元気出そう 春のコロナの 日を浴びて

 3月初日、重苦しい世の中の雰囲気とは対照的に、海辺はいいお天気でした。由比ガ浜から材木座方面を望む。

 

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 残念ながら今年は、ああ、やっと春が来たぞと盛り上がる気分になかなかなれませんね・・・と思っていたら、けっこう皆さん盛り上がっています。

 

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 明日からCOVID-19感染症対策のため小中高校は全国で休校、とはいえ前日の日曜日にしてすでに砂浜も海浜公園も子供たちでいっぱいです。裸足で波打ち際を走る少年少女たちが春休みまで、行き場を失ったままおとなしく家に閉じこもって・・・いられるわけはないよね、と改めて思う。せめてこの際、小学生だけでも学校で引き受けて、感染症対策に重点を置いた教育のプログラムを工夫し、のびのび過ごせるようにするといったことは考えられなかったのでしょうか。ま、しょうがない。天気が良ければ屋外で遊ぼう。

 

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 日本の大衆はしたたかです(と思いたい)。政権による少々の判断の誤りは、それなりに吸収しつつ、みんなで助け合って何とかやっていくんでしょうね。海に目を転じれば、程よい波。日曜サーファーで大賑わいでした。

『HIVワクチンの大規模臨床試験中止を発表』 TOP-HAT News第138号(2020年2月号) 

  世の中は新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行拡大に対する不安が募り、他のことには関心が向かなくなっている感じですね。ただし、社会の関心が向かないからといって、他の数々の疾病がCOVID-19に遠慮して発症を控えておこうかなどと考えるわけではありません。

新興感染症はもちろん、いま対応すべき重要な課題です。でも、そのために(というか社会が恐怖と不安のあまり)、他の感染症に対する備えをおろそかにするようなことがあるとすれば、その影響もまた決して小さくありません。

 日本国内ではほとんど関心がもたれなかったのですが、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は今年2月3日、HIVワクチンの大規模臨床試験HVTN702の中止を発表しました。成果が期待されていたHIVワクチン研究の頓挫は、世界的にもかなりショックなニュースだったので、TOP-HAT News第138号では巻頭でそのことをお伝えしています。

 

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第138号(2020年2月)

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TOP-HAT Newsは特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

1 はじめに HIVワクチンの大規模臨床試験中止を発表

 

2  U=U Japan Projectが始動

 

3 東京レインボープライド2020

 

4 中国の新型コロナウイルスの流行に関するプレス声明 UNAIDS

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1 はじめに HIVワクチンの大規模臨床試験中止を発表

南アフリカで進められていたHIVワクチンの大規模臨床試験HVTN702の中止が2月3日、米国立衛生研究所(NIH)の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)から発表されました。臨床試験の研究班とは独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)という評価組織が中間評価を行い、対象となるワクチン候補にはHIV感染の予防効果はないという結論に達しました。NIAIDもDSMBの勧告を受け入れたということです。

NIAIDのニュースリリースによると、HVT702研究には18~35歳の性的に活発なHIV陰性の男女がボランティアで参加しています。2020年1月23日にDSMBが中間結果を調べたところ、ワクチン接種群は2694人中129人がHIVに感染していました。一方、プラシーボ群は2689人中123人でした。

HIVワクチン開発はエイズ流行終結の鍵を握る重要な課題です。2009年にはタイで行われていたRV144大規模臨床試験の結果が明らかにされていますが、この時のHIV感染効果は30%程度にとどまっていました。これではワクチンとしての実用化は期待できずないということで研究は打ち切られ、ワクチン開発は頓挫するかたちになっていました。

その低迷期を脱し2016年にスタートしたのがHVTN702です。タイのRV144のワクチンをもとにして南アフリカで流行しているHIVのサブタイプに合わせて開発された候補ワクチンが使われました。プライムブーストワクチンと呼ばれ、時間差をつけて異なる機能を持つワクチンを接種し、効果を高める手法(プライムブースト法)が使われています。

臨床試験開始時点では50%程度の予防効果が期待できるということで、効き目は「それなり」の感じですが、少しずつでも効果を高めていけば実用化は可能という判断でした。

しかし、中間評価の結果、その効果も結局はなかったということになりました。

今回の決定を伝えるNIAIDのニュースリリースの中で、アンソニー・ファウチ所長は「世界全体でパンデミック終結させるにはHIVワクチンが不可欠であり、このワクチンが機能することを期待していました。でも、残念ながらそうはなりませんでした」と語っています。国際エイズ学会(IAS)も同じ2月3日付、国連合同エイ計画(UNAIDS)は翌4日付で、ともに残念だという内容の声明を発表しています。HVTN702に対する期待と失敗に終わったことへの落胆の大きさをうかがわせる反応です。

ただし、ファウチ所長は「安全で効果的なワクチンの研究は異なるアプローチで続けられます。私はいまも達成可能だと信じています」と付け加えています

UNAIDSによると、HVTN702は残念ながら中止ですが、ほかにも2件、大規模なワクチン臨床試験が進行中です。一つは米国やヨーロッパでトランスジェンダーの人たちとゲイ男性など男性とセックスをする男性を対象にしたMosaico試験、もうひとつはサハラ以南のアフリカ諸国で女性を対象に進められているImbokodo試験です。どちらも研究途中なので、成否はまだ分かりません。

HIVに感染した人たちは抗レトロウイルス治療(ART)の進歩により、社会的にも活躍しながら長く生きていくことが可能になっています。また、ARTの継続により体内のウイルス量を低く抑える状態が維持できれば、他の人にHIVが性感染するリスクがなくなることも明らかにされています。

ただし、体内からHIVがなくなる完治が実現できたケースは世界でもごくわずかしかなく、ほとんどの人は生涯にわたってARTを続ける必要があります。しかも、現状では世界のすべてのHIV陽性者に必要な治療薬が提供できているわけではありません。

その現実を直視し、治療薬の普及を進めると同時に、新たに感染する人を減らしていくための予防にも、治療の普及も含めた様々な手段を組み合わせて対応する必要があります。

失敗は成功の過程でもあります。HIVワクチンの開発に取り組む研究陣の不屈の努力に期待し、支援を継続する一方で、現実に選択可能な予防手段の普及を進める努力もまた怠らない。その困難な状態は今後もまだ、しばらくは続きそうです。

 

 

2  U=U Japan Projectが始動

 HIVをめぐる差別や偏見をなくすことを目指すU=U Japanの公式サイトが開設されました。

  https://hiv-uujapan.org/

 「U=U」は英語の「Undetectable」(検出限界値未満)= 「Untransmittable」(感染しない)の略です。2016年に米国でキャンペーンがスタートし、「2019年8月現在、100か国近くの1000近い組織・機関が、コミュニティ・パートナーとしてU=U のメッセージを支持」しているということです。国内では、日本エイズ学会、ぷれいす東京、MASH大阪がコミュニティ・パートナーとなっています。

U=U Japanは「効果的な治療を続けていればHIVは性感染しない」という「HIVの新常識」を国内で広く知ってもらうために活動しています。

 

 

3 東京レインボープライド2020

今年は4月25日(土)、26日(日)の2日間を予定しています。会場は代々木公園イベント広場(東京都渋谷区神南2-3)。パレードは4月25日です。

詳細は東京レインボープライド公式サイト( https://tokyorainbowpride.com/ )をご覧ください。

 

 

4 中国の新型コロナウイルスの流行に関するプレス声明 UNAIDS

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)が2月6日、新型コロナウイルスの流行についてプレス声明を発表しました。『新型コロナウイルスのアウトブレークの間もHIVサービスが滞ることがないようUNAIDSは中国のパートナーと協力』という見出しがつけられています。英文のPDF版はこちらです。

https://www.unaids.org/sites/default/files/20200205_PS_UNAIDS_CoronaVirus_en.pdf

声明は『UNAIDSは中国と連帯し、アウトブレークの終息に向け最大限の支援を行う所存です』として全面的な協力姿勢を示す一方、後半部分では次のように指摘しています。

 『HIV陽性者および他の慢性疾患患者にとっては、治療を継続し健康状態を保つために、治療薬を適切に得ることが特に重要になります。UNAIDSは中国CDCのエイズ/STD管理予防センターに対し、封鎖に伴って自宅のある町に戻れないHIV陽性者が必要な抗レトロウイルス薬を毎月補充できるよう迅速な対応を取ることを推奨しています』

 アピールしたかったのは後半でしょうか。声明の日本語仮訳はHATプロジェクトのブログでみることができます。

 https://asajp.at.webry.info/202002/article_2.html

 

U=Uキャンペーンをめぐり2つの声明 エイズと社会ウェブ版455

 U=Uキャンペーン(Undetectable=Untransmittable、検出限界以下なら感染はしない)について、2月の後半になって、国際エイズ学会(IAS)、およびタイ保健省・UNAIDS・WHOが相次いで声明を発表しています。後者は3者連名の共同声明です。
 2つの声明の日本語仮訳をAPI-Netに掲載しました。英文の声明原文もみることができます。 

api-net.jfap.or.jp

 IASの声明によると、HIV陽性者を中心とするコミュニティとHIV診療の専門家が協力してU=Uキャンペーンに取り組んでいるタイ国内で、このキャンペーンを主導する研究者が最近、SNSなどを通じて強いバッシングを受けているということです。

《しかし、明白な科学的エビデンスが示されているにも関わらず、タイでは最近、U=U の 支持を公的に表明し、この科学的成果を実行に移そうとする人たちは、過激な反対行動にさ らされています。真実を広げようとし、長く信じられてきた HIV 予防に関する神話に対し、 科学的な根拠に基づいて挑戦しようとするだけで、流行終結に向けた努力が脅かされてし まうのです》

 (U=U に関するIAS声明:科学の成果を行動に移そう  から)

ただし、そのバッシングの中身については、声明を読んでも具体的には書かれていません。タイ国内ではかなり話題になっているのかもしれませんね。
 確認の取れない情報で恐縮ですが、タイを代表するHIV臨床医と研究者がテレビインタビューに答え、U=U推奨の意見を表明したところ、ネット上で『殺す』といった脅迫を受けたり、医療関係者からも医師免許をはく奪すべきだといった脅しを受けたりしているようです。

 U=Uについて、私はかなり重要なメッセージだとは思うのですが、疑問に感じる点もいくつかあり、全面的に推奨する立場にはありません。ただし、いたずらかもしれませんが殺害の脅迫があったり、推奨者の信頼性を失墜させたりするような攻撃があるとすれば、これは看過できません。
 背景にはコンドームなしのセックスをめぐる議論があるようですが、どなたか事情をご存じの方がいらっしゃったら教えてください。

 さらにその背景を考えると、タイ国内では(日本国内でも同じだと思いますが)、U=Uのメッセージはまだ多くの人に伝わっておらず、性がからむイシューだけに誤解が広がりやすいといった事情もありそうです。UNAIDSなどの共同声明は以下のメッセージで声明を締めくくっています。

 《保健医療施設やコミュニティ、HIV 陽性者、その他 HIV 対策分野のパートナーの間で U=U に対する関心を高め、知識の普及をはかる必要があります》

 あまりトラブルに深入りしたくないというような感じも受けますが、地道な努力を積み重ね、反対するにしても賛成するにしても、とにかく知ってもらうことが大切ということでしょうね。

 ここで、受け狙いに走ってCOVID-19に話を結び付けるようないつもの手口は、今回は慎んでおきましょう。

 

 

HIV感染報告減少の背景は・・・

 

 メルマガ東京都エイズ通信第150号が発行されました。今年に入って2月16日まで約1カ月半の東京都への新規HIV感染者、エイズ患者報告数は以下の通りです。

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● 令和2年1月1日から令和2年2月16日までの感染者報告数(東京都)
  ※( )は昨年同時期の報告数

HIV感染者 32件  (46件)
   
AIDS患者 10件   (6件)
   
合計 42件  (52件)

HIV感染者数は昨年度よりも減少し、AIDS患者は増加している。
*************************************

 新規HIV感染者報告は前年同時期のほぼ3分の2。かなり減っています。COVID-19の流行に関心が集まっているので、HIV検査どころではないという雰囲気になっているのかもしれませんね。
 そうした中でエイズ患者報告が10件と昨年同時期よりも4件、増えています。これが何を意味しているのか。まだ分析できる時期ではないのでしょうが、気になります。
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『容易ではないが可能性はある』 COVID-19封じ込めについて(中島教授のFBから)

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行について、実地疫学の専門家である大東文化大学の中島一敏教授が、厚労省の発表など現時点で得られる情報をもとに国内の状況と今後の対策の可能性について、ご自身のブログで分析を行っています。非常に勉強になり、「そういうことだったのか」と心落ち着く記述に接することもできます。

https://www.facebook.com/kazutoshi.nakashima.94

 その中の本日(2月24日)午前の時点の書き込みに対し、コメントを投稿しました。調子に乗ってあまりにも長々としたコメントになってしまったので、少し手を入れて当ブログにも再掲します。

   ◇

 国立感染症研究所はメディア関係者を対象に定期的な(月に1回くらいだと思います)勉強会を開催しています。私の場合、最近は少々、さぼり気味ですが、少し前までは必ず出席し、様々な感染症について対策の現状や考え方を教えいただきました。

 ただし、その時は理解したつもりでいても、しばらくするとすっかり忘れてしまうという繰り返しなので、今回のようなアウトブレークがあると、たちまちオタオタしてしまいます。

 大東文化大学の中島一敏教授も以前は感染研におられました。新型インフルエンザの時だったでしょうか、勉強会でお話をされ、私は隅っこの方に座って聞きながら、ははあ、実地疫学の専門家は物事をこういう風にみていくのかと感心した記憶があります。

 

 中島先生は、今回も限られた情報の中で、きめの細かい解説をSNS経由で発信されています。切れ味はますます鋭くなっているといいますか・・・。

 その一つ、2月24日午前にFacebookで発信された(個人的見解)によると、封じ込めの可能性については『容易ではないが可能性はある、少なくとも諦める段階ではない』とみておられるそうです。

 厚労省が公表している『初期に見つかった14症例』については『その濃厚接触者の2週間にわたる健康追跡調査(接触者調査)が終了しています』ということで以下のような見方を示されています。

 『濃厚接触者数は129人ですが、そのうち2次感染者は4人です。つまり症例数は、14人から4人に減っていることになります。発病から隔離までの中央値は6.5日(範囲:1−11日)です。軽症であるという条件付きですし、数も少ないのですが、思ったよりも2次感染者は多くありません』

 そうなのか。マスメディア経由の情報にあおられ、少しオタオタしていた気分が落ち着きます。

 『先日、咽頭のウイルス量の経時的変化を示した論文が発表されました。数は少ないのですが、発病後にウイルスは増加しているようです。これを見る限り、発病前の感染はあまり心配しなくてもよいのではないかとも思います』

 逆に言うと、発病後に重症化した事例では2次感染の可能性も高くなりそうです。

 この辺りは中島先生のFacebookの投稿をご覧いただいた方がいいのですが、ひとつ私が感心し、強調もしておきたいことがあります。中島先生が『スーパースプレディングイベント』という用語を使用し、SARSの時などに盛んに使われた『スーパースプレッダー』という言い方を不用意に使うことは避けている(ように私は感じました)という点です。

 ここから先は私の勝手な解釈になりますが、「感染を広げる人」がいるのではなく、「感染が広がる出来事や状態」があると受け止める。その姿勢が対策の観点からも重要なのかなあと改めて感じました。

 実はこの用語選択についてはHIV/エイズ分野における私の長年の取材経験とも符合するものがあります。少々、我田引水気味になってすいません。感染経路などはもちろん違いますが、感染症対策を考える際の基盤として重視しておくべき共通性のある考え方なのではないかとも思います。当面の世の中の関心とはずれてしまいそうですが、ジャーナリズムの観点からも考えてみたいテーマです。

 

COVID-19アウトブレークの間、HIV陽性者が治療を継続できるようUNAIDSと中国が協力 UNAIDSプレスリリース

 中国のCOVID-19の流行について、UNAIDSが2月19日、プレスリリースを発表しました。HIV陽性者が受けている影響についての調査報告です。内容はしっかり取り組んでいますというアリバイ的な印象もありますが、やらないよりはまし。その日本語仮訳です。

 

 

COVID-19アウトブレークの間、HIV陽性者が治療を継続できるようUNAIDSと中国が協力 UNAIDSプレスリリース

https://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2020/february/20200218_china_covid19

https://www.unaids.org/sites/default/files/20200218_China_PR_covid19.pdf (PDF版)

 

ジュネーブ 2020年2月19日 COVID-19として知られる現在のコロナウイルス感染症のアウトブレークが中国のHIV陽性者に大きな影響を与えていることが、陽性者に対する調査で分かりました。

 HIV陽性者ほぼ3分の1(32.6%)が、中国国内のいくつかの地域で封鎖と移動禁止のために数日中にHIV治療薬がなくなる恐れがあると答え、そのうちの約半数(48%)は次の抗レトロウイルス薬をどこで補充できるのか分からないと答えています。しかし、政府とコミュニティパートナーは、中国のCOVID-19制圧に向けた闘いが、HIV陽性者の生死にかかわる治療へのアクセスを妨げることがないよう、協力していくことを決めています。

 中国エイズ/STD管理予防センターは地方当局に対し、住所を離れたHIV陽性者がどこにいても治療薬が得られるようにすることを指示しました。また、抗レトロウイルス治療を行っているクリニックのリストを発行し、配布しています。UNAIDS中国事務所はHIV陽性者BaiHuaLin同盟その他のコミュニティパートナーと協力し、治療薬が10~14日以内に切れてしまうHIV陽性者と緊急に連絡を取って必要な支援を提供していきます。UNAIDSはまた、保健医療施設におけるケアの質を確保し、HIV陽性者のCOVID-19感染を防げるよう、HIV陽性者支援の市民社会組織や病院などに感染防護のための備品を寄付します。

 「HIV陽性者は生きていくためにHIV治療を続けなければなりません」とUNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長はいう。「封鎖の影響を受けているHIV陽性者が治療薬を得られるよう支援している中国エイズ/STD管理予防センターの活動を評価します。HIV陽性者がどこにいようとも必要な治療を確実に受けられるようにしなければならないのです」

 中国のCOVID-19のアウトブレークはこれまでにないものであり、病院や保健医療従事者は、COVID-19患者の世話に手いっぱいとなっている。自宅から離れて旅行をしていたHIV陽性者は都市封鎖で住んでいる町に戻れず、治療を含むHIVサービスをいつもの保健医療提供者から受けられなくなっている。

 回答者の大多数(82%)がCOVID-19に対する個人的なリスクを評価し、予防策を取るために必要な情報は得ていると答えているものの、ほぼ90%はHIV陽性者に特有の予防対策についてより詳しい情報を求めている。一般人口層と同じように回答者の多く(60%以上)が個人的にも世帯としても、マスクやせっけん、消毒剤、医療用アルコール、手袋など予防に必要な備品が得られていないと答えている。3分の1近い人が、COVID-19のアウトブレークに不安を持っていると答え、心理社会的支援を必要としている。

 「どのくらいの数のHIV陽性者がCOVID-19に感染しているか、HIV陽性者はCOVID-19に感染するリスクが高いのか、感染した場合には重症化しやすいのかどうかといったことを知る必要があります。現段階では分かっていないことがたくさんあるのです。知識のギャップを迅速に埋めなければなりません」とビヤニマ事務局長は付け加えた。

 調査はUNAIDSとHIV陽性者BaiHuaLin同盟が協力し、中国エイズ/STD管理予防センターの支援を得て進めています。UNAIDSはコミュニティに調査協力を呼びかけ、回答を増やすためにオンライン調査を行ってきました。2020年2月5日から10日までの間に1000人以上のHIV陽性者から回答がありました。さらに、中山大学医学部と協力してより詳細な調査を予定しており、この調査ではコミュニティのニーズに加え、HIVサービスの提供に直接、影響を与える医療システムの課題についても調べていきます。

 

 

 

UNAIDS and China working together during the COVID-19 outbreak to ensure that people living with HIV continue to get treatment Press release

 

GENEVA, 19 February 2020—A survey of people living with HIV has found that the current coronavirus disease outbreak, known as COVID-19, is having a major impact on the lives of people living with HIV in the country.

In the survey, nearly a third (32.6%) of people living with HIV reported that, because of the lockdowns and restrictions on movement in some places in China, they were at risk of running out of their HIV treatment in the coming days—of these, almost half (48.6%) said they didn’t know where to collect their next antiretroviral therapy refill from. However, a close partnership between the government and community partners is determined to ensure that access to life-saving HIV treatment is not interrupted as the country fights to get COVID-19 under control.

The Chinese National Center for AIDS/STD Control and Prevention has directed local authorities to ensure that non-resident people living with HIV can collect their medication wherever they are and has published and disseminated lists of antiretroviral therapy clinics. The UNAIDS China Country Office is working with the BaiHuaLin alliance of people living with HIV and other community partners to urgently reach those people living with HIV who are at risk of running out of their medicines in the next 10–14 days and will offer support as necessary. UNAIDS will also be donating personal protective equipment to civil society organizations serving people living with HIV, hospitals and others to help improve the quality of care for people in health facilities and to prevent coinfection of people living with HIV with COVID-19.

“People living with HIV must continue to get the HIV medicines they need to keep them alive,” said Winnie Byanyima, UNAIDS Executive Director. “I applaud the efforts of the Chinese National Center for AIDS/STD Control and Prevention to support people living with HIV affected by the lockdowns to get their medicines—we must ensure that everyone who needs HIV treatment gets it, no matter where they are.”

The COVID-19 outbreak in China has resulted in an unprecedented response, resulting in hospitals and health-care workers being overwhelmed as they look after COVID-19 patients. Lockdowns in cities have resulted in people living with HIV who had travelled away from their hometowns not being able to get back to where they live and access HIV services, including treatment, from their usual health-care providers.

While the vast majority of the respondents (82%) said that they had the information they need to assess personal risk and take preventive measures against COVID-19, almost 90% said that they wanted more information on specific protective measures for people living with HIV. Similar to the general population, many of the respondents (more than 60%) said that they didn’t have enough personal and household protective equipment, such as face masks, soap or disinfectant, medical alcohol or gloves. Nearly a third reported being anxious and needing psychosocial support during the COVID-19 outbreak.

“We need to know how many people living with HIV are contracting COVID-19, whether people living with HIV are at greater risk of contracting COVID-19 and, if they contract it, whether they are in greater danger from it—at this stage of the COVID-19 outbreak there are so many unknowns. We must fill in the gaps in our knowledge, and fill those gaps in rapidly,” added Ms Byanyima.

The survey was devised and launched jointly by UNAIDS and the BaiHuaLin alliance of people living with HIV, with the support of the Chinese National Center for AIDS/STD Control and Prevention. UNAIDS mobilized community support for the survey and promoted the survey online in order to maximize the responses to it—more than 1000 people living with HIV replied. Responses were collected from 5 to 10 February 2020. A follow-up in-depth survey is to be carried out in partnership with the School of Medicine at Zhongshan University, which will go beyond community needs and will look at health systems issues that have a direct impact on HIV services.

 

COVID-19臨床経過 高山さんの概念図が分かりやすい


 著名な臨床医であり、現在は厚労省新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策にあたっている高山義浩さんが、これまでの各種報告に基づき、「典型的な臨床経過」を概念図にまとめ、Facebookに公開されました。ほ~っと感嘆のため息をつきたくなるほど分かりやすく整理されています。
 ご本人から許可をいただきましたので、当ブログにも再掲載します。

 

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 高山さんのFacebookには、さらに分かりやすい説明も付されているのですが、アクセスできない方もいるので、僭越ながら私が理解できた部分を中心に紹介しておきましょう。

 
 まず、水際対策と今後の対応策について。
 『敵を知ることで、戦い方も見えてきます。そのための封じ込め(時間稼ぎ)でしたから、まずは発生初期における目的は達成したと言えます。次は流行の立ち上がりに向けて、個人、家庭、学校、施設、病院、事業者・・・ それぞれに必要な備えをとりましょう』

 (注:《まずは発生初期における目的は達成したと言えます》の部分は《まずは発生初期における目的に至ったと言えます》に訂正されたそうです。こちらの方がより実像に近いと思うので、私の書き込みも訂正してそれに揃えました)

 この一言だけでも気持ちがずいぶん落ち着きます。いままでは時間稼ぎ、つまり準備期間だったのだ。恐怖と不安で浮足立った状態を脱する意味でも重要な時間を稼いだといえるようになるかどうか。それは今後の対応次第ということにもなります。そのための準備期間でもありました。
 図にもあるように臨床経過は軽症と重症化の2パターンに分けて考えられます。
 『感染してから発症するまでの潜伏期間は5日(1-11日)ぐらいで、入院を要するほどに重症化するのは、さらに10日(9.1-12.5日)経ったころだと見積もられています。感染力が強いのは、発症から3~4日目ぐらいだと考えられていますが、重症化すると感染力も維持されて院内感染を引き起こしやすくなっています』
 圧倒的に多いのはおそらく軽症です。高山さんのざっくりとした印象で言うと『若者の重症化率と致命率は、ほぼゼロ%』、一方で高齢者の場合は『感染した高齢者の1割ぐらいが重症化して、1%ぐらいが死亡するのではないか』ということです。
 すでに私は高齢者の範疇に入っているので、1割とか1%とか言われても、意外に少ないねという感覚ではなく、肺炎にはなりたくないなあとどうしても思ってしまいます(40代のころNYで肺炎にかかり、入院せずに回復はしたもののけっこう苦しかったことがあります)。
 『というわけで、これから私たちは何をすべきか。もはや、流行を抑止することは主たる目的ではなくなってきました(やれることはやるべきですが)。むしろ、重症化する人を減らし、とくに新型コロナに感染して死亡する人をできる限り減らすことに力を注ぐべきです』
 たぶん1週間ぐらいの風邪でなおってしまう若い方も含め、どう対応したらいいのかも高山さんのFacebookには書かれています。やっぱり原文にアクセスしてもらった方がいいかなあ。お手数をおかけしますが、ぜひ探してみてください。
 それほど大変なことが必要なわけではなさそうですが、大変だなあと思う方もいらっしゃるかもしれません。私のような憎まれっ子ではない高齢者も世の中にはたくさんいらっしゃるので、風邪かなあと思ったら高齢者じゃない方も7日間、よろしくお願いします。
 『なお、風邪症状に過ぎないのに新型コロナかどうかを確認するためだけに、救急外来を受診することは避けてください。そこには、体調を悪化させたハイリスク者がたくさん受診しているのです。彼らへ感染させないように協力してください』
 この点も大切ですね。医療の提供体制が安定的に維持できるようにすること、本当に治療が必要な人が安心して治療を受けられることはいつも大事なのですが、いまはとりわけ重要です。少しずつの配慮、どうかよろしくお願いします。