トランプ政権の保健医療政策はどうなるのか ローリー・ギャレットさんの論評を一部紹介 (上)

 厚生労働省で国際保健(グローバルヘルス)を担当する方が、Facebookでトランプ次期政権がもたらす米国の医療政策の影響について、「グローバルヘルスのご意見番」(ということです)で米外交問題評議会のローリー・ギャレットさんによる論評を紹介していました。参考になります。ギャレットさんは「カミング・プレイグ」などの著書がある著名なライターであり、かなりずばずばと鋭い指摘をされる方のようですね。

 原文はこちら。

 トランプさんは選挙戦中、言いたい放題だった印象があるので、当然と言えば当然ですが、かなり厳しい評価です(しつこいようだけど当然かなあ)。勝敗の帰趨が明らかになった11月9日の日付で書かれたものなので、その後のトランプ氏のかなり軌道修正気味の言動までは盛り込まれていません。それだけに基本線が押さえられている印象も受けます。全部はとても訳しきれませんが、ところどころつまみ食いして、部分的日本語仮訳を試みました。参考までに紹介します。

 なお、日本語仮訳はあくまで私の拙い英語読解力に基づくものなので、訳し間違いや勘違い、了見違い、誤字脱字などが数多く含まれている(と思います)。該当部分の英文も付けておきますので、怪しいと感じられるところは、英文と比較してご判断いただければ幸いです。《》の中が仮訳で、そのすぐ後ろに該当部分の英文を載せてあります。その間の文章は単なる私の感想。では・・・。

 

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 《国際保健分野の主要プロジェクトの一つである米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)は、2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領が創設して以来、共和、民主両党の支持を受け、プログラムを拡大してきた。2016年度の予算は68億ドルに達している。PEPFAR継続に関しては、ヒラリー・クリントンドナルド・トランプもともに支持を表明している。PEPFARによって、世界中で抗レトロウイルス治療を受けられる人の数を2020年までに、米国の納税者のお金で2倍に増やすことについて尋ねられた際、トランプは「もちろん、それは必要だと私は考えているし、その実現を主導していきたいとも思っている」と答えた。しかし、Impact2016は、海外援助に対しトランプは好意的ではないと述べている》

One major global health program, the President’s Emergency Plan for AIDS Relief (PEPFAR) has enjoyed bipartisan support since its 2002 creation by President George W. Bush, and has expanded. Its fiscal year 2016 budget is $6.8 billion. Both Hillary Clinton and Donald Trump offered support for PEPFAR’s continued existence. Asked if PEPFAR should aim to double by 2020 the number of people worldwide who receive anti-HIV medicines with U.S. taxpayer support, Trump responded, "Yes, I believe so strongly in that, and we’re going to lead the way." Impact2016 notes, however, that Trump was not a fan of foreign assistance programs.

http://links.cfr.mkt5175.com/servlet/MailView?ms=NTI3MzA2NzIS1&r=MTUwMzkyODE1MjM5S0&j=MTA0NDI1MzcyMwS2&mt=1&rt=0

 

 少なくともPEPFARについては、反対はしていないようですね。

 

《トランプは米大統領選の立候補表明演説の中で「私たちを憎んでいるような国に対しては援助を打ち切るべきだ」と宣言し、その資金は「国内のインフラ投資・・・トンネル、道路、橋、学校などに向けるべきだ」と語っている》

Trump said in his speech announcing his presidential candidacy that the United States should "stop sending foreign aid to countries that hate us" and to spend the funds domestically to "invest in our infrastructure . . . our tunnels, roads, bridges, and schools."

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 選挙後の言動を見ていると、軌道修正発言も結構、伝えられ、政策や人事がどうなるのかまだ分かりません。副大統領になるペンス氏の意見が保健分野でもかなり反映されそうです。では、ペンス氏はどうなのかという点については、以下のように指摘しています。エイズ対策もちょっと困った展開になるかもしれません。

 

 《トランプ政権の副大統領となるインディアナ州知事、マイク・ペンスもPEPFARへの資金拠出を支持しているが、HIVオピオイド依存、女性のリプロダクティブヘルスなどの国内保健課題に関しては極めて保守的な立場をとっており、トランプ政権の国際保健政策に関してもペンスの影響力を懸念する声が保健関係者の間ではあがっている。インディアナ州知事、および米下院議員として、ペンスは胎児異常が認められる場合でも完全に中絶は禁止するなど、女性のリプロダクティブライツに関しては一貫して極右的政策を進めてきた。インディアナ州では超音波画像で小頭症が明らかな場合でも胎児の中絶を違法とする政策を支持してきた。知事としては、ミドルクラスの白人層の薬物使用により、インディアナ州を米国内で最も急激にHIV感染率が上昇した州にする政策をとってきた》

Trump’s running mate, Indiana Governor Mike Pence, also supported PEPFAR funding but had backed extremely conservative positions on domestic issues related to HIV, opioid abuse, and women’s reproductive health issues, leaving many in the health community to worry about his potential influence on global health policies in a Trump administration. Both as governor of Indiana and as a member of the House of Representatives, Pence consistently promoted very far-right policies on women’s reproductive rights, including a full ban on abortion in cases of demonstrated fetal abnormality. In Indiana, Pence supported a policy that would make it illegal to abort a fetus despite clear sonogram demonstration of microcephaly. As governor, Pence pushed health policies that are often credited with making Indiana the state with the fastest growing HIV incidence in the nation, driven by narcotics use among white middle-class residents of the state.

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 再びトランプ氏に戻ります。だんだん国内イシューに論点が移ってきたので、その部分は次回。

 

 《選挙キャンペーンは他の公衆衛生課題についても、トランプの政策がどのようなものになるかを示している。ワクチンは自閉症の原因になるかもしれないとトランプは述べた。主にメキシコからの不法移民の医療費を含め、公共サービスの費用は年間1130億ドルに達していると述べ、米国内の移民1100万人を追放すると約束している》

On other public health issues, the campaign offered some indications of what Trump’s policies might be like. As a candidate, Trump stated that vaccines may cause autism. Trump also said that illegal immigrants, predominantly from Mexico, were costing America $113 billion per year in public services, including hospitalization and health care—costs he vowed to eliminate by deporting eleven million immigrants now living in the United States.

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