今年はラグビーW杯が日本で開催されます。日本代表の活躍は大いに期待したいところですが、「One for All, All for One(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」というラグビー精神は、グランド上で展開される選手たちの闘いにとどまるものではない・・・と柄にもなくロートル記者の心は震えてしまいました。
全身の筋肉が徐々に失われていく難病 ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法研究と患者の皆さんを支援するため、日本のラグビー関係者が中心になって寄付を呼び掛ける「チャレンジJ9」というキャンペーンのキックオフ記者会見が2月7日午後、東京・内幸町の日本記者クラブで開かれました。多少はラグビーの知識もあり、暇でもありそうだということで不肖・私が司会を依頼され、お引き受けしたのですが、正直言って引き受けてよかったと思う有意義な会見でした。会見動画も日本記者クラブの公式サイトにアップされるでしょうから、隠さずにお知らせしておけば、会見の最後のところでおじさんは、司会でありながらついつい感極まって声を詰まらせてしまったのであります。
ラグビー、熱いなあ。W杯、ますます楽しみだぞ・・・ということで、ジャパンの活躍を祈るとともに、病を抱えて生きる人たちの困難な闘いと勇気を微力ながら支えることができればというささやかな思いも込め、「チャレンジJ9」キャンペーンの紹介と会見報告を行います。
キックオフの記者会見を行ったのは、「チャレンジJ9」の発起人である以下の3人です。
・帝京平成大学教授、井手口直子さん(薬学)
会見の様子は動画があるので、詳しくは日本記者クラブの公式サイトでそちらをご覧いただくとして、大づかみに報告すれば、広瀬さんがキックオフ宣言を行い、村上さんがキャンペーンの概要と発足に至る経緯を報告し、井手口さんがALSに関する説明を行いました。以下は私のつたない理解の及ぶ範囲でまとめたその要約です。
J9のJは、1995年の第3回ラグビーW杯南ア大会で優勝した地元南ア代表(スプリングボクス)の名SH(スクラムハーフ)、ユースト・ファン・デル・ヴェストハイゼン選手の名前(Joost)の頭文字。9はSHの背番号です。1990年代最高のスクラムハーフといわれるファン・デル・ヴェストハイゼン選手は引退後の2008年にALSを発症し、2017年2月に45歳で亡くなっています。2011年には自らの病気を公表し、「J9基金」を設立して病気への理解と治療法研究開発のための活動を続けてきました。その活動により南アフリカでは現在、患者支援センター(JCN)が作られているそうです。
日本の「チャレンジJ9」は南アのJCNからJ9の名称使用の承認を受け、第9回ラグビーW杯決勝戦が行われる今年11月2日まで続けられる募金キャンペーンです。ここでのJ9は日本(Japan)で開かれる第9回大会という意味も込められています。
募金活動はノーベル賞学者の山中伸弥博士が所長を務める京都大学iPS細胞研究所の研究支援を呼びかけ、京都大学基金「iPS細胞研究基金」に2019円または20190円を振り込めば、その金額によって「チャレンジJ9」の募金であることが識別できるようになっているそうです。詳しくはチャレンジJ9の公式サイトをご覧ください、
山中所長のメッセージも載っています。
チャレンジJ9による寄付は、ALSだけでなく、他の難病やけがの治療研究にも役立てられる予定です。自らが抱える病気のみに限定しないことはALSの患者団体の皆さんが望まれていることでもあるそうで、こうしたOne for Allも涙もろいおじさんライターはぐっと来てしまいます。
会見にはALS患者である岡部宏生さん(特定非営利活動法人ALS/MND サポートセンター さくら会理事)も出席され、以下のようなメッセージを寄せていただきました。岡部さん自身は声を出して読むことができないため代読でしたが、資料として配布された全文を当ブログでも紹介させていただきます。
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2015年桜のジャージが世界の舞台で大暴れをしてくれました。
それはスポーツ史上最大の番狂わせと言われたりもしました。 でもそれを成し遂げた選手達は歴史をかえるのは自分達だと言う矜持を持って試合に臨んでいたのです。
私達ALS患者は日々の闘病に疲れ果てている事も多いですし、スポーツ観戦どころではない事も多いのです。 それでもこの歴史的な快挙には血が興奮して一瞬病気を忘れた程です。 そのラグビー関係者の皆様が私達ALS患者をサポートしてくださっている事は本当に嬉しく励まされるものです。 まさに勇気と希望を与えて頂けるものだと言えます。 それはチャリティーとかサポートという枠をも超えて私達に力を届けてもらっているものです。
ラグビーとALSは両極端に感じることが普通だと思いますが、どちらもチームで支える事や前にはパスはできなくても実は前に進んでいる事、またはどちらに転がるかわからない事など共通点が沢山あるのです。 ラグビーの精神はまさに私達も生きていく中で、どうしてもやっていかなければならない事なのです。 そして、近いうちにこの病気がノーサイドになってくれる事を心より願って、サポートをしてくださっている関係者の皆様に最大の感謝をお伝えする次第です。