グローバルファンドのヴェインロクス事務局長代行と國井局長が記者会見 エイズと社会ウェブ版299 

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)のマライケ・ヴェインロクス事務局長代行と國井修 戦略・投資・効果局長が17日夕、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見を行いました。

 グローバルファンドの事務局長は5月末にマーク・ダイブル氏が退任した後、空席になっています。本来なら2月か3月には後任が決まるはずだったのですが、理事会で適任者を選ぶことができず、現在は選任プロセスをやり直しているところです。したがって、新事務局長が決まって、就任するまでの間はヴェインロクス官房長が事務局長代行となっています。また、國井さんはその事務局長代行に次ぐ地位にあり、グローバルファンドをより効果の高い組織にするため辣腕をふるっている方なので、会見は現時点のグローバルファンド事務局の実質No1No2の要職にあるお二人からそろってお話をうかがう貴重な機会となりました。

 会見の冒頭では、お二人からグローバルファンドへの投資はなぜ重要なのかというプレゼンテーションがありました。

 2000年に日本で九州沖縄サミットが開かれた当時は、結核マラリアHIV感染症という三大感染症により世界で年間500万人から600万人が亡くなっていました。働き盛りの年齢層が相次いで病に倒れ、さまざまな社会のシステムが崩壊の危機に追い込まれつつあった国も少なくないという状態でした。ヴェインロクスさんも國井さんもアフリカの医療の現場で活動をしていた経験がおありですが、いくつかの国の病院では、病棟に患者があふれ、一つのベッドを二人で使っていたり、それでもベッドが足りなくて床で寝ていたりといった状況が続いていたそうです。

 このままでは、とても対応できない、国がどうなっちゃうかも分からないという危機的状況を脱すべく、九州沖縄サミットでは議長国の日本が感染症を重要議題として取り上げ、しかも安全保障の大きな課題であることを強調した。それがきっかけとなり、2002年に国際的な官民共同プロジェクトとしてグローバルファンドが創設されました。

 日本の皆さんはそのことを大いに誇りに思っていい。そう言われると、当時を知る記者の一人としても悪い気はしません。経緯を振り返ると、出合い頭のホームランというか、思いのほか当たっちゃったという側面もあり、ご当地における記者会見なので、少しおまけつきの評価という気もしますが、大筋としては間違いではありません。

 そのようにして生まれたグローバルファンドの過去15年の成果がいかに素晴らしいものだったか。この点についても当然、説明があったのですが、寄る年波といいますか、私のメモが追い付かず、ノートをひっくり返してみても判読困難な文字による断片的な記述しかありません。グローバルファンド日本委員会(FGFJ)のサイトに2017年成果報告書が紹介されているので、そちらをご覧ください。ほぼ同内容です。

 http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2017-09-14_gf_results

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   図表出典:グローバルファンド(FGFJにて日本語加筆)

 

 全体をまるめて要約すると『2002年の設立から2016年末までの15年間に2200万人の命を救うことができたとの推計を発表しました。これは、グローバルファンドを通じた各国政府、国際機関、企業、市民社会感染症の当事者などの協働により、確実に成果が出ていることを示しています』ということになります。

会見では、官民共同プロジェクトであるグローバルファンドの原則として「透明性」「パートナーシップ(協力)」「結果重視」の3点が強調されてもいました。そして、真ん中のパートナーシップの触媒役を果たすのがグローバルファンドの役割です。

現状については、個別疾病としての三大感染症の流行が何とか危機状態を切り抜け、2016年からスタートした持続可能な開発目標(SDGs)体制下では「感染症の終焉」を目指すフェイズに入ろうとしているということで、その終焉(end)に関する説明もありました。

「根絶ではなく、排除」。つまり疾病としては存在しているけれど、公衆衛生上の脅威ではなくなる。その状態をもって「終焉」とみなそうということです。具体的には2030年段階で現状より流行を9095%縮小させることを目指しています。そのために、現在のグローバルファンドの投資総額のほぼ3割は、流行に深刻な影響を受けている国に対する保健基盤の強化にあてられているそうです。

じゃあ、実際にその排除としての終焉は実現できるのかどうか。実は、これまでの15年間の成果は大きかったけれど、endにはまだまだ道は遠いという状況です。保健基盤強化を中心にここで一層のパートナーシップの充実をはかり、それぞれの国が自らの資金で流行を終焉に導けるところまで行くには、一層の努力とパートナーシップへの理解が必要となります。

目覚ましい成果を生み出すきっかけを作った日本の皆さんは、そのことを大いに誇っていいと強調したことの真意はつまり、これからもその誇りに恥じないようによろしくということでしょうね。もちろん恥じたいとは思っていません。

最初に書いた次期事務局長の選任についても質問はしたのですが、理事会が決めることなのでと、あっさりかわされてしまいました。来週中に理事会で候補を数人にしぼり、11月中旬には最終決定に至るだろうということです。