年寄りの昔話になってしまいますが、現代性教育研究ジャーナルの連載コラム『多様な性のゆくえ』第66回(2022年10月15日)は、ニューヨークのゲイメンズ・ヘルス・クライシス(GMHC)の本部ビルを1994年に取材した時のことを少し紹介しました。
https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202210.pdf
12ページに掲載されています。
エイズはゲイ男性だけがかかる病気ではないのに、どうしてGMHCは名称を変えないのか。そんなぶしつけな質問にGMHCのスタッフは当時、こう答えています。
「少数のゲイ男性が最初に動いた。この事実は大切にしたい。問題があるとしたら、名前ではなく、我々の名前が問題になる状況の方ではないか」
28年後の2022年、アフリカにほぼ限定されていたサル痘の流行が世界に広がり、世界保健機関(WHO)は7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しています。日本国内ではその宣言の直後に最初の症例が確認され、その後も断続的に症例が報告されています。エイズと同様、ゲイ男性だけがかかる病気ではありませんが、ゲイコミュニティにおける危機の認識は、社会の平均的な関心度とは異なっています。
「最も影響を受けているコミュニティが最初に動く」
そのことの大切さを社会が広く共有する。それもエイズ対策の困難な経験を通して学んだ教訓ではないか。ぶしつけな質問をした物わかりの悪い元記者は改めてそう感じます。