『検査まるわかり情報局』 TOP-HAT News第158号 エイズと社会ウェブ版585

 厚労省エイズ動向委員会や東京都エイズ通信などで報告される新規HIV感染者・エイズ患者の報告数は減少傾向が続いています。ただし、実際の感染の拡大(または縮小)と報告数の減少とは必ずしも一致しているわけではありません。検査を必要としている人が安心して検査を受けられる状況がなければ、それも報告数の減少(および感染の拡大)の大きな要因になり得るからです。

しつこいようですが、TOP-HAT News第158号(2021年10月)はもう一度、このことを取り上げました。そのうえで、HIVマップの『検査まるわかり情報』というページを紹介しています。

厚労省の委託事業として特定非営利活動法人aktaが運営するHIV/エイズ分野のお役立ち情報サイト『HIVマップ』の特設ページ『検査まるわかり情報局』では、安心して検査を受けてもらうための新常識として、以下の8つのポイントが紹介されています》

具体的な8項目は本文をご覧ください。

 10月は政局が大きく揺れ動く中で、新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行がなぜか下火になりました。縮小の要因については、様々な指摘がありますが、諸外国の動向と比べてみると、「どうしたんだろうね?」と思わざるを得ない面もあります。必ずしも社会の側の、あるいは政府や専門家を自称する人たちの思惑通りには動くわけではない。それが、感染症の流行、あるいは人の行動というものかもしれません。

 したがって、コロナについても、減ってよかったと安心するだけでなく、流行の再拡大に備える必要があるということを認めるのにもちろん、やぶさかではありません。ただし、人はコロナ対策のみで生きているわけではないということも同時に指摘しておきたい。社会が動き出したことに対し、「ゆるみが出てきた」とか、「常に最悪の事態を想定して行動しなければならない」などと警告に終始し、再び感染が増えだしたら「それ見たことか」と言いだすとしたら(もちろん、言い出さないとは思うけど)、そんなものは対策の名に値しません。

このこともまた、何度もHIV/エイズ対策で経験してきた苦い経験のひとつというべきでしょう。

 Safer Sexの考え方がどのような経緯を経て広がり、定着し、それでも限界はあるよねという認識に達してきたのか、その限界は医療的対応で、つまり医学が進歩すればそれで克服できるのか。こうしたことも改めて考えてみる必要があります。

あくまで個人的な感想ですが、実際に6月の国連総会ハイレベル会合で、日本を含む加盟国の圧倒的多数が賛成して採択された政治宣言の2025年エイズターゲットには、そのような反省も含めた考え方が反映されているように思います。

 また、医学の進歩がもたらした成果を生かしつつ、医学が無力だった時代の経験を忘れないという(実は何も言っていないに等しいかもしれない)感触も個人的には抱きつつあります。類型的な言い回しになってしまいますが、Cautiously Optimisticと言いますか・・・。

 HIVとセクシュアルヘルスに取り組む全国6カ所のコミュニティセンターなど9つのCBO(コミュニティを基盤にした組織)が、HIV検査を安心して受けやすくする試みとして「ゆうそう検査」を実施しています。その紹介も含め、コミュニティベースでHIV/エイズとCOVID-19対策の両方の経験知を生かした相乗効果を期待したい。TOP-HAT News第158号はそんな話題を中心に取り上げました。

 

 

 

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        第158号(2021年10月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 『検査まるわかり情報局』

 

2 ゆうそう検査展開中

 

3 地域においてMSMのHIV感染・薬物使用を予防する支援策の研究

 

4 『どうするHIV対策!? COVID-19パンデミックの影響』

 

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1 はじめに 『検査まるわかり情報局』

 国内の新規HIV感染者・エイズ患者報告の減少傾向が続く一方で、2020年の年間確定値では、これまでの傾向から一転して、報告全体に占めるエイズ患者報告数の割合が急拡大していました。16年ぶりに31%を超えています。このことは前回のTOP-HAT NEWSでも報告しましたが、新型コロナウイルス感染症COVID-19対策の影響でHIV検査を受ける機会が減少し、HIVに感染していることに気付かずに生活する人が、じわりとではありますが、増えていることを示唆するデータでしょう。国内におけるHIV性感染の機会もその分だけ大きくなる可能性があります。

 確定値に続いてAPI-Net(エイズ予防情報ネット)には、分析結果などを含めた2020年エイズ発生動向年報も10月に公表されています。こちらでご覧ください。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/japan/nenpo.html

 安心して検査を受けられる環境を整えることは、感染している人にいち早く治療の機会を提供することになるので、感染した人の健康状態の改善に大きく資するとともに、他の人への感染予防にもつながります。逆に言えば、何らかの要因でそうした環境が失われれば、近い将来の感染の拡大につながるおそれがあります。

 COVID-19の流行がそうした要因にならないように、いま、HIV検査を必要としている人たちに情報を伝え、実際に検査を受けてもらうにはどうしたらいいのか。

厚労省の委託事業として特定非営利活動法人aktaが運営するHIV/エイズ分野のお役立ち情報サイト『HIVマップ』の特設ページ『検査まるわかり情報局』では、安心して検査を受けてもらうための新常識として、以下の8つのポイントが紹介されています。

  1. 感染していることを早く知ることはメリットが大きい。
  2. 男性どうしでセックスしている人は、定期的に検査を受けよう。
  3. 保健所・検査所、病院・クリニック、郵送検査などでHIV検査を受けられる。
  4. HIVの感染初期に風邪のような症状がでることがある。見逃さないように注意しよう。
  5. HIV感染の機会から、2~3カ月経つと確実な検査結果を得ることができる。
  6. 梅毒やクラミジアなど、HIV以外の性感染症の検査も大事!
  7. PrEPは、正しい服薬と定期的な血液検査が必要です。
  8. 一人で考え込まないで!相談できる機関があることを知ろう。

 

 具体的にどういうことなのか。1から8まで、各項目をクリックすれば、分かりやすい解説が出てきます。

 ほかにも『HIVに感染したのではないかと思うと、不安な気持ちが止まりません』『アナルに中出しされてしまったけど、HIVに感染しちゃったでしょうか?いまからどうしたらいいですか?』『HIV検査を受けるときに、個人的なことをいろいろ聞かれるって本当ですか?』といった質問に答えるQ&Aコーナーや検査用語集もあります。

 情報を伝えるには地道な努力が必要です。こうしたサイトでドアを開いておけば、感染が心配になった人がそっと見に来るかもしれません。そんなときは、こちらをご覧ください。

 https://hiv-map.net/anshin/knowledge/

 

 

2 ゆうそう検査展開中

 東京・新宿二丁目のaktaや大阪・堂山のdistaなど、HIVとセクシュアルヘルスに取り組む全国6カ所のコミュニティセンターを含む9つのCBO(コミュニティを基盤にした組織)が、HIV検査を安心して受けやすくする試みとして「ゆうそう検査」を実施しています。どんな検査なのか、ここではaktaゆうそう検査について紹介しましょう。

《aktaゆうそう検査は、厚生労働省エイズ対策政策研究事業「MSMに対する有効なHIV検査提供とハイリスク層への介入に関する研究」が研究として無料で実施するHIVのスクリーニング検査・梅毒のTP抗体検査です。aktaで検査キットを受け取り、自宅で、ご自身で血液を採取し、結果はWebサイトで確認することができます》(akta公式サイトから)

 では、具体的にどうすれば、検査を受けられるのか。特設ページには、受け方の手順を分かりやすく説明したチャートや動画『知ってほしい6つのポイント』も載っています。こちらでご覧ください。

 https://akta.jp/pt/

 

 

3  地域においてMSMのHIV感染・薬物使用を予防する支援策の研究

厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業(つまり厚労省研究班ですね)2018~2020年度の最終年度の総合研究報告書が公開されました。『地域におけるHIV陽性者等支援のためのウェブサイト』でPDF版がダウンロードできます

 https://www.chiiki-shien.jp/kenkyu.html#i20210601

 以下の4つの分担研究の成果が報告されています。

(1)HIV 陽性者の生活と社会参加に関する研究

   2003年より約5年ごと4回目の調査結果、自由回答も紹介されています。

(2)精神保健福祉センターにおける MSM および HIV 陽性者への相談対応の現状と課題に関する調査

   全国の精神保健福祉センターにおける調査です。

(3)ダルクにおける MSM・HIV 陽性者支援の調査

   全国のダルクにおける受入調査結果は、令和元年度報告書に記載されています。

(4)MSM における薬物使用に対処する啓発・支援方策に関する研究

   ウェブサイトStay Healthy and be Happy所載の相談事例集が紹介されています。

 

 

4 『どうするHIV対策!? COVID-19パンデミックの影響』

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行がHIV対策に与えている影響について、国連合同エイズ計画(UNAIDS)がコミックス仕立てのパンフレットを作成しました。

 治療、予防、暴力の増加、スティグマと差別、経済的影響の5つの側面から、ロックダウン政策の影響や関連するコミュニティによる課題解決の動きを紹介。日本語PDF版もAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に載っています。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet054.html