1996年以降、隔年開催となっている国際エイズ会議。今年はお休みの年ですが、早くも来年のAIDS2022(第24回国際エイズ会議)の開催日と開催都市が国際エイズ学会(IAS)から発表されました。
期間は2022年7月29日から8月2日まで。開催都市はカナダのモントリオールですが、バーチャルと併用のハイブリッド会議になります。
コロナの流行の先が見えない現状では致し方ありませんね・・・といいますか、これからはハイブリッド開催が国際エイズ会議の標準になるのかもしれません。
対面での議論や交流が大切であることは尊重しつつも、世界中から何万もの人を集めて会議の規模を誇ったり、競い合ったりする必然性もまたありません。情報と交流のストライクゾーンはどのあたりに落ち着くのか、その時々の条件もあるし、テクノロジーや医学の進歩もあるので、これから先の何年かは会議のあり方をめぐる試行錯誤が続きそうです。
なお、プレカンファレンスの会合は開幕2日前の7月27日開始の予定です。
英文ですが、IASの発表は公式サイトのニュース欄をご覧ください。こちらです。www.iasociety.org
ということで終わりにしたのでは、ちょっとそっけないので、個人的な部分訳で得た情報を少し補足しておきましょう。不正確かもしれないので、確認したい方は上記サイトで英文に当たってください。
5月25日の発表に際し、地元カナダのパティ・ハイドゥ保健相は「HIVとエイズの闘いはまだ長い道のりの途中です」と語っています。当然の認識ですが、最近は目先の困難に関心が集中して「エイズはもういいだろう」感覚がますます広がっている印象もあります。致し方ない面もありますが、「まだ終わっていない」ということは折に触れて、繰り返し、指摘しておく必要があります。保健相コメントの続きです。
「先住民との和解、そしてスティグマと差別の解消に向けて、95-95-95ターゲットの達成に引き続き取り組んでいきます」
ハードルは90-90-90ターゲットから一段あがって95-95-95ターゲットになりました。
会議の国際共同議長であるアディーバ・カマルザマンIAS理事長は「世界のHIVコミュニティはCOVID-19に直面し、何十年もの間、パンデミックに対応してきた教訓を生かすために団結しました」と話しています。その団結(連帯と訳した方がいいかな)によって「HIV対策を軌道に戻さなければならない」というのが発言の趣旨です。
「AIDS2022は、科学と政治とアクティビストのコミュニティを再び活性化させ、対策を前に進める極めて重要な機会です。何十万もの人が毎年、エイズ関連の病気で亡くなっている中で、私たちにはその責任があります」
国際エイズ会議は国際部門と地元部門の二人共同議長体制を取っています。その地元共同議長であるマクギル大学医学部のジャン-ピエール・ルーティ教授は「COVID-19ワクチンの開発により、効果的なHIVワクチンの開発、さらには治癒への道にも、これまで以上に展望が開けています」と語っています。
「HIVに最も大きな影響を受けているコミュニティへの包摂性をこれまで以上に高め、説明責任を果たす必要があります。HIVの研究、政策、プログラムにとって、真にエキサイティングな時期に世界の仲間を迎えることをモントリオールは心から歓迎します」
やる気十分ですね。
直近3回の国際エイズ会議を振り返ってみると、開催都市は以下の通りです。
2016年 ダーバン(南アフリカ)
2018 アムステルダム(オランダ)
2020 サンフランシスコ・オークランド(アメリカ)→バーチャル開催に
ダーバンは2000年にアフリカ初の国際エイズ会議が開かれた都市。その2週間後に開かれた九州・沖縄サミットとともに途上国への治療の普及の扉を開いた会議でもあります。
アムステルダムは1992年、米国のHIV陽性者に対する入国規制が撤廃されなかったため、ボストン開催の予定だった会議が急遽、開催都市を変更して開かれました。
そしてサンフランシスコは1990年、その米国の入国規制のため大荒れの会議となり、当時の米厚生長官は閉会式で演説もできずに終わりました。
では、モントリオールは・・・というと、大荒れのサンフランシスコ会議の前年の1989年に第5回国際エイズ会議が開催され、閉会式で初めてHIV陽性者が登壇して演説を行っています。つまり、それまでの4回の会議はHIV陽性者が登壇することも、話をすることもなかった。会議の性質が大きく変わる契機となったのが1989年のモントリオール会議でした。
昔の名前で出ています・・・などと言ったら、たちまち厳しい叱責を受けそうですが、国際エイズ会議は2022年のモントリオールも含め、エイズ対策史に大きなインパクトを与えたこれまでの開催都市で再び開かれるケースが多くなっています。その流れで行くと、いずれ横浜でももう一度・・・などと自分の首を絞めるような言動は極力避け、モントリオールのハイブリッド開催が成功することを微力ながら応援したいですね。