冷えますね。本日は寒かったので、午前中に所用でちょっと近所の病院に寄ったあとは外出を控え、家で国連合同エイズ計画(UNAIDS)用語ガイドライン2015の日本語仮訳を細々と続けていました。
それにしても、翻訳というのは、うんざりするような作業が続きますね。誰に頼まれたわけでもないのに、何でこんなこと始めちゃったのかなあ・・・。
それでも時々、「あれ、これはどういうことなんだろう」と急に面白くなることがあります。たとえば、いま見直している「R」の項のリスク・コンペンセーション・・・。なんじゃ、こりゃ。
riskはまあ、だいたい分かるとして、 compensationはなんだっけ? ネットの辞書で調べてみると、「償い、賠償、代償、埋め合わせ」。リスクの埋め合わせって、菓子折と一緒に封筒に入れて・・・おっとっと、話が跳びすぎ。あっているかどうか分からないけれど、ガイドラインの説明部分を訳してみると、どうもこんなことのようです。参考までに英文もつけておくので、それはちょっと違うぞという方は、ご一報いただければ幸いです。
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risk compensation リスク・コンペンセーション、代償リスク
リスク・コンペンセーションは、個人がリスク認識の低下により、HIV感染のリスクを次第に増やしていく行動をとることを説明する際に使われる。たとえば、割礼手術はHIV感染を部分的に防ぐ効果があることから、手術を受けた男性が、もうHIVには感染しないと思い込み、コンドーム使用をやめてしまうかもしれない。また、治療が可能になったのだから、感染の防護は重要ではないと考える人もいるかもしれない。一定の予防効果を有する新たなツールが登場したときには、状況にあわせ、コンペンセーションを最小化するための効果的コミュニケーション戦略が必要になる。
risk compensation
The term risk compensation is used to describe a compensatory increase in behaviours carrying a risk of HIV exposure that occurs as a result of a reduced perception of personal risk. For example, because circumcision provides partial protection from HIV, a circumcised man may think that he can no longer acquire HIV and may stop using condoms consistently. Another would be the perception that protection from infection is less important because treatment is becoming more available. Tailored effective communication strategies aim to minimize risk compensation when new, partially protective prevention tools are introduced.
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なるほど、これはちょうど、いま心配していることの一つでもありました。「一定の予防効果を有する新たなツールが登場したときには、状況にあわせ、コンペンセーションを最小化するための効果的コミュニケーション戦略が必要になる」。例によって、根拠のない感想ですが、今年はこのあたりのことも頭の片隅に置きながら、いろいろな議論に対応していく場面が増えてきそうです(最近は、片隅に置いておくとすぐ忘れちゃうので、一応、書いておきましょう)。
リスクが減ったと思ったら、すぐ埋め合わせちゃうのが人の人たる所以と言いますか・・・。計算機のようにはいかないのよ。