(解説)イギリスのヘンリー王子とエルトン・ジョンさんが21日、南アフリカのダーバンで開かれている第21回国際エイズ会議でHIV/エイズとの闘いにいま手を緩めてはならないと対策の強化を呼びかけました。遠く離れた極東の島国にも動画中継などは届くのですが、どうも現地の動きは断片的にしかわかりません。お二人ともかなり精力的に動かれているようですね。その一部ということで、英ガーディアン紙のサイトに掲載されている記事を日本語に訳してみました。あくまで仮訳ですが、ヘンリー王子の「私たちはいま新たなリスクに直面しています。自己満足のリスクです」は現状への警告として的確なのではないかと思います。
ヘンリー王子は英国ではハリー王子と呼ばれることが多いのでしょうか。記事もずっとハリー王子なので、訳文も最初だけヘンリー(ハリー)王子として、あとはハリー王子にしました。
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ハリー王子とエルトン・ジョンがHIV/エイズとの闘いのさらなる強化を求める
南アフリカで開催中の国際エイズ会議で王子は「私たちはいま新たなリスクに直面しています。自己満足のリスクです」と語った。
HIVとエイズに対する関心を高めるために、英王室のヘンリー(ハリー)王子が、歌手であり著名なキャンペーン活動家でもあるエルトン・ジョン卿とともに南アフリカで開かれている国際会議の壇上に立った。
ダーバンの会議参加者を前にして、31歳の王子は故ダイアナ妃の思い出を振り返りつつこう語った。「私の母がロンドン東部の病院でエイズのために亡くなろうとしている男性の手を取った当時は、四半世紀後にHIV陽性者が健康で幸せな生涯を送ることができるようになるなどということは誰も想像できませんでした」
確かにHIVとエイズに対する闘いは大きな成果をあげてきたものの、「私たちはいま新たなリスクに直面しています。自己満足のリスクです」とも彼は付け加えた。
ハリー王子は以前から慈善団体サンタバリーを通じてレソトでHIV陽性の若者の支援に力を入れており、現在は同世代の人たちに対し、HIVとエイズとの闘いはまだ勝利などしていないというメッセージを広く伝えることに取り組んでいる。
ハリー王子とエルトン・ジョンはその後、HIV陽性の若者のニーズに応えるには何を変えなければならないかをテーマにした討論会を主催した。
19歳のころから何度もレソトを訪れているハリー王子は演説の中で「HIV陽性の子供たちは医療の課題と精神面の課題、そして社会的な課題をすべて同時に克服しなければなりません」「この病気がもたらすさまざまな身体的影響と闘うだけではないのです」と語った。
「家族との死別や貧困、差別などで心が沈み、トラウマに苦しんでいる子供たちは、治療にだけ専念しているというわけにはいかないのです」と彼は付け加えた。
第1回国際エイズ会議が開かれた当時、HIV感染は死の宣告だったとハリー王子はいう。「HIV陽性者が長く生きていけるようになるにしたがって、エイズは一面の見出しから外れていきました。関心が薄れることで、資金は減り、ウイルスと闘おうとしなくなるリスクがいまはあります」と彼は付け加えた。
「事態は急を要するとの認識を失うわけにはいきません。これまでの大きな成果にもかかわらず、HIVは依然として最も厳しい緊急の世界的課題の一つであり続けています。昨年だけでも110万人がエイズで死亡し、210万人がHIVに感染しているのです」
サハラ以南のアフリカでは、依然として10代の若者の死亡原因の1位はエイズであるとハリー王子は指摘し、闘いを続けるために「新しい世代のリーダーたちが踏み出す時です」と語った。
ロンドンで先週、HIVの指刺し検査を受けた王子はこう付け加えた。「若者のだれもがHIV検査を受けることを恥ずかしいと感じない。HIVに感染した少女や少年が友達やクラスメートや近所の人と遊べるようにする。いまこそそうすべき時なのです」
「スティグマや差別がいまなお、この病気との闘いを妨げる最大の障壁になっていることをすべての人が認識すべき時なのです」
世界のエイズとの闘いを助けるために財団を設立しているサー・エルトンはこう語った。「今日では、HIV/エイズは治療可能な病気であり、もはや死の宣告ではありません。それは10年も前のことです。それでも、この病気が完全になくなるまで、この闘いに満足することはできません」
「私たちが努力しなくなれば、薬剤耐性ウイルスが再燃し、感染率は再び高くなるでしょう。この病気に国境はないので、無慈悲なパンデミックが再び広がり、悲惨な結果をもたらすことになります」
パブリックヘルス・イングランドの最新の統計によると、英国内の2014年のHIV陽性者数は推計10万3700人で、このうち17%は自らのHIV感染を知らないでいる。HIV治療とケアを受けている人は2014年現在、約8万5500人で、2004年当時(4万2157人)の倍以上、2013年の5%増となっている。