プル―デンス・マベレ賞を創設 エイズと社会ウェブ版331

今年7月にオランダのアムステルダムで開かれる国際エイズ会議(AIDS2018)の公式サイトでプルーデンス・マベレ賞の創設が発表されました。昨年7月に死去した南アフリカの女性HIV陽性者、プルーデンス・マベレさんの業績をたたえ、新設された賞ですね。対象はマベレさんの価値と精神を受け継ぐ女性もしくは女性を自認する人となっています。

 http://www.aids2018.org/

 日本ではあまりなじみのない方なので、実は私も最初はPrudence Mabeleさんの日本語表記が分からず、メイベルさんかな?などと勝手に想像していました。調子に乗ってノーベル賞ならぬメイベル賞などと、くだらないダジャレまで言いはじめて、こうなると、おじさんに対する風当たりがことのほか強い時期だけに、またまたひんしゅくを買いそうですね(というか、書いた時点でもう買っているよ)。

 マベレさんという表記は、200911月に発表された国連合同エイズ計画(UNAIDS)の年次報告書『OUTLOOK Report2010』の日本語仮訳PDF版で知りました。API-Netに掲載されています。

 http://api-net.jfap.or.jp/status/pdf/outlook2010.pdf

 この年のUNAIDSのレポートは、硬めの報告書と雑誌スタイルの一般向け報告書の2種類に分かれており、雑誌スタイルの方の表紙がマベレさんです。

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 中を見ると、1821ページには『人生の1日。』というマベレさんの特集記事も掲載されています。そのごく一部ですが、日本語仮訳伴から紹介しておきましょう。

 

自らがHIVに感染していることを公表した南アフリカで最初の黒人女性 1990年に感染診断を受け、1992年にその事実を公表した。彼女がそうしたのは、HIVにまつわる沈黙 スティグマにうんざりしたから。また、先例となり、他のHIV 陽性の女性にも自らが感染していることを公表し、そのことについて、愛する人々と話し合ったり、恥ずかしいと思うことなく、治 療を受け、充実した人生を送るよう働き掛けたかったから』

 

 もちろん、カミングアウトするかどうかは、本人が自らの気持ちや立場を考え、慎重に判断するというのが大前提です。他の何かのためにするものではありません。それでも、自ら先例となる人の功績も、そしておそらくは試練も、決して小さなものではありません・・・私は多分その当事者ではないので、断言はできないけれど、小さなものではないと思います。

 

 第1回プルーデンス・マベレ賞は現在、候補者の推薦を受け付け中で、締め切りは514日となっています。あまり時間がありませんが、ネットで推薦ができるようです。

『人生の1日。』の引用と一部重複してしまいますが、AIDS2018のサイトによると、マベレさんは1992年に、南アフリカの女性として最初にHIV陽性者であることを明らかにし、女性およびHIV陽性者の権利擁護運動を主導してきた著名なアクティビストです。抗レトロウイルス治療へのアクセスを求めて活動する治療行動キャンペーン(TAC)の創設メンバーであり、陽性女性ネットワークの創設者でもあります。

 この賞はフォード財団とオープンソサエティ財団からの基金により、国際エイズ学会(IAS)と南アフリカ陽性女性ネットワークが協力して創設しました。授賞式は隔年開催の国際エイズ会議のハイレベルセッションで行われるということなので、2年に1度、選ばれるわけですね。

 

推薦基準は以下のようになっています。

 ・HIVフェミニズムジェンダー、リプロダクティブ・ジャスティスに深くかか    わってきた女性または女性を自認する人。

 ・地域は問わない。

 ・年齢制限はなく、新進の若いリーダーがとくに歓迎される。

 ・推薦は英語、フランス語またはスペイン語で行う

 ・マベレさんが体現してきた以下の価値にふさわしい人物

-革新性;メイベルさんが生涯を通して示した革新性にふさわしい創造的な活動

-忍耐力;実績を達成に示した不屈の努力

-社会正義;活動、私生活の両面でジェンダーおよび弱い立場の人たちの社会正義                 の実現に寄与 

依存をめぐる情報 TOKIO会見TV視聴記 エイズと社会ウェブ版330

 起訴猶予となった山口達也さんを除くTOKIOのメンバー4人が昨日、記者会見を行い、多くのメディアが報じています。テレビは長時間にわたって会見の中継を行い、私もチャンネルをカチャカチャと切り替えながら、ついつい見続けてしまいました。

 これは個人的な想像に過ぎませんが、芸能界というのは記者会見における危機管理の知識と経験を十分に蓄積し、そうした経験と知識を実践の場で活用(ごくまれには悪用)する機会も多い業界ではないかと思います。したがって、昨日の会見における4人のメンバーの言動についても、自らの心情を正直に吐露されていたのだろうなあと思う半面、ここはこう答えるといった組織または個人としての会見の定石はきちんと踏まえたうえで臨んでいたのかもしれないという感想もまた持ちました。

 そうした定石的な対応の「成果」のひとつなのかもしれませんが、アルコール依存症についての取り上げ方(あるいは会見の中で表明されたTOKIOメンバーの受け止め方)が気になりました。精神論に傾きがちで、このままでは問題とされている事態にしっかり対応できないのではないかという漠然とした感想だったのですが、それなりに必要な言及はなされていた面もあるし、どうもうまくその違和感を説明できない。

依存症の専門的な知識に詳しいわけではないし、不用意に無知を露呈するよりも、黙っていた方がいいかなあ、でも、依存症への対応はHIV/エイズ対策の重要な課題の一つであり、黙っているのもなんだか・・・。

そんなもどかしい思いでいたら、女優の東ちづるさんがFacebookで、厚労省サイトの次のようなページを紹介しています。 

www.mhlw.go.jp

 

東さんとは、aktaで名刺を交わしたか交わさなかったか程度、そして自己紹介的なあいさつを(たぶん)したと思う程度の面識しかない一ファンに過ぎませんが、Facebookで拝見する情報提供力と即時の対応能力は素晴らしいですね。

厚労省のページには、依存症って何? どこが問題? やめられないのはどうして? 治りますか? 周りに依存症かもという人がいたら? といったことがQ&A形式でわかりやすく説明されています。 

 

《依存症は、欲求をコントロールできなくなる病気です。しかし本人は自覚がなく気づかないため、何度も気持ちだけでコントロールしようとして失敗します。

そのため、周囲がいくら根性論で本人を責めても、問題は解決しません。叱責や処罰だけでは、むしろ状況を悪化させてしまいます。

本人が回復の必要性を自覚するまでには時間がかかることも多いため、まずは、周囲の方が専門の機関に相談して、適切なサポートのしかたを知ることから始めましょう》(周りに依存症かも・・・という人がいたらどうすればいいの? から)

 

そうかあ。『勇気をもって、専門の機関に相談しましょう!』というアドバイスもあります。

 

 《依存症は 脳の病気であるため、家族などの周囲の人たちでなんとかしようとしても、問題は解決しません。適切な接し方を知っていないと、状況をますますこじらせてしまうこともあります。

本人に対してどのような対応をすればいいのか、家族自身のストレスを軽減するにはどうすればいいのかなど、きちんとした知識を得ることは非常に大切です。

そこで、自助グループや家族会に参加することや、地域にある保健所や精神保健福祉センターといった専門の行政機関に相談する方法があります》

 

どんな相談機関があるのか。それもこちらのページで分かります。

www.mhlw.go.jp

 

こうした情報はふだん、なかなか見る人もいないのでしょうが、困ったとき、藁をもつかむ思いで情報がほしいと思っているときには助かります。専門的な研究の成果を踏まえ、必要な情報を分かりやすくまとめて公開しておくことは、社会的な(そして社会を構成する一人一人の個人にとっての)危機対応策の土台です。厚労省、グッジョブだと思います。

ということで、少し厚労省を持ち上げておいて、最後に話をHIV/エイズ対策に結び付けていきましょう。

 2年前の第23AIDS文化フォーラムin横浜ではオープニングイベントで「依存」が取り上げられました。コミュニティアクションのFeatures欄でも報告したのでご覧ください。

www.ca-aids.jp

 

《セッションは司会のフォーラム運営委員、岩室紳也医師が紹介した熊谷さんの著書の次のような言葉を軸に展開していった。

「自立は、依存先を増やすこと」

「希望は、絶望をわかちあうこと」》

 

 AIDS文化フォーラムin横浜はその後も「依存」について継続的に取り上げています。今年8月35日の第25AIDS文化フォーラムin横浜でも、初日の3日午後、精神科医・松本俊彦先生の講演『ドラッグから見えてくる若者のリアル』、引き続いて松本先生も交えた対談『依存の反対は つながり・絆・居場所』が予定されています。

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 詳しくは横浜AIDS文化フォーラムin横浜の新サイトでご覧ください。

abf-yokohama.org

海の風 山の風にも緑染む

 本日は連休後半に備え、朝食用の食パン買い出しという重要任務を果たすべく、老夫婦連れだって北鎌倉大遠征を敢行。せっかくここまで来たのなら・・・ということで、ブーンベーカリーの山ノ内食パンをどっさり抱え込む前に、新緑の美しい円覚寺にも寄ってきました。帰源院は文豪・夏目漱石が明治27年の暮れから翌281月まで、参禅のために滞在したという円覚寺塔頭です。急な坂道をあがると、さらに・・・。

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 石段の先の山門は閉ざされているようですね。入っていいものかどうか、逡巡していると、庭仕事をしていた高齢の女性が上から声をかけてくださいました。脇の道を上がっていくと駐車場に出るので、そこから庭に入れますよ。

 

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  お言葉に甘えて・・・。「どこから見えたの?」。庭で少しお話をしました。ご住職のお母さんのようですね。

 

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 「由比ガ浜です」

 「あら、私もよく海を見に行きました・・・」

 福岡県の海辺の町のご出身で、望郷の念もあったのでしょうか。問わず語りのようにして、昔の話も少しだけ。

 

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 境内の石碑は夏目漱石の句を先々代のご住職が書かれたということです。

「仏性は白き桔梗にこそあらめ」

 桔梗は秋の花ですが、新緑のお庭にはシャクナゲツツジが見事でした。

  

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 帰りは門の脇のくぐり戸から出られますよと教えていただきました。お言葉に甘えて石段を下り、再び円覚寺山門の前に戻る。

 

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 左側の白い塀は松嶺院。細い坂道を上がっていくと開高健田中絹代池島信平オウム真理教事件の被害者の坂本弁護士といった方々のお墓があります。開高健さんのお墓の前にはトリスの缶入りハイボールサントリーのウィスキーの小瓶が備えてありました。

 

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 見下ろせば、新緑の境内。絶景ですね。墓地内は撮影禁止なので、その少し手前から山門の周辺を一枚。

陽が落ちて 夏日の浜に くしゃみひとつ

 5月最初の一日は、4月の最後の日よりもさらに暑くなりました。テレビのニュースを見ていたらなんと、30度を超えた真夏日シティもあったそうです。ま、年寄りには寒いより助かるけど・・・。

 

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 夕暮れの由比ガ浜は予想していたほどの人ではありませんね。連休谷間の平日だったせいでしょうか。お昼時の小町通りは大変な人で、食事のできるところを探すのにもひと苦労だったのにね。この季節、夕方の引き足は早いのかもしれません。

 

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 日が沈んできました。材木座側からの眺めです。

  

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鎌倉は古くからの漁業基地でもあるので、浜の手前には漁船や漁具も置いてあります。

 

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 ほんの少しの時間なのに、歩いて由比ガ浜に戻るうちに日は山の端に隠れ、空の色が刻々と変化します。冷えてきたから、もう帰るとするか。それにしても、なんでこう寒さに弱くなっちゃったのかなあ。

 

エイズ動向委員会の移行期を読む TOP-HAT News 第116号(2018年4月)

 

 

  TOP-HAT Newsの第116号(2018年4月号)です。巻頭には厚労省エイズ動向委員会を取り上げました。3月16日開催の委員会から、国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨エイズ先端医療研究部長が委員長になっています。

 前任の岩本愛吉・日本医療開発機構戦略推進部長は2005年8月から12年間にわたって委員長でした。実は岩本さんが就任した当時、国内のHIV感染報告は男性同性間の性感染による報告が(あくまで報告ベースですが)急増している時期でした。ついに日本でも局限流行期に移行したかというような印象を持った記憶があります。
 それが数年の間に(しつこいようですが、あくまで報告ベースでは)、横ばいの状況へと転化し、ここ10年は何とか感染報告の拡大を抑えてきました。国内のHIV対策はこの間、劇的な成果を上げていたのではないか(と少なくとも私は思います)。しかし、今後もその成果が持続するとは限りません。何が成果をもたらしたのか。その分析は対策を進めていくうえでも重要な宿題でしょう。
 もちろん、これは岩本さんが個人であげた成果というわけではなく、さまざまな立場の人やグループの貢献が積み重ねられた結果であるとは思います。それでも、ゲイアクティビストから「ラブ吉先生」の愛称で親しまれ、同時に研究者として国際的にも信望の厚い岩本さんが長く動向委員会のトップを務め、わが国の流行動向の把握と分析にあたる立場にあったことの意味は小さくない(とも私は思っています)。
 その成果を白阪さんがどう継承し、発展させていくか・・・ということで、タイトルはあえて「動向委員会の移行期を読む」としました。
 新規感染報告が横ばいから減少へと明確に転じていかない。したがって、いまのままの対策で満足してはいけない・・・という指摘はしばしばなされてきましたし、私もそう思う一人です。ただし、そうした指摘がこれまでコミュニティベースで積み上げてきた成果を黙殺したり、つぶしたりしていく動きに転じるようなことが、仮にあるとすると、これは大きな危機といわなければなりません。

 

 

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        第116号(20184月)

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TOP-HAT News特定非営利活動法人エイズソサエティ研究会議が東京都の委託を受けて発行するHIV/エイズ啓発マガジンです。企業、教育機関(大学、専門学校の事務局部門)をはじめ、HIV/エイズ対策や保健分野の社会貢献事業に関心をお持ちの方にエイズに関する情報を幅広く提供することを目指しています。

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エイズ&ソサエティ研究会議 TOP-HAT News編集部

 

 

◆◇◆ 目次 ◇◆◇◆

 

1 はじめに エイズ動向委員会の移行期を読む

 

2  LOVE & EQUARITY》を掲げ、東京レインボープライド2018開催

 

3 第3野口英世アフリカ賞の候補者推薦を受け付け

 

4  HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン

 

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1 はじめに エイズ動向委員会の移行期を読む

 厚生労働省エイズ動向委員会が316日に開かれ、終了後の記者会見で昨年(2017年)1年間の新規HIV感染者・エイズ患者報告速報値が発表されました。

  新規HIV感染者報告数   992

  新規エイズ患者報告数     415

 感染者、患者の合計は1407件です。

あくまで速報値であり、最終的な確定値はほぼ半年後にまとまります。毎年の確定値は速報値より十数件程度、増えることが多く、2017年確定値も1400件台の前半といったところでしょうか。

 そうした報告の時間差もある程度、織り込んだうえでの話ですが、動向委員会終了後の記者会見で、白阪琢磨委員長は「感触として減ってきたという印象はあるが、本当に減ってきているのかどうかはもうしばらく見ていかなければならない」と語っています。

 少し注釈を加えておきましょう。まず、エイズ動向委員会はこれまで年4回、つまり3か月ごとに開かれていました。それが前回(20178月)から年2回に変わっています。 報告レベルで短期間の変化に一喜一憂するのではなく、中長期的な動向も見据えて対応するには半期に一度ぐらいの集約が妥当なのかもしれません。

 委員長は今回から国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨エイズ先端医療研究部長に代わりました。いま日本で最も多くHIV陽性者の診療にあたっている医師の一人です。

医学の進歩により、抗レトロウイルス治療の普及はHIV感染の予防にも寄与していることが明らかになっています。予防と治療を切り離して考えることはできないという意味も含め、適任というべきでしょう。

 前任の岩本愛吉委員長も東京大学医科学研究所の教授や付属病院長などを歴任した著名な臨床医であり、ウイルス感染症の研究者です。20058月から12年間にわたって委員長を務めてこられました。

岩本委員長が就任した2005年当時の記録を調べると、新規HIV感染者・エイズ患者報告数は年間1199件(感染者報告832件、患者報告367件)でした。感染者、患者報告ともその時点では過去最高です。その2年前の2003年までは1000件未満の状態が続いていましたが、右肩上がりで報告が増え、2007年には1500件(感染者報告1082件、患者報告418件)に達しています。この年も感染者、患者報告はともにその時点で過去最高の報告数でした

男性同性間の性感染による感染報告が急増していた時期でもあり、わが国でも大都市部を中心にして、一定の人口集団内におけるアウトブレークが懸念されていましたが、2007年以降は年間の報告件数が1400件から1600件の間で推移し、少なくとも報告ベースで見れば、国内の流行は感染の拡大から横ばいへと傾向が移っています。

 これは岩本委員長時代の12年間の大きな功績であり、同時にそこからさらに減少へと転じていけるかどうかが予防対策の大きな課題でもありました。

 参考までに付け加えておくと、これまでで感染者報告が最も多かったのは2008年の1126件、エイズ患者報告は2013年の484件で、少し時差があります。

 なぜ横ばいに転じたのか、そして横ばいから減少へと移行していかないのはどうしてなのか。その理由については、こうしたタイムラグも含め、今後さらに分析を進める必要がありますが、直近の3年間は新たな傾向が出てきたようにも見えます。2015年は1434件(HIV感染者報告1006件、エイズ患者報告428件)、2016年は1448件(同1011件、437件)でした。そして2017年はまだ速報値段階ですが、1407件(同992件、415件)で、新規感染者報告が1000件を下回っています。

 白阪新委員長のコメントの「感触として減ってきたという印象はあるが」という部分には、そうした傾向への期待がにじんでいるようです。そして、「本当に減ってきているのかどうかはもうしばらく見ていかなければならない」という慎重な発言には、岩本委員長時代の12年間で達成された「流行の拡大に歯止めがかかる」という実績をさらに大きな成果につなげていこうとする強い意欲があらわれているのではないでしょうか。

開催頻度が年2回になり、委員長も代わって、エイズ動向委員会も移行期を迎えています。新たな環境の背景をそうした文脈でとらえ、次の変化につながる成果を期待したいですね。

 

 

 

2   LOVE & EQUARITY》を掲げ、東京レインボープライド2018開催

 「らしく、たのしく、ほこらしく」を合言葉に、東京レインボープライド2018428日(土)から56日(日)まで開催中です。キース・ヘリング生誕60周年となる今年は、彼の作品と共に「LOVE & EQUALITY」(すべての愛に平等を。)をテーマとして掲げています。

メインイベントのプライドフェスティバルは55日(土)、6日(日)、代々木公園(東京都渋谷区代々木神園)。6日はカラフルなパレードが渋谷・原宿を行進します。

詳細は公式サイトをご覧ください。

https://tokyorainbowpride.com/

 

 

 

3 第3野口英世アフリカ賞の候補者推薦を受け付け

 感染症などアフリカの疾病対策に医学研究および医療活動の分野で顕著な功績を挙げた個人や団体に贈られる「第3野口英世アフリカ賞」の候補者推薦を内閣府が受け付けています。締め切りは今年731日(火)です。

 『アフリカの地で黄熱病の研究途上に亡くなった野口英世博士(18761928年)の志を踏まえ、アフリカにおける感染症等の疾病や公衆衛生への取組において顕著な功績を挙げた方を顕彰する』(内閣府)という賞で、医学研究分野は個人、医療活動分野は個人または団体が対象となります。賞金はそれぞれ1億円です。

授賞式は2019年の第7アフリカ開発会議TICAD7、横浜)に合わせて行われます。詳細は内閣府野口英世アフリカ賞公式サイトでご覧ください。

http://www.cao.go.jp/noguchisho/index.html

 

 

 

4  HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン

厚生労働省の『HIV感染妊娠に関する全国疫学調査と診療ガイドラインの策定ならびに診療体制の確立』研究班が、3年間の研究の集大成となる『HIV感染妊娠に関する診療ガイドライン』(初版)を発行しました。「先進国のHIV母子感染予防対策ガイドラインを比較検討し、日本の特色を考慮した母子感染予防対策を提示」しているということです。

研究班の公式サイトでPDF版がダウンロードできます。

http://hivboshi.org/

 

 

水しぶき 海辺はすっかり 夏模様

 鎌倉駅周辺はきっと大変な混雑に違いないと思い、お昼は材木座海岸に近いお蕎麦屋さんで、冷やしきつねをいただきました。その帰りに砂浜に出ると・・・

 

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 水しぶきが上がっています。夏ですね、これは。東京は26度に達したとか。鎌倉はそれより少し涼しく、さわやかな印象でしたが、それでももう海辺はしっかり夏模様。

 

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 波はそれほど強くなく、風はそれなりに吹いていたので、ウインドサーフィン日和でもありました。潮風を受けながら、砂浜をてくてく歩いていくと・・・

 

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滑川河口の由比ガ浜側はなんというか、もう海水浴シーズン並みの人ですね。カラスもあきれて近寄らない。

 

横ばいから微減への期待 東京都エイズ通信128号

 メルマガ東京都エイズ通信の第128号(20184月号)が426日に発行されました。今年に入ってから420日までの報告数が掲載されています。

archives.mag2.com

    ◇

 平成3011日から平成30420日までの感染者報告数(東京都)

  ※( )は昨年同時期の報告数

 

HIV感染者           99件    111件)   

エイズ患者             16件  ( 31件)   

  合計                  115件  (142件)

 

HIV感染者数、エイズ患者数ともに昨年同時期を下回っています。

   ◇ 

ということで今年に入ってからの報告の減少傾向が依然として、続いています。前年同時期と比べると2割程度は減っている計算になりますね。

 今回のエイズ通信には、毎月の速報値のほかに昨年1年間の報告件数がまとまったことも紹介されています。こちらはエイズニューズレターに詳細が載っていますが新規HIV感染者・エイズ患者、ならびに全体の報告件数だけ紹介しておきましょう。

 

 HIV感染者           367件   367件)   

エイズ患者                97件  ( 97件)   

  合計                     464件  (464件)

 

 ()内は前年(2016年)の報告数です。つまり、新規HIV感染者・エイズ患者ともに報告数は2年連続で同数でした。だからどうした・・・と詰め寄られても困りますが、こういうこともあるんですね。

 ただし、報告の横ばいや微減傾向に喜んでばかりもいられません。確かに2016年と2017年の報告は同数ではあるのですが、2017年の外国籍男性の感染者・患者報告数は合わせて83件で過去最高でした。前年(2016年)より15件も増えています。2割以上の増加です。外国籍の女性の報告も8件で前年の2件よりかなり増えています。

 全体の報告が横ばい、もしくは微減で推移していることは、治療や検査の普及も含め、現場の対策を地道に積み上げてきた成果だと思いますが、それでもなお、対策が届いていない層がある。この現実も直視しなければなりません。

 ・・・ということで、報告の数字で判断した範囲での個人的な感想に過ぎませんが、対策の成果はおそらく、あがっています。そのことには自信をもっていいと思いますが、ああ、よかった、これでひと安心といえる段階でもない。まだ、できることはあります、あるいは、できていないことがあります。その現実も直視し、獲得した自信と成果を次のできることにつなげていけるかどうか。それが2020年オリンピック・パラリンピック開催を控えた国際都市・東京がいま直面する課題であり、期待であり、責務でもあります。