2023年世界エイズデー報告書『コミュニティ主導でいこう』要約版の日本語仮訳をAPI-Netに掲載 エイズと社会ウェブ版670

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の2023年世界エイズデー報告書『LET Communities LEAD(コミュニティ主導でいこう)』は11月28日に発表されました。エイズデー当日の3日前ですね。

全文は無理だけど、せめてサマリー(要約版)だけでも・・・ということでエッチラ、オッチラ翻訳を進め、API-Net(エイズ予防情報ネット)に日本語仮訳を掲載していただきました。プレスリリース、ファクトシートとともにこちらでご覧ください。

https://api-net.jfap.or.jp/status/world/booklet074.html

 

   

《この報告書は、エイズ終結を達成し、将来にわたってその成果を維持するには、コミュニティ主導の対応を中心にしなければならないことを示しています》

そうなると、まず問われるのは、主導する立場のコミュニティとは何か(あるいは誰か)ということになりそうですね。報告書はこう指摘しています。

HIV対策を推進してきたのは、HIV陽性者であり、HIVから大きな影響を受けてきた人たちです。必要な人たちに、必要な情報や対策を届けること、必要なサービスにつなぐこと、イノベーションを生み出すこと、サービス提供者や政府や国際機関やドナーに説明を求め、責任を追及すること、すべての人の健康と尊厳と人権をまもること、コミュニティは常に、こうした目覚ましい動きの先頭に立ってきました》

つまり、焦点は『HIV陽性者、およびHIVから大きな影響を受けてきた人たち』のコミュニティということになります。次の疑問は、なぜ、いま、コミュニティなの?ということです。ちょっと、ちょっと、聞いてよ・・・という感じで報告は続きます。

《リーダーシップを発揮しようとしても障壁に阻まれているコミュニティがたくさんあります。コミュニティ主導の対応の重要性が十分に理解されず、資金も不足し、場所によっては攻撃にさらされてしまうのです》

要約版によると、2012年には、世界のエイズ対策資金の31%がコミュニティに回っていました。それが2021年には20%に落ち込んでいます。

《資金不足、政策と規制がもたらす障壁、市民社会および女性や疎外されたコミュニティの人権に対する弾圧が、HIVの予防、治療、ケアのサービスを妨げているのです》

前途多難と言わざるを得ません。これでエイズ終結だなんて・・・。悲鳴が聞こえてきそうです。では、どうしたらいいのか。

 

 報告書は以下3点について『なぜ必要なのか、その理由を説明し、実現の方法を示しています』ということです。

  • コミュニティに影響を与えるHIV関連の計画、政策、プログラムについては、企画、策定、予算確保、実施、モニタリング、評価のすべての段階で、コミュニティのリーダーシップを中心に据える。「私たちに関係することは何事も、私たち抜きでは決めない」
  • コミュニティがリーダーシップを発揮できるよう十分な資金を持続的に確保することで、プログラムの規模を拡大し、実施にあたる人たちが適切な支援と報酬を得られるようにする。
  • 市民社会の活動の場を確保すること、そして、社会から排除され、犯罪視されるコミュニティを含むすべての人たちの人権をまもることによって、コミュニティのリーダーシップを阻む障壁を取り除く。

 

《UNAIDSは2023年7月の年次報告書グローバル・エイズ・アップデートで、エイズ終結には道があることを明らかにしました。成否はHIV陽性者やキーポピュレーションの人たち、および思春期の少女や若い女性を含む優先集団によるコミュニティ主導の対応が実現できるかどうかにかかっていることを報告書のデータは示しています。では、そのコミュニティのリーダーシップがいかに進歩を促してきたのか、逆に何がそのリーダーシップを妨げるのか、そして妨げとなる制約をなくすにはどうすればよいのか、今回の世界エイズデー報告書は、こうした点をさらに深く掘り下げることになりました》

議論が堂々巡りをしている印象ですが、これが世界の現状です。日本国内では、エイズ予防指針の改定期に入っています。課題は山積みだけど、希望は失わないということで、改定のプロセスにもこうした指摘が反映されるといいですね。