第33回日本エイズ学会が終了しました。最終日の29日(金)は午前のセッションが終わると、直ちに展示ブースの撤収作業に入らなければならず、結構、忙しいかなと思っていたのですが、なぜか作業はサクサクと進み、30分もしないうちに終わってしまいました。
初日の設営に比べるとかかった時間は5分の1ぐらいでしょうか。作るのは時間がかかるけれど、失うのは早い。エイズ対策のことを言っているわけではありません(こういう余分な一言がなければ、人生、失敗しなかったのに・・・)。
ま、とにかく、帰りの飛行機まで、かなりたっぷりと時間ができてしまったので、震災被害からの復旧と再建の工事が進む熊本城を見学に行ってまいりました。
本丸に向かう道から。秋の柔らかな日差しに映える戌亥櫓、きれいですね。でも・・・。
石垣の補修にはまだまだ時間がかかりそうです。熊本城全体がいまなお復旧復興途上で、あちらこちらで工事が進められています。それでも紅葉の小道や緑豊かな広場でジョギングを楽しむ人もいて、ああ、このお城は熊本の人たちの心のよりどころなんだなあという印象を強く受けました。
加藤神社境内の銀杏と重要文化財の宇土櫓のコントラストも見事でした。でもその間に見える大小天守閣には足場やクレーンが組み立てられています。
宇土櫓は大天守、小天守と並び「三の天守」と言われていることもあるそうです。こちらはそのスリーショット。
そもそも、江戸時代からの建物が今も残っているのは・・・。知ったかぶりをして説明すると、すぐにボロが出てきそうなので、案内板の写真も撮ってきました。
道半ばだからこそ・・・ということで、2019年熊本エイズ学会でも、U=U、PrEP、90-90-90と様々な議論が交わされました。
もう一度、強調しておきましょう。終わっていません。道半ばだからこその多様な議論です。政治のリーダーシップも必要です。「もう、いいだろう」などと言っていられる状態ではありません。
エイズの医療化といわれる傾向がますます顕著になるように見える中で、それが期待したシナリオ通りになっていないという壁にも世界は直面しています。そして、日本もその現実を共有している。このことも改めて確認する必要があります。エビデンスはもちろん大切ですが、それを過剰に強調する前に、そのエビデンスが何を意味するのかということが問われる局面も、これから先、サイエンスとヒューマンの交わる領域では、繰り返し出てくるのではないか。そんな、エビデンスに欠けた感想も個人的には持ちました。会場の気温が少々、低めだったからかもしれません。
UPDATE!の時代であるということがHIV/エイズ分野ではいま盛んに指摘されています。もうそろそろ、昔のイメージを変えようや。それはいいでしょう。治療や予防の選択肢も可能性も増えています。ただし、どさくさに紛れて変えてはいけないものまで、手放してしまったり、ひどいときには抹殺をはかったりするようなことも、こういう時期には、ないとは言えません。このあたりの注意は必要です。
UPDATE!の大切さと同時に、あるいはそれをより実効性のあるものとするために、社会的な側面からの経験知を踏まえた見方がますます大事になってくるのではないか。個人的にはそうしたことを改めて感じる学会でもありました。
最新の技術を使い、なおかつ時間をかけて復旧と再建の工事が進む熊本城の秋に、そしてその過渡期の美しさと持続力に感動しつつ、この努力と魅力こそが実は、現在のHIV/エイズとの闘いのメタファーでもあるのではないか・・・などと書いたら、都合よくまとめすぎかなあ、やっぱし。