レッドリボン30周年 TOP-HAT News156号(2021年8月) エイズと社会ウェブ版582

 12月1日の世界エイズデーを中心にした国内啓発キャンペーンのテーマが発表されました。今年はエイズ流行40周年であると同時に、レッドリボンが登場してから30年の節目でもあるので『レッドリボン30周年 ~Think Together Again~』です。

 コロナの流行で社会は不安と動揺に包まれ、政権が一つ吹っ飛んじゃうという意味での節目の年でもあるので、TOP-HAT News第156号(2021年8月)でさっそくレッドリボンを紹介しました。

 政治にはまったく詳しくないし、コロナ対策の専門家でもないので、外野席の勝手な感想ですが、菅首相はどうも、追いつめられて焦ってしまったようですね。さすがに握手は自粛していたのでしょうが、それでもこのところ悪手続きでした。もう少し辛抱していたらコロナの感染拡大もピークを越える時期だったのに、政治家としてはそういうわけにもいかなかったのでしょうね。連帯も信頼も自ら断ち切ってしまった・・・。

 無観客開催で、オリンピックもパラリンピックも開くことができたし、強権的なロックダウンをあろうことかマスメディアから求められてもグッとこらえてきた。自ら明かりが見え始めてきたとも語っていた。

 それでも、解散をちらつかせたり、人事に手を付けようとしたり・・・政局的にじたばたしてしまった。これは残念。

 菅政権に対しては、誕生の経緯からして、すっきりしない印象でもあったので、あまり長期にはなってほしくないと個人的には思っていました。恣意的で容赦のない人事をあえて操って見せることで、周囲を恐怖と不安で疑心暗鬼に追い込み、それを権力の糧にする。例えば企業でも、そんな手法を好む経営者がいるとしたら(実際にいたんだけど)、あまりはかばかしい結果はもたらさなかったような気がします。

 したがって、政治家としての菅さんのスタイルは政権の発足当初からあまり好ましいものには感じられなかったのですが、それでもオリンピック、パラリンピックを無観客で開催し、コロナ対策もそれなりによく持ちこたえてきたと思う。この点は、実はひそかに評価していたので、この時期の政権投げ出しは残念です。党首が顔にならなければ選挙に勝てない若手議員には、もともと当選したのがおかしかった方もたくさんいらっしゃるのだろうに・・・。

 あと数週間で、なんとか危機を乗り切った宰相(これもめぐりあわせに過ぎませんが)になり得たかもしれなかった。こわもてだけどコミュニケーション能力はそれほど高くない政治家と自己保身で危機感しか語らなくなった専門家とのマッチアップもあまりよくなかったのかもしれません。

 おっと話が脱線しました。なぜこの時期にレッドリボンなのか。30周年というだけにとどまらない含意もあるのではないか。TOP-HAT News 第156号の巻頭ではそのあたりのことにも少し触れています。

 ま、首相には、せっかくここまで決断されたのだから、ご本人も話されているようにコロナ対策に集中して残り少ない任期をまっとうしていただきましょう。

 

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        第156号(2021年8月)

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに レッドリボン30周年

 

2 ウェビナー「HIV陽性者と新型コロナワクチン」 動画を公開

 

3  IAS2021の公式ニュースレポートを日本語で紹介

 

4  グローバルファンド ファクトシート最新版(2021年7月)を発行

 

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1 はじめに レッドリボン30周年

 世界エイズデー(12月1日)を中心にした2021年国内啓発キャンペーンのテーマが『レッドリボン30周年 ~Think Together Again~』に決まりました。

 厚生労働省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱するこのキャンペーンは、毎年のテーマを設定し、全国の自治体やエイズ関連のNPOなどがテーマを踏まえつつ、それぞれの立場で12月1日前後の約1カ月を中心に啓発活動を展開しています。

 2020、21年には新型コロナウイルス感染症COVID-19という新たなパンデミックが拡大し、我が国も大きな混乱と試練に直面してきました。その中で「レッドリボン」を2021年キャンペーンの中心に据えるのはどうしてなのか。Think Together Againはそのことを改めて考えてみましょうというメッセージです。

 帯状の赤い布を短く切り、逆V字型にくるっと巻いてピンでとめる。そのリボンを胸や襟に着けることで、エイズで亡くなった人を偲び、厳しい病と闘う人やケアに当たる人への励ましと思いやりの気持ちを示す。

国際的なエイズ対策のシンボルとなっているレッドリボンが生まれたのは1991年の春でした。全米でエイズの影響が最も深刻だった米国東海岸のニューヨークで、Visual AIDS(ビジュアルエイズ)という美術系の団体のアーティストたちが十数人規模の小さな会合を開いたのがきっかけです。

ニューヨークでは当時、数多くの舞台関係者やアーティストがエイズで亡くなっています。しかも、町の中では、致死的な感染症への恐怖と不安から、エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人を遠ざけ、エイズについて話題にすることを避けるような雰囲気も広がっていました。

会合に参加したアーティストたちは、そうした状態を克服するにはどうしたらいいのかを話し合い、まずエイズについて話題にするきっかけ生み出すようなシンボルが必要なのではないかと考えたのです。

それがレッドリボンになったのは、簡単に作れて誰もが身に着けられるからでした。血液はHIVの主要感染経路の一つなので、赤い色にはどこか、まがまがしいイメージも付きまとってもいましたが、それを超えた愛や情熱を表す色として選ばれました。

 2021年は、レッドリボン30周年であると同時に、エイズの最初の公式症例が報告された1981年を起点とするとエイズ流行40周年でもあります。

つまり、致死率が極めて高く、当時はまだ、有効な治療法もなかったエイズという新興感染症の流行に直面し、感染の恐怖と不安と混乱を克服するためには、10年の歳月が必要でした。

HIV/エイズ分野の3つのNPOエイズ予防財団が中心となって運営する情報共有型サイト『Community Action on AIDS(コミュニティアクション)』には、今年のキャンペーンテーマについて次のような説明があります。

 『さらにその節目の年に奇しくも、新型コロナウイルス感染症COVID-19というもう一つ新興感染症パンデミックが拡大し、世界も、そして日本も、動揺を続けてきました。40年にわたって蓄積されてきたHIV/エイズの経験を新たな危機への対応にどう生かしていくのか。このこともいま、エイズ対策の新たな、そして喫緊の課題となっています』

 エイズがもたらした恐怖と不安の中でレッドリボンが生まれたのは30年も前のことでした。しかし、それは決して過去のシンボルではなく、終わった話でもありません。

 『ウイルスによって隔てられた人と人との距離を物理的には受け止めつつ、その分断を乗り越え、信頼のきずなを取り戻していくにはどうしたらいいのか。もう一度、一緒に考えたい。2021年世界エイズデーは、レッドリボンの30年に焦点を当て、新たな困難を乗り越える力を取り戻す機会にしましょう』

 詳しくはコミュニティアクションのサイトでご覧ください。

  http://www.ca-aids.jp/

また、API-Net(エイズ予防情報ネット)には、令和3年度「世界エイズデー」キャンペーンについて、厚労省による「テーマの趣旨」が紹介されています。

 https://api-net.jfap.or.jp/edification/aids/camp2021.html

 

 

2  ウェビナー「HIV陽性者と新型コロナワクチン」 動画を公開

  ぷれいす東京の「ネスト・プログラム」が7月14日にオンライン開催したウェビナー『感染症の専門家と話そう~HIV陽性者と新型コロナワクチン』の動画が公開されています。講師はHIV診療を長く続けてこられた医師の高田昇さんです。

 ぷれいす東京公式サイトの下記お知らせページから画像をクリックすると動画を見ることができます。

 https://ptokyo.org/news/13917

 豊富なスライドデータもあります。高田さんからはウェビナー終了後、「新型コロナをめぐっては早い展開をしているので、講演の時点の内容が、今後わかる最新知見とは食い違っているかもしれません」とのコメントも寄せられています。誠実かつ親切ですね。この点も了解したうえでご覧ください。

 

 

3  IAS2021の公式ニュースレポートを日本語で紹介

 第11回国際エイズ学会HIV科学会議(IAS2021)が7月18日から21日まで、オンラインで開催されました。

 この会議のオフィシャル・メディアパートナーであるNAMのIAS2021公式ニュースレポートがPractice Updates : HIV Management(HIVの治療戦略)のサイトに日本語訳で掲載されています。

 https://www.mncs.co.jp/news/cco/

 公益財団法人エイズ予防財団の公式サイトからも「HIVの治療戦略」のバナーをクリックすればリンクできます。

 https://www.jfap.or.jp/

 NAMは英国に拠点を置く独立のチャリティ組織で、HIVエイズに関する正確で信頼できる情報の提供を目的としています。

 

 

4 グローバルファンド ファクトシート最新版(2021年7月)を発行

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の概要を紹介したファクトシートが、グローバルファンド日本委員会の公式サイトに掲載されています。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2021_07_02_fact_sheet_july2021

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