2つのウィークス TOP-HAT News 第147号(2020年11月)

 12月に入ってしまったので、寒いのはしょうがないのだけど、今年はひときわ冷え込みと乾燥が気になります。コロナの流行が気になりつつ、それでもHIV/エイズも忘れずということで、TOP-HAT News 第147号(2020年11月)の巻頭は12月1日の世界エイズデーを中心にした東京と大阪の「エイズウィークス」の紹介です。

 1週間ではなく、複数形なので対象期間は1カ月近くありますが、それでもすでに半分以上過ぎてしまいましたね。どうも報告が遅れ気味になってすいません。

 それはともかくといたしまして、個人的には、この時期だからこそ、あえてこういうことも言っておきたい。
 《コロナ対策にもエイズ対策にも共通して言えることですが、恐怖や不安に基づくメッセージは、短期的には効果があっても長続きはしません。むしろ、恐怖や不安の感情が強くなることで、社会や個人が長期的に感染症の流行と向き合っていくうえでは負の効果しかもたらさない差別や偏見がいつまでも残ってしまうおそれがあります》

 ただし、Go To キャンペーンはあんまりです。 

 

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        第147号(2020年11月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに 2つのウィークス

 

2 新宿に『プライドハウス東京レガシー』

 

3 UNAIDSがガイダンス『COVID-19対策に伴うスティグマと差別への対応』を発行

 

4 『感染症と共に生きる社会のあるべき姿』 JaNP+ニュースレター最新号から

 

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1 はじめに 2つのウィークス

 世界エイズデー(12月1日)の前後には毎年、国内でも様々な啓発イベントが実施されています。今年は新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行による社会的な不安が大きいことから、HIV/エイズに対する関心も低下が危惧されていましたが、なんとか踏みこたえている印象ですね。

 コロナ対策にもエイズ対策にも共通して言えることですが、恐怖や不安に基づくメッセージは、短期的には効果があっても長続きはしません。むしろ、恐怖や不安の感情が強くなることで、社会や個人が長期的に感染症の流行と向き合っていくうえでは負の効果しかもたらさない差別や偏見がいつまでも残ってしまうおそれがあります。

 11月16日(月)から12月15日(火)までの1か月間は東京都のエイズ予防月間です。今年のテーマ《大切なのは、「正しく知る」こと。》も、その教訓を踏まえたメッセージでしょう。

https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/kansen/aids/yobo_gekkan/whats_yobo_gekkan.html

 参考までに紹介しておけば、厚労省と公益財団法人エイズ予防財団が主唱する世界エイズデー国内啓発キャンペーンの今年のテーマは『知ってる!? HIVエイズの違い』です。

http://www.ca-aids.jp/theme/

 もちろん、知識だけで恐怖や不安を克服することはできません。そこには伝えられた知識を共感や行動へとつなげていく回路が必要になります。

 その回路をつなぐ試みとして、東京と大阪では、HIV/エイズ関係の様々な団体が関与し2つのエイズウィークスが展開されています。それぞれ公式サイトが開設されているので、こちらも紹介しておきましょう。

 https://aidsweeks.tokyo/

 東京エイズウィークス(TOKYO AIDS WEEKS)は2015年11月30日(月)~12月1日(火)に東京で第29回日本エイズ学会学術集会・総会が開かれたのがきっかけになってスタートしました。エイズ学会の開催期間は3日間のことが多いのですが、この時は会期を2日間にし、その直前の週末2日間は別会場(国立国際医療研究センター)でプレイベントが開催されています。

この2日間のプレイベントとエイズ学会も含め、11月21日(土)から12月12日(土)までの間に東京で開かれる様々なイベントの開催情報を集約し、紹介したのが始まりでした。いまは、おおむね11月15日~12月15日が対象期間で、1週間ではなく複数の週にまたがっているのでWEEKSと複数形になっています。

大阪エイズウィークス(OSAKS AIDS WEEKs)はその前年の2014年に公益財団法人エイズ予防財団と大阪エイズウィーク連絡会(この時は単数ですね)によってスタートしました。大阪で第28回日本エイズ学会・学術集会(12月3~5日))が開かれたのがきっかけです。

https://osaka.aids-week.com/

《大阪エイズウィークスは、市民のエイズへの関心を高めて感染拡大を防ぐとともに、感染した人々も安心して暮らせる社会の実現を目指す週間です》

大阪も東京と同様、いまは12月1日を中心にしておおむね1カ月間が対象期間になっています。

2つの公式サイトに紹介されているイベントをみると、HIV/エイズにかかわりのある分野のすそ野は広く、様々な立場の人がそれぞれのこだわりや強みを生かし、多様なメッセージを発信しようとしていることが分かります。今年はその多様なコンテンツの中の欠かせない要素として、新型コロナウイルス感染症への対応が含まれています。

エイズかコロナかではなく、現在進行中の2つの危機に対応すべく、相乗効果を生みだしていくようなメッセージへの工夫がすでに始まっている。2つのエイズウィークスからは、啓発と支援の現場のそうした熱意も伝わってきます。

 

 

 

2 新宿に『プライドハウス東京レガシー』

常設の大型総合LGBTQセンター『プライドハウス東京レガシー』が10月11日(日)、東京・新宿にオープンしました。

 http://pridehouse.jp/

今年は東京オリンピックパラリンピックの開催期間にあわせるかたちで「プライドハウス東京2020」が開設される予定でしたが、大会自体の延期に伴い、こちらも延期になっています。

ただし、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらす影響を考え、レガシー施設が先行して開設されることになりました。公式サイトの説明によると、《コロナ禍におけるLGBTQユースの実態調査「LGBTQ Youth TODAY」をもとに、性的指向性自認に気兼ねすることなく、安心してつながりを持てる場所が中長期化するコロナ禍にこそ必要である》と判断したからです。

10月11日(日)から12月31日(木)まで(つまり年内)は、東京2020オリンピック ・パラリンピック競技大会組織委員会による「公認プログラム」と位置づけられ、月金土日の13時~19時に開館。2021年1月以降も引き続き開館予定ですが、詳細の曜日・時間は今後決定されるということです。

 

 

 

3 UNAIDSがガイダンス『COVID-19対策に伴うスティグマと差別への対応』を発行

新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行、およびその対策の実施に伴う社会的なスティグマや差別をなくすために、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が『COVID-19対策に伴うスティグマと差別への対応』というガイダンス(手引書)を発表しました。日本語仮訳のPDF版がAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に掲載されています。

 https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet039.html

 

 

 

4 『感染症と共に生きる社会のあるべき姿』 JaNP+ニュースレター最新号から

 日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス(JaNP+)がニュースレター第44号(2020年10月)を発行しました。巻頭は高久陽介代表理事の『感染症と共に生きる社会のあるべき姿』です。

 《感染者や感染リスクが疑われる人に対する差別、あるいは従来からある社会の格差や差別的構造に、感染症がつけ入る隙を与えるような事態をHIV/AIDSの登場から30年たった現在のコロナ禍で繰り返してはならない》

 サブタイトルは『HIV/AIDSの経験から学べるリテラシー』ですね。新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックに直面する日本の社会に向け、3ページにわたってHIV陽性者としての経験を踏まえた貴重なメッセージを伝えています。

 JaNP+の公式サイトでPDF版をダウンロードして読むことができます。

 https://www.janpplus.jp/