SDGs実施指針とエイズ予防指針 国内の関心度は・・・ エイズと社会ウェブ版258

 政府のSDGs推進本部が22日、持続可能な開発目標(SDGs)実施指針を策定したのを受け、東京・内幸町の日本記者記ラブで同日夕、政府、国連NGO、民間企業組織による共同の記者会見が開かれました。指針策定のプロセスには政府だけでなく、多様な分野のステークホルダー(関係者)が加わり、NPO/NGOからの意見も反映されているということです。

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 SDGsは昨年9月、国連全加盟国により、2030アジェンダとして承認された世界の共通目標で、今年1月にスタートしました。2030年までに世界から貧困をなくし、持続可能な社会を目指す17目標(ゴール)、169ターゲットで構成されています。
 わが国は今年、伊勢志摩サミットの議長国でもあったことから、SDGs積極推進の姿勢を明確に示し、5月に推進本部を発足させ、民間分野からの参加者も含めた円卓会議などを経て、指針をまとめました。
 日本記者クラブの会見では内閣官房と外務省の担当者がそれぞれ指針について説明した後、SDGs市民社会ネットワークの黒田かをり事務局長、グローバル・コンパクト・ネットワークの太田圭介事務局長、慶應義塾大学の蟹江憲史教授、国連広報センターの根本かおる所長がそれぞれの立場からコメントを行いました。司会はSDGs市民社会ネットワークの稲場雅紀さんが担当しました。

 実施指針については会見でも配られた指針の本文、SDGs達成のための具体的施策(付表)、指針の概要が首相官邸公式ホームページのSDGs推進本部のページに掲載されているのでご覧下さい。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/

 これで終わらせてはあまりにも愛想がないので、優先課題を紹介しておきましょう。2030アジェンダに掲げられている5つのP=People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ))に対応してわが国の指針には以下の8項目が優先課題として位置づけられています。

(People 人間)
1あらゆる人々の活躍の推進
2健康・長寿の達成
(Prosperity 繁栄)
3成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
(Planet 地球)
5省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
(Peace 平和)
7平和と安全・安心社会の実現
(Partnership パートナーシップ)
8SDGs実施推進の体制と手段

 SDGsについて実施指針を作ったのは日本が初めてだそうで、会見では官民の関係者がともに、そうした先進性と指針策定にいたる参加型の対話プロセスを評価し、世界各国にとってモデルになる・・・と評価しておられました。異論をはさむつもりはありません。また、指針はあくまでスタートであり、どう具体的な施策に結びつけていくか、これからが勝負といった指摘もあり、こちらももちろん異論はありません。
 個人的に関心があるのは、実施指針の推進体制の中でHIV/エイズ対策はどう位置づけられるのかということですが、正直に言って影が薄いという印象です。2番目の健康・長寿の達成のところには感染症対策も入っているのですが、HI/エイズの流行にはとくに言及されていません。本文を読んで、ようやく見つけたのは5ページ目の「実施のための主要原則」というところの(2)包摂性、の説明で『「誰一人取り残さない」とのキーワードは2030アジェンダの根底に流れる基本的理念を示しており、2030アジェンダは子供、若者、障害者、HIV/エイズと共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を求めている』と書かれている部分だけだったと思います。見落としもあるかもしれないので、お気づきの方は「ここ、見落としているよ」と教えてください。
 そもそも2015年までのミレニアム開発目標MDGs)と比べ、SDGsになるとHIV/エイズはぐ~っと後景にひいてしまった印象なので、まあ、しょうがないか。
 それでも、「2030年までに公衆衛生上のエイズ流行を終結させる」という目標は保健関連のSDGsであるゴール3「すべての人に健康と福祉を」の中の重要なターゲットの一つです。厚労省で改正に向けて検討が開始されたエイズ予防指針とSDGs実施指針をうまく結びつける構想力は国内のエイズ対策に取り組む人たちにも求められるのではないでしょうか。