他の病気は検査しているのに・・・おっと、国連事務総長まで言い出したぞ エイズと社会ウェブ版394

 生涯一記者・・・などと気取ってみたいところですが、来し方を振り返り、そう長くはなさそうな行く末も含め、私の場合は結局のところ、生涯一貧乏暇なし、で終わりそうです。ああ、忙しい。

 というわけで、ただでさえ少ない暇を見つけては、HIV/エイズ対策の進捗状況についてアントニオ・グテーレス国連事務総長が国連総会に提出した年次報告書『10年間の進歩を経て、エイズ終結の野心的目標に向け対応の再活性化を』の日本語仮訳作成作業を少しずつ進めています。

 サマリー部分はすでに当ブログでも紹介したのでご覧ください。

 

miyatak.hatenablog.com

 

 英文報告書のPDF版はこちらから。 

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 余勢を駆って全部訳しちゃおうと思ったのだけど、この後が長いんだよね~。21ページ、70パラグラフもあります。ようやく49パラグラフまでたどり着いたところですが、一つのパラグラフがだんだん長くなってきたような印象もあり、全文制覇までは、さらに時間がかかりそうです。

 したがって途中経過で恐縮ですが、その第49パラグラフに気になる記述がありました。

 

49. Developments in molecular technologies mean that it is increasingly possible to diagnose different diseases rapidly using single platforms. These platforms offer technical and financial efficiencies for national health systems, while expanding access to care and saving lives.23 Services for multiple diseases can also encourage routine HIV testing as just another part of a health check-up and help to overcome stigma and discrimination, because visiting an integrated service facility may make it harder for others to guess an individual’s HIV status.24

 

49. 分子技術の開発は、共通の基盤技術によって異なる病気の迅速な診断が可能になりつつあるということも意味している。こうした基盤は、技術的にも、財政的にも、国の保健システムの有効性を高めると同時に、ケアのアクセスを広げ、人の生命を救うことにつながる。複数の病気を対象にしたサービスは、HIVについても他の保健に関する検査と同様に健康診断の一部としてルーティーン検査を行うことを促し、スティグマと差別を克服する助けにもなり得る。統合したサービスを提供する施設なら他の人が個人のHIV感染の有無を推測することは難しくなるからだ。

 

 エイズ対策も孤立を脱し、他分野とのさまざまなインテグレーションを追求していかなければならないという項目の記述です。

 ま、それは大切なことではありますが、『複数の病気を対象にしたサービスは、HIVについても他の保健に関する検査と同様に健康診断の一部としてルーティーン検査を行うことを促し、スティグマと差別を克服する助けにもなり得る』というあたりが、どうなんでしょうかね。個人的には、ずいぶんあっさり言ってくれちゃうなあという印象を受けました。その後のセンテンスも、理由になっていない感じです。

 ほらね、治療も進歩したことだし、日本もこの際、会社の健康診断でどんどん検査すべきではないか、その方が本人の利益にもなるのだし・・・みたいな、どんどん検査話がまた勢いづいてしまうのでしょうか。この四半世紀、出ては消え、出ては消え・・・ということを繰り返してきた議論です。日本の現状にはまったく即していません。いい加減、うんざりしていますが、また、お付き合いしなければならないのかな。

 丁寧に自発的検査の機会を増やす。そのための手法については新たな可能性を積極的に広げていく。検査前、検査後の相談や情報の提供も含め、そちらに資源を投入すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。