ラグビー協会も後援 プライドハウス東京 エイズと社会ウェブ版421

 コメンテーターとしてテレビにもよく登場する谷口真由美さんがFacebookで、ラグビーウェールズ元代表(主将でもあった)ギャレス・トーマスさんのカミングアウトについて書いています。

 当ブログでもすでにお伝えしたように、トーマスさんは2009年にゲイであることを公表していますが、今回はさらにHIV陽性者としてTwitterでカミングアウトしました。

 英国のタブロイド紙から公表すると脅迫され、結果として自らHIV感染について明らかにするという経緯をたどり、そのことがまた、マスメディアにも大きく報じられることになりました。谷口さんは「マスコミによる典型的なアウティング行為」として、この事例の要点を分かりやすく説明しています。

 私は谷口さんとは面識もなく、テレビで時々、お見かけする程度ですが、大のラグビーファンであることはマスメディアから発信される情報を通じて存じ上げていました。

 その谷口さんによるFacebookの記事によると、トーマスさんは、マスコミ関与がなければHIV感染について自ら公表したかどうかという質問に「絶対に公表しなかった。ほかの誰にも関係がないことなので」と答えたそうです。

 この「ほかの誰にも関係のないこと」という点が重要ですね。他の疾病に関しても基本的にはそうだと思いますが、HIVに感染していることを、いちいち世間に明らかにしなければならないのか、その必要があるのか。

 ありません。これが大原則です。

 ただし、同じ記事の中では、英国のハリー王子のインスタグラム投稿も紹介されています。

 『ギャレス、君は圧倒的なレジェンドだ!HIV陽性だと共有することで多くの命を救い、また、HIVに感染していても強くたくましく生きられると身をもって示すことで、偏見を打ち砕いている』

 う~ん、こちらもその通り。HIV感染や性的少数者に対する差別や偏見が強く残る社会(トーマスさんのケースは、英国もまた、そうした差別や偏見が残る社会であることも示しています)では、自らのセクシャリティHIVステータスを開示することが、偏見や差別の解消につながり、多くの人の生命を救うという意味で、大きな価値を有してもいます。

 この2つの価値の間に立つと、マスメディアの「世の中の大方の人が知らない事実をスクープしたい」という功名心というか、スケベ根性というかも、意外な価値を持つことがあります。もちろん、罪深い所業となることもあります。

 ちょっと、話の風呂敷が大きくなりすぎましたか。軌道修正。

 谷口さんは、今回のラグビーW杯開催中に東京・原宿に開設されている「プライドハウス東京2019」についても『LGBTのアスリートや、その家族、友人、そして感染者や地元の参加者が、自分らしく過ごせる場所を提供し、次世代のLGBTの若者が安心して集えることを目指しています』と紹介しています。

 しかも、この施設には日本ラグビーフットボール協会も後援し、一般社団法人日本ラグビーフットボール選手会とプライドハウス東京の間では協定が結ばれていることにも言及されました。

 日本ラグビーフットボール協会理事でもある谷口さんのこうした情報発信もまた、社会に大きな影響と勇気を与えてくれるものなのかもしれません。

 参考までに付け加えておくと、国連合同エイズ計画(UNAIDS)とプライドハウス東京の間でも協力協定が締結されています。