依存をめぐる情報 TOKIO会見TV視聴記 エイズと社会ウェブ版330

 起訴猶予となった山口達也さんを除くTOKIOのメンバー4人が昨日、記者会見を行い、多くのメディアが報じています。テレビは長時間にわたって会見の中継を行い、私もチャンネルをカチャカチャと切り替えながら、ついつい見続けてしまいました。

 これは個人的な想像に過ぎませんが、芸能界というのは記者会見における危機管理の知識と経験を十分に蓄積し、そうした経験と知識を実践の場で活用(ごくまれには悪用)する機会も多い業界ではないかと思います。したがって、昨日の会見における4人のメンバーの言動についても、自らの心情を正直に吐露されていたのだろうなあと思う半面、ここはこう答えるといった組織または個人としての会見の定石はきちんと踏まえたうえで臨んでいたのかもしれないという感想もまた持ちました。

 そうした定石的な対応の「成果」のひとつなのかもしれませんが、アルコール依存症についての取り上げ方(あるいは会見の中で表明されたTOKIOメンバーの受け止め方)が気になりました。精神論に傾きがちで、このままでは問題とされている事態にしっかり対応できないのではないかという漠然とした感想だったのですが、それなりに必要な言及はなされていた面もあるし、どうもうまくその違和感を説明できない。

依存症の専門的な知識に詳しいわけではないし、不用意に無知を露呈するよりも、黙っていた方がいいかなあ、でも、依存症への対応はHIV/エイズ対策の重要な課題の一つであり、黙っているのもなんだか・・・。

そんなもどかしい思いでいたら、女優の東ちづるさんがFacebookで、厚労省サイトの次のようなページを紹介しています。 

www.mhlw.go.jp

 

東さんとは、aktaで名刺を交わしたか交わさなかったか程度、そして自己紹介的なあいさつを(たぶん)したと思う程度の面識しかない一ファンに過ぎませんが、Facebookで拝見する情報提供力と即時の対応能力は素晴らしいですね。

厚労省のページには、依存症って何? どこが問題? やめられないのはどうして? 治りますか? 周りに依存症かもという人がいたら? といったことがQ&A形式でわかりやすく説明されています。 

 

《依存症は、欲求をコントロールできなくなる病気です。しかし本人は自覚がなく気づかないため、何度も気持ちだけでコントロールしようとして失敗します。

そのため、周囲がいくら根性論で本人を責めても、問題は解決しません。叱責や処罰だけでは、むしろ状況を悪化させてしまいます。

本人が回復の必要性を自覚するまでには時間がかかることも多いため、まずは、周囲の方が専門の機関に相談して、適切なサポートのしかたを知ることから始めましょう》(周りに依存症かも・・・という人がいたらどうすればいいの? から)

 

そうかあ。『勇気をもって、専門の機関に相談しましょう!』というアドバイスもあります。

 

 《依存症は 脳の病気であるため、家族などの周囲の人たちでなんとかしようとしても、問題は解決しません。適切な接し方を知っていないと、状況をますますこじらせてしまうこともあります。

本人に対してどのような対応をすればいいのか、家族自身のストレスを軽減するにはどうすればいいのかなど、きちんとした知識を得ることは非常に大切です。

そこで、自助グループや家族会に参加することや、地域にある保健所や精神保健福祉センターといった専門の行政機関に相談する方法があります》

 

どんな相談機関があるのか。それもこちらのページで分かります。

www.mhlw.go.jp

 

こうした情報はふだん、なかなか見る人もいないのでしょうが、困ったとき、藁をもつかむ思いで情報がほしいと思っているときには助かります。専門的な研究の成果を踏まえ、必要な情報を分かりやすくまとめて公開しておくことは、社会的な(そして社会を構成する一人一人の個人にとっての)危機対応策の土台です。厚労省、グッジョブだと思います。

ということで、少し厚労省を持ち上げておいて、最後に話をHIV/エイズ対策に結び付けていきましょう。

 2年前の第23AIDS文化フォーラムin横浜ではオープニングイベントで「依存」が取り上げられました。コミュニティアクションのFeatures欄でも報告したのでご覧ください。

www.ca-aids.jp

 

《セッションは司会のフォーラム運営委員、岩室紳也医師が紹介した熊谷さんの著書の次のような言葉を軸に展開していった。

「自立は、依存先を増やすこと」

「希望は、絶望をわかちあうこと」》

 

 AIDS文化フォーラムin横浜はその後も「依存」について継続的に取り上げています。今年8月35日の第25AIDS文化フォーラムin横浜でも、初日の3日午後、精神科医・松本俊彦先生の講演『ドラッグから見えてくる若者のリアル』、引き続いて松本先生も交えた対談『依存の反対は つながり・絆・居場所』が予定されています。

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 詳しくは横浜AIDS文化フォーラムin横浜の新サイトでご覧ください。

abf-yokohama.org