日本のかなりの人はそうだったのではないかと思いますが、私も実はまさか離脱はないだろうと心の中で思っていました。事前調査を真に受けてしまったといいますか・・・、デファクト・スタンダードを疑わずに大方の物事を処理するという意味で、事なかれ保守層のおじさんの典型と認めざるを得ません。
統合から分裂へ、それなのに多様性よりも排外主義・・・どうもこのところ世界も日本も嫌な雰囲気が広がっている印象です。
欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う英国の国民投票は大接戦の末、離脱票が多数を占めました。これからEUとの長い離脱交渉が始まるわけですが、英国の離脱はもう動きません。
ただし、英国内部も一枚岩ではなく、スコットランドのニコラ・スタージョン自治政府首相は英国からの独立を目指し、スコットランドとしてEUに残る意向を示しています。
スコットランドでは残留票の方が離脱票を大きく上回っていた。住民投票の結果、一度は独立を断念したスコットランドにとって、それが新たな大義名分となっているようで、それはそうだなあ・・・と、離脱からの離脱=残留論に共鳴したい気分にもなってきます。
ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体して冷戦後の時代が始まってからすでに四半世紀以上がたっています。私の場合、なにかというと冷戦後の世界の現実みたいなものを持ち出して議論を煙に巻くことを常套手段としていたのですが、それももう限界。今回の英国の国民投票は潮目の転換点かもしれません。
産経新聞のサイト(産経ニュース)に国民投票の結果に関する野上義二・元駐英大使のコメントが紹介されていました。
http://www.sankei.com/world/news/160624/wor1606240057-n1.html
『国民投票では、高齢者が離脱を特に望んだ。自分の周りの環境が昔知っている英国とは違うということで、ノスタルジーにもとづく投票となった。(米大統領選 で共和党の候補指名が確定した)トランプ氏の支持者と同じように、「英国を偉大にしよう」という形になり、「魔法の笛」に踊らされて崖から落ちてしまった』
コメントはまだまだ続きますが、産経ニュースをご覧ください。そうですか、ノスタルジーで崖から落ちちゃいましたか。年寄りとしては、もって他山の石となすというか、肝に銘じておかなければなりませんね。
野上さんによると、EUからの離脱交渉は何年もかかりそうです。
その間にスコットランドが住民投票で英国からの独立を決めるというシナリオもあり得るかもしれません。そうなると話はまた、一段と複雑怪奇になってきます。
そんな折も折、ということで話を急に変えて恐縮ですが、明日は東京・調布市の味の素スタジアムで日本代表vsスコットランド代表のラグビー・テストマッチ第2戦が行われます。
昨年秋のW杯で日本代表が唯一、負けた相手。しかも先週の第1戦もうまく試合を運ばれ苦杯を喫しています。今度こそはということで日本代表には必勝を期してほしいのですが、スコットランドにもがんばってほしいなという気が少ししてきました。おじさんは世の中の動きにすぐ左右されてしまうのよ。
母国は大変な事態で大混乱。いかに名選手とはいえ、こんなときに遠く離れた極東の島国で、試合に臨むというのも相当な試練ではあります。なかなか冷静ではいられないでしょう。
英国は連合王国ということで、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドがそれぞれラグビーの代表チームを編成しています。アイルランドの場合はアイルランド共和国と英国の北アイルランドの選手が一緒になって代表チームが作られます。国境線と代表チームの関係が微妙というか、複雑というか。
そもそもラグビーの場合、他の国の代表チームでも選手の条件として国籍は必ずしも必要とされません。一定の条件で外国籍の選手も代表になることができます。これもラグビー発祥国である英国の事情が大本にあって生まれた考え方なんでしょうね。
それなのに・・・《「魔法の笛」に踊らされて崖から落ちてしまった》という今回の結果は残念ですが、投票はもう終わってしまいました。世界は大混乱をしつつ、その結果を受け入れざるを得ません。
明日の試合に関しては、日本代表もスコットランド代表もベストを尽くし、あのときの試合はすごかったと後々、繰り返し言われるような試合にしてほしい。日本にもスコットランドにも、先行きに不安(と願わくば希望)が充ち満ちている時期だけに、かえってそう思います。