グローバルファンド 20歳に TOP-HAT News 第161号(2022年1月) エイズと社会ウェブ版595

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)は2002年1月に活動を開始しました。つまり今年の1月で創設20周年を迎えました。日本では初期の略称が「世界基金」でしたが、2014年10月に英語の略称がThe Global Fandとなったのに合わせ、カタカナ表記でグローバルファンドと呼ばれるようになっています。 

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 国内では2004年にグローバルファンドの活動を支援する世界基金支援日本委員会が発足していますが、その名称もグローバルファンド日本委員会(FGFJ)に変わっています。委員会の公式サイトには、グローバルファンドの歴史から最新情報まで日本語で情報が満載されているので、ぜひ参考にしてください。

 https://fgfj.jcie.or.jp/

 というわけで、TOP-HAT News 第161号(2022年1月)は巻頭で『グローバルファンド20歳に』を特集しました。

『2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています』(FGFJ公式サイト)

グローバルファンドの使命は、エイズ結核マラリアの三大感染症を克服することです。ただし、そのためには世界各国の保健基盤の強化にも力を入れる必要があります。グローバルファンドの次期戦略(2023-28)『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』にもこのことは明記されています。合わせてお読みください。

世界も日本もいま、COVID-19の流行の真っただ中にあります。かなり長引いています。社会的な波紋も小さくありません。どうなっているんだと言いたくなることもあります。

それでも、グローバルファンドの創設に代表される21世紀初頭からの様々な成果が、いまはCOVID-19対策で途上国の検査やワクチンの普及を進める動きを理念と実践の両面から支えている。三大感染症対策を超えて(あるいは踏まえて)、新たなパンデミック対策に大きな影響をもたらしていることもこの際、認識しておく必要がありそうです。

 

 

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        第161号(2022年1月)

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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに グローバルファンド20歳に

2 『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』

3 デズモンド・ツツ大主教を追悼 UNAIDSがプレスリリース

4 第36回日本エイズ学会公式サイト

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1 はじめに グローバルファンド20歳に

 2002年1月に活動を開始した世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)が今月、20周年を迎えました。国内でこの基金の活動を応援してきたグローバルファンド日本委員会(FGFJ)の公式サイトには次のように書かれています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/global-fund

『三大感染症といわれるエイズ結核マラリアは、世界で年間240万人以上もの命を奪い、貧しい国の発展を妨げる重大な要因となっています。グローバルファンドは、低・中所得国のこれら三疾病対策のために資金を提供する機関として、2002年1月にスイスに設立されました』

 残念ながら日本国内ではあまり知られていないようですが、この基金が誕生するきっかけになったのは日本です。

『2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています』(FGFJ公式サイト)

 いまパンデミックといえば、大方の人は新型コロナウイルス感染症COVID-19を思い浮かべるでしょう。グローバルファンドの使命は上記三大感染症の終息ですが、そのためには感染症対策を支える土台とも言うべき低・中所得国の保健基盤強化にも力を入れる必要があります。

 COVID-19対策にも共通して言えることですが、どこか一国だけで自国内の流行を抑え込むことはできません。パンデミック対策には国際的な支え合いが必要です。治療薬やワクチンが開発されたとしても、世界中で使えるようにならなければ結局、十分な成果は期待できなくなってしまいます。

 では、どうしたらいいのか。そこで製薬特許の壁を克服する試みを含め、安価で質の高い治療薬の普及に向けた様々な対応が開始されたのが21世紀の初頭でした。グローバルファンドが途上国の三大感染症対策への資金を確保するための国際機関として登場したのもこのためです。

 HIV/エイズ対策を例にとると、世界のHIV陽性者数は現在、3770万人と推定され、そのほぼ4分の3に相当する推定2820万人が抗レトロウイルス治療を受けています。

 2003年の世界エイズデー(12月1日)に国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)が発表した3by5計画は「2005年までに300万人に治療を提供すること」を目指していました。当時は、抗レトロウイルス治療を受けなければ2年以内に死亡する低・中所得国のHIV陽性者は600万人と推定されており、そのせめて半数には必要な治療を提供できるようにしようという構想でした。感染症の専門家の多くが「それは無理」と考えるほど当時としては野心的な目標でしたが、2年遅れの2007年には実現しています。そしていまは、3by5のほぼ10倍に相当するHIV陽性者が治療を受けられるようになっているのです。

 もちろん、1000万人近いHIV陽性者がいまなお必要な治療を受けられずにいるという現実もその一方ではあります。エイズはまだ終わっていません。ただし、グローバルファンドの創設に代表される21世紀初頭からの様々な成果が、いまはCOVID-19対策で途上国の検査やワクチンの普及を進める動きを理念と実践の両面から支えるなど、三大感染症対策を超えて大きな影響をもたらしていることも認識しておく必要がありそうです。

 

2  『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』

 COVID-19対策ともかかわるグローバルファンドの最近の動きをFGFJのサイトからもう少し紹介しましょう。グローバルファンド理事会は昨年11月、2023-28年の新戦略『Fighting Pandemics and Building a Healthier and More Equitable World(パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を構築)』を承認しています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/topics/2021-11-10_gfnewstrategy2023-2028

『2020年はグローバルファンド発足以来、毎年順調に伸びてきたエイズ結核マラリア対策の主要な指標上の実績が初めて前年の実績を下回りました』

COVID-19パンデミックの影響は三大感染症対策にも打撃を与えています。そこから対策をどう立て直していくかが新戦略の課題であり、

『三疾患すべてにおいて、予防をより強化』

『三疾患とともに生き、影響を受けているコミュニティの役割と発言力を強化』

『不平等、人権およびジェンダー関連の障壁に対処するための活動を強化』

『将来のパンデミックへの備えと対応においてグローバルファンドのパートナーシップが果たせる、また果たすべき役割を明示』

など10項目を特徴として挙げています。

 

3 デズモンド・ツツ大主教を追悼 UNAIDSがプレスリリース

 昨年12月26日に90歳で亡くなった南アフリカデズモンド・ツツ大司教を追悼し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が同日付で『世界のエイズ対策は偉大なチャンピオンを失う』という見出しのプレスリリースを発表しました。

 https://asajp.at.webry.info/202112/article_4.html

 ツツ元大主教は南アのアパルトヘイト(人種隔離)撤廃に尽力し、1984年にはノーベル平和賞を受賞しています。エイズ対策についても、HIV陽性者、エイズに影響を受けている人たちの権利を擁護する発言を続け、治療薬へのアクセス確保を求めてきました。

 

4 第36回日本エイズ学会公式サイト

 『Resistance ~耐性との闘い/差別との闘い』をテーマにした第36回日本エイズ学会学術集会・総会の公式サイトが開設されました。

 http://aids36.umin.jp/

 前号でもお伝えしましたが、会期は11月18日(金)~20日(日)、会場は静岡県浜松市の『アクトシティ浜松』。サイトに掲載された杉浦亙会長(国立国際医療研究センター 臨床研究センター長)の挨拶によると(COVID-19が)『本学会を開催する2022年11月頃にどのような感染状況になっているか見通しは定かではありませんが、現時点では全セッション対面での開催を考えております』ということです。