罰則より納得を 『感染症法等の改正』に対する見解 エイズと社会ウェブ版537

 日本エイズ学会の公式サイトに1月18日付けで『感染症法等の改正について』とする見解が示されています。

 https://jaids.jp/

 こうした見解を示したことは、評価したいと思います。ただし、どうも持って回った言い方が気になります。日本医学会連合などが先に声明を出してしまったので、出遅れ感から歯切れが悪くなったのかもしれません。こういうものは先に出そうが、後から出そうが、考え方をはっきりと示し、立場を明確にする必要があると個人的には思うのですが、いかがでしょうか。

 参考までに、PDF版の本文はこちらで読むことができます。

https://jaids.jp/wpsystem/wp-content/uploads/2021/01/99b5ffff1e3989dc4e1ce423a95ded0a.pdf

 

 私は感染症の専門家というわけではまったくありませんが、HIV/エイズに関する取材は新聞記者として一応、長期にわたって続けてきました。いわば「いたずらに馬齢を重ね、ひねた門前の小僧」のような、つまり吹けば飛ぶような存在ですが、感染症法改正の経緯については多少の知識もあります。長いけれど、乏しくもあるその経験からすると、感染症の流行に対しては罰則ではなく、医療の提供を含めた支援こそが基本になるべきだと考えます。

 パンデミック期には感染への不安や恐怖の感情が社会に広がります。そうした感情を克服し、効果的かつ妥当な対策をとるためには、感染症に苦しむ人を排除し、社会的により苦しい立場に追い込むのではなく、治療が必要な人には治療を提供し、対策への協力をお願いしたい人たちには安心して協力をすることができるような条件を整え、支援を提供することが必要です。そうしなければ、社会を構成する多様なプレイヤーが理解を広げ、対策に協力することもできなくなってしまいます。

 ここが踏ん張りどころです。罰則化に反対ですというエイズ学会としての意図は、他の組織に判断の下駄を預けたような難解な声明からも、工夫して読もうと思えば、読み取ることができます。これからは、その趣旨を分かりやすく伝える努力を重ねていくことを、末端の会員としては期待しています。

 なお、日本医学会連合、日本公衆衛生学会・日本疫学会の声明も参考までに紹介しておきましょう。

日本医学会連合『感染症法等の改正に関する緊急声明』
https://www.jmsf.or.jp/news/page_822.html

日本公衆衛生学会・日本疫学会『感染症法改正議論に関する声明』
 https://www.jsph.jp/files/seimei20210114.pdf