UNAIDSアジア太平洋地域事務所のクラウス所長がaktaを訪問 エイズと社会ウェブ版215

  タイのバンコクにある国連合同エイズ計画(UNAIDS)アジア太平洋地域事務所のスティーブ・クラウス所長が27日午前、東京・新宿二丁目のコミュニティセンターaktaを訪問しました。HIV/エイズ対策分野の世界の要人が数多く訪れ、日本のエイズ対策の迎賓館と某ジャーナリストが勝手に言い始めたら、何となく「そうだね」とたくさんの人がうなずいてしまった予防と支援の啓発拠点です。

 aktaセンター長のジャンジさん、NPO法人akta理事長の岩橋恒太さん、ぷれいす東京代表の生島嗣さん、通訳を担当してくれた同じくぷれいす東京理事の兵藤智佳さん、そしてエイズソサエティ研究会議副代表の樽井正義さんというかなり濃いメンバーが日本のHIV/エイズの流行や対策の課題について説明し、話題は日本、アジア、世界の現状へと広がっていきました。

 わが国の流行については、毎年1500人前後の新規HIV感染者・エイズ患者の報告があり、いわゆる横ばいの状態がここ数年、続いていること、感染報告の74%、患者報告の59%がMSM(男性とセックスをする男性)で占められ、国内の感染が主にMSMコミュニティを中心に起きていることを前提に予防や支援の対策を進める必要があることなどが岩橋さんから紹介されました。MSMのコミュニティの中でも、地域、年齢層などによって予防や支援のメッセージが届いているところ、なかなか届かないところがあり、そうした違いも分析しつつ対策を進める必要があること、aktaなど全国6都市のコミュニティセンターが街の真ん中にあり、複数NGOと協力しながらアウトリーチの成果をあげていることについても説明がありました。こうした活動を充実、強化させていくことはますます重要になっています。

 日本が観光振興の政策的意思を強く打ち出し、2020年には東京五輪も開催されることを考えると、わが国と近隣アジア諸国との人の交流は今後さらに緊密化、拡大化していくことが予想されます。そうした中で、国内対策もアジア諸国の動向を十分に把握し、協調しつつ進めていくことが必要です。そして、その協力は政府レベルでももちろん重要ですが、コミュニティでの活動に浸透していかなければ、現実の成果にはつながりませんといったことも共通の認識として確認されました。

 このあたりのいわゆる政府・研究者・コミュニティ間の協力、連携については、現場にいると、いかんなあとか、どうもうまくいきませんねといった印象を持ってしまうのですが、そして実際に「いかんなあ」がどっさりあることも確かなのですが、それでも少しずつ成果があがっているのではないか、ジャパン、たいしたもんだぞ・・・岩橋さんや生島さんの説明を聞きつつ、クラウス所長はそのような感触を受けたようでもありました。

 これを「うまくいっていますね」と解釈されてしまうと、ちょっと違うんだけどなあという歯がゆさが激しく残ります。ただし、足りないことだらけのわが国のエイズ対策環境の中で、これまで現場レベルで行われてきたことが曲がりなりにも成果をあげ、国際水準でみれば「日本はよくやっている」というレベルを保てている。こうした受け止め方であるなら、それもそうだなあという感じになります。微妙なところですね。

 

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 写真は笑顔の中にその微妙さも少々、残る会合後の記念撮影。TOKYO AIDS WEEKSのTシャツも存在感を発揮しています。

 岩橋さんのプレゼンテーションの中では、2年前の東京レインボープライド2014のパレードで、安部昭恵さんと長谷川博史さんがフロートから沿道に手を振っているポスターも紹介されました。「どうして日本のファーストレディはこんなに熱心なんだ」というクラウス氏の質問には、「隣で盛り上がっている長谷川さんという方が人の心をつかむ名人のようなところがありまして、対策とか政策とかいっても、そこには人と人との関係の大切さというものも無視することができず・・・」などとわけの分からない説明をしようと思ったけれど、私のたどたどしい英語では伝わったかどうか。今年6月にはNYで5年に一度の国連総会のHIV/エイズ・ハイレベル会合が開かれ、ファーストレディ会合も用意されているそうです。クラウス氏は「昭恵さんに出席してもらえるかなあ」とつぶやいていました。打診の価値はありそうですね。