ランセット誌が中国Stringer(現地レポーター)の「絶望的なお願い」を掲載 エイズと社会ウェブ版453

 英国の医学専門誌ランセットのウェッブ版にリチャード・ホートン編集長が《新型コロナウイルス(2019-nCoV)流行下における「絶望的なお願い」》と題した論評を掲載しています。

 Offline: 2019-nCoV—“A desperate plea”

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30299-3/fulltext

 「お願い」をしているのは、中国在住のStringer(現地レポーター)の方です。前書きでホートン氏は「驚くべきことに」と説明しています。

 「(今回のアウトブレークで)見過ごされている側面が一つあります」

 編集長宛に送られてきた「中国の普通の市民からの絶望的なお願い」というタイトルのemailをホートン氏が、「明確化を図るための小さな修正」を一部に加えたうえで紹介したということです。

 

 Stringerの方のメールによると、中国では2月2日現在、武漢を含め少なくとも5つの都市が公共交通システムを停止:湖北省と北京を含む10省・都市で乗客の路上輸送が閉鎖:16省では省間にまたがる乗客輸送が停止:28省の多数の都市で公共輸送機関が完全停止または部分停止:黄岡では昨日、都市部の全世帯に対する家屋隔離命令が発表され、必要不可欠の買物は2日に一度、指定された家族メンバーに許可・・・といった規制が実施されています。

 日本ではもう報道されている内容がほとんどかもしれませんが、結果として・・・

 『巨大人口を抱える中国の人たちの多くは、ウイルスに苦しんでいるというよりも、孤立と先の見えない不安、ストレス、日常生活の中での物資不足や自由の制限、収入の喪失などによる苦しみの方が大きくなっています』

 ランセットのストリンガーはこう書き、さらに『こうした事態が西側諸国で起きれば激しい抗議の声が上がっているはずですが』と続けています。

 『中国では抗議の声をあげられないことが、人びとに対するひどい扱いを許しています。これは、中国の人びとが文化的にも政治的にも、いかに抑圧されてきたのか、そして、中国の貧しい人たちの声がどれほど黙殺されてきたのかということを示しています。この事態はまったく正しくありません』

 中国の新型コロナウイルス封じ込め政策について「絶望的なお願い」の主は『健康への平等な権利が真ん中からすっぽり抜け落ちている』と指摘しています。

 『保健分野のトップジャーナリストは、より情け深く、目配りの効いた表現に意を用いるべきです。ランセットがそうしてください。ほかの人もどうかそうしてください』

 国際世論に最後の期待をかけているという印象です。このお願いを受けてホートン編集長は次のように書いています。

 『今回のアウトブレークに対する大局的な管理対応策は改善がはかられているものの、各論部分の対応もまた忘れてはならない。国内および国外の医療提供者は、この流行の脅威の下で暮らす中国市民一人一人のwell-being(身体的、精神的、社会的に健康な状態)を保つことの重要性についても、繰り返し主張しなければならない』

 未知の感染症のアウトブレークにどう対応するかという意味で「あれは中国の話だから」と言ってばかりもいられないような社会的動揺は日本国内にも実はありそうです。