報告数は2年連続減少 エイズと社会ウェブ版410

 厚労省エイズ動向委員会が8月29日に開かれ、終了後の記者会見で国内における昨年(2018年)の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の確定値が発表されました。私は会見に出ていないので、API-Netで確認したのですが、【概要】は以下のようになっています。

 1.今回の報告期間は平成30 年1 月1 日~平成30 年12 月31 日までの約1年

 2.新規HIV感染者報告数は940 件で過去13 位

 3.新規AIDS患者報告数は377 件で過去14 位

 4.HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は1,317 件で過去13 位

 

 報告数は2年連続の減少となりました。2000年からの年次推移をグラフにするとこんな感じです。

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  あくまでグラフによる見た目の印象ではありますが、横ばいから減少傾向へとフェイズが移ったとまでは言い切れないように思います。

 2007年に患者・感染者報告の合計が1500件に達した時からのデータも示しておきましょう。

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  報告数1500件時代の10年から、1000件時代に移行する過程なのかどうか、これもまだ分かりません。治療の普及による予防効果に期待はかかるものの、世の中は無関心という大きな拡大要因をはらんだままでもあります。 

 委員長コメントの《まとめ》も紹介しておきましょう。

  • 平成30 年の新規HIV感染者報告数及び新規AIDS患者報告数は、平成29年より減少しており、2 年連続での減少となった。
  • 新規HIV感染者及び新規AIDS患者報告の感染経路は、性的接触によるものが7 割以上で、男性同性間性的接触によるものが多い。
  • 献血における10万件当たりの陽性者件数は昨年と比べて減少した。血液製剤によるHIV感染を防ぐため、HIV感染症が疑われる場合、国民の皆様には保健所等での無料・匿名検査を積極的に利用していただきたい。
  • 新規HIV感染者・AIDS患者報告数に占めるAIDS患者報告数の割合は、約3割のまま推移している。自治体におかれては、エイズ予防指針を踏まえ、引き続き利便性に配慮した検査相談体制を推進していただきたい。
  • HIV感染症は予防が可能な感染症である。HIVに感染していない者においては、適切な予防策をとること、HIVに感染した可能性がある者においては、まずは自分の感染を知ることが、個人においては早期治療に、社会においては感染の拡大防止に結びつくことから、重要となる。国民の皆様には、性感染症を含め、保健所の無料・匿名での相談や検査の機会を積極的に利用いただきたい。

 

 ここで、余分なひと言を付け加えておけば、4番目の「利便性に配慮した検査相談体制」はもちろん、検査提供者の利便性でなく、検査を受ける人の利便性でしょうね。選択肢がいろいろと増えていく中で、「検査がやりやすい」と「検査を受けやすい」がうまく一致してくれるといいのだけど。