4318 セックスワーカーの権利擁護に取り組む活動家に対する渡航禁止で中国政府に憂慮表明 IAS

 

 メルボルン20日に開幕する第20回国際エイズ会議に出席しようとした中国のアクティビスト、Ye Haiyan (海燕)さんが中国からの出国を禁じられているとして、IASが憂慮を表明する声明を発表しました。HATプロジェクトのブログに掲載した日本語仮訳を再掲します。

 なお、解説中に出てくるメルボルン宣言については以下をご覧下さい。

 《メルボルン宣言「誰も置き去りにはできない」》日本語仮訳

 http://asajp.at.webry.info/201405/article_8.html

 《メルボルン宣言プレスリリース》日本語仮訳

 http://asajp.at.webry.info/201405/article_9.html

 

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Ye Haiyan (海燕)さんに対する渡航禁止で中国に憂慮を表明 IAS声明》

 http://asajp.at.webry.info/201407/article_5.html

 

(解説)中国でセックスワーカーの権利擁護活動を続けるYe Haiyan (海燕)さんが中国当局からパスポートを取り上げられ、メルボルンで開かれる第20回国際エイズ会議(AIDS2014)に出席できなくなっていること から、国際エイズ学会(IAS)が声明を発表して強い憂慮を表明しています。中国政府はこれまでにもしばしば、HIV/エイズ対策に取り組む活動家に対 し、渡航を禁じたり、拘束したり、投獄したりといった弾圧を続けており、その姿勢は依然、改まっていません。声明は叶さんに対する渡航禁止の撤回を中国政 府に強く求めています。

 第20回国際会議は20日に開幕しますが、会議の組織委員会はそれに先だってメルボルン宣言『誰も置き去りにはできない』を発表しています。

宣言は「弱い立場の人たちのHIVに対する脆弱性をより深刻化させるような政策や行為につながる差別的な法執行が続いていること、差別的で有害な立法が続 いていることに対し、私たちは重大な懸念を共有しています」として、そうした立法や法執行をなくすために広く署名を呼びかけています。中国当局のこの手の 妨害はあまりにも度重なるものなので、「またかよ」とうんざりするほどですが、ここはうんざりしている場合ではありません。伝えられる通りなら、おかしい ということはきちんと指摘しておくべきであり、メルボルン宣言に照らしても、IASとしては見過ごすことができないということでしょう。

IASの声明の日本語仮訳です。

 

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声明 2014716日 国際エイズ学会(IAS
http://www.iasociety.org/Web/WebContent/File/IAS_statement_Ye_Haiyan_July2014.pdf

 セックスワーカーの権利擁護に取り組む中国の女性活動家、Ye Haiyan (海燕)さんのメルボルン渡航を阻止した中国当局の決定に対し、国際エイズ学会(IAS)は極めて憂慮している。叶さんは第20回国際エイズ会議 AIDS2014)に出席するためメルボルンを訪れる予定だった。

 国際人権団体ヒューマンライツウォッチによると、叶海燕さんはパスポートを中国当局に取り上げられた。しかも、彼女が中国本土から出発することを阻むべき規制など何もないのに、である。

 叶海燕さんは、女性の権利、およびセックスワーカーの権利と取り組む著名な活動家として知られている。2006年にはセックスワーカーに情報とカウンセ リング、支援を提供するためのウエブサイトとホットラインを開設した。また、2008年と2012年には、湖北省広西チワン族自治区でそれぞれ、セック スワーカーに性感染症STD)とHIVの教育、予防サービスを提供する組織を設立している。彼女は公に中国のセックスワーカーの法的権利を認めるよう運 動を続けている。

 中国政府はセックスワーカーなどHIVの流行に大きな影響を受けているキーポピュレーションの人権を損なうような政策を改め、支援と情報を提供することで人権を守るべきである。私たちはそう確信している。

 渡航規制はHIV予防、ケア、治療へのアクセスを妨げる数多くの障壁の一つであり、HIVの流行に対する世界的な対応を大きく損なう要因になっている。

 HIVの流行の影響を強く受けているキーポピュレーションの活動家および代表は、国際エイズ会議の中心的役割を担う重要なメンバーである。したがって、私たちは叶海燕さんに対する渡航禁止決定を撤回するよう求めるものである。



Statement
IAS 16 July 2014

The International AIDS Society (IAS) is very concerned about the decision of the Chinese authorities to block sex worker rights activist Ye Haiyan from travel to Melbourne to attend the 20th International AIDS Conference (AIDS 2014).

According to Human Rights Watch, Ms, Ye Haiyan had her passport seized by the Chinese authorities. Additionally, it appears that a no travel restriction is preventing her from leaving mainland China.

Ye Haiyan is a prominent female and sex worker rights activist. In 2006 she started the first website and hotline for sex workers to provide information and counselling support. In 2008 and 2012, she established two organizations in Hubei and Guangxi Province to provide sexually transmitted diseases (STD) and HIV education and prevention services for sex workers. She publicly advocated for the recognition of legal rights for sex workers in China.

We believe the Chinese government should promote the rights of those providing support and information to Key Affected Populations, such as sex workers, instead of following policies that undermine humanrights .

Travel restrictions are one of the many barriers denying access to HIV prevention, care and treatment and are a major step backwards in the global response to HIV.

Activists and representatives of key affected populations are a pivotal part of the International AIDS Conference and its programme. We therefore ask that the decision to bar Ye Haiyan from travelling be reversed.