職場で何が必要か VCT@WORKのHIV検査戦略から エイズと社会ウェブ版300 

昨日、プレスリリースを紹介した国際労働機関(ILO)と国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告書『VCT@WORK 就労者のための個人情報を守る自発的HIV検査とカウンセリング』の最初の部分を日本語に訳してみました。

 ILOの公式サイトにPDF版で掲載されている報告書は全部で20ページ(実質19ページ)ありますが、ここで訳したのはそのうちの2ページと数行なので、ごく一部ですね。ただし、この部分にVCT@WORKの基本戦略が8項目にわたって掲載されているので、計画の趣旨がおおむね把握できるのではないかと思います。

 VCT@WORKは90-90-90ターゲットの最初の90の達成のために職場における検査を活用しようというキャンペーンです。報告書にはこう書かれています。

 『90-90-90治療ターゲットの達成、中でもHIV検査の普及にもっと具体的に貢献することを目指し、 ILOとUNAIDS、国際経営者団体連盟(IOE)、国際労働組合総連合(ITUC)は2013年6月のILO総会で、VCT@WORK計画を発足させた』

 日本でも企業の健康診断にHIV検査を入れればいいという意見はずっと以前からありました。しかし、「隠れているHIV感染者を手っ取り早く掘り起こせ」みたいな発想がその背後にちらついていて、どうも強制検査、義務的検査の変形バージョンのような印象が払拭できません。個人的にはVCT(自発的検査とカウンセリング)を基本とするHIV検査の原則に抵触する印象を受けます。

 それではVCT@WORKはその「VCT」の部分をどう保証していくのか。この点は気がかりですね。先ほど少し紹介した基本戦略(戦略的な8つの柱)には、そのあたりにかなり目配りしている様子がうかがえます。以下の8項目です。報告書には簡単な解説もついています。

 ・アドボカシー・コミュニケーション・トレーニング

 ・エビデンスに対する十分な配慮

 ・人権に基づくアプローチ 

   ・複数疾病の検査

 ・戦略的パートナーシップ 

 ・HIVエイズのメインストリーム化

 ・モニタリングと評価

 個人的には「そうかぁ、なるほど」と思える項目も、「何を言っているのかよく分からない」という項目も、「例によって紋切り型」の項目もあります。その中で最も注目したいのは最初の『アドボカシー・コミュニケーション・トレーニング』でしょうか。以下のように説明されています。

 『この計画は職場でのスティグマと差別の解消を目指すILOのコミュニケーションキャンペーン ― 職場におけるセロ実現 ― の一環として進められている。慎重に検討されたコミュニケーション戦略に基づき、「早期HIV検査の利益」はHIVに感染していることが分かった場合の「就労者の権利の保護」があって初めて得られるという基本的な考え方を伝えるメッセージが発信されているのだ。HIV検査の促進に取り組むには、ピアエデュケーションの手法を採用し、職場における行動変容コミュニケーションの努力をしっかりと積み重ねていかなければならない』

 とくに『「早期HIV検査の利益」はHIVに感染していることが分かった場合の「就労者の権利の保護」があって初めて得られる』という部分は、企業が何らかのかたちで検査に関係する機会があれば、しっかりと強調しておく必要があります。

 『人権に基づくアプローチ』はいわば大原則ですね。『HIV感染の有無にかかわりなく健康への権利、働く権利を尊重し、差別をなくすことは、計画の成功に不可欠の要素である』と指摘し、さらに『VCT@WORK計画の実施に際しては、世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)と協力して人権尊重の手引きとなる関係機関向け「VCT計画実施における人権の尊重:実務指針」も作成されている』ということです。

 もうひとつ、ここで注意しておきたいのは、報告の中の『計画は当初、30カ国で実施されたが、必要な資金を確保できる国は限られ、2016年時点の実施国数は縮小を余儀なくされている』という部分です。2016年現在で実施中の国は18カ国なので、12カ国は脱落したことになります。資金難がその理由とされていますが、流行のかたちによって、こうしたアプローチが向いている国と向いていない国があるのかもしれません。

 日本ではどうなのでしょうか。この点も先ほどの『「早期HIV検査の利益」はHIVに感染していることが分かった場合の「就労者の権利の保護」があって初めて得られる』という基本認識がまず必要です。

 また、『局限流行期の地域では、キーポピュレーションに焦点を当てる必要がある』(エビデンスに対する十分な配慮から)という指摘も日本国内での流行状況を考えると見逃せません。

 前置きが長くなりました。仮訳はHATプロジェクトのブログにも掲載していますが、ここでも再掲しておきます。

 

f:id:miyatak:20171021222642p:plain

VCT@WORK 就労者のための個人情報を守る自発的HIV検査とカウンセリング

  2016年12月現在の報告

http://www.ilo.org/global/publications/WCMS_583880/lang--en/index.htm

 

 2030年のエイズ終結はいま、国際社会の確固とした合意となっている。

 アジェンダ2030のターゲット3.3は、2030年までに公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を終結に導くとしている。エイズ終結に向けたUNAIDS高速対応戦略(2016~21)は、2030年のエイズ流行終結を呼びかけている。2016年の国連総会ハイレベル会合で加盟国が採択したHIVエイズに関する政治宣言も2030年のエイズ流行終結を呼びかけている。

 エイズ終結にはHIV対策の高速対応が必要になる。90-90-90治療ターゲット 1は、2020年までに達成すべきその重要目標の一つとされている。だが、HIV検査が焦点となる最初の90には、目標と現実の間に大きなギャップがある。2016年UNAIDS報告では、HIV陽性者の約40%が自らの感染を知らずにいるのだ。

 90-90-90治療ターゲットの達成、中でもHIV検査の普及にもっと具体的に貢献することを目指し、 ILOとUNAIDS、国際経営者団体連盟(IOE)、国際労働組合総連合(ITUC)は2013年6月のILO総会で、VCT@WORK計画を発足させた。職場は男女就労者とその家族、コミュニティに対し、就労者が日常の多くの時間を過ごす場所であり、HIV検査サービスの特別な機会が提供できるからだ。

 計画は当初、30カ国で実施されたが、必要な資金を確保できる国は限られ、2016年時点の実施国数は縮小を余儀なくされている。高速対応を維持し、2016年に計画を実施している国は18カ国 2 となっている。

1 HIV陽性者の90%が自らのHIV感染を知り、感染を知った陽性者の90%が治療を受け、さらに治療を受けている人の90%が体内のウイルス量を低く抑えられるようにする目標

2 カンボジアカメルーン、中国、コンゴ民主共和国、エジプト、グァテマラ、ハイチ、ホンジュラス、インド、インドネシアケニアモザンビーク、ナイジェリア、ロシア、南アフリカタンザニアウクライナジンバブエ

 

 VCT@WORKの発足以来、就労者とその家族410万人がHIV検査を受け、10万3286人が治療につながっている。

  

VCT@WORK計画は以下の戦略的な柱により進められている:

 

アドボカシー・コミュニケーション・トレーニング この計画は職場でのスティグマと差別の解消を目指すILOのコミュニケーションキャンペーン ― 職場におけるセロ実現 ― の一環として進められている。慎重に検討されたコミュニケーション戦略に基づき、「早期HIV検査の利益」はHIVに感染していることが分かった場合の「就労者の権利の保護」があって初めて得られるという基本的な考え方を伝えるメッセージが発信されているのだ。HIV検査の促進に取り組むには、ピアエデュケーションの手法を採用し、職場における行動変容コミュニケーションの努力をしっかりと積み重ねていかなければならない。

 

エビデンスに対する十分な配慮 VCT@WORK計画は、鉱業、運輸、建設、保健、観光など一般人口層と比べるとHIVの影響を大きく受ける主要経済部門の就労者を含め、感染の高いリスクにさらされている集団に焦点をあてて進めるようエビデンスを重視する必要がある。移動、移住労働者もHIV検査促進の対象となることが多い。局限流行期の地域では、キーポピュレーションに焦点を当てる必要がある。

 

人権に基づくアプローチ HIV感染の有無にかかわりなく健康への権利、働く権利を尊重し、差別をなくすことは、計画の成功に不可欠の要素である。したがって、この計画は2010年の『HIV及びエイズ並びに労働の世界に関するILO勧告』(No.200)にもとづく人権の枠組みのもとで進められている。加えて、VCT@WORK計画の実施に際しては、世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)と協力して人権尊重の手引きとなる関係機関向け「VCT計画実施における人権の尊重:実務指針」も作成されている。

 

複数疾病の検査 HIV検査に対するスティグマを解消し、VCTサービスへの理解を広げるためにHIV検査は統合的かつ複数疾病の検査計画を通して進めていく。

 

戦略的パートナーシップ HIV検査、労働分野、国家エイズプログラム、HIV陽性者組織などのキープレーヤーとの戦略的パートナーシップを強化する。

 

HIVエイズのメインストリーム化 この計画はジェンダーの平等や多様性尊重、差別解消などILOの分野横断的な政策遂行課題の中に組み込まれている;また、他のILOのアウトカム(成果文書?)とも関連している:社会保護の土台を構築し広げる(アウトカム3);非公式経済の公式化(アウトカム6);労働査察を通した職場の法令順守(アウトカム7);容認できない労働形態からの就労者の保護(アウトカム8)。

 

モニタリングと評価 各国の国レベルでのエイズ対策における主要な検査プログラムやUNAIDSとの協力体制を強化し、就労者のためのHIV検査データの収集、分析を進め、各国のシステムの改善に生かす。

 

 

 

Voluntary Confidential Counselling and HIV Testing for Workers

 Report as of December 2016

 

There is a strong consensus within the global community to end AIDS by 2030. 

Target 3.3 of Agenda 2030 focusses on ending AIDS as a public health threat by 2030. The UNAIDS Strategy (2016 – 21) on the fast track to end AIDS calls for the end of AIDS by 2030. The United Nations Political Declaration on HIV and AIDS adopted by members States at the United Nations High Level Meeting in 2016 also calls for the end of AIDS in 2030. 

To end AIDS, the HIV response must be fast-tracked. The 90-90-901 treatment targets are one of the key targets to be achieved by 2020. The first 90 focusses on HIV testing. Critical gaps exist in HIV testing. In 2016, UNAIDS reported that approximately 40% of all people living with HIV did not know their HIV status.

To contribute concretely to the 90-90-90 treatment targets and more specifically to HIV testing, the ILO, UNAIDS, International Organization of Employers (IOE) and the International Trade Unions Confederation (ITUC) launched the VCT@WORK Initiative at the International Labour Conference (ILC) in June 2013. VCT@WORK was launched because the workplace offers unique opportunities to reach women and men workers, their families and communities with HIV testing services in locations where they spend most of their daily lives.

The Initiative was initially implemented in over 30 countries but shrinking resources necessitated the repositioning of the Initiative in a limited number of countries in 2016. Retaining the focus on fast track countries, the initiative was implemented in 18 countries2 in 2016.   

 

1 90% of all people living with HIV will know their HIV status, 90% of all people with diagnosed HIV infection will receive sustained antiretroviral therapy, and 90% of all people receiving antiretroviral therapy will have viral suppression

 2 Cambodia, Cameroon, China, Congo DR, Egypt, Guatemala, Haiti, Honduras, India, Indonesia, Kenya, Mozambique, Nigeria, Russia Federation, South Africa, Tanzania, Ukraine and Zimbabwe

 

Since its launch, 4.1 million workers and their families have taken the HIV test and 104,926 tested positive and 103,286 were referred for treatment. 

 

 

The Strategic Pillars of the VCT@WORK Initiative are highlighted below: 

 

Advocacy, Communication and Training: The initiative is built around the ILO’s communication campaign — Getting to Zero at Work —that focusses on reducing stigma and discrimination at work. In a carefully crafted communication strategy, messages are built around the ‘benefits of early HIV testing’ backed by the ‘protection of the rights of workers’ in case they are found to be living with HIV. HIV testing is supported by a strong behaviour change communication effort at workplaces, using a peer education approach. 

 

Evidence-informed: Evidence is used to ensure that the VCT@WORK Initiative focusses on populations most at risk including workers in key economic sectors such as mining, transport, construction, health, tourism, etc, with a relatively higher burden of HIV than the general population. Mobile and migrant workers are also often the focus of HIV testing initiatives. In concentrated epidemics, the focus is on key populations.  

 

Rights-based approach: The right to good health, right to work irrespective of the HIV status and ensuring non-discrimination are seen as critical elements to the success of the Initiative. Therefore, the Initiative is implemented within a rights-based framework following the principles as defined in  the ILO’s HIV and AIDS Recommendation, 2010 (No. 200). In addition, “Respecting human rights in the implementation of the VCT initiative: operational guidelines”  have been developed in partnership with Global Network of People Living with HIV (GNP+) to provide guidance to partners on respecting human rights in the implementation of the VCT@WORK Initiative. 

 

Multi-disease testing: HIV testing is promoted through an integrated and multi-disease initiative in order to de-stigmatize HIV testing and facilitate uptake of VCT services. 

 

Strategic partnerships: Strategic partnerships with key players, engaged in HIV testing initiatives, world of work actors, national AIDS programmes and organizations of people living with HIV are forged. 

 

Mainstreaming HIV and AIDS: The Initiative is embedded in the ILO’s work around the cross cutting policy driver of gender equality, diversity and non-discrimination; and is linked to different ILO outcomes: Creating and Extending Social Protection Floors (Outcome 3); Formalization of the Informal Economy (Outcome 6); Promoting workplace compliance through labour inspection (Outcome 7); and Protecting workers from unacceptable forms of work (Outcome 8). 

 

Monitoring and evaluation: Partnerships are strengthened with national AIDS programmes, key testing initiatives at the country level and UNAIDS to ensure that HIV testing data for workers is  collected, analysed and feeds into the national systems. 

 

『ILOのVCT@WORKが600万人に到達』 

 自発的なHIV検査とカウンセリングの普及をはかるVCT@WORKというプログラムの成果について、国際労働機関(ILO)が報告書『VCT@WORK:就労者の個人情報を守る自発的HIV検査とカウンセリング』を発表しました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに掲載されたその報告記事の日本語仮訳です。

 VCT@WORK というものが存在することも、この特集記事で初めて知ったのですが、HIV予防や検査、治療の普及率があまり高くない働き盛りの男性層に必要なサービスを届けるため、2013年にスタートした戦略計画で、その利用者は600万人を超えたということです。職場でVCT(自発的な意思に基づき、個人情報が守られるかたちで受けられる検査とカウンセリング)を受けられるようにするプログラムなので、ボランタリー(V)とコンフィデンシャリティ(C)をどのようなかたちで確保するのか、それが知りたいところですが、特集記事では、この点にはほとんど触れられていませんでした。

 もとの報告書を読まなければダメかなあ・・・。ほかにも訳したい文献が積み残しのままなので、ちょっと翻訳には二の足を踏んでいます。

 

f:id:miyatak:20171021000408j:plain

 

ILOVCT@WORK600万人に到達

   20171017

ILO’S VCT@WORK has reached 6 million workers | UNAIDS

 

 国際労働機関(ILO)が発表した新たな報告書『VCT@WORK:就労者の個人情報を守る自発的HIV検査とカウンセリング』によると、VCT@WORKキャンペーンは600万人以上にHIV関連情報を提供し、その結果、400万人以上が検査を受け、10万人以上がHIV治療を受けるようになっている。VCT@WORK計画は2013年、職場におけるHIV検査の拡大を目指し、ILO国連合同エイズ計画(UNAIDS)とそのパートナー機関がスタートさせた。

 VCT@WORK計画はとりわけHIVサービスが届きにくい集団である男性層への働きかけに成功を収めている。2016年にHIV検査を受けた男性の60%、治療につながった男性の80%がこの計画によるものだった。

 2016年のキャンペーンは18カ国で実施され、鉱山労働者や、運輸、建設、保健、観光分野の労働者など、HIVのより高いリスクにさらされている集団に焦点が当てられている。移住労働者もしばしばVCT@WORKによるHIV検査プログラムの対象となっている。また、局限流行期の国ではキーポピュレーションに焦点が当てられている。

 ケニアの労働者もキャンペーン対象となっている。ILOケニア労働組合中央組織(COTU)その他のパートナーは、モンバサ―ブシア間の幹線道路沿いで、トラック運転手がHIV検査とカウンセリングを受けられるようにしてきた。トラック運転手は職務上、移動が多く、スケジュールも一定しないので、保健サービスの利用が困難なことが多い。したがって、働いている間にHIV検査を受けられるようにすれば、感染の有無を確認して治療の開始につなげたり、HIV予防サービスを受けたりすることができるようになる。

 ケニアVCT@WORK計画でHIV検査を受けた人は74000人にのぼっている。その中には理髪店や美容院で働いている人たちや非公式経済の労働者も含まれ、1000人以上がHIV陽性と分かり、治療につながっている。

 インド石炭公社はインド最大の公営石炭企業で314000人の従業員に加え、契約労働者も多数抱えている。ILOの職場におけるHIVプログラムとの長期にわたる協力関係により、現在ではインドにおけるVCT@WORK計画を先導する企業となっている。同公社のHIV戦略もVCT@WORKの一環として策定され、自発的HIV検査の普及を進めるためのトレーニングマスターやピアエデュケーターの研修を進めている。また、従業員に対するHIV情報の提供や検査普及に労働組合が取り組み、契約労働者とその家族もカバーする戦略をとっている。36000人以上の従業員と家族、契約労働者がこの計画でHIVのカウンセリングと検査を受けている。

 世界各地の検査および他のVCT@WORKプログラムは、2020年までにHIV陽性者の90%が自らのHIV感染を知り、感染を知った陽性者の90%が治療を受け、さらに治療を受けている人の90%が体内のウイルス量を低く抑えるという90-90-90ターゲット実現に向けた勢いを生み出している。

 

 

コメント

VCT@WORK計画は職場の人びとにHIVサービスを届け、便利な場所と時間にHIV検査を受けられるようにする偉大な工夫です」

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)、ミシェル・シディベ事務局長

 

 「男性にはこれまで、効果的なエイズ対策がなかなか届きませんでした。VCT@WORKはそれを変える重要なステップです。このプログラムのもとでは、男性の70%HIV検査を受けています。女性は30%です。これまでのHIVサービスでは適切に対応できなかった人たちに効果的にサービスを広げるには、職場が鍵を握っていることを示しています」

 ガイ・ライダーILO事務局長

 

 

 

 

ILO’S VCT@WORK has reached 6 million workers

17 October 2017

A new report published by the International Labour Organization (ILO), VCT@WORK: voluntary confidential counselling and HIV testing for workers, shows that the VCT@WORK campaign has reached more than 6 million workers with HIV information, tested more than 4 million and referred more than 100 000 to HIV treatment. Launched in 2013, VCT@WORK is an initiative of ILO, UNAIDS and partners to scale up HIV testing, specifically in the workplace.

The VCT@WORK initiative has had particular success in reaching men, a group that is hard to reach with HIV services, with men accounting for more than 60% of people tested for HIV and 80% of people referred to treatment through the initiative in 2016.

The campaign reached 18 countries in 2016, and focuses on populations at higher risk of HIV infection, including workers in the mining, transport, construction, health and tourism sectors. Mobile and migrant workers are also often the focus of VCT@WORK HIV testing programmes, and in concentrated epidemics the focus is on key populations.

Workers in Kenya are among the people to have been reached by the campaign. A partnership between ILO, the Central Organization of Trade Unions in Kenya and other partners has enabled trucker drivers to access HIV testing and counselling services along the Mombasa to Busia transport corridor. Truck drivers face challenges in accessing health services, owing to their mobility and irregular schedules, so being able to test for HIV while at work will allow many more to find out their HIV status in order to start life-saving treatment or to access HIV prevention services to keep them HIV-free.

Hair and beauty salon workers in Kenya and workers in the informal economy are among the 74 000 people who have taken HIV tests through the VCT@WORK initiative in the country, with more than 1000 people who found out their HIV-positive status being linked to treatment.

Coal India Limited is the largest public sector coal company in India, with around 314 000 employees plus a large number of contractual workers. A long-standing partner of ILO’s HIV workplace programme, it is now a lead company in the VCT@WORK initiative in the country. Its HIV strategy, developed as part of VCT@WORK, includes training master trainers and peer educators to promote voluntary HIV testing, engaging unions to mobilize workers to seek HIV information and testing and covering contractual workers and their families in the strategy. More than 36 000 workers, dependents and contractual workers have accessed HIV counselling and testing services under the initiative.

These and other VCT@WORK programmes around the world are helping build momentum towards meeting the 90–90–90 targets, whereby, by 2020, 90% of people living with HIV know their HIV status, 90% of people who know their HIV-positive status are accessing treatment and 90% of people on treatment have suppressed viral loads.

 

Quotes

The VCT@WORK initiative is a great innovation to reach people with HIV services at work, widening access to HIV testing for people at a time and place convenient for them.”

Michel Sidibé UNAIDS Executive Director

Men have not been reached effectively in the AIDS response. VCT@WORK is an important step to change that. Under this programme, nearly 70% of men took an HIV test—compared to 30% of women. This clearly shows that the workplace is key to effectively expanding HIV services to those who are not adequately covered.”

Guy Ryder Director-General, International Labour Organization

 

 

東京エイズウィークス2017

 第31回日本エイズ学会と時期を合わせ3日間の集中イベントを開催するTOKYO AIDS WEEKS 2017TAW東京エイズウィークス)が、来場者対応などイベントを手伝うボランティアスタッフを募集しています。TAW2017の趣旨に賛同し、ボランティアに興味がある18歳以上の方であれば、だれでも参加できます。申し込み方法など詳細はは下記サイトでご覧ください。

aidsweeks.tokyo

 

活動時間

1124()18:00-22:00

1125()9:00-19:00

1126()9:00-22:00

 ・全日程でなく部分的な参加でも大丈夫です。

事前準備等のため、上記以外の時間帯にも対応可能な方に別途、依頼する場合があります。

 

 会場は東京・中野区の中野区産業振興センター、なかのZERO(小ホール)です。中野駅南口から徒歩少々。エイズ学会会場の中野サンプラザとは、JR中野駅をはさんで対角の位置ですね。

費用は、会場までの交通費・当日の食事代を含め全て自己負担です。

 

【事前説明会】 以下の日程で事前説明会が行われます。

20171026日(木)19時〜

20171030日(月)19時〜

2017113日(金・祝)17時〜

事前説明会の会場はコミュニティセンターaktaです。

(東京都新宿区新宿2-15-13第二中江ビル301

 

グローバルファンドのヴェインロクス事務局長代行と國井局長が記者会見 エイズと社会ウェブ版299 

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)のマライケ・ヴェインロクス事務局長代行と國井修 戦略・投資・効果局長が17日夕、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見を行いました。

 グローバルファンドの事務局長は5月末にマーク・ダイブル氏が退任した後、空席になっています。本来なら2月か3月には後任が決まるはずだったのですが、理事会で適任者を選ぶことができず、現在は選任プロセスをやり直しているところです。したがって、新事務局長が決まって、就任するまでの間はヴェインロクス官房長が事務局長代行となっています。また、國井さんはその事務局長代行に次ぐ地位にあり、グローバルファンドをより効果の高い組織にするため辣腕をふるっている方なので、会見は現時点のグローバルファンド事務局の実質No1No2の要職にあるお二人からそろってお話をうかがう貴重な機会となりました。

 会見の冒頭では、お二人からグローバルファンドへの投資はなぜ重要なのかというプレゼンテーションがありました。

 2000年に日本で九州沖縄サミットが開かれた当時は、結核マラリアHIV感染症という三大感染症により世界で年間500万人から600万人が亡くなっていました。働き盛りの年齢層が相次いで病に倒れ、さまざまな社会のシステムが崩壊の危機に追い込まれつつあった国も少なくないという状態でした。ヴェインロクスさんも國井さんもアフリカの医療の現場で活動をしていた経験がおありですが、いくつかの国の病院では、病棟に患者があふれ、一つのベッドを二人で使っていたり、それでもベッドが足りなくて床で寝ていたりといった状況が続いていたそうです。

 このままでは、とても対応できない、国がどうなっちゃうかも分からないという危機的状況を脱すべく、九州沖縄サミットでは議長国の日本が感染症を重要議題として取り上げ、しかも安全保障の大きな課題であることを強調した。それがきっかけとなり、2002年に国際的な官民共同プロジェクトとしてグローバルファンドが創設されました。

 日本の皆さんはそのことを大いに誇りに思っていい。そう言われると、当時を知る記者の一人としても悪い気はしません。経緯を振り返ると、出合い頭のホームランというか、思いのほか当たっちゃったという側面もあり、ご当地における記者会見なので、少しおまけつきの評価という気もしますが、大筋としては間違いではありません。

 そのようにして生まれたグローバルファンドの過去15年の成果がいかに素晴らしいものだったか。この点についても当然、説明があったのですが、寄る年波といいますか、私のメモが追い付かず、ノートをひっくり返してみても判読困難な文字による断片的な記述しかありません。グローバルファンド日本委員会(FGFJ)のサイトに2017年成果報告書が紹介されているので、そちらをご覧ください。ほぼ同内容です。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2017-09-14_gf_results

f:id:miyatak:20171018122617j:plain

f:id:miyatak:20171018122730j:plain

f:id:miyatak:20171018122801j:plain

   図表出典:グローバルファンド(FGFJにて日本語加筆)

 

 全体をまるめて要約すると『2002年の設立から2016年末までの15年間に2200万人の命を救うことができたとの推計を発表しました。これは、グローバルファンドを通じた各国政府、国際機関、企業、市民社会感染症の当事者などの協働により、確実に成果が出ていることを示しています』ということになります。

会見では、官民共同プロジェクトであるグローバルファンドの原則として「透明性」「パートナーシップ(協力)」「結果重視」の3点が強調されてもいました。そして、真ん中のパートナーシップの触媒役を果たすのがグローバルファンドの役割です。

現状については、個別疾病としての三大感染症の流行が何とか危機状態を切り抜け、2016年からスタートした持続可能な開発目標(SDGs)体制下では「感染症の終焉」を目指すフェイズに入ろうとしているということで、その終焉(end)に関する説明もありました。

「根絶ではなく、排除」。つまり疾病としては存在しているけれど、公衆衛生上の脅威ではなくなる。その状態をもって「終焉」とみなそうということです。具体的には2030年段階で現状より流行を9095%縮小させることを目指しています。そのために、現在のグローバルファンドの投資総額のほぼ3割は、流行に深刻な影響を受けている国に対する保健基盤の強化にあてられているそうです。

じゃあ、実際にその排除としての終焉は実現できるのかどうか。実は、これまでの15年間の成果は大きかったけれど、endにはまだまだ道は遠いという状況です。保健基盤強化を中心にここで一層のパートナーシップの充実をはかり、それぞれの国が自らの資金で流行を終焉に導けるところまで行くには、一層の努力とパートナーシップへの理解が必要となります。

目覚ましい成果を生み出すきっかけを作った日本の皆さんは、そのことを大いに誇っていいと強調したことの真意はつまり、これからもその誇りに恥じないようによろしくということでしょうね。もちろん恥じたいとは思っていません。

最初に書いた次期事務局長の選任についても質問はしたのですが、理事会が決めることなのでと、あっさりかわされてしまいました。来週中に理事会で候補を数人にしぼり、11月中旬には最終決定に至るだろうということです。

 

改めてEnding the AIDS epidemicとは UNAIDSが公式サイトをリニューアル エイズと社会ウェブ版298

 先ほどアクセスして初めて気が付いたのですが、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトがリニューアルされていました。

 

f:id:miyatak:20171017224745p:plain

www.unaids.org

 

 トップページには「our goal(私たちの目標)」として、Ending the AIDS epidemic by 20302030年のエイズ流行終結が掲げられています。その下の文章も訳しておきましょう。

UNAIDSは新規HIV感染を止めること、HIV陽性の誰もがHIV治療へのアクセスを保証されること、人権を擁護、促進すること、意思決定のためのデータを作成することに取り組んでいます』

UNAIDS is working towards stopping new HIV infections, ensuring that everyone living with HIV has access to HIV treatment, protecting and promoting human rights and producing data for decision-making.

 

 もうちょっと滑らかにならないかなあ。こんな感じでしょうか。

 

 『新たなHIV感染を防ぎ、HIVに感染している人は誰でも治療を受けられるようにし、人権を擁護、尊重します。また、そのために適切な判断ができるようデータを整えていきます』

 

 ちなみにAIDS BY THE NUMBERSとして2016年現在の以下の3つの人数も掲げられています。

 世界のHIV陽性者数 3670

 抗レトロウイルス治療を受けているHIV陽性者数 1950

 年間のHIV新規感染者数 180

 

 しつこいようですが、いま国際社会が共通目標としている『Ending the AIDS epidemic』はHIVに感染している人がいない世界ではなく、HIV陽性者を排除する社会(そんなこと言いだしたら自ずと失速してしまいそうですね)でもなく、新規感染の予防に力を入れつつ、同時にHIV陽性者が安心して治療を受け、生活していける社会です。予防と支援は対立する概念ではありません。

 2030年段階で年間の新規感染者数をゼロにすることが目標になっているわけではなく、世界全体で20万人以下に抑えることが目標です。2016年段階の9分の1以下ですから、実現には相当な困難が予想されています。無理だと断言する研究者もいます。

 それでも野心的な目標を掲げ、可能な限りその実現に向けて努力することの意味は小さくありません。

 ただし、ではどうすればそれが可能になるのか。そして、その努力のあり方はどのようにあってほしいかという点では、かなり議論が錯綜しています。一筋縄ではいかない世界の中にあって、HIV/エイズ対策だけが一筋縄でいくわけがありません。

 というわけで、この機会にもう一度、世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)のローレル・スプレイグ事務局長が世界HIV予防連合の創設会合で行ったスピーチを思い出してください。つい先日、当ブログでも取り上げたばかりですが、「そういうことか」と納得がいく指摘がいくつかあります。

 『HIV陽性者はなぜ予防に取り組むのか ローレル・スプレイグGNP+事務局長演説から』

http://miyatak.hatenablog.com/entry/2017/10/13/110440

 

 

第31回日本エイズ学会記者会見『エイズ対策最前線  PrEPって何?』

 第31回日本エイズ学会学術集会・総会の生島嗣会長(特定非営利活動法人ぷれいす東京代表)と日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスの高久陽介代表の記者会見が111日(水)午後2時から東京・内幸町の日本記者クラブで開かれます。記者会見案内はこちらをご覧ください。HIV/エイズ取材にあたる報道関係者だけでなく、NGO/NPOや保健、医療機関、民間企業などで保健政策やエイズ対策に関心をお持ちの方もご参加いただけます。 

www.jnpc.or.jp

 『もともとは医学者中心の組織であったエイズ学会が大きく進化を遂げ、今回の生島さんのように、HIV陽性者支援や予防啓発にあたるNPOの中心的指導者が学術集会の会長を務めることも、今学会のきわめて重要な注目点となっています』

     ◇

 第31回日本エイズ学会学術集会・総会は1124日(金)から3日間、東京都中野区の中野サンプラザを主会場に開催されます。また、学会会期中の3日間は「東京エイズウィークス」の関連イベントが学会会場から徒歩圏内の2会場で集中的に開催されます。高久さんはその東京エイズウィークスの事務局を担当されています。

 

 第31回学会の公式サイトはこちらでご覧ください。

aids31.ptokyo.org

 

 東京エイズウィークスの公式サイトはこちらです。 

aidsweeks.tokyo

 

どうしてオリンピックなのか エイズと社会ウェブ版298

 掲載時期がたまたま総選挙の真っ最中になってしまいました。意図したわけではありませんが、現代性教育研究ジャーナルの連載コラム One Side/No side7回目《「アジェンダ2020」に向けて》は東京五輪関連の話題です。

《前回も紹介した79日の『性的マイノリティとトイレフォーラム~安心快適のトイレ環境を目指して~』では、企業がいまトイレ環境の改善に熱心な理由として「2020年の東京オリンピックパラリンピック開催」に言及する場面が何度かあった》

どうしてなのか・・・ということで、調べてみると話は201412月のオリンピック憲章改正にさかのぼり、さらにその年の2月にロシアで開かれたソチ冬季五輪も関係してきます・・・、おっと、詳しくはコラムをご覧ください。

日本性教育協会の公式サイトで現代性教育研究ジャーナルNo7920171015日発行)のPDF版がダウンロードできます。

www.jase.faje.or.jp

f:id:miyatak:20171015112738j:plain

  コラムのタイトルに出てくる「アジェンダ2020」は『オリンピック運動の将来に向けた戦略的工程表』で、2014年のIOC総会でオリンピック憲章の改定と合わせて採択されています。

 「20+20の計40項目」からなる提言なので「アジェンダ2020」と名付けられたようなのですが、日本の五輪関係者には、どうしても「2020までに」という心理的なプレッシャーがかかってくるのでしょうね。ま、感じない人もいるかもしれないけど・・・という話を始めると、選挙の行方にも微妙にかかわってくるかもしれないので、本日の前口上はこのあたりにしておきましょう。