最適の解を求めて ラグビーW杯 次戦を睨む

 ラグビーW杯は第1節の日程が終わり、プールDの日本はチリに42-12で勝利をおさめました。まずは、ほっと一息です。チリは初出場ながら最終的な点差以上に手強いチームだったという印象です。第2戦以降のさらなる健闘を期待したい。
 ・・・おっと、余裕を見せている場合ではありませんね。日本代表は前回以上の成績を目指しているようですが、世界のラグビーのレベルは上がっています。日本はコロナ流行の影響も受け、この4年間、各国に比べ代表としての試合数は多くありません。国際レベルでの経験値は、サンウルブズがスーパーラグビーに参加していた2019年日本大会直前の方がはるかに高かったように思います。
 各国の実力の向上、そして、この4年間、日本が内向きにならざるを得なかった諸事情を考えると、現在のジャパンの実力は必ずしも高くない。世界ランクが14位まで下がってしまった現状も、妥当なところだろうと末端の1ファンとしては思います。
 じゃあ、全くダメなのかというと、そうでもない。W杯前にかなり集中的に国際試合を経験し、敗戦を重ねながらもチームとしての力は伸びてきました。また、いくつかの試練を通し、国際的な判定基準も肌で感じることができました。過去2大会の実績に加え、若い選手の成長にも期待が持てます。
 直近の試練の経験が本大会でノビシロとなることも期待したい。
 チリ戦は、苦しみながらも自分たちのペースを崩さず、ボーナスポイントの付いた勝利を獲得しました。その意味は小さくありません。ボーナスの勝ち点1が後々、順位の決定を大きく左右することも展開によってはあり得るからです。
 次戦の相手・イングランドは、初戦のアルゼンチンに対し、司令塔Gフォードの信じがたいDG連発で、トライなしのまま勝利を手にしています。強いFWがあってこそなのでしょうが、試合巧者ぶりには舌を巻きます。日本にとって最大の難関です。
 選手は必勝を期して臨む必要がありますが、ここでファンとしては戦略的にこんなことも考えてみたくなります。


 イングランドがアルゼンチンに勝ったことで、日本にとって、プールD通過の焦点は最終節のアルゼンチン戦に移ったのではないか。もちろんイングランドに勝てば、日本にとって歴史的にも大変なことなので、なんとしても勝ちたい。
 ただし、イングランドに勝ち、仮にサモアにも勝っても、アルゼンチンに負ければ、日本、アルゼンチン、イングランドが3勝1敗で並びます。勝ち点や得失点差などで(詳しい順位決定のルールを知らずにすいません)、プール通過が困難になることも考えられます(2015年がそうでした)。
 一方、イングランドに負けたとしても、第4戦でアルゼンチンに勝てばプール通過は有望です。
 ただし、こんな勝手な皮算用は、第3戦のサモアに勝つという前提がなければ成立しません。サモアも強い。7月の対戦ではリーチ選手がレッドカードで一発退場となり、22-24で敗れています。

 リーチ選手抜きの14人で試合の大半を闘って僅差の敗戦なので、勝てない相手ではありません。ただし、サモアもこの時は実力のある選手が何人か出場していません。

 今大会からルール改正で他国代表の経験者でも一定の年数がたてば、母国の代表に選ばれることが可能になりました。ニュージーランドなど強豪国の代表経験者が戻ってくればどうなるのか。力の差ははっきり言って試合に臨まない限り分かりません。
 第3戦サモア代表も要注意ですが、ここは何とか頑張って勝ち抜いてほしい。
 といった前提での話ですが(前置きがながくてすいません)、日本時間9月18日午前4時からのイングランド戦は、思い切ってSOに李承信選手を先発させるなど、いくつかのポジションで若手の成長に期待する布陣にすることはできないでしょうか。

 もちろん初戦のGK絶好調だった松田選手を外すのは、調子の波を考えるとリスクが大きいかもしれません。それでも、W杯の予選通過後を睨むなら、予選プールは選手層を厚くし、適度に休養も取りながら起用していけるようにする必要がある。それが2019年W杯日本大会の教訓でもありました。
 イングランド戦はおそらくピーター・ラブスカフニ選手の復帰を試す舞台にもなりそうです。何枚かのカードを持ちつつ、最適の解を求めて闘う。イングランド戦はその格好の機会になるかもしれません。