同性間の性行為を禁じる法律は違憲 インド最高裁 (長めの追加あり) エイズと社会ウェブ版350

 インド最高裁が9月6日、同性間の性行為を禁止する刑法377条について、違憲無効とする判断を下しました。世界中のメディアが報じていますが、とりあえずネットで検索したらAFPが日本語版でも速報を伝えているのでご覧ください。
 

www.afpbb.com


『【9月6日 AFP】(更新)インドの最高裁判所は6日、同性間の性交渉を違法と定めた刑法第377条について、違憲無効とする画期的な判断を下した。英植民地時代の1861年に制定されたこの法律をめぐっては、長年にわたり法廷闘争が続いていた』


 この件については、これまでにインド国内の司法判断に紆余曲折があり、私も以前、分からないなりに取り上げてきました。HIV/エイズ対策にも大きくかかわる問題であるからです。その辺も含め後で続きを書きます。

 

 ということで、続きです。
 インド刑法の377項にある同性間の性行為の禁止規定は、インドが英国の植民地支配のもとにあった150年前から続いていました。
 1861年に英国が同性間の性行為を禁止したのを受け、インドでも犯罪として扱われるようになったということです。
 したがって、こうした刑法の禁止規定はインドだけでなく、イギリスの植民地だった国の多くにありました。大半は形骸化していますがいまなお撤廃されずに残っている国もあります。
 インドでは2009年7月2日、デリー高等裁判所が「成人の合意に基づく性行為は合法的なものであり、そこにはゲイセックス、同性間のセックスも含まれる」として、この禁止規定に対する違法判決を出しています。
 この判決はHIV/エイズ対策の観点からも極めて重要であり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)はその日のうちに『同性間の性行為を犯罪として扱う法律を無効としたインド・デリー高裁の歴史的決定を歓迎』とするプレスリリースを発表しています。
 エイズソサエティ研究会議HATプロジェクトのブログには判決の4日後の7月6日付でそのプレスリリースが載っているのでご覧ください。
 https://asajp.at.webry.info/200907/article_2.html

『インドではすでに同性愛行為が実際に刑法犯として罪に問われることは、ほとんどなくなっているそうですが、法規制の存在そのものが、ゲイ、レズビアンに対する嫌がらせを社会的に許すかたちにはなっているので、今回の判決の意義は小さくないでしょう』というのが、その時の私の感想です。当然、この判決は最高裁によっても支持されるだろうと思っていました。
 ところが、4年後の2013年12月11日にはインド最高裁がこの判決を覆し、同性間の性交渉を違法とする判断を示しました。
 キリスト教ヒンズー教イスラム教の団体がこの判決を不服として上訴していたそうです。インド政府は「高裁との意見の相違はない」として上訴には加わらなかったので、行政と司法の判断が乖離するかたちになりました。
 このインド最高裁の判断に対しては、それはないでしょということで、国際エイズ学会(IAS)がインドの大統領宛に公開書簡を提出しています。
 その公開書簡の日本語仮訳は8日後の12月19日にHATプロジェクトのブログに掲載しました。
 https://asajp.at.webry.info/201312/article_4.html
 さわりを紹介しましょう。
 『30年を超えるHIVの流行の歴史の中で、インドはHIV感染を減らし、HIV陽性者への差別と偏見をなくし、治療とケアのユニバーサルアクセスを実現するために強力なリーダーシップを示してきました。インドはまた、世界のHIV対策における最良の指導者を何人も輩出しています。インドの人たちは、率直さと思いやりと創意工夫で個人と社会の脆弱な部分に対応し、HIV感染の拡大を抑えることに成功してきました。しかし、今回の最高裁の思慮を欠いた決定は、これまでの成果を台無しにする恐れがあります』
 なるほど、こうやって相手を傷つけることなく、うま~く持ち上げながら懸念を表明する。こうした働きかけはきっと、その後も続けられていたのではないでしょうか。
 私は十分なフォローができていなかったので想像でしかありませんが、そうした働きかけもあって、最高裁も徐々に判断を変えていったのでしょうね。