『3つのエンド』に向けて TOP HAT News第159号 エイズと社会ウェッブ版590

 世界エイズデーも過ぎてしまいましたね。何かと気ぜわしい2021年の師走。ほぼ年間を通じて閑居していた私にも、なぜかあれこれとお仕事の依頼があり、気が付けば今年も余すところあと3週間であります。

 大幅に紹介が遅れて恐縮ですが、TOP HAT News第159号(2021年11月)は巻頭で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2021年世界エイズデー啓発キャンペーンのテーマを紹介しました。『End inequalities. End AIDS. End pandemics.』。不平等とエイズパンデミックにEndの引導を渡しちゃおうということで、生真面目に訳すと長くなります。日本語訳はこの際、グッと縮めて『3つのエンド』としてみました。

 これじゃあ、なんのこっちゃ分からないではないかというご批判は当然あると思います。どうか本文をお読みください。そんなに長くはないし、分かりやすくまとめたつもり。

 UNAIDSはテーマについて次のように説明しています。

『不平等に立ち向かう果敢な行動がなければ、HIVの流行は再び拡大し、COVID-19のパンデミックは長期化して、社会、経済的危機がますます深刻化していきます』

 世界エイズデーではあるけれど、さすがに今年は新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックを視野に入れ、社会、経済的な危機とその対応を強調するメッセージにならざるを得なかったということでしょうね。

 もちろんこのテーマは今年の世界エイズデーで完結するものではなく、これからも手を変え品を変えて同趣旨のメッセージが国連から発せられることになりそうです。

 

 

 

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        第159号(2021年11月)

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 『3つのエンド』に向けて

 

2 リーフレット『レッドリボン30周年 Think Together Again』

 

3 東京、大阪、2つのエイズウィークス

 

4 令和2(2020)年エイズ発生動向年報 

 

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1 はじめに 『3つのエンド』に向けて

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに2021年世界エイズデー(12月1日)のキャンペーン特設ページが開設されたのは10月の上旬でした。

今年のテーマは『End inequalities. End AIDS. End pandemics.』です。

 https://www.unaids.org/en/2021-world-aids-day

日本語では『不平等にエンド(終止符)、エイズにエンド(終結)、パンデミックにエンド(もう起こさない)』と訳しました。

「3つのゼロ」だとか、「90-90-90」だとか、UNAIDSのメッセージには三段重ねが多いようです。言葉のリズムを重視した結果なのでしょうね。

できれば、その勢いは生かしたい。ただし、今回は『End』が何を指すのか。そのまま訳したのでは、意味が伝わりにくいので、少し補足説明的なニュアンスも含め、長くなってしまいました。悪しからず。

 特設ページとはいえ、10月の開設時点ではまだポスターなどのキャンペーン資材は公開されておらず、載っていたのはテーマとその趣旨を説明する短い文章だけでした。2020-2021年の2年間は、世界の感染症対策が大きく揺れ動いた年であり、UNAIDSも走りながら準備を進めなければならなかったのでしょうね、きっと。

 エイズソサエティ研究会議のHATプロジェクト((HIV/AIDS Translation Project))は、大急ぎでその趣旨説明の日本語仮訳を作成し、『3つのエンド』というタイトルをつけてブログに紹介しました。

 https://asajp.at.webry.info/202111/article_2.html

 趣旨説明の冒頭2段落には次のように書かれています。

 『今年の世界エイズデーに際し、UNAIDSはエイズ、および他のパンデミックの原因となっている不平等にいますぐ終止符を打つ必要があることを強調しています』

『不平等に立ち向かう果敢な行動がなければ、HIVの流行は再び拡大し、COVID-19のパンデミックは長期化して、社会、経済的危機がますます深刻化していきます』

 世界エイズデーではあるけれど、さすがに今年は新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックを視野に入れ、社会、経済的な危機とその対応を強調するメッセージにならざるを得ません。

日本を含め世界各国のHIV/エイズ対策は疑いもなくCOVID-19の流行に大きな影響を受けています。逆に40年に及ぶHIV/エイズ対策の経験には、COVID-19対策に生かせるもの、生かさなければならないものも、たくさんあるからです。

 参考までに紹介しておくと、厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマは『レッドリボン30周年~Think Together Again~』。そして、東京都エイズ予防月間(11月16日~12月15日)のテーマは『あらためて 見直す・知る 行動を。』です。

 3つのメッセージは一見すると、方向が大きく異なっている印象がありますが、それぞれが「いま、この時期に、なにを伝える必要があるのか」を考え、検討を重ねた結果です。最終的な表現型は多様ですが、その根っこにはエイズ流行40年の経験を経て、コロナという新たな試練に直面し、現在進行形のその教訓も踏まえて、何を次につないでいくのかという共通の問題意識があったのではないか。『3つのエンド』の訳し方をあれこれ考えていくと、そうした推察もまた可能になってきそうです。

 

 

2 リーフレット『レッドリボン30周年 Think Together Again』

 今年はエイズ流行40周年であると同時に、エイズ対策への支援と連帯を示すレッドリボンが登場してから30周年の節目でもありました。なぜ、いまレッドリボンなのか。世界エイズデー国内啓発キャンペーン用のリーフレットを公益財団法人エイズ予防財団が作成しました。同財団の公式サイトでダウンロードできます。

 https://www.jfap.or.jp/various/announce_210924.html

HIV/エイズの流行開始から10年を経て、レッドリボンが登場したのはどうしてなのか。改めて考えてみましょう』

 

 

3 東京、大阪、2つのエイズウィークス

 東京と大阪では今年もエイズウィークスが展開されています。12月1日を中心にした前後数週間のイベントなどの情報を集約し、ウェブサイトで紹介するプログラムです。

 OSAKA AIDS WEEKsは2014年に大阪で第28回日本学術集会・総会(12月3~5日)が開催されたのを機会に公益財団法人エイズ予防財団が呼びかけ、エイズ分野のNGOや行政機関が呼応してスタートしました。第1回の実施期間は11月26~12月7日の11日間、つまり1週間ちょっとだったので、最初は名称もエイズウィークと単数形でしたが、その後、対象期間が広がり、ウィークスと複数形になっています。NGOと行政、学術界が協力して進めるグッドプラクティス事例として定着し、今年で8年目になりました。

 TOKYO AIDS WEEKSはその翌年の2015年に第29回日本エイズ学会学術集会・総会(11月30~12月1日)が都内で開かれ、その直前にエイズ関係のNGOも協力して2日間のプレイベントが開催されました。このプレイベントにあわせ、前後22日間にわたるHIV/エイズ関係のイベントスケジュールを紹介するサイトが作られたのがスタートとなり、今年は7回目です。期間は11月15日~12月15日の1か月間になっています。

 2つのウィークスの詳細については、それぞれの公式サイトでご覧ください。

 ・OSAK AIDS WEEKs2021

   https://osaka.aids-week.com/ 

 ・TOKYO AIDS WEEKS 2021

  https://aidsweeks.tokyo/ 

 

 

4 令和2(2020)年エイズ発生動向年報

 厚労省エイズ動向委員会が昨年1年間のエイズ発生動向年報をまとめ、10月13日にAPI-Net(エイズ予防情報ネット)で発表しました。

 https://api-net.jfap.or.jp/

 2020年の新規HIV感染者・エイズ患者報告数は今年8月24日に確定値が発表されていますが、年報にはさらに感染経路別など詳細な分析結果も含まれています。