『容易ではないが可能性はある』 COVID-19封じ込めについて(中島教授のFBから)

 新型コロナウイルス感染症COVID-19の流行について、実地疫学の専門家である大東文化大学の中島一敏教授が、厚労省の発表など現時点で得られる情報をもとに国内の状況と今後の対策の可能性について、ご自身のブログで分析を行っています。非常に勉強になり、「そういうことだったのか」と心落ち着く記述に接することもできます。

https://www.facebook.com/kazutoshi.nakashima.94

 その中の本日(2月24日)午前の時点の書き込みに対し、コメントを投稿しました。調子に乗ってあまりにも長々としたコメントになってしまったので、少し手を入れて当ブログにも再掲します。

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 国立感染症研究所はメディア関係者を対象に定期的な(月に1回くらいだと思います)勉強会を開催しています。私の場合、最近は少々、さぼり気味ですが、少し前までは必ず出席し、様々な感染症について対策の現状や考え方を教えいただきました。

 ただし、その時は理解したつもりでいても、しばらくするとすっかり忘れてしまうという繰り返しなので、今回のようなアウトブレークがあると、たちまちオタオタしてしまいます。

 大東文化大学の中島一敏教授も以前は感染研におられました。新型インフルエンザの時だったでしょうか、勉強会でお話をされ、私は隅っこの方に座って聞きながら、ははあ、実地疫学の専門家は物事をこういう風にみていくのかと感心した記憶があります。

 

 中島先生は、今回も限られた情報の中で、きめの細かい解説をSNS経由で発信されています。切れ味はますます鋭くなっているといいますか・・・。

 その一つ、2月24日午前にFacebookで発信された(個人的見解)によると、封じ込めの可能性については『容易ではないが可能性はある、少なくとも諦める段階ではない』とみておられるそうです。

 厚労省が公表している『初期に見つかった14症例』については『その濃厚接触者の2週間にわたる健康追跡調査(接触者調査)が終了しています』ということで以下のような見方を示されています。

 『濃厚接触者数は129人ですが、そのうち2次感染者は4人です。つまり症例数は、14人から4人に減っていることになります。発病から隔離までの中央値は6.5日(範囲:1−11日)です。軽症であるという条件付きですし、数も少ないのですが、思ったよりも2次感染者は多くありません』

 そうなのか。マスメディア経由の情報にあおられ、少しオタオタしていた気分が落ち着きます。

 『先日、咽頭のウイルス量の経時的変化を示した論文が発表されました。数は少ないのですが、発病後にウイルスは増加しているようです。これを見る限り、発病前の感染はあまり心配しなくてもよいのではないかとも思います』

 逆に言うと、発病後に重症化した事例では2次感染の可能性も高くなりそうです。

 この辺りは中島先生のFacebookの投稿をご覧いただいた方がいいのですが、ひとつ私が感心し、強調もしておきたいことがあります。中島先生が『スーパースプレディングイベント』という用語を使用し、SARSの時などに盛んに使われた『スーパースプレッダー』という言い方を不用意に使うことは避けている(ように私は感じました)という点です。

 ここから先は私の勝手な解釈になりますが、「感染を広げる人」がいるのではなく、「感染が広がる出来事や状態」があると受け止める。その姿勢が対策の観点からも重要なのかなあと改めて感じました。

 実はこの用語選択についてはHIV/エイズ分野における私の長年の取材経験とも符合するものがあります。少々、我田引水気味になってすいません。感染経路などはもちろん違いますが、感染症対策を考える際の基盤として重視しておくべき共通性のある考え方なのではないかとも思います。当面の世の中の関心とはずれてしまいそうですが、ジャーナリズムの観点からも考えてみたいテーマです。