実は今日がキックオフだったようです UNAIDS差別ゼロデー2019キャンペーン エイズと社会ウェブ版373

 差別ゼロデーの31日、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が、各国や関係機関、そして個人に向けて、差別的な法律の改廃を求めて行動するキャンペーンのプレスリリースを発表しました。

すでにキャンペーンの簡単な紹介は当ブログでも行っていますが、31日にあえてリリースを出したということは、「いよいよ始まります」というキックオフの宣言をしたということでしょうね。

UNAIDSのキャンペーンとしては、121日の世界エイズデーに向けたキャンペーンが最も大きく、10月の初めにスタートして、2か月くらいのキャンペーン期間を設定することが多いようです。

差別ゼロデーのキャンペーンはそれに次ぐ位置づけでしょうが、世界エイズデーのキャンペーンとは異なり、31日が出発点になっているようです。年末年始は世界的にお休みの時期に入るところが多く、準備の都合を考えても、1月、2月はあまりキャンペーンの展開には適した季節ではない。まったくの推測ですが、そのようなサプライサイドの事情もあるのかもしれませんね。

ところで、前にもお伝えしたように31日の「差別ゼロデー」は201431日が第1回で、今年で6回目となります。治療の進歩で、HIV/エイズの流行を抑えるツールは手にした。人権みたいなことを言っていないで、あとは病院と医者に任せてもらおうじゃないか。2010年前後には医療の専門家の間にそんな高揚感が広がっていたように私には感じられました。

しかし、事態は必ずしもその期待通りには進まず、治療の普及や予防対策もHIV/エイズを取り巻くスティグマや差別にしっかり対応しなければ進められない。広く社会を巻き込んだ対応がなければ、流行の終結は困難だよね、というごくごく常識的で、専門家以外には誰にでも分かりそうなことが、最近は改めて認識されるようになっています。

NHKの「100の分で名著」で「大衆の反逆」を読んだつもりになっているせいか、ついついそんな憎まれ口のひとつも叩きたくなってしまいました。医療関係者の皆さん、ごめんなさい。あわてて取り繕うように言えば、医学か人権かという二者択一の話ではなく、どちらも重要ということですね。そもそもが、医学と人権をそのように分けてしまうことは、浅薄と言いますか、便宜的に必要なこともありますが、大局的かつ個別的な判断を誤るもとにもなりかねません。

この辺りは、時と場合をうまく見極め、なるべく多くの人をその気にさせながら、進めていく必要があります。

えっ、あんたに言われたくない?それはそうかもしれないけれど・・・。

リリースでは、法律に関するいくつかデータも紹介されています。

 

  世界の少なくとも20カ国がいまなお、HIV陽性者に対し何らかのかたちの渡航規制を設けています。

  29カ国では、女性が性と生殖に関する保健サービスを利用する際に配偶者またはパートナーの同意を得る必要があります。

  59カ国が、結婚、就労、居住許可の際、もしくは特定の集団に対し、法律や規制、政策によりHIV検査を義務付けていることを報告しています。

  17カ国が、トランスジェンダーの人たちを犯罪の対象としています。

  45カ国は、18歳未満の若者がHIV検査を受ける際に法律で保護者の同意を義務付けています。

  33カ国が、薬物犯罪に対し法律で死刑を定めています。

  同性間の性関係は世界の少なくとも67カ国・地域で犯罪とされています。

 

日本はどうなのかということも、この際、考えてみる必要があるかもしれません。キャンペーン冊子も鋭意、翻訳を進めていますので、近日中に何らかのかたちでみていただけるようにしたいと思います。乞う、ご期待!

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尊厳と尊重、そして生命を守るために、差別的な法律を変える行動を

 201931日 UNAIDS プレスリリース

 差別ゼロデーに際し、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は各国に対し、法律や政策を点検し、平等と包摂、保護の観点から必要な改正を行うよう求めた

www.unaids.org

 

  201931ジュネーブ 2018年は多数の国が差別的な法律や法案を変える画期的な決定を行った年でした。インド最高裁は同性間の性関係を違法と定めた刑法第377条を無効とする決定を下しました。フィリピンでは若者が親や保護者の承認なしに自発的なHIV検査を受けられるよう承諾年齢が15歳に引き下げられました。マラウィのHIV法案からはHIVの非開示、曝露、感染行為を犯罪とする条項が外されています。

 差別ゼロデーに際し、UNAIDSは世界人権宣言で強調されたすべての人の平等な尊厳と価値を再認識し、差別的な法律とその実施を改める行動を起こすよう求めています。そうした法律は保健その他のサービスへのアクセスを妨げる大きな障壁ともなるからです。

 「差別的な法律やその執行による人権侵害は世界中で起きています」とUNAIDSのミシェル・シディベ事務局長はいう。「法律は害悪から守るためのものであって、害悪の原因であってはなりません。すべての人の平等と保護が、例外なく実現できるよう、各国は注意深く法律と政策を検証する必要があります」

 理解を深め、必要な行動をとりましょう。差別ゼロデーに際し、UNAIDSは個人、市民社会、議会、ドナー機関が、差別的な法律を変えるために、それぞれの立場でとるべき行動を提案しています。非政府組織に加わり差別的な法律の被害を受けている人の味方になること、有害な法律には修正案を上程すること、法律の見直しを求めることなどその提案は多岐にわたっています。

 前向きの変化を生み出すことは可能です。法律の改正や廃止には様々な方法があります。たとえば:

  議会手続きと議員の投票により法律を改正、撤廃する。

-       そのためには、フィリピンのHIV法の改正やマラウィの法案見直しで行われたように議員が認識を深めることが不可欠となります。

  多くの国で、法廷には差別的な法律を廃止する力があります。そのためには、その法律に影響を受けている個人や組織が法的な動きを示し、変革に向けた訴訟に勝たなければなりません。

-       2018年に刑法第377条を無効としたインド最高裁決定は印象的な事例です。

  国によっては一般の人たちや政治家が請願や国民投票を請求することで、法改正の提案ができます。

-       スイスではそれが立法の標準的な方法です。

 

UNAIDSは様々な法律が差別的であり、保健、社会サービスへのアクセスを妨げ、移動の自由を制限し、人権を侵害していることを示しています。2018年には:

  世界の少なくとも20カ国がいまなお、HIV陽性者に対し何らかのかたちの渡航規制を設けています。

  29カ国では、女性が性と生殖に関する保健サービスを利用する際に配偶者またはパートナーの同意を得る必要があります。

  59カ国が、結婚、就労、居住許可の際、もしくは特定の集団に対し、法律や規制、政策によりHIV検査を義務付けていることを報告しています。

  17カ国が、トランスジェンダーの人たちを犯罪の対象としています。

  45カ国は、18歳未満の若者がHIV検査を受ける際に法律で保護者の同意を義務付けています。

  33カ国が、薬物犯罪に対し法律で死刑を定めています。

  同性間の性関係は世界の少なくとも67カ国・地域で犯罪とされています。

 

UNAIDSは国連のパートナー機関、各国政府、市民社会組織と協力し、『HIVに関連したすべてのスティグマと差別の解消に向けて行動するグローバルパートナーシップ』の一員として、こうした法律を変えることに積極的に取り組んでいます。

 

www.unaids.org

  

 

 

 

Press release

UNAIDS urges action to change discriminatory laws in order to restore dignity and respect and save lives

On Zero Discrimination Day, UNAIDS calls on countries to examine discriminatory provisions in their laws and policies and make positive changes to ensure equality, inclusion and protection

 

GENEVA, 1 March 2019—In 2018, a number of countries made landmark decisions to change discriminatory laws and bills. The Supreme Court of India struck down Section 377 of the Penal Code, which criminalized same-sex sexual relations, the Philippines lowered the age of consent for voluntary HIV testing without the need to obtain consent from a parent or guardian to 15 years and Malawi removed provisions from a draft bill that would have criminalized HIV non-disclosure, exposure and transmission.

On Zero Discrimination Day, UNAIDS recalls the equal dignity and worth of every person, as enshrined in the Universal Declaration of Human Rights, and is calling for action to change discriminatory laws and practices, which are a significant barrier for access to health and other services.

Human rights violations are happening all over the world because of discriminatory laws and practices,” said Michel Sidibé, Executive Director of UNAIDS. “Laws must protect, not cause harm. All countries must carefully examine their laws and policies in order to ensure equality and protection for all people, without exception.”

Raising awareness, mobilizing and taking action are essential. On Zero Discrimination Day, UNAIDS is proposing specific actions that individuals, civil society organizations, parliamentarians and donor organizations can take to change discriminatory laws. These range from being an ally to someone affected by a discriminatory law to joining a nongovernmental organization, tabling amendments to laws and calling for reviews of legislation.

Making a positive change is possible and there are many ways a law can be amended or abolished. These include:

 

 

Reforming or removing laws through parliamentary processes and the votes of parliamentarians.

Raising awareness among parliamentarians is therefore essential, as was done in the revision of the HIV laws in the Philippines and bills in Malawi.

In many countries, courts have the power to strike down laws that are discriminatory. This can be done if an individual or organization affected by the law takes legal action and wins the case for change.

The case of India’s Supreme Court, which removed Section 377 in 2018, was a striking example.

In some countries, people or politicians can propose law reform through a petition and request a national vote or referendum.

This is a standard method of legislating in Switzerland.

 

UNAIDS has identified a range of laws that are discriminatory, impede access to health and social services, restrict freedom of movement and violate human rights.

In 2018:

At least 20 countries imposed travel restrictions of some form against people living with HIV.

Around 29 countries reported that they require the consent of a woman’s husband or partner to access sexual and reproductive health services.

Fifty-nine countries reported mandatory HIV testing for marriage, work or residence permits or for certain groups of people in the law, regulations or policies.

Seventeen countries criminalized transgender people.

Forty-five countries had laws that impose the need for parental consent for adolescents and young people below 18 years to access HIV testing services.

Thirty-three countries imposed the death penalty for drug offences in law.

Same-sex sexual relations were criminalized in at least 67 countries and territories worldwide.

UNAIDS is actively working with United Nations partners, governments and civil society organizations to change those laws as part of the Global Partnership for Action to Eliminate all Forms of HIV-Related Stigma and Discrimination.

Zero Discrimination Day campaign 2019—act to change laws that discriminate.