『 同時進行するパンデミックの中で』 TOP-HAT News第170号(2022年10月) エイズと社会ウェブ版629

 7月に発表されているので、少し遅くなりましたが、TOP-HAT News第170号(2022年10月)の巻頭は、今年の世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマの紹介です。

 全国各地の自治体やNPOの準備にテーマを反映させていただこうと思えば、7月には公表する必要があり、そうかといってあまり早く取り上げてもキャンペーンの時期には「何だったかな」と忘れられてしまう。ということで、時期を見計らって10月になりました。

 今年のテーマは《このまちで暮らしている。私もあなたも。12月1日は世界エイズー》です。しつこいようですが、趣旨説明の一部も再掲しておきます。

 《対策の選択肢は病気によって異なります。その選択肢を生かしつつ、感染している「私」も、していない「私」も、ともにこのまちで、この社会の中で暮らしている。そのことをもう一度、伝えていきましょう》

 皆さん、よろしく。

 

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        第170号(2022年10月)

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 同時進行するパンデミックの中で

2 国際保健戦略官を新設 外務省

3 ハイブリッド開催に変更 第36回日本エイズ学会学術集会・総会

4  150セッションをオンラインで公開 第24回国際エイズ会議

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1 はじめに 同時進行するパンデミックの中で

 秋も深まり12月1日の世界エイズデーが近づいてきました。1988年に第1回世界エイズデーが創設されてから今年で35回目となります。

 国内啓発キャンペーンの主唱者である厚労省と公益財団法人エイズ予防財団は毎年のテーマを決め、7月に発表しています。

12月なのに発表がかなり早いですね。まだ気分が盛り上がらない。そう思われがちですが、全国の自治体や保健所、HIV/エイズ対策に取り組むNPOの人たちに活用を呼びかけ、実際にポスターやチラシなどを作成する際にメッセージとして使ってもらえるようにしておくには、このくらいの時間的余裕が必要になります。したがって、すでにご存じの方も当然いるでしょうが、改めて今年のテーマを紹介しておきましょう。

《このまちで暮らしている。私もあなたも。12月1日は世界エイズデー

HIV/エイズ分野の3つのNPOエイズ予防財団が中心となって運営する情報共有型キャンペーン『コミュニティアクション』(Community Action on AIDS)の公式サイトには、今年のテーマの趣旨が次のように説明されています。

http://www.ca-aids.jp/theme

《コロナの流行はエイズ対策にも影響を与えています。社会的距離が時には人を孤立に追い込む。そのこともまた、深刻な影響です。どうすれば分断を克服できるのでしょうか》

 エイズの流行は40年も続いているせいか、最近は緊急事態としての新型コロナ感染症COVID-19の影に隠れ、あまり目立たない印象があります。

 ただし、流行は終わったわけではなく、コロナとエイズという2つのパンデミックが同時進行している事態がもう3年も続いています。

 国際的にはこの同時進行をColliding Pandemics(衝突するパンデミック)と表現することもあります。

 しかし、この衝突によって、どちらかの感染症の流行が力負けして消えていくというわけではどうもなさそうです。2つのパンデミックは、「衝突」よりも「同時進行」としてとらえるべきでしょう。同時に進行することでそれぞれの対策の成立基盤が崩され、流行の拡大を招く恐れすらあります。

 したがって、2つのパンデミックへの対策も、対立したり、衝突したりするのではなく、逆に相乗効果を高めていく工夫が必要です。

 『このまちで暮らしている。私もあなたも』という一見、何でもないフレーズには、HIV/エイズ対策の40年にわたる困難な歴史から、その知恵を引き出そうとする意図がおそらくはあります。でも、あまりにも当然すぎて、これだけでは「だからどうした」と言われ、終わってしまいそうですね。ただし、『12月1日は世界エイズデー』というさらに何の変哲もないフレーズが加わることで相乗効果が生まれてきます。再びコミュニティアクションのキャンペーンテーマ欄から。

《対策の選択肢は病気によって異なります。その選択肢を生かしつつ、感染している「私」も、していない「私」も、ともにこのまちで、この社会の中で暮らしている。そのことをもう一度、伝えていきましょう》

 蛇足ながら付け加えれば、これは20年近く前に生まれ、その後もずっと使われてきた『Living Together』のメッセージでもあります。

 

2 国際保健戦略官を新設 外務省

 グローバルヘルス課題への対応を強化するため、外務省が9月26日付で、国際協力局内に「国際保健戦略官」を新設しました。、これまでの「国際保健政策室」は「国際保健戦略官室」に改組され、江副聡国際保健政策室長が国際保健戦略官となっています。

 外務省の報道発表では《新型コロナウイルスの世界的感染拡大により明らかになったように、国際保健(グローバルヘルス)は、経済・社会・外交・安全保障に直結する重要課題となっています》としたうえで、改組の理由を次のように説明しています。

 《健康安全保障に資するグローバルヘルス・アーキテクチャーを確立し、パンデミックを含む健康危機に対する予防、備え、対応を強化し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けて取り組むことが一層求められています》

 UHCは《すべての人が、効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられること》です。詳しくは外務省の報道発表をご覧ください。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_001271.html

 

3 ハイブリッド開催に変更 第36回日本エイズ学会学術集会・総会

 11月18日(金)~20日(日)開催予定の第36回日本エイズ学会学術集会・総会がオンラインも含めたハイブリッド開催に変更されました。理由は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が先行き不透明なことをふまえ』ということです。

 現地開催の会場は予定通り、静岡県浜松市アクトシティ浜松ですが、これにライブ配信、オンデマンド配信が加わります。

 ライブ配信は現地開催と同じ11月18日(金)~20日(日)。オンデマンド配信は12月1日(木)~20日(火)です。日程などの都合で、参加しようか、どうしようかと迷っていた人には、選択肢が広がることになりますね。

 開催概要とプログラムは公式サイトでご覧ください。

 http://aids36.umin.jp/

 

4 第24回国際エイズ会議の150のセッションをオンラインで公開

 今年7月29日から8月2日まで、カナダ・モントリオールの会場とオンラインによるハイブリッド開催となった第24回国際エイズ会議(AIDS2022)の主要プログラムが、会議の公式サイトで公開されました。

 https://www.aids2022.org/

 トップページに掲載されている『AIDS 2022 content now available』をご覧ください。

 英語またはフランス語で、なおかつ操作に少々、手間取りますが、150のセッションと2100のアブストラクト、2400のeポスターを見ることができるということです。ただし、全部で何百時間分もあるので、すべてを見る人はたぶん、いないでしょうね。