レファレンスグループの参加者を募集 HIV Futures Japan

 

HIV陽性者の当事者参加型プロジェクト『HIV Futures Japan』がレファレンスグループのメンバーを募集しています。

 

参加要件は以下の通りです。

・日本国内在住のHIV陽性者

E-mailでのコミュニケーションが可能であること

・会議出席に伴う日当・旅費の支払のための必要な個人情報(氏名・住所等)を、当プロジェクト及び事務手続き担当者に開示可能であること

 

応募受付期間は531日(木)までです。

 

もう、あまり日数がありませんね。ほかの用事に追われているうちに締め切りが迫ってきてしまいました。申し訳ありません。ひとえに私の怠慢の結果であります。

したがって、あわただしくはありますが、ご関心がおありの方は『HIV Futures Japan』の公式サイトのお知らせ欄をクリックして募集要項をご覧ください。

futures-japan.jp

 

HIV Futures Japanプロジェクトは、HIV陽性者の「自分らしくより健康的な生活の実現」と「暮らしやすい社会環境づくり」を目的とする当事者参加型プロジェクトです。おもに、HIV陽性者を対象とした調査の企画・実施と、HIV陽性者のためのポータルサイトの運営を行っています。

現在、当プロジェクトでは、HIV陽性者から構成される「レファレンスグループ」のメンバーを募集しています。 「レファレンスグループ」には日本全国からHIV陽性者が集まり、当事者の視点からHIV/AIDSの予防・検査・医療・支援・人権など様々な視点について課題や意見を出し合うことで、次回の調査の参考にさせていただいております》

 

 参考までに、こちらは第2回ウェブ調査のときのバナー。

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バラ祭り 遠浅の海に 光騒ぐ

 日差しが強いですね。午後の砂浜は引き潮で広々としていました。風が涼しかったこともあって、すこぶる快適・・・

 

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 ようやくやってきたこの季節、裸足で海に入りたくなります。

 

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 場所も話も変わりますが、こちらは2日前、金曜日の鎌倉文学館。日差しの強さは変わりません。

 

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 バラ祭り開催中でした。

 

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 なかなか見事、と言いつつ・・・

 

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 高齢者は適当なところで木陰に避難。花より日陰であります。熱中症に気をつけようということで、ひと休み・・・ん?

 

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 芝生が目に染みるといいますか。この陰陽もなかなかいい感じであります。ま、近所にあることだし、うちの庭みたいなもんだから、鎌倉にお出での節はぜひお寄りください。ただいま特別展『明治、BUNGAKUクリエイターズ』開催中。なんと申しましょうか、♪キミたちがいて、ボクがいた~みたいな感じの好企画です(意味がよく分からん)。

 

 

 

 

 

新規感染を防ぐためのHIVワクチン研究の拡大を UNAIDSプレス声明

 517日はIDAHOTの日でしたが、翌18日はHIVワクチン啓発デーです。記念日が続き、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は2日連続でプレス声明を発表しました。

 HIVワクチンの開発はあまり期待できないから、抗レトロウイルス治療の普及で押し切っていこうといった主張をするお医者さんのご意見もしばしばお聞きすることがありますが、治療の普及をワクチン代わりにすることには少々、無理があるのではないかと思います。素人考えで私がそう思っていたわけではなく、909090ターゲット推進を盛んに強調するUNAIDSも実はそう考えているようですね。声明には次のように書かれています。

 「世界には現在3670万人のHIV陽性者が暮らしています。そのすべての人に生涯にわたって費用のかかる治療が必要とされているのですが、長期にわたってそれを支え続けることは難しいかもしれません。本当にエイズ終結させるには、効果的なHIVワクチンの開発と治癒を実現しなければなりません」

 だから言ったじゃないの・・・などと底意地の悪いことを言うつもりはありません。多くのHIV陽性者の長期生存を可能にしている抗レトロウイルス治療の普及はもちろん大切、ワクチンの開発も大切、そして治癒の実現も大切・・・ということで、研究も複合的、重層的に進めていく必要があります。もちろん、重複は避けつつという効率化の視点に立ったうえでの話ですが、あれも無駄、これは無理といった調子で効率化のみを先行させる発想も危険です。

 多少の無駄(と一見すると見えてしまうもの)も包含しつつ、研究陣のブレークスルーを期待しましょう。

 声明は最後にこう指摘しています。

 「ワクチン研究への投資を拡大し、資金源が多様になり、世界中から優秀な科学者を引き付けることができれば、HIVワクチンは現実のものになるだろう」

 ということはつまり、ワクチン研究にはあまり投資が回らず、資金は限られ、したがって優秀な科学者も離れていってしまう・・・といった危惧も現在はあるということでしょうか。そうじゃないとは思うけど。

 

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新規感染を防ぐためのHIVワクチン研究の拡大をUNAIDSが要請

  国連合同エイズ計画(UNAIDS)プレス声明

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/pressreleaseandstatementarchive/2018/may/hiv-vaccine-awareness-day

 

ジュネーブ 2018517日 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は518日のHIVワクチン啓発デーに際し、HIV感染の高い予防効果を持つワクチン開発に向けて研究と投資を拡大するよう呼びかけている。2016年には年間で約180万人が新たにHIVに感染している。新規感染者数はここ数年、減少傾向にあるとはいえ、2020年までに年間の新規感染者数を50万人以下に抑えるというUNAIDSの高速対応目標からは大きく外れている。

 「新規HIV感染の減少スピードは十分なものではなく、新たな感染を防ぐことが現在の世界的優先課題となっています」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「世界には現在3670万人のHIV陽性者が暮らしています。そのすべての人に生涯にわたって費用のかかる治療が必要とされているのですが、長期にわたってそれを支え続けることは難しいかもしれません。本当にエイズ終結させるには、効果的なHIVワクチンの開発と治癒を実現しなければなりません」

 2017年半ばの段階で、世界のHIV陽性者3670万人の半分以上(2090万人)が抗レトロウイルス治療を受け、体の状態を良好に保って生きている。ただし、すべてのHIV陽性者が治療を受けられるようにするには、今後10年でさらに大きな努力が必要になる。治癒または治療ワクチンがない限り、何百、何千万もの人が生涯にわたって治療を続けなければならないのだ。

 この数年で期待の持てる進展があり、現在は4つの大規模臨床試験が進められている。免疫付与に向けた革新的なアプローチが動物実験では大きな成果を上げ、極めて広い範囲で有効となる中和抗体が見つかっている。人体にも効果が確認できるよう研究開発を進めていけば、いずれ年1回の注射でHIV感染を防げるようになることも期待できる。

 安全で効果的なワクチンは世界を大きく変える可能性を秘めている。どこにでもあり、何百万という人の命を奪い、数えきれない人を生涯にわたる後遺症で苦しめてきた感染症が、きわめてまれにしか発生しない疾病へと変わっていくのだ。天然痘は根絶されている。2017年にはポリオの症例は17件だった。2016年には汎米保健機関が麻疹は南北アメリカ地域から排除されたと宣言した。

効果的で持続性が高く、手ごろな価格で受けられる安全なHIVワクチンが開発されれば、エイズ終結への道は大きく前進する。だが、過去10年のワクチン研究への投資は年間9億ドル前後で頭打ちの状態が続いている。エイズ対策に必要な資金の5%以下なのだ。ワクチン研究への投資を拡大し、資金源が多様になり、世界中から優秀な科学者を引き付けることができれば、HIVワクチンは現実のものになるだろう。

 

 

Press statement

UNAIDS urges a scaling up of HIV vaccine research to stop new infections

 

GENEVA, 17 May 2018—On HIV Vaccine Awareness Day, 18 May, UNAIDS is calling for an increase in research and investment to find an effective vaccine to protect people against HIV and stop new HIV infections. In 2016, around 1.8 million people were newly infected with HIV and although the number of new infections has declined in recent years, the world is still far from achieving the UNAIDS Fast-Track Target of reducing new HIV infections to fewer than 500 000 by 2020.

New HIV infections are not declining fast enough and stopping infections must become a global priority,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “There are 36.7 million people living with HIV today, all in need of costly treatment for life, which will be difficult to sustain over the long term. To truly end AIDS, it is essential to find an effective HIV vaccine and a cure.”

In mid-2017, more than half (20.9 million) of the 36.7 million people living with HIV had access to antiretroviral medicines to keep them alive and well. Over the next decade, efforts will be scaled up so that all people living with HIV can access the life-saving treatment. Without a cure or a therapeutic vaccine, millions of people will need to be sustained on lifelong treatment.

Promising steps have been made in recent years, with four large-scale trials currently under way and exciting developments in the pipeline. Innovative approaches to immunization are showing great promise in animal models and an ever-increasing array of highly potent broadly neutralizing antibodies have been discovered and can be engineered to persist in the human body so that we may one day be able to prevent HIV infection with a single injection each year.

Safe and effective vaccines have the potential to change the world. Some infectious diseases that were once commonplace, killing millions and leaving countless people with lifelong disabilities, have become rare. Smallpox has been eradicated, only 17 people developed polio in 2017 and in 2016 the Pan American Health Organization declared that measles had been eliminated from the Americas.

An effective, durable, affordable and safe vaccine for HIV would significantly advance efforts to end AIDS. For the past decade, investments have remained steady, at around US$ 900 million per year, which is less than 5% of the total resources needed for the AIDS response. By scaling up investments in HIV vaccine research, diversifying funding and attracting the best scientists from around the world, a vaccine for HIV could become a reality.

 

『誰も置き去りにしないためのパートナーシップを』 UNAIDSプレス声明

 517日の『IDAHOT(国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日)』にあわせ、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が16日付けでプレス声明を発表しました。その日本語仮訳です。

 世界保健機関WHO)が1990517日に同性愛を国際疾病分類から外したことにちなみ2005年からこの日が、性的少数者に対するフォビア(嫌悪)に反対する記念日となりました。当時の略称は『IDHO』でしたが、現在はTトランスジェンダー)が加わり『IDAHOT』となっています。

 UNAIDSがこの記念日に合わせて声明を発表するのは『ゲイ男性など男性とセックスをする男性、およびトランスジェンダーの女性は世界各地でHIVに最も大きく影響を受けている人口集団のひとつ』となっているからであり、性的多様性の尊重という課題を共有しない限り、治療の普及や陽性者への支援も含めたHIV感染の予防対策は成立しないからです。声明には次のような指摘もあります。

 『UNAIDSの調査に答えた100カ国のうち40%以上が同性間の性関係を犯罪とみなしている。ジェンダー性的指向が犯罪として扱われれば、人びとは隠れ、必要不可欠な保健、社会サービスからも遠ざかり、健康状態の悪化やホームレス状態に陥りやすくなる』

 

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www.unaids.org

 

誰も置き去りにしないためのパートナーシップを強めよう UNAIDSが呼びかけ

 

ジュネーブ 2018516日 国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日(IDAHOT)に際し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーインターセックスLGBTI)の人たちとその家族、HIV陽性者、HIVに影響を受けている人たち、差別に直面している人たちを支えるためのパートナーシップを強めるよう求める。

 「性的少数者へのスティグマ、差別、社会的、身体的暴力は彼らが保健サービスを利用することを妨げます」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「健康への権利はジェンダー性的指向に関わりなく、すべての人にあります。だからこそ、誰に対しても、どんな場所でも、差別はゼロでなければならないのです」

 ゲイ男性および他の男性とセックスをする男性、トランスジェンダーの女性は世界のどこでも、HIVに最も大きく影響を受けている人口集団のひとつである。

 UNAIDSの調査に答えた100カ国のうち40%以上が同性間の性関係を犯罪とみなしている。ジェンダー性的指向が犯罪として扱われれば、人びとは隠れ、必要不可欠な保健、社会サービスからも遠ざかり、健康状態の悪化やホームレス状態に陥りやすくなる。

 エイズ終結には、誰もが差別を心配することなく、コンドームやPrEP、質の高い治療とケアなどのHIV予防技術を利用できるようにしなければならない。UNウィメンと国連開発計画、UNAIDSは、世界HIV陽性者ネットワークとともに、あらゆるかたちのHIVに関連したスティグマと差別の解消に取り組んでいる。このイニシアティブは、多分野からの迅速な支援と市民社会のリーダーシップが必要であり、公衆衛生上の脅威としてのエイズ流行を2030年までに終結させるという締め切りのついた約束を国連加盟国が果たすことを助けるだろう。

 誰も置き去りにしないという約束を果たすには、社会的に最も弱い立場の人びとを支援するための政治的な関与を強め、保健と福祉への投資を増やさなければならない。

 毎年517日のIDAHOTは、世界各地で性的多様性とジェンダーの多様性を称揚する記念日で、今年のテーマは「LGBTIの人びととその家族の尊重に向けて連帯しよう」となっている。

 

 

 

UNAIDS calls for strengthened partnerships to leave no one behind

GENEVA, 16 May 2018—On the International Day against Homophobia, Transphobia and Biphobia (IDAHOT), UNAIDS is calling for strengthened partnerships to support lesbian, gay, bisexual, transgender and intersex (LGBTI) people and their families living with or affected by HIV or facing discrimination.

Stigma, discrimination and social and physical violence against sexual and gender minorities prevent them from accessing health services,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “Everyone has the right to health, no matter their gender or sexual orientation. For that, we need zero discrimination for everyone, everywhere.”

Gay men and other men who have sex with men and transgender women are among the populations most affected by HIV worldwide.

More than 40% of the 100 countries responding to UNAIDS criminalize same-sex relationships. Criminalizing people because of their gender or sexual orientation drives people underground and out of reach of essential health and social services, making them vulnerable to poor health and homelessness.

To end AIDS, it is essential to ensure that people can access HIV prevention technologies, including condoms and PrEP, and quality HIV treatment and care free from discrimination. UN Women, the United Nations Development Programme and UNAIDS are working with the Global Network of People Living with HIV to end all forms of HIV-related stigma and discrimination. The initiative will require rapid multisectoral support and civil society leadership and will contribute to achieving the time-bound commitments of United Nations Member States to end AIDS as a public health threat by 2030.

Increasing political commitment and investments for the health and well-being of some of the most vulnerable people in society will help to ensure that no one is left behind.

IDAHOT, a worldwide celebration of sexual and gender diversity, is commemorated annually on 17 May. This year’s theme is alliances for solidarity to bring respect for LGBTI people and their families.

コンドームというメッセージ媒体 Oneside/Noside 13

 

 現代性教育研究ジャーナルの5月号に掲載された連載コラム One Side/No Sideの13回目です。7ページに掲載されていますので、お読みいただければ幸いです。
 

www.jase.faje.or.jp

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 オリンピックの選手村で『なぜコンドームを配るのか』という前回のテーマの続編・・・というか前回は尻切れトンボの印象もあったので、改めて「なぜ」の部分にフォーカスしました。
 国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、2008年の北京五輪の選手村では『良質のコンドーム10万個、およびHIV予防や差別との闘いに理解を求めるリーフレット5万枚』をパッケージにして配布しています。つまり、コンドーム2個とリーフレット1枚のパッケージが5万セット用意されたということになりますね。
 《そのコンドームは選手村で使用することも可能だろうし、お土産として持ち帰り、それぞれの国の若者に安全な性行動について、話をするきっかけに利用することもできる。五輪アスリートが話をすれば、そのメッセージは少年少女に説得力をもって入っていくのではないか》
 来たるべき東京五輪でもぜひ継承し、お土産として自慢して回りたくなるよう、パッケージデザインやリーフレットのデザインも工夫していただきたいと思います。

 

『社会的保護:エイズ終結に向けた高速対応』 エイズと社会ウェブ版333

国連合同エイズ計画(UNAIDS)が今年42526日にジュネーブで『エイズ終結に向けた社会的保護の高速対応に関する国際会議』を開催し、報告書『社会的保護:エイズ終結に向けた高速対応』を発表しました。UNAIDSの公式サイトに掲載されたそのFeature Storyの日本語仮訳です。

タイトルにも出てくる「social protection」は最初、「社会保障」と訳していたのですが、ひとあたり訳し終えて、出版物紹介欄のこの報告書の掲載ページを念のためにチェックすると、最初の紹介文の末尾にこう書かれていました。

 

It does not focus on social security and labour market polices.

『それ(報告書)はソーシャルセキュリティと労働市場政策のみに焦点を当てているわけではない』

 

あらら。social securityも普段は社会保障と訳していたので、なんだか変なことになってしまいました。大慌てで『social protection』については、訳語を『社会的保護』に変更しました。ただし、座りが悪いというか、どうもしっくりきません。

参考までに、その直前の文章は以下のようになっています。

 

It provides guidance for leveraging and scaling up social protection—in particular, social safety nets, financial incentives and social services—towards achieving the goal of ending AIDS.

『それ(報告書)は、エイズ終結というゴールの達成に向けて、社会的保護策 とりわけ、社会的セーフティネット、奨励金、社会サービス をテコとして活用し、拡大していくためのガイダンス(手引き)となっています』

 

カタカナを多用してごまかしていますが、それでも訳し間違いがありそうな嫌な予感がします。このあたりは私の知識の底の浅さを露呈しまくっていると思うので、社会保障分野に詳しい方から「それはね、こういうことですよ」と、やさしくご指摘いただければ幸いです。

・・・ということで、以下の仮訳も、あてにならない部分が多々あるという前提に立って、原文を照合しつつお読みください。

 

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エイズ終結に向けた社会的保護の整備を進めるには何が必要か

   201859日 UNAIDS Feature Story

http://www.unaids.org/en/resources/presscentre/featurestories/2018/may/fast-track-social-protection-to-end-aids

 

 2016年に開かれた「エイズ終結に関する国連ハイレベル会合」で、加盟国は2030年までのエイズ流行終結を目指すことに合意した。そのターゲットの一つは、各国が社会的保護および児童保護の制度を強化することであり、2020年までにHIV陽性者とHIV感染の高いリスクに直面している人、流行に影響を受けている人の75%が、HIVに配慮した社会的保護の恩恵を受けられるようにする必要がある。このターゲットは人権に基づくものだ。目標を達成するには、すべての人権を促進、擁護、実現し、HIV陽性者とHIV感染の高いリスクに直面している人、流行に影響を受けている人の尊厳を守らなければならない。

社会的保護のプログラムがいかに貧しい人たち、社会から排除された人たちのニーズに対応し、HIV陽性者とHIV感染の高いリスクに直面している人、流行に影響を受けている人に利益をもたらしているかを示すエビデンスはますます増えている。問題はエイズ対策が社会的保護に注意を向けるべきか否かということではなく、貧困と不平等を解消するための運動がエイズ終結に向けて最大限の効果を上げられるようにするにはどのような資金活用と協力関係が必要かということなのだ。

2017年にUNAIDSの国家複合政策指標(NCPI)に回答した127カ国のうち109カ国(86%)は2016年時点で社会保護の戦略や政策、枠組みが承認され、99カ国(78%)はそのためのプログラムを実施している。計85カ国はそうした戦略が何らかのかたちでHIVに配慮していると述べている。社会的保護戦略の調整メカニズムを有する87カ国の半数以上(47カ国)が、その中に国のエイズプログラムを含めている。しかし、社会的保護プログラムについて全面的にHIVへの配慮がなされていると回答した国は12カ国にとどまっていた。

社会的保護の高速対応を目指し、UNAIDSは最近、国の社会的保護、児童保護システムの強化に関する会議を開催した。会議は、貧困と格差解消を目指した社会活動と他の運動との連携強化をはかる;社会的保護活動の充実;HIVと食糧安全保障・栄養に関するプログラムの充実の3つの課題に重点が置かれた。

「社会的保護を通じてHIV陽性者、HIV感染の高いリスクに直面している人、流行に影響を受けている人が抱える社会的脆弱性を解消するには、保健と教育、コミュニティシステムの連携をより強化する必要があります」とUNAIDSのティム・マルチノウ事務局次長はいう。

 この会議はUNAIDSの報告書『社会的保護:エイズ終結に向けた高速対応』の発表の場でもあった。報告書は、HIVの流行の異なる状況、および異なる人口集団ごとに有効な対策を拡大していくためのガイダンス(手引き)を提供している。また、政府やHIV陽性者、HIVに影響を受けている人たち、政策策定者、その他の関係者に対し、エイズ終結に向けてHIVを社会的保護などの貧困や格差解消プログラムに統合していくためのガイダンスを提供するものでもある。

 「物質的、心情的な面で生活が改善しなければ、エイズの流行を終結することはできないということは忘れてはならない」とウクライナHIV陽性者ネットワークのデニス・ドミトリエフはいう。

 エイズ終結に向けた社会的保護の高速対応にかんする国際会議は42526日、スイスのジュネーブで開かれた。

 

 

 

What needs to be done to Fast-Track social protection to end AIDS?

09 May 2018

In 2016, Member States agreed a set of targets at the United Nations High-Level Meeting on Ending AIDS to be met to put the world on course to end the AIDS epidemic by 2030. One of those targets was to strengthen national social and child protection systems to ensure that, by 2020, 75% of people living with, at risk of or affected by HIV benefit from HIV-sensitive social protection. The target is human rights-based. It feeds into and benefits from promoting, protecting and fulfilling all human rights and the dignity of all people living with, at risk of or affected by HIV.

Evidence of how social protection programmes meet the needs of people who are poor and excluded and benefit people living with, at risk of or affected by HIV is increasing. The question is not whether the AIDS response should increase attention to social protection, but how best to leverage resources and partnerships of movements working on ending poverty and inequality to work effectively towards ending AIDS.

Of 127 countries reporting in the UNAIDS National Composite Policy Index in 2017, 109 (86%) stated that they had an approved social protection strategy, policy or framework in 2016, and 99 of those countries (78%) were implementing those programmes. A total of 85 countries stated that their strategies were HIV-sensitive to at least some extent. More than half (47) of the 87 countries with a coordinating mechanism for their social protection strategy have included their national AIDS programme in that structure. However, only 12 countries reported that their social protection strategies were fully HIV-sensitive.

To step up efforts to get social protection on the Fast-Track, UNAIDS recently held a conference at which the participants heard about how to strengthen national social and child protection systems. The conference focused on three objectives: strengthening the links with social and other movements for ending poverty and inequality; intensifying action on social protection; and reinvigorating programming for HIV, food security and nutrition.

Stronger linkages are required across health, education and community systems to reduce the vulnerability of people living with, at risk of and affected by HIV through social protection services,” said Tim Martineau, UNAIDS Deputy Executive Director, Programme, a.i.

The event also saw the launch of a new UNAIDS report, Social protection: a Fast-Track commitment to end AIDS. The report provides guidance on how to scale up what works in the context of different HIV epidemics and for different populations. It also provides guidance to governments, people living with or affected by HIV, policy-makers and other stakeholders on how to intensify the integration of HIV with social protection and other programmes for ending poverty and inequality towards ending AIDS.

We must remember that without improving the material and emotional well-being of people, we cannot end the AIDS epidemic,” said Denys Dmytriiev, from the All Ukrainian Network of People Living with HIV.

The International Conference on Fast-Tracking Social Protection to End AIDS was held in Geneva, Switzerland, on 25 and 26 April.

 

『エイズは(いまなお)政治的課題である』 IAS年次書簡日本語仮訳版 エイズと社会ウェッブ版332

 国際エイズ学会(IAS)の2018年(つまり今年の)年次書簡『AIDS IS (STILL) POLITICAL』の日本語仮訳『エイズは(いまなお)政治的課題である』がPDF版で、API-Netエイズ予防情報ネット)に掲載されました。公益財団法人エイズ予防財団が翻訳に協力しています。

http://api-net.jfap.or.jp/status/world.html#a20180510

 

 実はこの書簡については、当ブログでも42日付けで『エイズと社会ウェブ版327』として紹介しています。その時のタイトルは『エイズは(いまなお)政治課題である』でしたが日本語仮訳版ではPOLITICALが「政治的課題」となっています。種明かしをすれば、下訳を不肖・私が自発的というか勝手に作成し、それ土台にしてIASの方に手を入れていただきました。末尾には『本仮訳は、 2018 4 月に公表された 国際エイズ学会( IAS )年次書簡 2018 を仮訳したものです。 ご利用にあたっては、原文もご確認ください』という但し書きがついています。原文はこちらです。

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 http://www.iasociety.org/Who-we-are/About-theIAS/Annual-Letter-2018

 原文の確認、くれぐれもお願いします。

 

 ということで、私も一丁噛みしてます、という自慢にもならないことをさりげなく(ていうかぁ、むしろ露骨に)アピールしたので、もう後は42日のブログを読んでください・・・おっと、これではあまりに愛想がありませんね。

42日のブログでは紹介しなかった部分を少し引用しておきましょう。世界の現状を見渡すと、2030年のエイズ流行終結に向けて達成軌道に乗っているところもあれば、新規感染は減るどころか、逆に激しく増えているところもある。導入部で、なんでこうなるの!? と問題提起を行い、『理由はひとつ:政治』という小見出しを掲げて本論に入る部分のすぐ後です。

 『資金が限られている国々でも、国として強い意思をもって取り組み、国際的な支援が充実していれば、流行が公衆衛生上の脅威となり得る状況を回避することができます。エイズに取り組む政治的意思が確固たるものであれば、科学の成果を、対策に直結させることができるのです。

 しかし、多くの場合、イデオロギーが先行して、肝心のHIV(公衆衛生全般)対策が遅れています。頻繁なドナーの変更、犯罪かのような取り扱い、非科学的な公衆衛生プログラムの採用といった有害ともいえる要素が、避けることのできない健康状態の悪化をもたらし、多くの国や地域でエイズ終結が遠のいています』

 かなり厳しい現状認識ですね。タイトルの(いまなお)の部分は赤い文字で強調されています。書簡はここからどう展開していくのか。せっかく日本語仮訳まで作ったので、ぜひお読みください(と勝手にIASに成り代わってお願いします)。