

 

ラグビー日本代表27日、岩手県釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで、世界ランク9位のフィジー代表と対戦しました。日本は世界ランク11位です。

日本 34 21 フィジー

やりましたね。東日本大震災からの復興の象徴でもあるスタジアムにはたくさんの人、インゴールの後ろの席にもびっしりと人が座っていました。期待度の大きさがうかがえます。私はNHKのテレビ中継による観戦でしたが、お茶の間の一ファンとしても、この盛り上がりは大切にしたい。

ジャパンはこの期待に応えるように(実際に応えようとしていたと思う)立ち上がりから積極的に攻め、前半を2914と大きくリード、後半はさすがにフィジーも猛攻を仕掛けてきましたが、失点は1トライ(ゴール)の7点に抑え、何とかしのぎ切りました。

なにせ相手は奔放に走りまくり、オフロードパスでつながらないはずのボールもなぜかつなぎまくって自陣からでも一気にトライをとってしまう危険なチームです。

どうしても試合の興味は派手な得点シーンに向かってしまいがちですが、アンストラクチャーの状態をとにもかくにも切り抜けてきたディフェンスの力も大いに評価したい。

ところにより、あらあ、あっさり抜かれちゃうね~という、いつか見た風景というか、デジャブ―感覚のようなシーンもありましたが、しっかりと試合を落ち着かせつつ、自分たちの強みを発揮していきました。

今年はラグビーW杯日本大会が920日に開幕します。もう2か月もありません。それなのに、日本代表は練習による強化にひたすら焦点を当て、強いチーム相手に試合をすることはありませんでした。

したがって、日本代表がどこまで力をつけてきたのか、あるいはつけていないのか・・・ファンにとってはよく分かりません。期待はしていたものの、本当の力は実際に試合でしのぎを削る場面をみなければ分からない部分もあるし、どうなのかなあ・・・。

フィジー戦の勝利はひとまず、その不安を取り除いてくれるものではありました。ワールドカップのような大舞台では、いい試合はやるんだけど、結局、負けちゃう。応援席からは、善戦はもういいよというつぶやきが聞こえてくるのが、旧来のパターンでした。それを払拭したのが前回W杯の南ア戦勝利であり、今回は何となくそのときよりも力をつけているかもしれない。そんな期待ももてそうです。

これまでは若手とみられることが多かった福岡、姫野、松島といった選手たちがチームの中心を担う存在になってきた印象もあり、心強いねとも思いました。

それでも、W杯で目標のベスト8進出を果たすには、どうなんだろうかという疑問もあります。点差は開いていたけれど、後半はフィジーが戦い方を変えてきたこともあり、かなり苦しかったようにも見えます。

実戦を通して得られる試合勘のようなものも含め、もう一ランク、二ランク、実力のアップをはかる必要があるでしょう。

日本代表にとって、フィジー戦はパシフィックネーションズ杯(PNC)の初戦でもありました。これからW杯開幕まで予定されている試合は同じくPNCのトンガ代表、米国代表戦の2試合、そして96日の南アフリカ代表戦の計3試合です。この3つの試合でめきめきと頭角をあらわし、その勢いを駆ってW杯に臨む選手が、1人でも2人でも、できれば15人くらい出てくると、世の中、どうなっちゃうか分かりませんね。なにせ4年前の前回W杯では、南アに勝っちゃったという経験もありますから。

 

 

『UPDATE! 話そう、 HIV/エイズのとなりで ~検査・治療・支援~』 エイズと社会ウェブ版402

 

 厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する世界エイズデー国内啓発キャンペーンの今年のテーマが決定しました。API-Netに掲載されています。

 http://api-net.jfap.or.jp/

 

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 テーマ策定については、API-Netにおける意見募集やHIV/エイズ対策に関係する人たちへの聞き取りを通した情報収集を踏まえ、エイズ予防財団の検討委員会でまとめた候補案を厚労省に提案しました。委員長としてのとりまとめは不肖・私が行いました。

 候補案はそっくりそのままではありませんが、厚労省内の検討を経て、主旨を最大限、生かしていただくかたちでテーマが決定しています。

 世界エイズデー121日ですが、キャンペーンは1日だけに限定されるものではなく、その前後の期間にも広く活用していただければ幸いです。

 HIV/エイズ分野の3つのNPOエイズ予防財団が中心になって運営する情報共有サイト《コミュニティアクション》のキャンペーンテーマのページにも、検討委員会での議論を踏まえた趣旨説明を掲載しましたので、こちらもご覧ください。

 

www.ca-aids.jp

 

 さわりをちょっと・・・。

 『HIVに感染している人にも、感染していない人にも、そして感染しているかどうか心配になった人にも、「一人で孤立しているわけではありませんよ」ということを伝える。「となり」という言葉にはそうしたやわらかいメッセージが込められています』

 ちょっとといった割には、長めの引用になってしまいましたね。この際だから、もうちょっと・・・。

 『HIVの感染を心配する人に「とにかく検査を受けよう」と勧めても、なかなか行動に踏み切れない。このことはこれまでのHIV/エイズ対策の経験からも繰り返し指摘されてきました。HIV/エイズという現象に対し、社会の中に広がっているかもしれない距離感を一歩でいいから縮めていくこと、話題として一歩近づくことこそが、検査や治療、そして支援を受けやすい環境を生み出す重要な行動になります』

 

潮もかないぬ・・・こっちはまだかな

 鎌倉の世界遺産登録をめざす市民の会が731日(水)午後2時から総会を開催します。会場は鎌倉風致保存会事務所(鎌倉市扇ガ谷四丁目291号)です。 

userweb.www.fsinet.or.jp

 えっ、鎌倉の世界遺産登録って・・・もう諦めたんじゃないの?

 少し前まではよく、こう聞かれました。不本意ながら最近はもう、そんな声すら聞かれなくなりそうな印象です。でも、諦めていません。少なくとも市民の会は、めざしています。

 もちろん、現下の情勢を鑑みると、いま漕ぎいでなと言えるほど潮がかなっていないことは認めざるを得ませんが、われて砕けて裂けて散っちゃったというわけでも、実はありません。

 会場の鎌倉風致保存会事務所は『旧坂井邸』にあります。登録有形文化財の建物です。 

bunka.nii.ac.jp

 『和館の南東隅に接続して建つ木造二階建の建物。敷地の高低差を利用し、洋館の二階に和館の一階を接続する。外壁はモルタル塗リシン吹付とし、二階出窓の上下に見切を入れるなど、和館と対照的に見せる。二階を洋風の応接室として、洋館併設住宅の特徴を伝える』(文化庁文化遺産オンラインから)

 貴重な建造物であるだけでなく、四季折々の花を咲かせるお庭も見事です。一般公開はされていませんが、総会に参加するのなら、傍聴も大歓迎なので、当然、お庭を通ることになります。

 会場はそれほど広いわけではありません。したがって、たくさんの人が集まって入りきれなくなったらどうしようという一抹の不安はあります。ただし、これまでの総会を考えれば、残念ながら心配する必要はなさそうです。

 どれどれ、と思う方はどうかご参加ください。

 

UNAIDS報告書2019『Communities at the centre(コミュニティを主体に)』 エイズと社会ウェブ版401

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が新たな年次報告書Global AIDS Update2019を発表しました。タイトルは『Communities at the centre』です。日本語では『コミュニティを主体に』と訳してみました。もっと適訳がありそうですね。これはと思う訳語があればお教えください。サブタイトルはDefending rights, breaking barriers, reaching people with HIV services(権利を守り、障壁を打ち破り、人びとにHIVサービスを届ける)となっています。

 

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 報告書の発表は、南アフリカのエショーという町で7月16日に行われました。本体は大部でちょっと訳せませんが、とりあえずプレスリリースの日本語仮訳を作成しました。どんな報告書なのか、感じはつかめると思います。

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2019/july/20190716_PR_UNAIDS_global_report_2019 

 

 なぜ、今年はエショーで発表したのか、その理由もプレスリリースを読めばお分かりいただけるのではないかと思います。

 最新の推計の数字(2018年末現在)も発表されているので、先に紹介しておきましょう。

 

 2018年現在の推計

 3790万人[3270万-4400万人] 世界のHIV陽性者数 

 2330万人[2050万-2430万人] 抗レトロウイルス治療を受けている人

  170万人[ 140万- 230万人] この1年で新たにHIVに感染した人

   77万人[  57万- 110万人] この1年でエイズ関連の疾病により死亡した人

 

 持続可能な開発目標(SDGs)という大きな枠組みの一部でもあるHIV/エイズ分野の世界の共通目標は、2030年のエイズ流行終結(ただし、公衆衛生上の脅威としてのという前提付き終結)です。そして、そのためには2020年までに高速対応で90-90-90ターゲットを達成しましょうということを国連の全加盟国一致で採択した2016年の政治宣言の中で約束しています。

 2020年ともなれば、もう来年ですから、年の瀬ぎりぎりまで粘ってもあと1年半しかありません。さすがにUNAIDSも世界は失速気味だと認めざるを得なかったようです。

ただし、グニラ・カールソン事務局長代行は「もう無理だ」とはいいわず、「エイズ終結を目指す政治的意思がいますぐ必要です」と述べています。コメントの中には泣かせるひと言もありました。

エイズ終結は私たちが病気ではなく、人に焦点を当てることで可能になります』

もう少し長い発言の一部を部分的に切り離して訳しちゃった嫌いがないこともありませんが、趣旨は変わっていません。日本のエイズ診療関係者にはぜひ読んでいただきたいと思い、簡潔に際立った一文にしました。翻訳上許される範囲の編集を施したと受け止めてお読みいただければ幸いです(これだけ言っておけば、無関心な人でもついつい、どれどれと思って読むでしょう・・・読まないか)。

 プレスリリースもそれなりに長いけれど、以下に日本語仮訳を掲載します。長いと言っても短いから(どっちやねん!)、まあ読んでください。

 

 

 

2020年HIVターゲットに向けた世界の対応は失速し、各国別の成果もまちまちである UNAIDSが緊急対応の強化を要請

 素晴らしい成果をあげている国もあるが、HIV対策の資金が10億ドル近く落ち込む中で深刻な事態に陥っている国もある

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)プレスリリース

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2019/july/20190716_PR_UNAIDS_global_report_2019

 

エショー / ジュネーブ 2019年7月16日 - UNAIDSが本日発表した報告書によると、新規HIV感染を減らし、治療アクセスの拡大を進め、エイズ関連の死亡をなくすという世界的な目標への達成ペースは落ちている。UNAIDSのグローバルアップデート『コミュニティが主体に』が示す成果は国によってまちまちである。素晴らしい成果の国もあるが、他の国では新規HIV感染やエイズ関連の死亡が逆に増加している。 

 「エイズ終結を目指す政治的意思がいますぐ必要です」とUNAIDSのグニラ・カールソン事務局長代行はいう。「それにはまず、成功国の経験を踏まえ、適切かつ賢明な投資を行う必要があります。エイズ終結は私たちが病気ではなく、人に焦点を当てることで可能になります。取り残されている人や地域のためにロードマップをつくり、HIVの影響を最も大きく受けている人たちにサービスが届くよう人権に基づくアプローチをとらなければなりません」

 報告によると、世界の新規HIV感染の半数以上(54%)はキーポピュレーションとその性パートナーが占めている。東欧・中央アジアと中東・北アフリカでは、2018年の新規感染の約95%がキーポピュレーション - 注射薬物使用者、ゲイ男性など男性とセックスをする男性、トランスジェンダーの人たち、セックスワーカー、受刑者を含む - だった。

 しかも、コンビネーション予防サービスについて報告のあった国を見ると、キーポピュレーションの50%以下にしかサービスが届いていない国が半数以上を占め、キーポピュレーションがいまなお社会から排除され、HIV対策についても取り残されていることを示している。

 2018年に新たにHIVに感染した人は170万人で、2010年より16%減っている。東部・南部アフリカのほとんどで着実に感染が減少していることが大きな要因となった。たとえば、南アフリカでは対策が大きく進み、2010年と比べると、新規感染は40%以上、エイズ関連の死亡も約40%減っている。

 だが、HIVの影響が最も大きい地域である東部・南部アフリカにとっては、それでも道はまだ遠い。一方で、東欧・中央アジア(29%増)、中東・北アフリカ(10%増)、ラテンアメリカ(7%増)では新規HIV感染が憂慮すべき増加を示している。

 この日は南アフリカのエショーでコミュニティのイベントが開かれ、UNAIDSのカールソン事務局長代行と南アのデービッド・マブーザ副大統領が報告書を発表した。HIV対策のペースを上げてきたコミュニティ・プログラムの事例報告や証言についても、報告書は取り上げている。

 「南アフリカにはコミュニティをエイズ対策の中心に位置づけて取り組んできた豊富な歴史があります。2019年のグローバルアップデートの発表は、この国で、しかもクワズル・ナタール州のエショーで行われたのはこのためです。コミュニティに基盤を置き、HIVを中心にしたサービス提供のモデルが、ここでは結果を出しています」とマブーザ副大統領は語った。

 

 

資金確保

 報告書によると、世界のエイズ対策資金は10億ドル近く減少し、必要な資金額と実際に確保いた額とのギャップは当惑するほど大きく広がっている。ドナーからの支出が減り、各国の国内投資もインフレに追いつくほどには増えなかったためで、これほどの格差は初めてのことだ。2018年に確保できたエイズ対策資金は190億米ドル(2016年ドル換算)で、2020年までに必要な年間資金額262億ドルには72億ドルの不足となっている。

 エイズ終結に向けて成果をあげ続けるために、UNAIDSはすべてのパートナーに対し、10月に開かれる世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の増資会合で少なくとも140億ドルの増資目標を満たす誓約を行い、同時に二国間援助と当事国の国内HIV予算を増やすなど、対応の強化を求めている。

 

 

治療と90-90-90ターゲット

 90-90-90ターゲットに向けた成果は継続している。2018年にはHIV陽性者のうち自らの感染を知る人の割合は約79%だった。そして、感染を知る人の78%は治療にアクセスし、治療を始めた人の78%がウイルス量の抑制を果たしており、生きていくこととあわせ、他の人にウイルスが感染するのを防げるようにもなっている。

 しかし、報告書『コミュニティが主体に』によると、90-90-90ターゲットへのこうした成果は地域や国によって大きく異なっている。たとえば、東欧・中央アジアでは、2018年時点でHIV陽性者の72%が自らの感染を知っているが、このうち治療へのアクセスがある人は53%にとどまっている。

 「治療は16年間、続けてきました。ウイルス量は抑制され、体調も良好です」とエショーでスティグマと差別に取り組む組織シャインの創設者のスタンドワ・ブテレジはいう。「それでもコミュニティのとりわけ保健医療分野では、スティグマと差別が広がっています。私はアクティビストとして、コミュニティ指導者を含めすべての人に対し、前向きに生き、輝いていられるよう、HIVについてオープンに話そうと励ましています」

 

 

エイズ関連の死亡

 治療へのアクセスが拡大を続け、HIV結核に関するサービスの提供も大きく改善されたことから、エイズ関連の死亡件数は減少を続けている。2018年のエイズ関連の死亡件数は推定77万件で、2010年当時と比べると33%の減少となっている。

地域によって成果はまちまちである。エイズ関連の死亡が世界全体で大きく減少したのは主に東部・南部アフリカの成果によるものだった。しかし、東欧・中央アジアでは2010年と比べるとエイズ関連の死亡が5%増加し、中東・北アフリカでは9%増えている。

 

 

小児

 HIV陽性の妊婦の82%には現在、抗レトロウイルス治療のアクセスが確保されている。2010年に比べると、90%以上の拡大となっている。この結果、新生児のHIV感染は41%減少した。ボツワナ(85%)、ルワンダ(83%)、マラウィ(76%)、ナミビア(71%)、ジンバブエ(69%)、ウガンダ(65%)などは2010年以降の減少率がとくに目覚ましい。それでも世界全体では、子供の新規HIV感染は年間16万件もあり、2018年までに子供の新規感染を4万件以下に減らすとしていた世界ターゲットには遠く及ばなかった。

 子供の治療アクセスをもっと拡大しなければならない。抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性の子供(0-4歳)は世界で9万4000人に達しており、2010年当時と比べるとほぼ倍倍増したが、それでも2018年のターゲットだった160万人にははるかに及ばない状態だ。

 

 

女性と思春期の少女

 若い女性は同年代の男性より60%以上HIVに感染しやすく、若い男女の間には依然として大きな不均衡があるとはいえ、若い女性のHIV新規感染を減らすことには成果をあげてきた。世界全体でみると、2018年の若い女性(15-24歳)の新規HIV感染は2010年当時より25%減少している。年長の男性(25歳以上)は10%減だった。しかし、毎週6200人もの思春期の少女や若い女性がHIVに感染しているという現実は依然として受け入れがたい。感染率の高い地域において、最大の成果をあげられるようにするため若い女性を対象にした性と生殖に関する健康と権利プログラムを拡大する必要がある。

 

 

HIV予防

 『コミュニティが主体に』が示す現実は、新規HIV感染予防に最大限の成果をあげるためにすべての選択肢を利用できるような状態ではない。たとえば、治療薬を予防に使う曝露前予防服薬(PrEP)の利用者は2018年時点で30万人にとどまっており、そのうち13万人は米国内の人たちであると推定されている。サハラ以南のアフリカで最初に国のプログラムとしてPrEPの普及に取り組んだケニアでは2018年に予防服薬へのアクセスが得られた人は約3万人だった。

 報告書によると、ハームリダクションは注射薬物使用者にとって明白な解決策なのに、なかなか変化は起きない。注射薬物使用者は東欧・中央アジアの新規HIV感染の41%、中東・北アフリカの新規HIV感染の27%を占めているのだが、適切なハームリダクションプログラムはどちらの地域にも欠けている。

 男性には依然、対策が届きにくい。25-34歳のHIV陽性の男性は、ウイルスの抑制率が極めて低く、最近の調査によると、流行の打撃が大きい国では40%以下のこともある。結果として、パートナーにHIVが感染するのを防ぐことも難しくなっている。

 

 

スティグマと差別

 HIV関連のスティグマと差別の解消に向けた成果は多くの国であがっているものの、それでもHIV陽性者に対する差別的な態度は根強く残っている。根本にある構造的拡大要因およびHIVの予防、治療の普及を妨げる障壁、とりわけ有害な社会規範や法律、スティグマと差別、ジェンダーに基づく暴力などと闘うことが急務である。

 刑法や攻撃的な法執行、迫害、暴力などがキーポピュレーションを社会から排除し、保健、社会サービスの利用を阻んでいる。HIV陽性者への差別的な態度が残る国はあまりにも多い。回答があった26カ国の半数以上は、HIV陽性者に対し差別的な態度があると答えている。

 

 

コミュニティ

 エイズ終結の達成に果たすべきコミュニティの中心的な役割を報告書は強調している。エイズ対策にかかわるすべての分野にまたがり、コミュニティの能力強化と自立が、HIV予防と治療の普及を進め、スティグマと差別を減らし、人権を守る大きな成果をもたらしてきた。しかし、コミュニティ主導の対策に対する資金が十分に確保されず、否定的な政治環境があることからその成果は妨げられ、最大限の効果を発揮することはできずに終わっている。

 南アフリカのクワズル・ナタール州では、2016年時点で成人(15-49歳)の4人に1人はHIV陽性だった。対策を進めるために、国境なき医師団は、コミュニティベースでHIV検査を行い、治療とケアにつなげるアプローチを導入した。この結果、エショー市街地と郊外、およびムボンゴルウェインの町では、2020年の締め切りを大きく前倒しして2018年に90-90-90ターゲットを達成している。

 南アフリカザンビアで行われた別の研究では、何百人というコミュニティHIVケア提供者(CHIPS)が5年にわたって各世帯を訪問し、HIVに関する情報を伝えるとともに、HIV検査を提供してケアにつなげている。その結果、CHIPSが活動するコミュニティでは、年間の新規HIV感染が20%少なくなり、自らのHIV感染を知って抗レトロウイルス治療を受け、ウイルス量の抑制を果たした人の割合が、54%から70%以上へと増えていた。

 2016年に採択した国連総会のエイズ終結に関する政治宣言で、加盟国は2030年までにコミュニティ主導のサービス提供を少なくとも全サービスの30%に拡大することを約束しており、UNAIDSはその約束を果たすよう各国に求めている。HIVに最も大きく影響を受けているコミュニティにおいて、差別をなくし、人権尊重を基本に据え、人を中心に考えるHIV予防と治療のサービスを提供するには、市民社会組織の能力構築に向けた適切な投資を行わなければならない。

 

2018年現在の推計

 3790万人[3270万-4400万人] 世界のHIV陽性者数 

 2330万人[2050万-2430万人] 抗レトロウイルス治療を受けている人

  170万人[ 140万- 230万人] この1年で新たにHIVに感染した人

   77万人[  57万- 110万人] この1年でエイズ関連の疾病により死亡した人

 

 

 

 

Press release

UNAIDS calls for greater urgency as global gains slow and countries show mixed results towards 2020 HIV targets

Impressive advances in some countries, troubling failures in others as available resources for HIV fall by nearly US$ 1 billion

 

 

ESHOWE/GENEVA, 16 July 2019—The pace of progress in reducing new HIV infections, increasing access to treatment and ending AIDS-related deaths is slowing down according to a new report released today by UNAIDS. UNAIDS’ Global AIDS Update, Communities at the centre, shows a mixed picture, with some countries making impressive gains while others are experiencing rises in new HIV infections and AIDS-related deaths.

 “We urgently need increased political leadership to end AIDS,” said Gunilla Carlsson, UNAIDS Executive Director, a.i., “This starts with investing adequately and smartly and by looking at what’s making some countries so successful. Ending AIDS is possible if we focus on people, not diseases, create road maps for the people and locations being left behind, and take a human rights-based approach to reach people most affected by HIV.”

The report shows that key populations and their sexual partners now account for more than half (54%) of new HIV infections globally. In 2018, key populations—including people who inject drugs, gay men and other men who have sex with men, transgender people, sex workers and prisoners—accounted for around 95% of new HIV infections in eastern Europe and central Asia and in the Middle East and North Africa.

However, the report also shows that less than 50% of key populations were reached with combination HIV prevention services in more than half of the countries that reported. This highlights that key populations are still being marginalized and being left behind in the response to HIV.

Globally, around 1.7 million people became newly infected with HIV in 2018, a 16% decline since 2010, driven mostly by steady progress across most of eastern and southern Africa. South Africa, for example, has made huge advances and has successfully reduced new HIV infections by more than 40% and AIDS-related deaths by around 40% since 2010.

However, there is still a long way to go in eastern and southern Africa, the region most affected by HIV, and there have been worrying increases in new HIV infections in eastern Europe and central Asia (29%), in the Middle East and North Africa (10%) and in Latin America (7%).

The report was launched at a community event in Eshowe, South Africa, by Ms Carlsson and David Mabuza, the Deputy President of South Africa. It contains case studies and testimonies identifying community programmes that can quicken the pace of the response to HIV.

“South Africa has a rich history of communities being at the centre of the AIDS response, so it is fitting that we launch the 2019 UNAIDS Global AIDS Update in this country, in Eshowe, in KwaZulu-Natal, where a community-based service delivery model, with HIV at its centre, is showing results,” said Deputy President Mabuza.

 

 

Financing

Disconcertingly, the report shows that the gap between resource needs and resource availability is widening. For the first time, the global resources available for the AIDS response declined significantly, by nearly US$ 1 billion, as donors disbursed less and domestic investments did not grow fast enough to compensate for inflation. In 2018, US$ 19 billion (in constant 2016 dollars) was available for the AIDS response, US$ 7.2 billion short of the estimated US$ 26.2 billion needed by 2020.

To continue progress towards ending AIDS, UNAIDS urges all partners to step up action and invest in the response, including by fully funding the Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria with at least US$ 14 billion at its replenishment in October and through increasing bilateral and domestic funding for HIV.

 

 

Treatment and the 90–90–90 targets

Progress is continuing towards the 90–90–90 targets. Some 79% of people living with HIV knew their HIV status in 2018, 78% who knew their HIV status were accessing treatment and 86% of people living with HIV who were accessing treatment were virally suppressed, keeping them alive and well and preventing transmission of the virus.

Communities at the centre shows however that progress towards the 90–90–90 targets varies greatly by region and by country. In eastern Europe and central Asia for example, 72% of people living with HIV knew their HIV status in 2018, but just 53% of the people who knew their HIV status had access to treatment.

 “I’ve been on treatment for 16 years, am virally suppressed and doing well,” said Sthandwa Buthelezi, founder of Shine, an organization in Eshowe that addresses stigma and discrimination in the community. “But stigma and discrimination are still widespread, particularly in health care settings. As an activist, I encourage everyone, including community leaders, to talk openly about HIV so that people can live positively and shine.”

 

 

AIDS-related deaths

AIDS-related deaths continue to decline as access to treatment continues to expand and more progress is made in improving the delivery of HIV/tuberculosis services. Since 2010, AIDS-related deaths have fallen by 33%, to 770 000 in 2018.

Progress varies across regions. Global declines in AIDS-related deaths have largely been driven by progress in eastern and southern Africa. In eastern Europe and central Asia however, AIDS-related deaths have risen by 5% and in the Middle East and North Africa by 9% since 2010.

 

 

Children

Around 82% of pregnant women living with HIV now have access to antiretroviral medicines, an increase of more than 90% since 2010. This has resulted in a 41% reduction in new HIV infections among children, with remarkable reductions achieved in Botswana (85%), Rwanda (83%), Malawi (76%), Namibia (71%), Zimbabwe (69%) and Uganda (65%) since 2010. Yet there were nearly 160 000 new HIV infections among children globally, far away from the global target of reducing new HIV infections among children to fewer than 40 000 by 2018.

More needs to be done to expand access to treatment for children. The estimated 940 000 children (aged 0–14 years) living with HIV globally on antiretroviral therapy in 2018 is almost double the number on treatment in 2010. However, it is far short of the 2018 target of 1.6 million.

 

 

Women and adolescent girls

Although large disparities still exist between young women and young men, with young women 60% more likely to become infected with HIV than young men of the same age, there has been success in reducing new HIV infections among young women. Globally, new HIV infections among young women (aged 15–24 years) were reduced by 25% between 2010 and 2018, compared to a 10% reduction among older women (aged 25 years and older). But it remains unacceptable that every week 6200 adolescent girls and young women become infected with HIV. Sexual and reproductive health and rights programmes for young women need to be expanded and scaled up in order to reach more high-incidence locations and maximize impact.

 

 

HIV prevention

Communities at the centre shows that the full range of options available to prevent new HIV infections are not being used for optimal impact. For example, pre-exposure prophylaxis (PrEP), medicine to prevent HIV, was only being used by an estimated 300 000 people in 2018, 130 000 of whom were in the United States of America. In Kenya, one of the first countries in sub-Saharan Africa to roll out PrEP as a national programme in the public sector, around 30 000 people accessed the preventative medicines in 2018.

The report shows that although harm reduction is a clear solution for people who inject drugs, change has been slow. People who inject drugs accounted for 41% of new HIV infections in eastern Europe and central Asia and 27% of new HIV infections in the Middle East and North Africa, both regions that are lacking adequate harm reduction programmes.

Men remain hard to reach. Viral suppression among men living with HIV aged 25–34 years is very low, less than 40% in some high-burden countries with recent surveys, which is contributing to slow progress in stopping new HIV infections among their partners.

 

 

Stigma and discrimination

Gains have been made against HIV-related stigma and discrimination in many countries but discriminatory attitudes towards people living with HIV remain extremely high. There is an urgency to tackle the underlying structural drivers of inequalities and barriers to HIV prevention and treatment, especially with regard to harmful social norms and laws, stigma and discrimination and gender-based violence.

Criminal laws, aggressive law enforcement, harassment and violence continue to push key populations to the margins of society and deny them access to basic health and social services. Discriminatory attitudes towards people living with HIV remain extremely high in far too many countries. Across 26 countries, more than half of respondents expressed discriminatory attitudes towards people living with HIV.

 

 

Communities

The report highlights how communities are central to ending AIDS. Across all sectors of the AIDS response, community empowerment and ownership has resulted in a greater uptake of HIV prevention and treatment services, a reduction in stigma and discrimination and the protection of human rights. However, insufficient funding for community-led responses and negative policy environments impede these successes reaching full scale and generating maximum impact.

In KwaZulu-Natal in South Africa, one in four adults (aged 15–59 years) were living with HIV in 2016. To advance the response, Médecins Sans Frontières managed a community-based approach to HIV testing that links people to treatment and supports them to remain in care. By 2018, the 90–90–90 targets were achieved in Eshowe town, rural Eshowe and Mbongolwane, well ahead of the 2020 deadline.

Another study in South Africa and Zambia enrolled hundreds of Community HIV Care Providers (CHIPS) over five years to visit homes, provide information about HIV and offer HIV testing and linkage to care. The study found that areas with CHIPS communities had around 20% fewer new HIV infections each year and the proportion of people living with HIV who knew their HIV status, were on antiretroviral therapy and were virally suppressed increased from 54% to more than 70%.

UNAIDS urges countries to live up to the commitment made in the 2016 United Nations Political Declaration on Ending AIDS for community-led service delivery to be expanded to cover at least 30% of all service delivery by 2030. Adequate investments must be made in building the capacity of civil society organizations to deliver non-discriminatory, human rights-based, people-centred HIV prevention and treatment services in the communities most affected by HIV.

 

 

In 2018, an estimated:

37.9 million [32.7 million–44.0 million] people globally were living with HIV

23.3 million [20.5 million–24.3 million] people were accessing antiretroviral therapy

1.7 million [1.4 million–2.3 million] people became newly infected with HIV

770 000 [570 000–1.1 million] people died from AIDS-related illnesses

さすがは西内さん 人口推計記者会見リポート

 世界人口推計2019については、国立社会保障・人口問題研究所の林玲子・国際関係部長が79日、日本記者クラブで記者会見を行いました。日本記者クラブの公式サイトには、会見の動画とともに、共同通信論説委員の西内正彦さんによる会見リポートが掲載されています。

『世界人口、サハラ以南中心に増加続くが、2100年に110億で頭打ち』

 

www.jnpc.or.jp

  西内さんは人口問題をライフワークとする著名なジャーナリストです。私が面識を得たのは、もう10年以上も前でしたか。開発や保健分野のNGOと外務省との懇談会でNGO側のメンバーだったからです。

西内さんはジャーナリストの大先輩であり、当時、共同通信をすでに退いてNPO法人205020173月に解散)などで活躍されていました。

私の方はまだ、現職の記者だったのですが、エイズ対策の取材を続けていたので、九州・沖縄サミットが開かれた当時の外務省担当課長から「お前もちょっとは勉強しろ」と勧められ、懇談会の末席に連なるようになりました。

人口問題とエイズ対策には共通する課題が多く、西内さんにはご教示をいただくことも多いのですが、この会見リポートはさすがですね。一定の字数制限もある中で、必要なことが過不足なく取り上げられています。

1987711日、当時のユーゴスラビアで男の赤ちゃんが生まれた。国連は「50億人目」と認定、事務総長が現地へ出向いて祝福。1989年に、世界の人口問題に関心を深めてもらうため、この日を「世界人口デー」と定めた》

専門分野の方には常識に類するようなことかもしれませんが、私のように付け焼刃の知識で生きている人間には、書き出しでこうした基本から説明していただくと非常に助かります。最初の世界エイズデー1988121日。そして、世界人口デーがそのほぼ半年後の1989711。新たな発見というほどではありませんが、こんなところにも課題の近接性といったものをついつい感じてしまいます。

「世界人口は1960年代、70年代に、爆発的に増えた。これが地球規模課題だった。国連人口基金UNFPA)はそのころ出来た。世界全体で家族計画への取り組みが行われた。その後、女性の教育水準が上がり、出生率が下がって、増加率は1%程度になっているが、2100年ごろはゼロになるという推計。人口爆発の危機は回避できたが、まだ人口は増えている」

「」の中は、林さんの会見からの引用。西内さんはそれに続いて次のように書いています。

《今後、世界のどの地域でも65歳以上の人口割合が高まり、平均寿命も延びる。特に速いスピードで高齢化を経験してきた日本の経験をどう生かすかが課題とし、人口研究所にアジア、アフリカ諸国から日本の経験を学びたいという要望が多いことを紹介した》

なるほど、内容をぎゅっと凝縮し、こうやってまとめるのかと改めて感心します。実は私も会見の翌日、当ブログで腰の引けた傍聴記を掲載してありますが、西内レポートの方がはるかによく分かりますね。会見に出た人も、出なかった人も、ぜひお読みください。