涼しいぞ素足の砂浜西瓜割り

 

夏休みの前にまずは7月の3連休ということで、17日(月)の海の日も鎌倉は大いににぎわいました。

 

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梅雨にはアジサイ、猛暑が襲来すれば海水浴と切れ目なくキラーコンテンツがつながっていくところが観光都市としての鎌倉の強みであり、同時に労せずして人が集まってきちゃうのであまり努力をしないという観光政策上の大きな弱点も抱えています。その中で海水浴場は毎年、かなり健闘していると思いますが、ま、その話はいずれまた。

今年の海の日は猛暑であり、かつややガスり気味でした。日差しは心持ちやわらぎますが、その分、湿度が上がって体感的には不快度が高まります。この時期は砂浜が遠浅になる午前中の海風がとくに涼しく、おすすめでしょうか。

 

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 ただし、写真はお昼ごろです。沖合に大きな船が止まっていますね。毎年海の日には坂の下の御霊神社で石上神社例祭があり、午後には海岸に出て御供流しを行います。沖合の岩礁までお赤飯をもって泳ぎ、そのお赤飯を流して海で遭難した人の霊を慰める行事です。船に乗せたお神輿の海上渡御もあったので、沖合の船もその関係だったのでしょうか。

 今年は71日に海水浴場がオープンしたとたん、一気に夏本番に突入した印象ですが、鎌倉花火大会(724日)、浜の盆踊り大会(728日)と地元が盛り上がるのはいよいよこれからでしょうね(おっと、西瓜割り、ぜんぜん出てこなかったな。まあいいか)。

 

『注意喚起の難しさ』 One side / No side 15

メッセージをどう伝え、どう受け止めるのか。これはなかなか難しい問題です。立場によって正解が異なるのかもしれません。ただし、そうなると何が正解かという踏み込んだ認識が、それぞれの立場で、あるいは共通した了解事項として、問われてくるといった事情も出てきそうです。う~ん、どうなんだろうかと思いつつ、でも指摘はしておく必要があるといいますか・・・。

現代性教育研究ジャーナルの7月号に掲載された連載コラム One Side/No Side15回目です。梅毒の予防キャンペーンについて取り上げました。

www.jase.faje.or.jp

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ずっと中の方の12ページに載っています。

エイズの流行の初期には、典型的な症状の一つとされた皮膚がんのアップや衰弱した患者さんの写真などを強調するあまり、啓発のキャンペーンが逆に社会的な恐怖や不安、困難な病気に直面する人への忌避感などを増幅させてしまう事態を招いた』

個人的にはHIV/エイズの取材を重ねてきた経験があるせいか、「脅しのメッセージ」には短期的なインパクトはあっても、長くは続かないという印象を強く持っています。

専門家の先生方を差し置いて恐縮ですが『可能ならばキャンペーンの中で、こうした点も検討課題になることを期待したい』と思います。

 

『モナコがファーストトラックシティ(高速対応都市)に』 エイズと社会ウェブ版338

 HIV/エイズ対策の当面の目標である90-90-90ターゲットに向けて、モナコがファーストトラックシティ(高速対応都市)の仲間入りをしました。国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトに掲載されているFeature Story(特集記事)の日本語仮訳です。

といっても、高速対応都市っていったい何?と思われた方も多いでしょうね。確かに国内ではあまり話題になりません。おまけにモナコと言われても、日本からはずいぶん遠いし、話題としてはどうなんだろうか・・・。

モナコについても、高速対応都市についても、実はそれほど詳しく知っているわけではありませんが、長年の新聞記者生活で培った付け焼刃と知ったかぶりの技術(というか性格)を駆使して、背景を少し説明しておきましょう。あくまで「あっ、あのおじさん、また知ったかぶりをしているよ」程度の認識で参考にしてください。

2030年までのエイズ流行終結にはまず、2020年までに当面の目標として90-90-90ターゲットを達成する必要がある。そのためにできることはどんどん前倒しして実行に移し、大急ぎで成果をあげよう。これがいま、HIV/エイズ分野で世界の共通目標となっている高速対応です。ま、個人的には目標というよりもむしろ「かけ声」のような感じもしますが、そのぐらいせっつかないと世界を覆う「エイズはもういいだろう」気分に飲み込まれてしまうという事情もあります。

パリ宣言は2014年の世界エイズデー121日)に世界の大都市の市長さんがパリに集まり、発表しました。高速対応は都市が引っ張っていこうという趣旨の宣言です。そのときに出されたUNAIDSのプレスリリースを日本語仮訳でHATプロジェクトのブログに掲載してあります。参考までにご覧ください。

《世界各地から集まった市長たちがエイズ流行終結にむけたパリ宣言に署名》

http://asajp.at.webry.info/201412/article_1.html

 

 Fast Track Citiesという公式サイトも開設されています。そのサイトの「about」というページには2016416日現在で高速対応都市の一覧表が載っています。全部で61都市です。かなり前の更新なのでデータが少し古いかもしれませんね。

 http://www.fast-trackcities.org/about

今回の特集記事では《世界で250を超える都市ネットワーク》となっています。つまり、この2年余りで4倍以上に増えたことになります。

ただし、東アジアはまだ少なく、日本はゼロですが、東京や大阪などは名乗りを上げてもいいのではないかと個人的には思います。日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラスやコミュニティセンターのakta(東京)、dista(大阪)はいい仕事をしているし、行政との連携という観点でも、課題はいろいろと抱えつつも現場レベルでの信頼関係が積み上げられてきました。一朝一夕になし得るものではありません。

とくに首都においては、HIV/エイズ対策ともゆかりの深い巨大イベントを控えていることだし、国際的な情報発信も視野に入れつつ、積極的な対応を期待したいところです。

 短い記事の紹介なのに、ついつい知ったかぶりの前置きが長くなってしまいました。すいません。以下、Feature Story(特集記事)の日本語仮訳です。

 

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モナコがファーストトラックシティ(高速対応都市)に

    201879日 UNAIDS Feature Story

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2018/july/monaco-becomes-a-fast-track-city

 

 HIV対策の充実と90-90-90ターゲット達成の高速対応を約束するパリ宣言にモナコが署名し、世界で250を超える都市ネットワークに加わった。

 90-90-90ターゲットは、2020年までにHIV陽性者の90%が自らのHIV感染を知り、そのうちの90%が抗レトロウイルス治療を受け、さらに治療を始めた人の90%が体内のウイルス量を低く抑える状態になることを目標にしている。

 ファイトエイズモナコ会長で国連合同エイズ計画(UNAIDS)国際親善大使でもあるモナコのステファニー王女、ジョルジュ・マルサン市長が出席した調印式では、HIV陽性者が治療を受け、健康を保つための入り口としての検査の重要性が強調された。

  モナコでは2012年から年2回、HIV検査の街頭キャンペーンを行っている。マルサン市長はまた、HIVの新規感染予防の重要性も強調した。

UNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はスピーチの中で2009年にステファニー王女とともに南アフリカを訪れた時のことを回想し、南ア国内では当時、健康と生存を維持するための抗レトロウイルス治療を受けられる人は数十万人にとどまっていたと述、現在は430万人に拡大していると続けた。

 シディベ事務局長はさらに、イノベーションと研究のハブとして都市が極めて大きな役割を担っており、HIV感染のリスクに曝されていながら忘れられている人びとを助けることができると付け加えた。

 調印式にはモナコのディディエ・ガマ―ディンジャー社会厚生相、国際エイズケア提供者協会(IAPAC)のベルトラント・オードワン副会長らも出席した。

 

 

Monaco becomes a Fast-Track city

09 July 2018

Monaco has joined a network of more than 250 cities worldwide by signing the Paris Declaration, making a commitment to Fast-Track its response to the HIV epidemic and adopt the 90–90–90 targets.

The 90-90-90 targets are that, by 2020, 90% of all people living with HIV will know their HIV status, 90% of all people living with HIV will have access to antiretroviral therapy and 90% of all people on antiretroviral therapy will have viral suppression.

At a ceremony attended by Princess Stephanie of Monaco, who is also the President of Fight AIDS Monaco and a UNAIDS International Goodwill Ambassador, the Mayor of the Principality, Georges Marsan, stressed the importance of testing as the entry point to getting people on treatment and keeping them healthy.  

Twice a year since 2012, Monaco has taken its HIV testing campaign to the streets of the principality through its Test in the City campaign. In his speech, the mayor also underlined the importance of preventing new HIV infections.

In his remarks at the event, UNAIDS Executive Director Michel Sidibé recalled visiting South Africa with Princess Stephanie in 2009, when just several hundred thousand people in the country had access to antiretroviral therapy to keep them alive and healthy. Today, he said, that number has expanded to 4.3 million people.

Mr Sidibé added that cities had a vital role to play as hubs of innovation and research and that they could help reach forgotten groups of people at risk of HIV infection. 

Also present at the event were Monaco’s Minister of Health and Social Affairs, Didier Gamerdinger, and the Vice-President of the International Association of Providers of AIDS Care, Bertrand Audoin.

 

『HIVワクチンの重要性』 TOP-HAT News第118号(2018年6月)

世界エイズデーのような知名度には欠けますが、518日はHIVワクチン啓発デーでした。もともとは、1997に当時の米国大統領だったビル・クリントン氏が、メリーランド州ボルチモアモーガン州立大学で卒業式に出席し「エイズの脅威を取り除くには有効なHIVワクチンが不可欠である」と演説を行った日にちなむ記念日です。今年で21回目ということになりますね。米国だけでなく、国連合同エイズ計画(UNAIDS)もこの日に合わせて声明を出すなど国際的にも広がっています。

やや遅くなりましたがTOP-HAT News118号(20186月)はこの記念日を巻頭で紹介しました。米国立衛生研究所NIH)の公式サイトで声明が発表され、抗レトロウイルス治療による高い延命効果や性感染予防効果などを重視しつつも、現在の治療戦略だけではHIV/エイズパンデミック終結させることはできないと厳しい認識を示しています。このあたりのことはしっかりと踏まえておく必要がありそうです。

日本でもHIVワクチンの開発には長い蓄積があります。「継続的なワクチン研究は大切だね」と機会があれば研究者に声をかけ、励ます。ワクチン研究の中身を説明されても付いていけず、「う~ん、難しいなあ」とうなるばかりのおじさんにも、その程度のことはできそうです。研究者の皆さん、がんばってください。 

 

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メルマガ:TOP-HAT News(トップ・ハット・ニュース)

        第118号(20186月)

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TOP-HAT News特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

なお、東京都発行のメルマガ「東京都エイズ通信」にもTOP-HAT Newsのコンテンツが掲載されています。購読登録手続きは http://www.mag2.com/m/0001002629.html  で。

エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに HIVワクチンの重要性

 

2 77日開幕 第27回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~

 

3  POSITIVE TALK 2018」のHIV陽性者スピーカーを募集

 

4 エイズ対策を国連改革とグローバルヘルスのテコに』 国連事務総長が報告書

 

◇◆◇◆◇◆

 

1 はじめに HIVワクチンの重要性

少し前の話になりますが、518日のHIVワクチン啓発デーにあわせ、米国立衛生研究所NIH)が声明を発表しています。その日本語仮訳をエイズソサエティ研究会議のHATプロジェクトのブログに掲載したのでご覧ください。

 http://asajp.at.webry.info/201805/article_4.html

 この声明はNIHの研究機関のひとつである国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長、およびNIHエイズ研究室のモーリーン・M・グッデナウ室長の連名で発表されています。抗レトロウイルス治療による高い延命効果や性感染予防効果などを強調しつつも、現在の治療戦略だけではHIV/エイズパンデミック終結させることはできないとして、次のように指摘しています。

 『数学モデルによると、現時点で利用可能であり効果も高い予防と治療のツールがさらに普及していったとしても、HIV/エイズパンデミック終結に導けるほどには新規感染が減少しないことが示唆されています。本当にHIVパンデミック終結を実現するには、安全で効果的なワクチンを開発しなければならないのです』

 まあ、ワクチン啓発デーなので、ワクチンの必要性を強調するのは当然と言えば当然なのですが、そうした事情を差し引いたとしてもこの指摘は重要です。

 政策目標としては抗レトロウイルス治療の普及を進める90-90-90ターゲットの重要性を認めるとしても、それで予定調和的に「公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行」を終結に導けると考える研究者は、仮にいたとしても、いまはもう少数派ではないでしょうか。

もちろん、治療の普及がHIV感染の予防にもたらす影響の重要性は否定できません。ただし、それだけに頼ることもまたできない。予防はもう少し幅広く複合的に考える必要があるというのが、現在の国際社会の、そして日本国内でも、考え方の趨勢になりつつあります。

 実は、同じことはワクチンについても言えます。ワクチンがあればそれで解決という話にはなりませんが、ワクチン開発はセーファー(より安全な)セックスや薬物使用に対するハームリダクション(被害軽減策)、そして抗レトロウイルス治療の普及などとともに不可欠な要素のひとつです。

 これがあれば他の方法はいらないというものではなく、いままでの方法ではだめだからこっちに変えようというものでもありません。使えるツールを組み合わせて、それぞれの国や地域に最適な予防対策のパッケージを生み出していく必要があるのです。

 有効なワクチン開発への道のりは依然、険しいものではありますが、声明は地道な研究が着実に積み重ねられていることも伝えています。

 南部アフリカ地域などで臨床試験が進められているワクチン候補は、予防効果が50%程度にとどまるものなので、素人考えでは「なんだ、ワクチンを打っても半数は感染するのか」と思ってしまいますが、現在の感染を半分防げるということは予防対策の観点からすると必ずしも小さな効果とは言い切れないようです。また、50%の効果を60%70%と向上させていく道筋が開けていく可能性もあります。

 HIVワクチン啓発デーには国連合同エイズ計画(UNAIDS)もワクチン研究の拡大を求める声明を発表し、次のように述べています。

『世界には現在3670万人のHIV陽性者が暮らしています。そのすべての人に生涯にわたって費用のかかる治療が必要とされているのですが、長期にわたってそれを支え続けることは難しいかもしれません。本当にエイズ終結させるには、効果的なHIVワクチンの開発と治癒を実現しなければなりません』

こちらもHATプロジェクトに日本語仮訳が掲載されているので、あわせてご覧ください。

 http://asajp.at.webry.info/201806/article_1.html

 また、声明は出ていませんが、日本でも国立感染症研究所を中心にワクチン開発に向けた研究は続いています。

 集団としての予防効果と個人としてワクチンを接種することへの期待値の乖離を克服しつつ、必要な手順を踏まえて研究を着実に進めていくことはなかなか大変です。「継続的なワクチン研究は大切だね」と機会があれば研究者に声をかける。持続的な研究の確保には、その程度の精神的な支援が社会の側にも必要でしょう。啓発とはそうした認識を広げていくことでもあります。

 

 

 

2 77日開幕 第27回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~

セクシュアル・マイノリティをテーマにした世界各国の最新映画13プログラム21作品(うち日本初上映15作品)を集めた第27回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~ 77日から東京都内2会場で開かれます。

 『今年の上映プログラムの特徴は、複合的なテーマの作品が多いことです。家族との関係、伝統文化との軋轢、女性たちの葛藤など、現在の社会の中で生きるセクシュアル・マイノリティの姿が反映された作品は、現在の世相を反映していると言えます』(公式サイトから)

 開催日程、プログラムなどは映画祭の公式サイトでご覧ください。

http://rainbowreeltokyo.com/2018/

 

 

 

3 POSITIVE TALK 2018」のHIV陽性者スピーカーを募集

 今年12月の第32回日本エイズ学会学術集会・総会でHIV陽性者によるスピーチプログラム『POSITIVE TALK』が昨年に続いて開催されることになりました。第32回学会公式サイトでスピーカーを募集しています。

 https://www.c-linkage.co.jp/aids32/positive.html

 HIV陽性者が、以下のいずれか1つを含む自らの経験や思いを語るプログラムで、発表時間は1710分です。

HIV検査

・治療(服薬、入院、HIVに関連する疾患など)

・医療従事者に知ってほしいこと

・恋愛やセックス、カミングアウト、結婚や挙児希望・子育て

・こころの健康

・仕事や家庭など日常生活とHIVの関わり

 募集人員は5人程度。公募期間は61日(金)~820日(月)です。

 第32回日本エイズ学会学術集会・総会は122日(日)~4日(火)に大阪国際会議場および大阪市中央公会堂で開かれます。

 

 

 

4 エイズ対策を国連改革とグローバルヘルスのテコに』 国連事務総長が報告書

世界のHIV/エイズ対策の進捗状況をまとめた国連事務総長の年次報告書『エイズ対策を国連改革とグローバルヘルスのテコに』が613日、国連総会に提出されました。

国連は2030年のエイズ流行終結を目指し、20166月に『エイズ終結に関する国連政治宣言』を採択しています。

今年は宣言採択の2016年と当面の対応の目標年である2020年の中間年にあたり、検証会合で報告を行ったアントニオ・グテレス国連事務総長は「2030年のエイズ流行終結に向けて世界は大きな成果をあげてきました。しかし、その成果はまだ不均衡なものであり、もろくもあります。この節目の時にあたり、エイズから解放された世界の実現に向け、お互いの約束を果たす意思をもう一度しっかりと固めなければなりません」と語りました。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の公式サイトには、報告書および会合の様子を含めたプレス声明が掲載されています。プレス声明の日本語仮訳はエイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログで見ることができます。

 http://asajp.at.webry.info/201806/article_2.html

 

 

明日は七夕 

 いきなり真夏が訪れ、汗だくになっていたら、今日は梅雨空が舞い戻ってきました。明日はもう七夕ですね。

 

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 鶴岡八幡宮境内の夕暮れ。雨は上がったけれど、からりと晴れるわけでもなく、風が強いですね。五色の吹き流しが翻り(あれ?写真ではあまり翻っていませんね、まあいいか)、舞殿の周りには願い事を書いた梶の葉形の色紙や絵馬がずらりと奉納されています。

 

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 それにしても、年取ったかなあ、前よりも石段が急峻に見えます。

 

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 その大石段の上から。舞殿の先には鎌倉の旧市街。霧にかすんで若宮大路の向こうの海までは見えませんね。明日は舞殿に野菜・果物、五色の絹布、琵琶・琴などのお供え物が捧げられます。年に一度の再会・・・お天気はどうなるのでしょうか。

 大雨の地域の皆さんには、くれぐれも川の様子を見に行こうなどと思わず、安全最優先で災害に備えていただくようお願いします。

 

『Respect and dignity matter(尊厳と尊重、それが大切です)』 エイズと社会ウェブ版337

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)の新しいキャンペーンがスタートしました。『Respect and dignity matter』です。

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 http://respect.unaids.org/

日本語では『尊厳と尊重、それが大切です』と訳しました。

順番から行くと、リスペクトが尊重または尊敬で、ディグニティが尊厳なので、『尊重と尊厳』なのですが、日本語の語感を「尊重」して趣旨説明の仮訳を作成する際に順番を入れ替えました。悪しからず。

 この機会に、HIV/エイズ対策で尊厳と尊重が強調されるのはどうしてなのかということを少し考えてみます。

医学研究の成果で、感染した人の体内でHIVが増えるのを抑える抗レトロウイルス治療が大きく進歩し、HIVに感染した人は、一定の時間を経て「死を待つ」といったかつての状態を脱し、治療を続けていれば感染していない人と同じくらい長く、そして就労や社会生活を維持しながら生きていくことが期待できるようになりました。もちろん、現時点では、いったん感染したらその治療を生涯にわたって続けなければ(つまり、毎日、欠かさずに服薬を続けなければ)、その効果も期待できなくなってしまいますが、状況はエイズが「死の病」とされていた当時とは劇的に変わっています。

また、治療の普及が予防にも効果がある。それを示す研究成果も相次いで報告され、「予防としての治療(Treatment as Prevention)」という考え方が広く共有されるようになりました。

その結果、T as Pエイズの流行は終結に導けますよといった数学的なモデルも示され、少なくともこの56年は、治療の普及によるエイズ流行の制圧といった展開に大きな期待がかけられるようになっています。

ただし、最近はどうもHIVの新規感染は期待通りに減っていかないねといった反省の声も世界中で聞かれています。治療があるんだから人権だとか、そんなことを四の五のぬかすなといわんばかりの態度では、さすがにまずいぞということですね。

実はHIVに感染している人たちやその周囲の人たちの間では、そしてHIV診療に日々、携わってきた医療現場の人たちの間でも、実際の経験に基づき、そうした思慮は働いていたと思います。

治療の普及が大事だとしても、その治療の普及を支えるものは何かということも同時に注目する必要がある。様々な立場や状態にある人への目配りが必要なこと、医療は重要だけれども、それを包含した社会的な対応が必要だねということが最近はさかんに議論されています。

実はHIV/エイズ対策はすべての人の尊厳を重視し、人権の尊重を基本にしたものでなければならないということは、20世紀末に航空機事故で急逝したジョナサン・マン博士や初代UNAIDS事務局長だったピーター・ピオット博士が1980年代から、ことあるごとに、繰り返し強調してきたことでもあります。

延命という意味では、そして長く生きられるようになった分の生活の質を保証するという意味でも、治療は目覚ましい進歩を遂げてきました。人類史上例のない長期かつ広範な致死的新興感染症の流行に直面し、無力感を嫌っというほど味わってきた医療従事者の多くも、1990年代後半以降の治療研究の劇的な進歩、およびこれまた劇的な治療の普及拡大により、ようやく自信を取り戻してきました。したがって、ここはもう医療に任せろと言いたい気持ちは分かります。でも、まだ道は半ばです。

UNAIDS2017年に「いまや世界のHIV陽性者の半数以上が必要な治療を受けている」と高らかに宣言していますが、これは同時に「いまでもなお、HIVに感染している人の半数近くは生きていくために必要不可欠な治療を受けることができないでいる」という困難な現状を示すものでもあります。繰り返しますが、道はまだ半ばです。

『尊厳と尊重』キャンペーンの趣旨説明には次のように書かれています。

『尊厳と尊重があれば(それぞれの人の尊厳を守り、尊重することで)、安全が保てます。安定します。恐れることなく、自分でいることができます』

HIV検査を受けるにしても、感染が分かって必要な治療を受けるにしても、そしてHIV感染を防ぐために必要な情報やサービスを受けるためにも、「安全で安定した生活」「恐れることなく自弁でいることができる環境」が必要です。それがあっての医療の進歩でしょう。

UNAIDSのキャンペーンサイトには趣旨説明(about)とキャンペーン素材のビデオや絵はがき、メッセージボードなどが紹介されています。

「あなたにとっての尊厳と尊重とは」(What does it mean to you)というアイコンをクリックするとキャンペーンサイトにメッセージを送れるようになっています。送られたメッセージは「メッセージボード」の欄に掲載され、世界中の他の人のメッセージとともに読むことができます。

以下、趣旨説明(about)の日本語仮訳です。

《尊厳を守り尊重するということは、許容(tolerance)ではなく受容(acceptance)することです。人がその人本来の姿で受け入れられるということです。どこから来て、だれを愛し、どんな行動をとり、誰とセックスをするか、その人にとって必要なものが大切なのです》

許容でなく受容。存在を許してもらうわけではなく、そのまま受け入れればいい。訳文が妙に堅苦しかったり、意味が取りにくかったりするところは、翻訳にあたった人の語学力の限界もありますので、そのまま「受容」していただくようお願いします。

 

    ◇

 

尊厳と尊重、それが大切です

http://respect.unaids.org/

 

 

 尊厳と尊重があれば(それぞれの人の尊厳を守り、尊重することで)、安全が保てます。安定します。恐れることなく、自分でいることができます。

 

 尊厳と尊重があれば、その人が何者であり、どこで生まれ、誰を愛し、どのように生きたいのかといったことで非難されることのない環境を生み出すことができます。人はその人であることができるのです。HIV感染の有無や行動や振る舞いで分けられることもありません。

 

 尊厳と尊重があれば、人はコミュニティをつくることができます。可能性と希望にあふれた健康で豊かなコミュニティです。女性・少女も男性・少年も平等なコミュニティです。

 

 尊厳を守り尊重するということは、許容(tolerance)ではなく受容(acceptance)することです。人がその人本来の姿で受け入れられるということです。どこから来て、だれを愛し、どんな行動をとり、誰とセックスをするか、その人にとって必要なものが大切なのです。

 

 尊厳と尊重があれば、若い女性は、非難されたり報復されたりすることを恐れずに、HIV感染やジェンダーによる暴力から自らを守る情報と手段を得ることができます。若いゲイ男性は迫害されることを心配せずにコンドームや潤滑剤を手に入れることができます。

 

 尊厳と尊重があれば、妊娠した女性は、家族から拒絶されるかもしれないという不安を持たずにHIV検査を受けることができます。注射薬物を使用している人が投獄されたり、もっとひどい状態になったりするリスクにさらされずにHIV治療を受けられるようになります。

 

 尊厳と尊重があれば、人は自らの健康を保つための情報を得ることができます。必要なら専門の治療と可能な限り最善のヘルスケアが得られることを知ったうえで、保健医療サービスを利用することができます。公平な扱いを受けることを知ったうえで、求職や住宅、ローンなどの申請が出きます。責任ある市民として、積極的にコミュニティへの貢献を果たし、それが歓迎され、評価されることにもなります。

 

 尊厳と尊重は社会の課題です。個人的に受け入れるというだけではなく、受け入れると表明していない人に立場をはっきりするよう求めることでもあります。差別を傍観せずに積極的に闘う必要があります。

 

 尊厳と尊重を引き受ける。その見返りは計り知れないものなのです。

 

 

 

Respect and dignity matter

 

Where there is respect and dignity there is safety. There is stability. There is space to be brave, to be ourselves.

Respect and dignity creates an environment where people are not judged for who they are, where they are born, who they love or who they choose to be. Respect and dignity ensures that people are individuals. They are not defined by their HIV status, their actions or their behaviours.

Where there is respect and dignity, individuals create communities. Healthy, thriving communities where the future is filled with opportunity and hope. Where women and girls are equal to men and boys.

Respect and dignity is about moving from tolerance to acceptance. It’s about accepting people as they are when they show who they really are. It puts a person’s needs in front of where they come from, who they love, what they do or who they have sex with.

Where there is respect and dignity, a young woman can seek the information and means to protect herself from HIV and gender-based violence without fear of judgement or reprisal. A young gay man can access condoms and lubricants without worrying that he may be targeted for harassment.

Where there is respect and dignity, a pregnant woman can ask for an HIV test without fearing that her family will reject her. It creates space for a person who injects drugs can to seek treatment for HIV without risking imprisonment, or worse.

Where there is respect and dignity, people can access the information they need to keep themselves healthy. They can seek health services knowing that they will be treated professionally and that they will be given the best possible health care. They can apply for a job, or a house or a loan and know that they will be considered fairly. They can be active, committed citizens and their contribution to the community will be welcomed and valued.

Respect and dignity is about challenging society. It’s about moving from individual acceptance to taking a stand and challenging those who do not demonstrate acceptance. It’s about moving from passive observers to active agents of change against discrimination.

Commit to respect and dignity. The return is priceless.

 

 

 

1 https://www.pinknews.co.uk/2014/08/05/could-being-gay-stop-employers-from-hiring-you-this-study-says-yes/

2 https://www.economist.com/the-americas/2018/03/15/the-lives-and-deaths-of-transgender-latin-americans

3

https://www.theguardian.com/global-development/2018/jun/06/el-salvador-devastating-epidemic-femicide

4 https://www.one.org/international/blog/the-case-for-girls-education/

5 https://www.huffingtonpost.co.za/2017/08/31/the-horrific-reality-of-south-africas-rape-problem-will-shock-you_a_23192126/

6 https://www.hrw.org/news/2018/01/18/philippines-dutertes-drug-war-claims-12000-lives

 

そしてこちらは一つのチームで エイズと社会ウェッブ版336

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)のワールドカップキャンペーン。日本・ベルギー戦に続き次々に展開されています。参考までに当ブログでももう少し紹介していきましょう。せっかくなら、もうちょっと早くから始めたらよかったのにとも思うけど、準備が間に合わなかったのかもしれませんね。いろいろ出てきそうなので、UNAIDSのFacebookで探してください。
 https://www.facebook.com/UNAIDS/

 

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 こちらは直近の薬物使用の際にクリーンな(新品または消毒済みの)注射針を使用した注射薬物使用者の割合です。

スイス 55.6%
スウェーデン 55%

 普及率はどちらも半数強といったところですね。ハームリダクション政策の浸透は、欧州でもそう簡単にはいきません。政策的な意思決定と地道な活動の両方が必要ということでしょうか。

No matter who wins the Switzerland vs Sweden #WorldCup game, both countries are winners when it comes to providing harm reduction programmes that are effective in decreasing new HIV infections among people who inject drugs.
 ワールドカップの試合でどちらが勝つにしても、新規HIV感染を減らす効果が高いハームリダクションプログラムを注射薬物使用者に提供できれば、両国がともに勝者になります。

 

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イングランド 100人弱
コロンビア  500人弱

 2016年の1年間に結核関連の疾病で死亡したHIV陽性者の数ですね。世界全体でみると結核は現在、HIV陽性者の最大の死亡原因となっています。

Let's get on the same team and end AIDS and TB by 2030.
 エイズ結核の2030年終結に向けた闘いでは一つのチームです。

 ニューヨークの国連本部では今年9月、国連総会結核ハイレベル会合が予定されてます。この会合の共同議長は、日本の別所浩郎国連大使アンティグア・バーブーダウォルトン・アルフォンソ・ウェブソン大使。現在は会合で採択される政治宣言の草稿作成に向けて着々と準備が進められている段階でしょうか。日本のスルーパスでゴ~~ルを期待したいですね。