慶應義塾大学出版会の公式サイトに『立ち読みのススメ』というページがあります。建学の精神にのっとってといいますか・・・福沢諭吉先生もいまだったら、大いに立ち読みを勧めるのではないでしょうか。
ピーター・ピオット著『ノー・タイム・トゥ・ルーズ――エボラとエイズと国際政治』『エイズは終わっていない――科学と政治をつなぐ9つの視点』の2冊も冒頭部分20ページの立ち読みが可能になりました。
翻訳は前者が樽井正義、大村朋子、そして私の3人。後者は樽井さんと私の2人が担当し、大村さんからも適切なアドバイスをいただきました。とにかく、日本の人たちにも、日本語で読んでいただきたいとの気持ちから、果てしない(という感じだった)翻訳作業に取り組んでいたころを思い出します。
内容は『ノー・タイム・・・』がエボラウイルス発見者の一人であり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の初代事務局長でもあるピオット博士の回顧録、波乱万丈の物語でもあります。『エイズは終わっていない・・・』はピオット博士がUNAIDSの事務局長を退いた後、パリの大学で行った講義をもとに、エイズパンデミックを保健医療だけでなく国際政治や経済、社会の観点からもとりあげた包括的なパンデミック論です。
エイズについて書かかれていることが、新型コロナ感染症COVID-19のパンデミックにも驚くほど当てはまるではないか・・・と思っていたら、現在はロンドン大学衛生熱帯医学大学院の学長であるピオット氏自身が3月にCOVID-19でロンドンの病院に入院し、サイトカインストームも経験するなど、かなり厳しい闘病生活を経験しました。
現在はその経験も生かし、欧州委員会委員長のコロナウイルスおよびCOVID-19対策特別顧問として新たなパンデミック対策にも取り組んでいます。
COVID-19のパンデミックがもたらす危機に世界はどう対応するのか、その中で日本にいていま、私たちが日々に経験していることはどう位置付けられるのか。立ち読みサイトにはパンデミック対策の最高峰の専門家による2冊の著書の冒頭部分が公開され、それだけでも有益なヒントがどっさりあります。もちろん、本文を全部、読むことができれば、そのどっさり度は飛躍的に増大します。訳者の一人としても、諭吉先生になりかわりまして、ここはまず、立ち読みをおススメします。