国連合同エイズ計画（UNAIDS）が9月1日、安倍晋三首相に対し、感謝の意を表すプレス声明を発表しました。首相の座を去る安倍氏へのはなむけであると同時に、感染症対策やグローバルヘルス分野で2000年の九州沖縄サミット以来、息の長い貢献を続けてきた日本に対する高い評価の表れでもあります。
ま、政治家に対しては好き嫌いや期待と失望も含め、様々な評価がありますが、国際的には、とりわけ保健分野の貢献に関していえば、高評価がなされていることは認識しておく必要があるでしょう。もちろん、去る人に対する外交辞令的な意味合いもあるとは思います。ただし、それを割り引いたとしても、少なくとも低い評価ではありません。
世界はいまなお、新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミックに浮足立っています。改めて書く必要もないほど分かり切ったことではありますが、それでも改めて書いちゃったのは、保健分野におけるこうした評価は日本にとって、貴重な外交資産であり、安倍首相の後継に誰がなるとしても（もう決まっちゃったような印象も受けますが、それはともかくとして）、その資産運用を誤ってはならないと思うからです。間違ってもせこいことはするなよ、というぐらいの釘は刺しておきたい。
世界の指導者も、日本の指導者も、おそらく心の中ではいま、あ、しまった、保健医療の分野で変なけちり方をするんじゃなかったと思っているのではないでしょうか。思っていない人は選びたくないけど、ここで毒づいてもしょうがないか。
それでもとにかく、曲がりなりにもHIV/エイズのパンデミックに対応すべく、構築してきた社会的インフラが日本にもあります。「エイズはもういいだろう」などと言われながらもなんとかサバイバルを果たしてきたので、このインフラは大いに見直し、かつ活用してほしい。その意味でもUNAIDSのプレス声明は紹介しておこうかな。以下、日本語仮訳です。
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エイズ対策、およびグローバルヘルスと開発に長年、取り組んできた安倍晋三首相に感謝
UNAIDSプレス声明
日本の安倍晋三首相辞任に際し、UNAIDSはグローバルヘルス、とりわけユニバーサル・ヘルス・カバレッジにおける貢献を認めます
ジュネーブ 2020年9月1日 － 日本の安倍晋三首相が在任中、グローバルヘルスに大きく貢献されたことをUNAIDSは称賛します。日本は長年にわたるUNAIDSのパートナーであり、エイズ対策への主要投資国の1つです。安倍氏のリーダーシップのもとで、日本はアジア全域のキーポピュレーションに焦点を当てたプログラムを支援してきました。また、ケニアでは最先端技術を使って、質の高いHIVデータの収集、提供にあたるHIVシチュエーションルーム（HIV状況分析室）などのプロジェクトに投資しています。
日本は2000年の九州沖縄サミットで感染症対策を主要議題に取り上げ、2012年に安倍氏が首相に任命された当時、すでにグローバルヘルスと開発分野における著名な発言者となっていました。九州沖縄サミットにおける議論は、官民によるエイズ対策の最も重要な資金メカニズムである世界エイズ・結核・マラリア対策基金（グローバルファンド）の創設に大きく道を開いています。
日本の保健と開発分野における多年の関与に基づき、安倍首相は2013年にグローバルヘルス外交戦略を発表しました。この戦略はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ（UHC）に焦点を当て、すべての人が手ごろな価格で基本的保健医療サービスを利用できる世界の実現に向けて、日本の知識と専門的能力を結集することを約束しています。
2016年のG7伊勢志摩サミットでユニバーサル・ヘルス・カバレッジが議題となったのはドイツのアンジェラ・メルケル首相と安倍首相のおかげです。日本はまた、2019年のG20大阪サミットの議長国でもありました。このサミットでは主要20カ国による初の財務大臣・保健大臣合同会合が開かれ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた持続可能な保健財政が議論されています。
安倍首相はまた、アフリカ開発会議（TICAD）においても、アフリカ諸国の自立と国際協力の原則の下で多国間協力を強化し、アフリカの開発と平和と安全保障を推進することの重要性を強調してきました。
UNAIDSは、グローバルヘルスと開発における安倍氏の貢献と指導力に感謝するとともに、安倍氏自身の健康と幸福を願っています。
PRESS STATEMENT
UNAIDS thanks Shinzo Abe for his years of commitment to the AIDS response and to global health and development
As the Japanese Prime Minister steps down, UNAIDS recognizes Shinzo Abe’s contribution to global health, notably to universal health coverage
GENEVA, 1 September 2020—UNAIDS commends Shinzo Abe for his significant contribution to global health during his tenure as Prime Minister of Japan. Japan has been a longstanding partner of UNAIDS and is one of the leading investors in the AIDS response. Under Mr Abe’s leadership, Japan has supported programmes focused on key populations across Asia and has invested in projects such as the Kenya HIV Situation Room, which is using cutting-edge technology to provide high-quality data about Kenya’s HIV epidemic.
Upon Mr Abe’s appointment as Prime Minister in 2012, Japan was already a prominent voice in global health and development, having introduced the issue of infectious diseases to discussions at the Group of Eight Kyushu-Okinawa summit in 2000. Those discussions contributed to the creation of the most important public–private mechanism for financing the AIDS response, the Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria.
Building on Japan’s engagement in health and development, Mr Abe launched Japan’s Strategy on Global Health Diplomacy in 2013. The strategy focused on promoting universal health coverage and mobilizing Japan’s knowledge and expertise to contribute to realizing a world where everyone has access to basic health-care services at an affordable cost.
It was thanks to the leadership of Angela Merkel and Mr Abe that universal health coverage was on the agenda of the Group of Seven summit in 2016. Japan also hosted the Group of Twenty summit in Osaka in 2019, where the first joint Group of Twenty finance and health ministers meeting was held to discuss sustainable health financing to achieve universal health coverage.
Mr Abe was also a strong voice at TICAD (the Tokyo International Conference of African Development), promoting development, peace and security in Africa through the strengthening of relations in multilateral cooperation, under the principles of African ownership and international partnership.
UNAIDS wishes to thank Mr Abe for his commitment and leadership in global health and development and wishes him good health and the very best for the future.
