TOP-HAT News第150号『COVID-19ワクチンとHIV』 

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        第150号(2021年2月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに 『COVID-19ワクチンとHIV

 

2 日本人とグローバルファンド

 

3 「性自認または性的指向に基づく差別防止および差別との闘いに関する大統領令」に署名

 

4 Words of LOVE:You Tubeで映像を公開

 

5 「東京都南新宿検査・相談室」が移転、「東京都新宿東口検査・相談室」に

 

6 コンドームは『とても控えめなヒーロー』

 

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1 はじめに  『COVID-19ワクチンとHIV

 新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチンが、国内でも承認手続きを経て接種開始となりました。最初は医療従事者等、次いで4月以降は高齢者を対象にした接種も進められる見通しです。厚労省の公式サイトに「接種についてのお知らせ」が掲載されているので、参考までにご覧ください。 

www.mhlw.go.jp

 昨年12月8日に英国で最初のワクチン接種が開始されて以来、海外での接種状況がしばしば報じられてきました。「HIV陽性者はCOVID-19のワクチンを接種しても大丈夫なの?」という声を聞くこともあります。国際的にも、日本国内でも、HIV陽性の医療従事者は少なくありません。先行して接種を受ける立場としては、感染予防や重症化防止への期待と同時に、副反応に対する心配も出てきます。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトには2021年1月12日付で『COVID-19ワクチンとHIV』という1ページのPDF文書が掲載されました。『HIV陽性者にとってCOVID-19ワクチンは安全ですか?』『HIV陽性者はCOVID-19ワクチンを受けるべきですか?』という2つの疑問を取り上げ、承認されたワクチンのこれまでの臨床試験結果や接種開始後の各国からの報告を集約したうえで、UNAIDSの見解をまとめた文書です。

それによると『HIV陽性者にとってCOVID-19ワクチンの安全性は他の多くの人と変わりません』。したがって、UNAIDSは『HIV陽性だからということでワクチンを受けてはならないという理由はありません』との見解を示しています。

 まれにではありますが、接種後に深刻なアレルギー反応がみられることがあるため、『ワクチン接種後15分から30分の間、経過を観察すること』の必要性も強調しています。これはHIV陽性かどうかにかかわらず、COVID-19ワクチンを受けるすべての人に共通して必要なことです。

 日本語仮訳のPDF版もAPI-Net(エイズ予防情報ネット)に紹介されているので、参考までにご覧ください。 

api-net.jfap.or.jp

HIV陽性者は効果的な抗レトロウイルス治療を継続すべきです』『ワクチン接種後も、すべての人がSARS-CoV-2ウイルスの感染予防策を継続する必要があります』といった指摘も最後に付け加えられています。

ワクチンは有効な予防対策のツールではありますが、それですべてが解決するわけではありません。医学研究の成果を生かし、同時に社会の中の様々な立場の人たちの事情に即した予防の選択肢を組み合わせていく『コンビネーション予防』の必要性は、実はHIV/エイズ対策にもCOVID-19対策にも共通しています。

 

 

2 日本人とグローバルファンド

 世界エイズ結核マラリア対策基金(グローバルファンド)の戦略・投資・効果局長として活躍する國井修医師のインタビューがグローバルファンド日本委員会(FGFJ)のウェブサイトに掲載されています。 

fgfj.jcie.or.jp

「ぼく、現場にいたときはグローバルファンド嫌いだった」

 そう語る國井さんがあえてグローバルファンドの中心を担うポストに就いたのはどうしてなのか。豊富な国際支援の現場体験を通し、日本の若い人たちへのメッセージが伝わってきます。

 

 

3 『性自認または性的指向に基づく差別防止および差別との闘いに関する大統領令』に署名

 米国のバイデン新政権が1月20日に発足し、ジョー・バイデン大統領はさっそく17本の大統領令・覚書に署名しました。米国の大統領が就任初日にこれほど多くの行政文書に署名したのは初めてということです。世界保健機関(WHO)脱退撤回、地球温暖化対策「パリ協定」復帰、メキシコ国境の壁建設中止などトランプ前政権との違いを際立たせるかたちになりました。

 その17文書の中には『性自認性的指向に基づく差別防止および差別との闘いに関する大統領令』も含まれています。ホワイトハウスの公式サイトで、この大統領令(英文)を読むことができます。 

www.whitehouse.gov

『誰であるか、誰を愛しているかに関わりなく、すべての人が尊敬と尊厳を持って扱われ、恐れることなく暮らせなければならない』

米国の新政権がこうした考え方を明確に示し、再確認したことは、性をめぐる差別や偏見の克服が新規感染の予防や支援、治療の提供を進めるうえで大きな課題となっている国際的なHIV/エイズ対策にも重要な意味があります。

 

 

4  Words of LOVE:You Tubeで映像を公開

 2020年12月11日の『Words of LOVE streaming live』およびHIV/エイズ性感染症についての知識をより深めることができる特別編『HIV/エイズの歴史と現在 ~HIV陽性者の立場から~』の映像が、You Tubeで公開されています。  

wordsoflove.jp

wordsoflove.jp

 《「Words of Love」は若い世代を対象に、音楽やトークショーなど、エンターテインメントを通してエイズ性感染症についての正しい知識を身につけてもらいたい、HIV陽性者とともに生きることについて考えてもらいたい、そんな想いからうまれた、東京都が企画する番組》

 配信期間は3月31日までです。

 トークゲストとしてお話をされてた特定非営利活動法人ぷれいす東京理事の佐藤郁夫さんは2021年1月18日に亡くなられました。多くの人を勇気づけてきた長年の活動に深く感謝するとともに、ご冥福をお祈りします。

 

 

5 「東京都南新宿検査・相談室」が移転、「東京都新宿東口検査・相談室」に

 無料・匿名でHIV検査が受けられる「東京都南新宿検査・相談室」が新施設に移転し、名称も「東京都新宿東口検査・相談室」に変わります(HIVの検査を受ける人は梅毒の検査も同時に受けることができます)。

www.metro.tokyo.lg.jp

《新施設では、多言語対応の取組を拡充し、これまでの英語での検査対応に加え、新たに中国語・韓国語での検査対応を開始します》

 

 移転後の住所は以下の通りです。

  東京都新宿東口検査・相談室

  新宿区歌舞伎町2-46-3、SIL新宿ビル2階

 現在の「南新宿」では2021年3月2日(火)まで業務を継続し、3~5日は移転のため休止。3月6日に「新宿東口」が始動します。

 

 

 

6 コンドームは『とても控えめなヒーロー』

バレンタインデー前日の2月13日は、国際コンドームデーです。今年は国連人口基金UNFPA)とグローバルファンドが、コンドーム普及に向けたプロモーションビデオを作成しました。YouTubeにはグローバルファンド日本委員会が翻訳を担当した日本語字幕版も公開されています。 

www.youtube.com

ビデオによると、コンドームは目立たないけれどHIVおよび性感染症の感染予防、望まない妊娠の防止という3つの予防機能をもつ優れモノです。