今年もとうとうクリスマスイブになってしまいましたね。時間がたつのが恐ろしく早く感じられる年の瀬です。
こういうときは浮足立ってはいけない、試合を落ちつかせよう・・・というわけで、わが家の晩餐はおでんとビールでした。
TOP-HAT News第136号は12月恒例、顔見世・・・じゃなくて、HIV/エイズ対策の2019年を振り返ります。
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第136号(2019年12月)
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◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆
1 はじめに 世界エイズデーに寄せた国連事務総長のメッセージ
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1 はじめに 世界エイズデーに寄せた国連事務総長のメッセージ
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、2019年の世界エイズデーに寄せるメッセージの中で、抗レトロウイルス治療の進歩とその普及の成果を次のように語っています。
https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/35725/
『国連と各国政府、市民社会やその他のパートナーは、人々の医療サービスへのアクセスを拡大し、新規のHIV感染を食い止めるために連携してきました。2018年には、2300万人を超えるHIV感染者が治療を受けられるようになりました』
国連合同エイズ計画(UNAIDS)が発表した最新の推計によると、2018年末時点でHIVに感染している人の数は世界全体で3790万人となっています。治療を受けている人の数はその61.5%に相当する2330万人です。
国連では、HIV治療の進歩と普及の成果をみる場合、2010年時点での推計値と比較することが多いようです。医学研究のエビデンスをもとにHIV治療の予防効果(T as P)が、強調されるようになったのが2010年ごろだったからです。
その比較によると、エイズ関連の疾病による年間の推計死亡者数は、2010年の120万人に対し、2018年は77万人となっています。減少率は33%です。
一方、年間の新規感染の方は、2010年が210万人、2018年は170万人です。減ってはいますが、減少率は16%にとどまり、T as Pの成果は、必ずしも期待通りとは言えません。「どうしてなのか」ということが、2030年に「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行の終結」を目指す国際社会の大きな課題になっています。グテーレス事務総長は先ほどのメッセージでこう指摘しました。
『まだ満たされていないニーズがあります。HIV感染者は3800万人と記録的な数に上っている一方で、エイズ対策のための資金は昨年、10億ドルも減ってしまったからです。私たちはこれまでにも増して、仲間の声を代弁し、HIV感染者にサービスを届け、人権を擁護し、支援を提供するコミュニティ主導型組織の役割を生かしていく必要があります』
治療は進歩しました。HIVに感染しても、早期に治療を開始し、継続していければ、HIVに感染していない人と同じくらい長く生きていくことも可能になっています。U=Uキャンペーンで指摘されているように、治療で体内のHIV量が検出限界以下に抑えられていれば、他の人にHIVが性感染するリスクもありません。
それでも、医療だけでHIVの流行を収束させることはできないという事実に医療分野の専門家も気付き始めています。
治療の進歩プラス社会の対応が必要です。事務総長はメッセージを以下のように締めくくっています。
『コミュニティが参画するところには、変化が起きています。投資が成果をもたらす様子も見られます。そして平等や尊重、尊厳も現実のものとなっています。コミュニティと力を合わせれば、私たちはエイズに終止符を打てるのです』
では、そのコミュニティとは何か。ひと言で説明すれば、HIVの流行の影響を最も大きく受けている地域や人たちということになるでしょう。UNAIDSは今年の世界エイズデーの資料として、『COMMUNITIES make the difference(コミュニティが変える)』『what is a COMMUNITY-LED ORGANIZATION?(コミュニティ主導の組織ってなに?)』という2つの冊子を作成しています。API-Net(エイズ予防情報ネット)に日本語PDF版も掲載されているのでご覧ください。
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20191115
今年もTOP-HAT Newsをご覧いただき、ありがとうございました。この1年のHIV/エイズ関係の動きを以下にまとめておきました。東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020年も内外の動向に幅広く目配りし、最新の情報をお伝えできるよう、引き続き努力いたしますので、よろしくお願いします。
【1月】
・グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)が2020~22年の投資計画書を発表。3年間の資金調達目標額は140億ドル
・世界HIV陽性者ネットワーク(GNP+)の新事務局長にインドネシア出身のリコ・グスタフ氏
https://www.gnpplus.net/gnp-announces-new-executive-director/
【2月】
・米トランプ大統領が2月5日、一般教書演説で米国の新規HIV感染を10年以内になくすと表明
https://asajp.at.webry.info/201902/article_2.html
・東京、札幌、名古屋、大阪各地裁で同性婚訴訟一斉提訴
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201902/CK2019021502000147.html
・日本エイズ学会誌2019年2月号が『オリンピックと感染症予防』を特集
https://jaids.jp/publish/vol21-01-j/
【3月】
・国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2019年差別ゼロデー(3月1日)キャンペーン。テーマは『いまこそ動こう 法律から 差別をなくすために』
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190313
・国際エイズ学会(IAS)が年次書簡2019『スティグマの本質に迫る』を発表
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190308
・グローバルファンド日本委員会が発足15周年記念イベント「日本人とグローバルファンド 増資は他人のためならず」を開催
http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2019-04-24_fgfj15th
【4月】
・オーストラリアのパースで9月に予定されていた第13回アジア太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP2019)が急遽、中止を決定
・東京レインボープライドのパレード(4月28日)にHIV/エイズをテーマにした『Living Together』フロートが参加
http://akta.jp/information/1683/
・特定非営利活動法人ぷれいす東京が冊子『UPDATE!』キャンペーン
【5月】
・抗レトロウイルス治療によるHIV感染予防効果に関するPARTNER2研究の結果を英医学誌LANCETが掲載。U=Uのエビデンスがさらに明確に
https://asajp.at.webry.info/201905/article_1.html
・UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長が退任。母国マリの保健社会福祉相に
https://asajp.at.webry.info/201905/article_2.html
・2020年東京五輪を控え、UNAIDSとプライドハウス東京がパートナーシップ協定
【6月】
・国連事務総長が年次報告『10年間の進歩を経て、エイズ終結の野心的目標に向け対応の再活性化を』を国連総会に提出
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190709
・武田薬品が、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)に対し、2020年から5年間で10億円の拠出を発表
http://fgfj.jcie.or.jp/topics/2019-06-03_takedainitiative2
・日本エイズ学会が『HIV感染を理由とした就業差別の廃絶に向けた声明』を発表
【7月】
・国際エイズ学会(IAS)が年次報告書でスティグマとの闘いの重要性を強調
https://asajp.at.webry.info/201907/article_1.html
・国連合同エイズ計画(UNAIDS)が年次報告書Global AIDS Update 2019で、コミュニティの役割を強調
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20190815
・2019年世界エイズデー国内啓発キャンペーンのテーマが『UPDATE! 話そう、 HIV/エイズのとなりで ~検査・治療・支援~』に決定
【8月】
・国連合同エイズ計画(UNAIDS)の新事務局長にウィニー・ビヤニマ氏の任命が決定、ウガンダ出身の女性(就任は11月)
・厚労省エイズ動向委員会が2018年の年間新規HIV感染者・エイズ患者報告数を発表。報告数の合計は1317件で、2年連続減少
https://api-net.jfap.or.jp/status/index.html
【9月】
・グローバルファンドの第6次増資会合がフランスのリヨンで開かれ、140億ドルの増資調達目標を達成
・『HIV感染で内定取り消しは違法』 札幌地裁判決
https://www.habatakifukushi.jp/news/hiv-info/hiv20190924/
・ラグビーW杯開催に合わせ、プライドハウス東京2019がオープン、日本ラグビーフットボール選手会と協力協定
Community Action on AIDS|コミュニティアクション:Features:プライドハウス東京が日本ラグビーフットボール選手会などと協力協定
【10月】
・プライドハウス東京とUNAIDSがトークイベント『2020年、東京で目指す90-90-90』を開催
http://pridehouse.jp/news/532/
・日本エイズ学会の松下修三理事長『予防・治療の新時代』をテーマに日本記者クラブで記者会見
・ラグビーの元ウェールズ代表主将ギャレス・トーマス氏が自らのセクシャリティとHIV感染のカミングアウトについてプライドハウス東京2019で語る
https://www.asahi.com/articles/ASMB07W8HMB0UTQP037.html
【11月】
・UNAIDSが2019年世界エイズデーキャンペーン開始。テーマは『COMMUNITIES MAKE THE DIFFERENCE(コミュニティが変える)』
https://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20191115
・第33回日本エイズ学会学術集会(熊本市)で、U=U、PrEP、90-90-90などが議論の焦点に
http://www.c-linkage.co.jp/aids33/
・Futures Japanが第3回HIV陽性者のためのウェブ調査を開始
【12月】
・アントニオ・グテーレス国連事務総長が世界エイズデーに寄せるメッセージで持続可能な開発目標(SDGs)におけるエイズ終結の重要性とコミュニティの役割を強調
https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/35725/
・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaがYou tubeチャンネルを開設