「6つの95%」「3つの10%未満」・・・2025年に向けた新エイズ・ターゲット エイズと社会ウェブ版533  

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 2025年に向けた新ターゲット概念図の日本語版です。

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 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が11月26日に発表した報告書『人びとを中心にすえ、パンデミックに打ち勝つ(Prevailing against pandemics by putting people at the centre)』の中から、序文と第1章(報告書要旨)の日本語仮訳を作成しました。API-Net(エイズ予防情報ネット)でご覧ください。 

api-net.jfap.or.jp

 

 国際社会は、2030年に「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を終結に導く」ことを目指し、中間目標として2020年末までの高速対応(90-90-90ターゲット達成)を掲げてきましたが、実現に至りませんでした。

 このため、UNAIDSは世界エイズデー2020報告書で「世界がその約束を果たす軌道に乗ることはできなかった」との見解を示し、今後5年間の中間目標として新ターゲットを公表しています。上記概念図も日本語バージョンで第1章に載っています。

 報告書によると「人びとを中心にした2025年ターゲット」は、

     1. 包括的HIVサービス

     2. 人びとを中心にすえ、それぞれの事情に合わせたサービスの統合

     3. HIVサービスが可能な環境を妨げる社会的および法的な障壁の除去

 の3つのカテゴリーのもとで「6つの95%」「3つの10%未満」などの新指標を打ち出しています。

 数値目標を掲げるだけでなく、その目標の実現のためには現状の何をどのように変えていく必要があるのかにようやく思いが至ったといいますか・・・。

 新ターゲット作成のプロセスは2018年の半ばにスタートしているので、新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行以前に作業は進められていました。

 ただし、今年に入ってから直面せざるを得なくなった新たなパンデミックの経験が、新ターゲットに対する考え方を一段と深化させるものになったであろうということは、想像に難くありません。

 COVID-19とHIV/エイズの2つのパンデミックが同時進行する時代の中で、今後のさらなる新興感染症の発生といった新たな事態も見据えつつ、パンデミック対策の背骨になるべきターゲットとして受け止めることも可能だし、同時に受け止めなければならないのではないかとも個人的には思いました。

 また、ビヤニマ事務局長による序文には次のようにも書かれています。

 『国連加盟国にとって、2021年6月に予定されている国連総会ハイレベル会合は、公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を終わらせるという約束を再確認し、その実現に向けた動きを再び加速するための重要な機会となるでしょう』

 エイズの最初の公式症例の報告から40年の節目にニューヨークで開かれる国連総会のハイレベル会合にも注目しておきたいと思います。