『何事も夢から始まる』 TOP-HAT News第169号

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)は2002年1月に創設されました。すでに当ブログでも紹介しているように今年は活動を開始から20周年の節目なので、グローバルファンド日本委員会(FGFJ)がドキュメンタリーフィルムシリーズ『何事も夢から始まる』を制作し、公式サイトに特設ページを開設しました。

 https://fgfj.jcie.or.jp/about/project/gf20thfilm/

全体のプロローグにあたる特別編とエピソード1ベトナム結核編がすでに公開され、エピソード2 エルサルバドルマラリア編、エピソード3 ナイジェリア・エイズ編も順次公開予定です。

 TOP-HAT News第169号(2022年)は巻頭でその特別編を紹介しました。タイトルの『何事も夢から始まる』はグローバルファンド創設当時の国連事務総長だったコフィ・アナン氏の言葉です。

 『初めてグローバルファンドを創ろうと提案した時、周りには「また夢みたいな話をして」と笑われました。でも何事も夢から始まるのです』

 それを夢にしなかった国の一つが日本です。国連事務総長の夢みたいな話が国連機関ではないかたちで実を結んだ。このあたりも興味深い。詳しくは TOP-HAT News第169号とドキュメンタリー動画の特別編でご覧ください。

 

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        第169号(2022年9月)

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 『何事も夢から始まる』

2グローバルファンド日本委員会が企画・制作

3『抗HIV治療ガイドライン』令和3年度版(2022年3月)

4『治療の手引き』は日本エイズ学会のサイトから

 

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1 はじめに 『何事も夢から始まる』

 2002年1月に創設された世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)は今年、設立20周年を迎えました。2000年九州・沖縄サミットで途上国の感染症対策が地球規模の緊急課題として取り上げられ、それがグローバルファンド創設の動きを作る大きなきっかけにもなりました。その創設前夜の状況や20年の活動の成果をまとめたドキュメンタリーフィルムシリーズ『何事も夢から始まる』の特別編(世界の感染症対策の「今」と「未来」)が、グローバルファンド日本委員会(FGFJ)の公式サイトで公開されています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/about/project/gf20thfilm/

 タイトルの『何事も夢から始まる』はグローバルファンド創設当時の国連事務総長で、2001年に国連と共にノーベル平和賞を受賞しているコフィ・アナン氏の言葉です。特別編でも紹介されているインタビューの中で、アナン氏は『初めてグローバルファンドを創ろうと提案した時、周りには「また夢みたいな話をして」と笑われました。でも何事も夢から始まるのです』と語っています。

 もちろん、その「夢みたいな話」を実現に導いたのは、国際政治の力学だけではありません。エイズ結核マラリアの三大感染症に対する予防や治療を切実に望んでいた多くの人たち、そして現場でその予防や治療、支援にあたる人たちの存在が、ファンド創設の原動力でもありました。

『設立から20年、グローバルファンドの支援により、4400万の命が救われ、支援した国では、エイズ結核マラリアによる年間死亡者数が46%減少しました。その目覚ましい成果の背景には、数えきれないほど多くの人たちの絶え間ない努力と三大感染症の終息実現への想いがあります』(特別編の解説から)

エイズ対策の分野では、そうした人たちを総称してコミュニティと呼ぶこともしばしばあります。

 特別編は、4回シリーズのドキュメンタリーフィルムの第1回目です。全体のプロローグに当たり、日本国内のエイズ結核マラリア対策の関係者がグローバルファンド創設の意義や20年後の課題について語っています。その一人、樽井正義・慶応義塾大学名誉教授(倫理学)は、グローバルファンド創設前夜の2000年から創設の2002年にかけての時期を「エイズ対策の大きな転換点」と次のように語っています。

 「伝統的に感染症対策は、感染している人を特定し、社会から切り離して隔離する手法をとってきた。ところが(エイズ対策は)その方法では失敗する。なぜなら感染していると思われる人が取り締まられること、差別されることを恐れ医療者の前に現れない」

では、どうすればいのか。何が転換したのでしょうか。

「感染している人、感染のリスクに直面している人と一緒に対策を進めていこう。つまり感染者は対策の対象ではなく対策の担い手なのだというように感染症への取り組みが変わってきた。その変化を端的に表しているものの一つがグローバルファンドの設立でした」

エイズ結核マラリアの三大感染症対策は、必要な資金の確保とともに、こうした方法を確立することで成果をあげています。特別編によると、3つの感染症の終息という目標はまだ道半ばですが、それでもグローバルファンドの支援で20年間に4400万人の生命が救われてきました。同時にその成果は、COVID-19をはじめ、新たな感染症パンデミックへの対応と備えにも貴重な教訓を数多く伝えています。

 

 

2 グローバルファンド日本委員会が企画・制作

 ドキュメンタリーフィルムを企画・制作したグローバルファンド日本委員会(FGFJ)についても紹介しておきましょう。FGFJはFriends of the Global Fund, Japanの略。ひと言で説明すれば、グローバルファンドに対する日本国内の応援団です。グローバルファンド創設から2年後に発足し、事務局は公益財団法人日本国際交流センターに置かれています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/about/

 《エイズ結核マラリアという世界の三大感染症の克服のために日本がより大きな国際的役割を果たせるよう、政府、学界、市民社会、経済界などの有識者や、超党派の国会議員の参加を得て様々な取組みを行っています。国境を超える三大感染症の脅威とグローバルファンドの役割について理解を促進するとともに、感染症対策における日本の官民双方の国際貢献に関する政策対話、調査研究、意識啓発を行い、日本とグローバルファンドとの連携を促進しています》

 

 

3 『抗HIV治療ガイドライン』令和3年度版(2022年3月)

厚労省の研究班が平成10年度(1998年度)から毎年発行している『抗HIV治療ガイドライン』の令和3年度版(2022年3月)が『HIV感染症および血友病におけるチーム医療の構築と医療水準の向上を目指した研究』班の公式サイトにPDF版で掲載されています。

https://hiv-guidelines.jp/index.htm

このガイドラインは『わが国におけるHIV診療を世界の標準レベルに維持すること』を目的にして1999年、当時の『我が国におけるHIV診療ガイドラインの開発に関する研究』班が平成10年度版を発行したのが最初です。以後研究班は代々、変わってきましたが、ガイドライン改訂委員により毎年更新版の作成が続いています。

歴代の担当研究班は、令和3年度版の「はじめに」のページに掲載されています。最近は『HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究』班)の公式サイトに掲載されていましたが、この研究班が令和2年度で終了したことから、ガイドラインも、『お薬ガイド』など他の資料と共に、新しい研究班の公式サイトに引き継がれました。課題克服班のサイトにも引継ぎのお知らせが掲載されています。

https://www.haart-support.jp/

 

 

4 『治療の手引き』は日本エイズ学会のサイトから

 治療に関しては、日本エイズ学会HIV感染症治療委員会が『治療の手引き』を発行しています。日本エイズ学会公式サイトのトップページに掲載されている『HIV感染症「治療の手引き」』のバナーをクリックすると、HIV感染症治療委員会のサイトにリンクします。

 http://www.hivjp.org/index.html

 この手引きは1998年10月、HIV感染症治療に関する理解の普及を目的に「暫定版」を発行され、11月の第12回日本エイズ学会学術集会サテライトシンポジウムなどでの討議を経て、翌1999年5月に第1版刊行の運びとなりました。最新版は第25版で委員会のサイトには2022年2月1日にPDF版が掲載されています。