『End inequality(不平等に終止符を)』 エイズと社会ウェブ版552


 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が提唱する2021年「差別ゼロデー」(3月1日)キャンペーンのテーマは『End inequality(不平等に終止符を)』です。UNAIDSの公式サイトに掲載されているキャンペーン資料からブローシュア(啓発冊子)の日本語仮訳を作成しました。PDF版をAPI-Netでご覧いただけます。   

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api-net.jfap.or.jp


 《今年の差別ゼロデーは、不平等の解消に向けた行動がいますぐ必要なことを強調しています。収入や性別、年齢、健康状態、職業、障害、性的指向、薬物使用、性自認、人種、階級、民族、宗教などを取り巻く不平等は、いまも世界中で根深く残っているのです》
 冊子自体にも書かれているように《不平等との闘いは新たな課題というわけではありません》。それでも今年、あえて「不平等をなくすこと」をメインテーマに掲げたのは、新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行がいま、社会の分断や不平等を一段と深刻化させているという事情があるからでしょう。

 《そしていま、COVID-19の流行が最も脆弱な人びとに最も大きな打撃を与えています。新しいワクチンが利用可能になったとはいえ、そのアクセスには大きな不平等があるのです。多くの人がこの状態をワクチンアパルトヘイトとみなしています》

 また、エイズ対策の文脈ではこう指摘しています。

 《世界が2030年のエイズ終結という約束に向けた軌道から大きく外れているのは、必要な知識や能力や手段がないからではなく、HIVの予防と治療に効果が実証されている解決策の実施が構造的な不平等のために妨げられているからなのです》

 冊子の紹介とは少し話がそれますが、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は今年1月28日、ニューヨークの国連本部で行われた加盟国への非公式ブリーフィングで10項目の2021年優先課題をあげています。その4番目の課題が《貧困と不平等のパンデミック》でした。比喩的な表現なのでしょうが、世界規模で広がっていくものは感染症でなくてもパンデミックと呼ばれるのですね。
 参考までに紹介しておくと、優先課題の1番目は『COVID-19への対応』、2番目は『包摂的で持続可能な復興』。コロナ対策で大きなダメージを受けている経済の復興ということでしょうね。
 3番目は『自然との平和の実現』。これは気候変動対策が中心になります、自然との折り合いをつけるという点では新興感染症対策も視野に入ります。
 4番目が不平等の解消で、5番目以降は、人権の尊重、ジェンダー平等・・・と続きます。新たな感染症パンデミックであるコロナの衝撃で、これまで抱えていた課題の重要性が再照射されている印象です。そうした中でHIV/エイズ対策の重要性も改めてとらえなおす必要があります。
 ということでAPI-Netの日本語仮訳、16ページ、写真どっさりの冊子なので、全部読んでも、それほど時間はかかりません。しかも、首都圏の緊急事態宣言、また2週間延びちゃったよ、ま、やむを得ないか・・・という我が国の現状をとらえるうえでも、参考になる情報がけっこうあるように思います。よかったら会合やプレゼンテーションの資料としてもご活用ください。