HIV変異株も出てきたぞ エイズと社会ウェブ版597

 

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行は、感染力が強いオミクロン株の登場で新たな局面を迎えています。病気の原因となるウイルスがどう変化するのか。変異株に対する世の中の関心もにわかに高まりました。

 個人的には、医学やウイルスの性質に詳しいわけではまったくなく、素人の聞きかじり情報で恐縮ですが、エイズの原因となるHIVはどうなんだろうか、これまでより感染力が強く、病原性も高いウイルスが出てきたら大変・・・などと思っていたら、それを見透かしたように2月7日付けで、国連合同エイズ計画(UNAIDS)のプレス声明が発表されました。

www.unaids.org

 日本語に訳すと、『急速に拡大しているHIV変異株の特定は、全てのHIV陽性者に検査と治療を提供し、パンデミックにストップをかけることが緊急課題であることを示す』といったところでしょうか。

 これまでよりも感染力が強く、症状も厳しいHIV変異株の存在がオランダにおけるコホートの研究で明らかになったということです。もとの研究報告は科学誌Scienceのウエブサイトに2月3日付けで紹介されています。とても論文までは読み切れませんが、冒頭の紹介部分によると、そのウイルスは、HIV-1のサブタイプBの変異株で、2000年ごろに登場し、100人以上の感染が確認されているということです。

 感染が診断されてからエイズ発症に至る期間も短く、かなり困った変異株のようですが、実は早期に抗レトロウイルス治療を受けていれば、CD4細胞数の回復も、死亡率も、この変異株以外のHIVと比べ大きな違いはないということです。

 ああ、なるほど・・・という感じですね。数多ある研究の中から、UNAIDSがあえてこの研究に注目してプレス声明まで発表したのは、だから早期にHIV検査で自らの感染を確認し、治療を受けることがいま緊急に必要ですよということを強調したかったからでしょう。もちろん、その指摘が間違っているというわけではなく、重要なメッセージであるとも思います(たぶん)。当面の世の中の関心事にメッセージを重ねていこうとする手法も非難すべきものではありません(たぶん)。

 でも、世の中を斜めに見たがる老人としては、変異株に対する恐怖や不安にうまく乗せられちゃったなあという印象もかすかに残ります。

 と言いつつ、以下、プレス声明の私家版日本語仮訳です。

 

 

急速に拡大しているHIV変異株の特定は、全てのHIV陽性者に検査と治療を提供し、パンデミックにストップをかけることが緊急課題であることを示す

 1000万人のHIV陽性者がいまなお抗レトロウイルス治療を受けていません

UNAIDS プレス声明

 

ジュネーブ 2022年2月7 - これまでより感染力が強く、症状も厳しいHIV変異株の存在がオランダの研究で明らかになりました。HIVの新たな変異株(サブタイプ)に感染した人は、免疫システムの低下率(CD4数の減少)が2倍になり、血中のウイルス(HIV)量が高く、診断後のエイズ発症も2〜3倍速まっています。この研究は、非常に病原性の高いHIVサブタイプB変異株を最初に発見したもので、オックスフォード大学ビッグデータ研究所の研究者が主導しています。また、研究によると、この変異株はオランダですでに何年にもわたって流行しており、HIV治療の効果が認められています。

HIVパンデミックは毎分、毎分、人びとの生命を奪い続けています。そして、医学者たちは以前から、HIVの新たな、そして感染力の強い変異株が出てくることを懸念してきました。新たに特定された変異株は、公衆衛生上の大きな脅威というわけではありません。しかし、HIVパンデミックを食い止めるための対応を緊急にスピードアップしなければならないことを強く訴えるものです。

「世界全体では1000万人のHIV陽性者がまだ治療を受けていません。ウイルスが継続的に拡散し、さらなる変異株出現の可能性もあるのです」とUNAIDSのイーモン・マーフィー副事務局長は語っています。「最も医療を必要としているコミュニティにその医療を届けられるよう最先端の医療イノベーションを急がなければなりません。HIV治療にしても、COVID-19ワクチンにしても、アクセスの不平等は私たち全員に打撃を与えるかたちでパンデミックを永続させることになります」

HIVは依然として、同時代の最も致命的なパンデミックです。亡くなった人も含めこれまでに推定7900万人が感染しています。ワクチンも完治のための治療法もありません。パンデミックが始まって以来、エイズ関連の病気で亡くなった人は推定3600万人に達し、2020年には年間150万人が新たにHIVに感染しています。世界のHIV陽性者数は約3800万人で、このうち2800万人が命を救う抗レトロウイルス療法を受けています。治療の継続により、自らの健康に保つとともに、他の人へのHIV感染を防いでいるのです。

 

UNAIDS PRESS STATEMENT

Identification of fast-spreading HIV variant provides evidence of urgency to halt the pandemic and reach all with testing and treatment

Around 10 million people living with HIV are still not on antiretroviral therapy

 

GENEVA, 7 February 2022—Newly published research from the Netherlands has revealed the existence of a more transmissible and damaging variant of HIV. People living with the newly revealed HIV subtype experience double the rate of immune system decline (CD4 count), have higher HIV viral loads (amount of virus in the blood) and are vulnerable to developing AIDS two to three times faster after diagnosis than if they were living with other strains of the virus. The study, led by researchers from the University of Oxford’s Big Data Institute, was the first to discover this highly virulent variant of the subtype-B of HIV. The study also revealed that the variant has been circulating in the Netherlands for years and remains receptive to HIV treatment.

The HIV pandemic continues to take a life every minute and scientists have long worried about the evolution of new, more transmissible, variants of HIV. This newly identified variant does not represent a major public health threat but underscores the urgency of speeding up efforts to halt the HIV pandemic.

“Ten million people living with HIV worldwide are not yet on treatment, fuelling the continued spread of the virus and potential for further variants,” said Eamonn Murphy, UNAIDS Deputy Executive Director, Programme, a.i. “We urgently need to deploy cutting-edge medical innovations in ways that reach the communities most in need. Whether it’s HIV treatment or COVID-19 vaccines, inequalities in access are perpetuating pandemics in ways that harm us all.”

HIV remains the deadliest pandemic of our time—an estimated 79 million people have become infected with the virus, for which there is still no vaccine and no cure. Some 36 million people have died from AIDS-related illnesses since the start of the pandemic and 1.5 million people were newly infected with HIV in 2020. Of the 38 million people living with HIV today, 28 million are on life-saving antiretroviral therapy, keeping them alive and well and preventing transmission of the virus.

 

HIV/エイズ対策はCOVID-19の混乱をどのように克服してきたのか エイズと社会ウェブ版596

 コロナの流行が続く中で、世界のエイズ対策はどのように予防や治療、支援の対策を継続してきたか。各国政府やコミュニティ組織、国際機関などの2年にわたる経験を踏まえたバーチャル会合(国際協議)が2月1・2日の2日間、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、世界保健機関(WHO)、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)、国際エイズ学会(IAS)、コロンビア大学エイズケアと治療プログラム国際センター(ICAP)の共催で開かれました。その模様を伝えるUNAIDSの特集記事です。英文記事はこちら。

 

www.unaids.org

 

 COVID-19の流行拡大を抑えるためのロックアウト政策などで、世界各国のHIV/エイズ関連の治療やケア、予防、支援の対策も大きな打撃を受けたものの、その影響を克服し、目覚ましい復元力を示したと報告しています。

 UNAIDS、WHO、グローバルファンド、PEPFARが各国から収集したデータによると『多くの国でHIVサービスの中断が最も深刻だったのは2020年の初めから半ばにかけて最初のロックダウンが実施された期間』でした。

 HIV陽性者の多くにとって抗レトロウイルス薬の入手が困難になり、HIV検査やHIV陽性が判明した人の治療開始も遅れ、コンドームや曝露前予防(PrEP)などのHIV予防ツールの提供もほぼ停止してしまったということです。

 同時にこうした困難を克服するためのイノベーションも大きく進み、当面の危機対応だけでなく、今後もやってくるかもしれない新たなパンデミック対策にも大きな貢献になる。 その大きな力になったのは「人を中心に据え、利用者の事情に合わせた分化型サービスを優先させる」という考え方であり、実はそれは世界のHIV/エイズ対策が実現に力を入れてきた課題でもあった。そして、その課題の実現に向けたイノベーションが一気に進んだことは新たな希望でもあり・・・というわけで、ちょっと図式的な印象がないわけではありませんが、そんな形で議論は進んでいったようです。

 以下、日本語仮訳です。

 

   ◇

 

各国のエイズ対策が、構造的な障壁に取り組み、COVID-19の混乱から脱し、エイズ終結への軌道に戻るために、COVID-19への対応を緊急に整えることを要請  2022年2月3日

 

2年に及ぶCOVID-19の流行で限界に達しようとしているコミュニティと医療のシステムに対し、オミクロン株の拡大が追い打ちをかけようとしている中で、HIV対策担当者とコミュニティ代表によるバーチャル会合が開かれました。会合では、エイズ対策を軌道に戻す方策を検討し、同時進行する2つのパンデミックの課題克服策を提案しています。

開会にあたり、UNAIDSのイーモン・マーフィー副事務局長は「COVID-19パンデミックは、世界の医療サービスをさまざまな時期にさまざまな方法で混乱させ、しかも流行はいまも続いています」と述べました。「それでも私たちは一方で大きな成果を収めてもいます。目覚ましい復元力とプログラムの回復に関する報告とデータが次々に寄せられ検証されているのです」

参加者からは、HIVサービスを最も必要とする人たちにそのサービスを届けることを可能にした効果的なイノベーション事例の報告があり、COVID-19の拡大に対応するための追跡調査と対策が提案されました。

「私たちは過去2年にわたるCOVID-19パンデミックの経験から多くのことを学んできました。各国とコミュニティは最悪の事態を想定し、効果的に対応してほとんどのHIVサービスを維持しています。サービスのギャップや混乱を補う必要は一定程度あるにしても、こうした対応により、HIV陽性者のほとんどが治療を継続しているのです」と世界保健機関(WHO)の世界HIV・肝炎・STIプログラム局長、メグ・ドハティは語っています。

HIV陽性者およびHIV感染の高いリスクに直面するキーポピュレーションのネットワークは、生命を救うために必要なHIVサービスが日常生活で直面するスティグマや差別、構造的障壁に対処していないことをしばしば警告してきました。多くの人がCOVID-19により、うつ病や暴力、その他の危害に対して脆弱な状態に追い込まれています。

「治療が確実に受け続けられるように人びとは懸命に働いています。しかし、COVID-19の流行が続くことで、生計の手段を失い、コミュニティと家族のために引き受けなければならない責任も大きくなっているのです」と世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)のプログラム・マネージャー、フローレンス・アナムは指摘しました。「コミュニティによる保健システム強化、およびメンタルヘルスと心理社会的支援の統合がこれまで以上に重要です。不平等を解消し、人びとが可能な限り基本的なニーズを満たせるよう経済的権限を与える。このことに焦点を当てる必要があります」

UNAIDS、WHO、世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)、米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)が収集した国別データによると、多くの国でHIVサービスの中断が最も深刻だったのは2020年の初めから半ばにかけて最初のロックダウンが実施された間でした。COVID-19に対応するための移動制限と保健システムの崩壊により、HIV陽性者の多くが健康を維持するために毎日服用すべき薬を入手できなくなりました。HIV検査、新たにHIV陽性が判明した人の治療開始、コンドームや曝露前予防などのHIV予防ツールの提供もほぼ停止しています。多くの国で、自発的男性器包皮切除、トランスジェンダーの人たちへの医療サービス、その他の緊急ではない医療処置は完全に停止されました。

この中断が長期化すれば、エイズ関連の病気や死亡が増加し、何十年にもわたるHIV封じ込めの努力が損なわれる恐れもありました。世界中のプログラムが、HIV陽性者や、HIV感染の高いリスクに直面するキーポピュレーションにサービスを届ける新たな方法を見出すためにスクランブルをかけたのです。

 その中には、影響を受けているコミュニティと協力して抗レトロウイルス薬を戸別に届けること、診察の頻度を減らすために薬の長期処方を可能にすることも含まれています。抗レトロウイルス薬の複数月調剤は、患者に便利であり、医療システム側の負荷も軽減できることから、WHOが2016年に推奨していたものでもあります。

 こうした調整により、ほとんどのHIV治療プログラムが短期間で回復しています。

「ほとんどの低・中所得国のHIV治療プログラムが迅速にCOVID-19に対応し、20年間に及ぶ成果の蓄積を守りました。このことはデータで示されています」とグローバルファンドのHIV責任者、シオバン・クロウリーは述べています。「HIVサービスの強固なプラットフォームとHIV分野の市民社会の熱意により、COVID-19やその他の公衆衛生上の脅威に対する統合的サービスの基盤を整える態勢ができています。この目覚ましい成果を維持し広げていくには、すべての利害関係者による投資をもっと増やさなければなりません」

米グローバルエイズ調整官事務所のイラム・ザイディ副調整官は、COVID-19の流行以前に採用されていた保健情報システム強化と人びと中心のアプローチが、新たなパンデミックへの迅速な対応にも不可欠なことを強調しています。

 「PEPFARとパートナー国政府は4年間にわたり、人びとを中心にしたHIV医療サービスの提供というWHO方針の実現に向けて協力してきました」とザイディ副調整官は語っています。「COVID-19の流行期間中にこの動きは急速に広がりました。生涯にわたって受け続ける必要がある抗レトロウイルス治療の中断を回避するため、柔軟なサービス提供環境が確立されていったのです。PEPFARの関与により、リアルタイムできめ細かいデータが提供され、かつてない危機の中で政府と利用者を支援する方策が示されました」

有望で、比較的新しいHIV予防の選択肢-感染リスクの高い人があらかじめ抗レトロウイルス薬の服用すること、曝露前予防(PrEP)と呼ばれる-も、COVID-19がもたらした課題克服策を導入することで、急速に利用が広がっています。イノベーションには遠隔診察、屋外相談、ソーシャルメディアを活用した服薬継続のバーチャルサポート、PrEP薬の宅配などが含まれます。HIV自己検査の普及は、PrEPとHIV治療の両方の拡大に役立っています。

「COVID-19がもたらす課題を克服したのは、人を中心に据え、利用者の事情に合わせた分化型サービスを優先させることでした。この復元力を持続させる必要があります」と国際エイズ学会(IAS)のアディーバ・カマルザマン理事長は指摘します。

会合では、COVID-19対策が現行の急性期のパンデミック対策から、将来的にはHIV結核、その他の感染症と同じように、より持続的な流行の管理プログラムに移行することも見据えて協議が行われました。

 最良のシナリオであっても、 いまサービス利用に困難を感じている人たちが利用しやすくなる環境を確立し、緊急時に対応できるようにしておく必要があること、そしてHIVプログラムがCOVID-19の影響から完全に回復し2030年までのエイズ流行終結という世界的な目標を達成できるようにすることに、参加者は同意しました。

「おそらく、COVID-19パンデミックがもたらす希望の光のひとつは、イノベーションを促し、国やコミュニティが大急ぎでそれを採用しようとしていることです。HIV対策に永続的な効果をもたらすだけでなく、他の健康課題に取り組むためのモデルにもなります」とICAPの創設者でもあるワファス・エルサドル代表は話しています。

 この会合は2月1、2日にUNAIDS、WHO、グローバルファンド、PEPFAR、国際エイズ学会、コロンビア大学のICAPが共催しました。

 

 

 

 

 

 

Consultation calls for the global AIDS response to build on emergency adaptations to COVID-19, tackle structural barriers and ensure that country programmes fully recover from COVID-19 disruptions and end AIDS

03 FEBRUARY 2022

 

As the Omicron variant surges through communities and health systems already stretched to the breaking point by two years of COVID-19, HIV programme managers and community representatives gathered virtually to review efforts to keep the AIDS response on track and propose ways to better overcome the challenges caused by two clashing pandemics. 

“The COVID-19 pandemic has disrupted health services worldwide, at different times and in different ways, and it continues to do so,” UNAIDS Deputy Executive Director, Programme, a.i., Eamonn Murphy said at the opening of the consultation. “But at the same time we’re hearing great successes. Stories and data of impressive resilience and programmatic rebound are increasingly being documented and researched.”

The participants identified the most effective innovations that have allowed HIV services to continue to reach those who need them the most and proposed follow-up research and actions that can help guard against future waves of COVID-19 infections. 

“We have learned so much over the past two years of the COVID-19 pandemic. Anticipating the worst, countries and communities rallied effectively to adapt and maintain most HIV services. These global efforts have meant that although there have been gaps and disruptions to services, and some catch-up will be needed, most people living with HIV continued successfully on treatment,” said Meg Doherty, the World Health Organization (WHO) Director of Global HIV, Hepatitis and STI Programmes.

Networks of people living with HIV and key populations at higher risk of HIV infection warned that the often life-saving adaptations made to HIV services have not addressed the stigma, discrimination and structural barriers they face in their day-to-day lives. In addition, COVID-19 has left many even more vulnerable to depression, violence and other harms.

“People are working hard to ensure that treatment is still available and accessible, but people have also lost livelihoods during COVID-19, and they have taken on additional community and family responsibilities,” said Florence Anam, a Programme Manager at the Global Network of People Living with HIV (GNP+). “Strengthening of community systems of health, and the integration of mental health and psychosocial support is more important now than ever. We need to focus on reducing inequities and ensuring that people are economically empowered enough to meet their basic needs as much as possible.”

Country data collected by UNAIDS, WHO, the Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria (Global Fund) and the United States President’s Emergency Plan for AIDS Relief (PEPFAR) show that HIV service disruptions were most severe during the first lockdowns that many countries put in place in early to mid-2020. A combination of movement restrictions and health systems overwhelmed by COVID-19 cases cut off many people living with HIV from the daily medicines they need to stay healthy. HIV testing, the enrolment of people newly diagnosed onto treatment and the provision of HIV prevention tools such as condoms and pre-exposure prophylaxis nearly ground to a halt. Voluntary medical male circumcision, health services for transgender people and other elective medical procedures were suspended altogether in many countries.

Prolonged service interruptions could have led to a wave of AIDS-related illnesses and deaths, undermining decades of efforts to contain the HIV virus. Programmes across the world scrambled to find new ways to reach people living with HIV and the key populations who are at highest risk of HIV infection.

These measures included working with affected communities to deliver antiretroviral medicines door to door and to increase the quantity of medicines provided during each visit in order to reduce the frequency of medical appointments. This multimonth dispensing of antiretroviral medicines has been recommended by WHO since 2016, as it is easier for the patient and reduces the workload of the health system. 

Most HIV treatment programmes quickly rebounded after adaptations were put in place.

“The data show that most national HIV treatment programmes in low- and middle-income countries responded with extraordinary resilience to protect 20 years of hard-earned gains through rapid adoption of COVID-19 adaptations,” said Siobhan Crowley, Head of HIV at the Global Fund. “The strong HIV services platform and highly engaged HIV civil society are well poised to serve as an important foundation for integrated services to tackle COVID-19 and other public health threats, but increased investment from all stakeholders is needed to sustain and build on these impressive achievements.”

Irum Zaidi, the Deputy Coordinator at the Office of the United States Global AIDS Coordinator, stressed that the strengthening of health information systems and the adoption of people-centred approaches in the years before COVID-19 was critical to the rapid reaction to the challenges created by the new pandemic.

“Over the past four years, PEPFAR and partner country governments collaborated to implement WHO policies and adaptations for providing people-centred clinical HIV services,” Ms Zaidi said. “These adaptations were rapidly scaled during COVID-19, establishing a flexible service delivery environment to keep individuals on lifelong antiretroviral therapy during COVID-19 surges. Granular real-time data along with PEPFAR’s commitment provided a path forward to support governments and beneficiaries during this unprecedented time.”

Efforts to expand access to a relatively new and promising HIV prevention option—antiretroviral medicines pre-emptively taken by people at higher risk of infection, known as pre-exposure prophylaxis, or PrEP—were also rapidly adjusted to overcome COVID-19 challenges. Those adaptations have included the shifting of clinical consultations to telemedicine and outdoor settings, the use of social media for virtual adherence support and home delivery of PrEP pills. Expansion of self-testing for HIV has helped to maintain the expansion of both PrEP and HIV treatment. 

“We need to keep building the resilience that HIV services have shown by prioritizing person-centred differentiated service delivery in response to challenges posed by COVID-19,” said Adeeba Kamarulzaman, the President of the International AIDS Society.

The consultation looked ahead to a future where the COVID-19 response transitions from an acute pandemic phase to a more sustained control programme, similar to the responses to HIV, tuberculosis and other infectious diseases.

The participants agreed that, even within a best-case scenario, it will be important to build on emergency adaptations by establishing a more enabling environment for the populations who currently struggle to access services, and to ensure that HIV programmes can fully recover from COVID-19 shocks and reach the global goal of ending the AIDS pandemic by 2030.

“Perhaps one of the silver linings of the COVID-19 pandemic is how it sparked innovation and inspired their rapid adoption by countries and communities. These will have not only a positive and durable effect on the HIV response but offer models for others to adapt in tackling other health challenges,” said Wafaa El-Sadr, the founder and Director of ICAP.

The consultation, held on 1 and 2 February, was co-organized by UNAIDS, WHO, the Global Fund, PEPFAR, the International AIDS Society and I

グローバルファンド 20歳に TOP-HAT News 第161号(2022年1月) エイズと社会ウェブ版595

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)は2002年1月に活動を開始しました。つまり今年の1月で創設20周年を迎えました。日本では初期の略称が「世界基金」でしたが、2014年10月に英語の略称がThe Global Fandとなったのに合わせ、カタカナ表記でグローバルファンドと呼ばれるようになっています。 

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 国内では2004年にグローバルファンドの活動を支援する世界基金支援日本委員会が発足していますが、その名称もグローバルファンド日本委員会(FGFJ)に変わっています。委員会の公式サイトには、グローバルファンドの歴史から最新情報まで日本語で情報が満載されているので、ぜひ参考にしてください。

 https://fgfj.jcie.or.jp/

 というわけで、TOP-HAT News 第161号(2022年1月)は巻頭で『グローバルファンド20歳に』を特集しました。

『2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています』(FGFJ公式サイト)

グローバルファンドの使命は、エイズ結核マラリアの三大感染症を克服することです。ただし、そのためには世界各国の保健基盤の強化にも力を入れる必要があります。グローバルファンドの次期戦略(2023-28)『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』にもこのことは明記されています。合わせてお読みください。

世界も日本もいま、COVID-19の流行の真っただ中にあります。かなり長引いています。社会的な波紋も小さくありません。どうなっているんだと言いたくなることもあります。

それでも、グローバルファンドの創設に代表される21世紀初頭からの様々な成果が、いまはCOVID-19対策で途上国の検査やワクチンの普及を進める動きを理念と実践の両面から支えている。三大感染症対策を超えて(あるいは踏まえて)、新たなパンデミック対策に大きな影響をもたらしていることもこの際、認識しておく必要がありそうです。

 

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第161号(2022年1月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに グローバルファンド20歳に

2 『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』

3 デズモンド・ツツ大主教を追悼 UNAIDSがプレスリリース

4 第36回日本エイズ学会公式サイト

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに グローバルファンド20歳に

 2002年1月に活動を開始した世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)が今月、20周年を迎えました。国内でこの基金の活動を応援してきたグローバルファンド日本委員会(FGFJ)の公式サイトには次のように書かれています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/global-fund

『三大感染症といわれるエイズ結核マラリアは、世界で年間240万人以上もの命を奪い、貧しい国の発展を妨げる重大な要因となっています。グローバルファンドは、低・中所得国のこれら三疾病対策のために資金を提供する機関として、2002年1月にスイスに設立されました』

 残念ながら日本国内ではあまり知られていないようですが、この基金が誕生するきっかけになったのは日本です。

『2000年のG8九州・沖縄サミットで、議長国日本が感染症対策を主要課題として取り上げ、追加的資金調達と国際的なパートナーシップの必要性についてG8諸国が確認したことが、グローバルファンド設立の発端となりました。このことから、日本はグローバルファンドの「生みの親」のひとつと言われています』(FGFJ公式サイト)

 いまパンデミックといえば、大方の人は新型コロナウイルス感染症COVID-19を思い浮かべるでしょう。グローバルファンドの使命は上記三大感染症の終息ですが、そのためには感染症対策を支える土台とも言うべき低・中所得国の保健基盤強化にも力を入れる必要があります。

 COVID-19対策にも共通して言えることですが、どこか一国だけで自国内の流行を抑え込むことはできません。パンデミック対策には国際的な支え合いが必要です。治療薬やワクチンが開発されたとしても、世界中で使えるようにならなければ結局、十分な成果は期待できなくなってしまいます。

 では、どうしたらいいのか。そこで製薬特許の壁を克服する試みを含め、安価で質の高い治療薬の普及に向けた様々な対応が開始されたのが21世紀の初頭でした。グローバルファンドが途上国の三大感染症対策への資金を確保するための国際機関として登場したのもこのためです。

 HIV/エイズ対策を例にとると、世界のHIV陽性者数は現在、3770万人と推定され、そのほぼ4分の3に相当する推定2820万人が抗レトロウイルス治療を受けています。

 2003年の世界エイズデー(12月1日)に国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)が発表した3by5計画は「2005年までに300万人に治療を提供すること」を目指していました。当時は、抗レトロウイルス治療を受けなければ2年以内に死亡する低・中所得国のHIV陽性者は600万人と推定されており、そのせめて半数には必要な治療を提供できるようにしようという構想でした。感染症の専門家の多くが「それは無理」と考えるほど当時としては野心的な目標でしたが、2年遅れの2007年には実現しています。そしていまは、3by5のほぼ10倍に相当するHIV陽性者が治療を受けられるようになっているのです。

 もちろん、1000万人近いHIV陽性者がいまなお必要な治療を受けられずにいるという現実もその一方ではあります。エイズはまだ終わっていません。ただし、グローバルファンドの創設に代表される21世紀初頭からの様々な成果が、いまはCOVID-19対策で途上国の検査やワクチンの普及を進める動きを理念と実践の両面から支えるなど、三大感染症対策を超えて大きな影響をもたらしていることも認識しておく必要がありそうです。

 

2  『パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を』

 COVID-19対策ともかかわるグローバルファンドの最近の動きをFGFJのサイトからもう少し紹介しましょう。グローバルファンド理事会は昨年11月、2023-28年の新戦略『Fighting Pandemics and Building a Healthier and More Equitable World(パンデミックと闘い、より公平で健康な世界を構築)』を承認しています。

 https://fgfj.jcie.or.jp/topics/2021-11-10_gfnewstrategy2023-2028

『2020年はグローバルファンド発足以来、毎年順調に伸びてきたエイズ結核マラリア対策の主要な指標上の実績が初めて前年の実績を下回りました』

COVID-19パンデミックの影響は三大感染症対策にも打撃を与えています。そこから対策をどう立て直していくかが新戦略の課題であり、

『三疾患すべてにおいて、予防をより強化』

『三疾患とともに生き、影響を受けているコミュニティの役割と発言力を強化』

『不平等、人権およびジェンダー関連の障壁に対処するための活動を強化』

『将来のパンデミックへの備えと対応においてグローバルファンドのパートナーシップが果たせる、また果たすべき役割を明示』

など10項目を特徴として挙げています。

 

3 デズモンド・ツツ大主教を追悼 UNAIDSがプレスリリース

 昨年12月26日に90歳で亡くなった南アフリカデズモンド・ツツ大司教を追悼し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が同日付で『世界のエイズ対策は偉大なチャンピオンを失う』という見出しのプレスリリースを発表しました。

 https://asajp.at.webry.info/202112/article_4.html

 ツツ元大主教は南アのアパルトヘイト(人種隔離)撤廃に尽力し、1984年にはノーベル平和賞を受賞しています。エイズ対策についても、HIV陽性者、エイズに影響を受けている人たちの権利を擁護する発言を続け、治療薬へのアクセス確保を求めてきました。

 

4 第36回日本エイズ学会公式サイト

 『Resistance ~耐性との闘い/差別との闘い』をテーマにした第36回日本エイズ学会学術集会・総会の公式サイトが開設されました。

 http://aids36.umin.jp/

 前号でもお伝えしましたが、会期は11月18日(金)~20日(日)、会場は静岡県浜松市の『アクトシティ浜松』。サイトに掲載された杉浦亙会長(国立国際医療研究センター 臨床研究センター長)の挨拶によると(COVID-19が)『本学会を開催する2022年11月頃にどのような感染状況になっているか見通しは定かではありませんが、現時点では全セッション対面での開催を考えております』ということです。

 

『HIV予防カスケードをつくる』 エイズと社会ウェブ版594

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が昨年11月に発表した『Creating HIV prevention cascades(HIV予防カスケードをつくる)』という報告書を翻訳しました。エイズ予防情報ネット(API-Net)にPDF日本語仮訳版が掲載されています。

  f:id:miyatak:20220131143427p:plain

api-net.jfap.or.jp

 最初に報告書の英文タイトルを見たときに「つくる」って言われても、もう90-90-90ターゲットがあるでは? と少々、戸惑いました。

 でも、90-90-90ターゲットはあくまでケアのカスケードです。それが予防にも有効だということで、2014年ごろからUNAIDSが大々的にキャンペーンを展開してきた経緯があります。

 したがって、おっちょこちょいの私などは、若干の違和感を抱えつつも、ついつい「これこそ予防カスケード」と思い込んでしまったようです。いつもながら不明を恥じるばかり・・・。

 報告書の指摘にもあるように、予防に関していえば、90-90-90の対象は、HIVに感染している人から他の人への感染を防ぐという「二次予防」にとどまっています。

 『対策の効果を高めるには(一次予防として)感染の最も高いリスクに直面している人に焦点を合わせ、受け入れやすく、利用しやすいHIV予防プログラムにする必要があります』(報告書Summaryから)

 なるほど、そういうことでしたか。早く言ってよ。

 UNAIDSはこれまで、ターゲットが達成されれば、90-90-90の成果として2020年には世界の成人の新規HIV感染者数もエイズ関連の死者数も、年間50万人未満に減少するとの予測を示していました。

 実際にはどうだったのか。UNAIDSが公表しているファクトシートでは、2020年末のケアカスケードは次のようになっています。

 自分の感染を知っているHIV陽性者          84%

   このうち抗レトロウイルス治療を受けている人    87%

   さらにこのうち体内のHIV量が検出限界値未満の人 90%

 つまり、84-87-90です。掛け合わせるとHIV陽性者全体のうち66%が検出限界値未満を達成、維持していることになります。90-90-90の72.9%には届かないものの、かなり善戦健闘しています。

 検査と治療の普及に力を入れてきた成果は小さくありません。

 一方で、世界のHIV陽性者数は推計3760万人、年間の新規感染者数は推計150万人、エイズ関連の死者数は推計69万人です。

 つまり、エイズ関連の死者は大きく減少したものの、新規感染者数の方は90-90-90が実現した暁に期待された50万人の3倍です。減少したとはいえ、期待通りの成果が上がったとは言えません。

 ということで、グダグダと聞きかじりの数字を並べたうえで、個人的感想を言えば、90-90-90はケアカスケードであり、予防のカスケードとして使うには、限界があるのかもしれませんね。もちろん、無意味ということではないと思います。予防対策上は限界も織り込みつつ、今後も一応の指標として参考にしていくことはできると思います。

 したがって90-90-90は尊重しつつも、じゃあ、有効な予防カスケードはあるのかという少々、込み入った話になりますが、コンドーム使用やPrEPなど一次予防も含めたカスケードを作るとなると、これがなかなか一筋縄ではいきません。

 実は、そのあたりの期待と混乱を整理しつつまとめたのが『HIV予防カスケードをつくる』という報告書です。世界各地で予防対策に取り組む政府機関やNGOの実務担当者向けガイダンス(手引き)ということなので、かなりテクニカルな内容で、やたらと表が登場します。

 しかも、これだというカスケードが示されているわけではありません。

 一定の指標となり得るものを示しつつ、それぞれの実情に応じながら工夫していきましょうということに落ち着き、訳しているとどこかはぐらかされた印象も受けました。

でも、そのはぐらかされ具合が、息の長いパンデミック対策には必要なのかもしれません。どうしたら現実と対策のギャップを埋めることができるのか。参考になる記述もたくさんあるので、適当に飛ばしながらでも、お読みいただければ幸いです。

 

 

 

 

2021年の年間速報値は356件 東京都エイズ通信 

 メルマガ東京都エイズ通信第173号が28日、配信されました。昨年年間の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の速報値は合計で356件でした。2020年より27件少なくなっています。

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  • 令和4年1月1日から令和4年1月23日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

 

HIV感染者       12件    (18件)

AIDS患者         7件    ( 6件)

    合計             19件     (24件)

 

(参考)

 令和3年1月1日から12月31日までの感染者報告数(東京都・速報値)

※( )は令和2年1月1日から12月31日までの報告数(東京都・確定値)

 

HIV感染者      293件   (304件)

AIDS患者        63件    (79件)

   合計            356件    (383件)

 

HIV感染者数及びAIDS患者共に令和2年よりも減少している。

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 コロナの影響が続き、年明けもHIV感染報告は前年を下回ってスタートしました。

東京都新宿東口検査・相談室/東京都多摩地域検査・相談室は、引き続き開設。新宿東口検査・相談室では平日夜間、土日に、HIV検査が無料・匿名・予約制で受けられます。

 https://www.tmsks.jp/reservation.htm

 HIV検査にはなかなか関心が向かない時期ですが、だからこそ逆に大切な情報ですね。メルマガの配信登録はこちらから。

www.mag2.com

 

『トランスマーチを歩く』 エイズと社会ウェブ版593

 去年の話になりますが、11月20日(土)の午後、東京・新宿でトランスマーチが行われました。現代性教育研究ジャーナル最新号(2022年1月15日発行)の連載コラムOne side / No side第59回は、そのトランスマーチの参加報告です。
https://www.jase.faje.or.jp/jigyo/journal/seikyoiku_journal_202201.pdf

 10ページに掲載されています。
 11月20日は「国際トランスジェンダー追悼の日」であり、トランスマーチは「トランスジェンダーの人権・プライドを訴えるために世界中で行われているパレード」です。例によって、付け焼刃の知識で恐縮ですが、歴史についても調べました。詳しくはコラムをお読みください。

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「そのうち」は必ず来ない TOP-HAT News 第160号

 

 70年を超える人生の中でも、今年はあまりいい年ではなかったように思う。まあ、齢を取って出不精になっていることもあるんだけど、会社を辞めたら年に2回ぐらいは旅行もして・・・などと思っていたのですが、その機会も奪われ、ま、その分、出費は抑えられたからいいんだけど、楽しさは中くらいなり、といいますか。

 11月21日から23日まで、東京の高輪プリンスホテルで開かれた第35回日本エイズ学会学術集会・総会はハイブリッド開催になりました。私の場合、21日と23日は自宅でリモート参加とし、真ん中の22日だけ会場を訪れました。

去年はバーチャル開催だったので、お目にかかるのも久しぶりという研究者やアクティビストの方々も多く、「やっぱり、こうやって顔を合わせるのは、いいですなあ」などという挨拶がてらの会話もあちらこちらで聞かれた。

一方で、リモート参加にもそれなりの利点はあり、TOP-HAT News 第160号(2021年12月)では、そのあたりの感想を書き、「できれば来年の学会もハイブリッドで」というお願いも付け加えておきました。

ハイブリッドの良さのひとつとして、後でオンデマンド配信を見ることができるという利便性の高さも挙げておきましたが、私の場合は結局、見逃したセッションを実際に後で観るということはないままに終わっています。「そのうちに」と思っているうちに公開期限の12月24日は過ぎてしまい、怠惰な性格を改めて再認識する結果になりました。この性格はもう変わらないな・・・。

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第160号(2021年12月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに ハイブリッドの将来性

 

2 来年の国際エイズ会議(AIDS2022)もハイブリッド開催に

 

3 HIV治療薬とコロナワクチンの公平な普及を求めビデオ動画

 

4 はじめてのトランスジェンダー

 

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1 はじめに ハイブリッドの将来性

 2021年の第35回日本エイズ学会学術集会・総会は久しぶりの東京開催となりました。調べてみると、特定非営利活動法人ぷれいす東京の生島嗣代表が会長を務めた2017年の第31回学会以来4年ぶりでした。

 第35回学会の俣野哲朗会長(国立感染症研究所エイズ研究センター長)は公式サイトの主催者あいさつで次のように書いています。

 『HIV パンデミックは、無症候感染者からの「みえない感染拡大」制御の難しさを人類に知らしめましたが、その後、肝炎ウイルス、HTLV に引き続き、2020 年のCOVID-19 のパンデミックで、「みえない感染拡大」の脅威を再認識するにいたっています』

 その「見えない感染拡大」のために昨年の第34回学会はWEB開催を余儀なくされました。今年も会場での現地開催とWEB配信を併用するハイブリッド学会です。

 会期は11月21日(日)から勤労感謝の日の23日(火)まで。会場は港区高輪のグランドプリンスホテル高輪でした。ただし、大半のプログラムはWEBでライブ配信もされ、一部のシンポジウムやセッションは12月20日まで、オンデマンド配信で会議登録者に公開されていました。

 エイズ学会の学術集会・総会は、学術分野の専門家と臨床医、行政官、そしてHIV/エイズ対策の現場で様々な活動に取り組むNPOHIV陽性の人たちが集まり、プログラム発表以外にも貴重な交流の機会を提供するユニークな学会です。懐かしい人とも、初対面の人とも直接、会って、ざっくばらんな話ができるのは、対面の学会の大きな魅力ですね。

 一方でオンラインのプログラムがあれば、会場が遠かったり滞在費がかさんだりといったことを気にすることなく、必要な情報を得ることができます。1日だけ参加して懐かしい人たちとの交流を深め、同じ時間帯にプログラムが重なって出られないセッションがあっても、後からオンデマンドで視聴が可能になる。これもまた使い勝手がよさそうです。両方あればいいなあ・・・ということで、主催する立場の方は大変でしょうが、参加の機会を広げ、関心を持ってもらえる人を増やすという観点からすれば、今後の学会はハイブリッド開催が中心になっていくのではないでしょうか。

 少し気が早いかもしれませんが、来年の第36回学会は11月18日から20日まで、静岡県浜松市アクトシティ浜松で開かれる予定です。テーマは『Resistance~耐性との闘い/差別との闘い』。COVID-19のパンデミックで病原ウイルスの変異株出現への不安が高まり、差別やスティグマ、社会的な排除と格差といった問題が再び大きくなっています。

 しかし、HIV/エイズ対策には、耐性ウイルスとも社会的な差別や偏見とも、40年かけて闘い続けてきた経験の蓄積とそれを生かす教訓(失敗も成功も含め)があります。この経験を生かさない手はない。貴重なテーマです。できれば来年もハイブリッド開催の準備を進め、「闘い」の実を上げられるよう組織委員会の皆さんにはご尽力を期待したいと思います。

 

 

2  来年の国際エイズ会議(AIDS2022)もハイブリッド開催に

 2022年夏にカナダのモントリオールで予定されている第24回国際エイズ会議(AIDS2022)もハイブリッド開催になります。会期は7月29日(金)~8月2日(火)。公式サイトではすでに参加者の登録受付が開始されています。

 https://aids2022.org/

 国際エイズ会議は2年に1回、開催される大会議です。1994年には横浜で第10回会議が開かれています。思えばもう27年も前のことですね。

2020年の第24回会議は当初、米国西海岸のサンフランシスコ・オークランドで開催予定でしたが、コロナの流行拡大を避けるため、会場での開催は断念しバーチャル会議となりました。

 モントリオール会議のテーマは「re-engage and follow the science.」です。re-engageは「再び参加する」という意味ですが、ニュアンスとしては「科学的事実を踏まえ再出発を」という感じでしょうか。

 

 

HIV治療薬とコロナワクチンの公平な普及を求めビデオ動画

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は世界エイズデーの12月1日、英サセックス公ハリー(ヘンリー)王子とウィニー・ビヤニマ事務局長がナレーションを担当したビデオ『HIVとCOVID-19の由々しき共通性』を公開しました。

 動画は英語ですが、世界エイズデー当日にUNAIDSが発表したプレスリリースの日本語訳がビデオとともにAPI-Netで紹介されています。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet057.html

 プレスリリースによると、ハリー王子は「エイズの歴史から学び、COVID-19 ワクチンへの不公平なアクセスを克服すること、すべての人が最新の HIV 薬と技術を利用できるようにすること」を世界に促しています。

 

 

4 はじめてのトランスジェンダー

トランスジェンダー当事者とアライ(支援者)らのグループが運用するサイトが開設されました。

 https://trans101.jp/

 『昨今トランスジェンダーについての様々な情報があふれています。このサイトは、普段トランスジェンダーを身近に感じていない人でも、情報の交通整理ができるように作られました』